関電 クラゲ退治に4億円 取水口に詰まる“出力抑制の天敵”
産経新聞 5月31日(金)7時55分配信
火力発電所の運転を脅かすクラゲの襲来に備え、関西電力は今夏、新たに4億円を投じて対策を強化する。昨夏の大量発生では、大型原発1基分に相当する120万キロワットの出力抑制を引き起こした天敵。原発の再稼働が進まず、電力不足が懸念される状況が続くだけに、緊張感は高まる。
【関電また難題】クラゲでトラブル多発…多すぎて処理しきれず
発電所はタービンを回す蒸気を冷やすため、海水を循環させている。取水口にはゴミを取り除く防止網を張り、すり抜けた異物も集塵(しゅうじん)機で回収している。ただ、ミズクラゲなどが大量に押し寄せると、防止網を破って取水口を詰まらせるなどの問題が起き、発電所の出力を下げざるを得なくなる。
関電は6月末までに、大阪市の南港発電所など、クラゲ襲来の可能性が高い7カ所の火力発電所で、防止網を目の細かく強度の高いものに交換したり、支えのコンクリートブロックを重くしたりするなどの対策を取る。1時間で24トンのクラゲを吸い取れる可搬式ポンプも4台導入する。
平成24年度はミズクラゲが大量発生し、8月11日に赤穂発電所1、2号機(兵庫県赤穂市、出力計120万キロワット)が停止するなど、63件の停止・出力抑制が発生。23年度(0件)、22年度(2件)に比べて明らかな「異常事態」(関電幹部)で、現場は混乱した。
今年度はまだ大量発生の兆候はないが、すでに4月29日と5月1日に南港発電所がクラゲ被害に遭い、いずれも30万キロワットの出力抑制を起こしている。漁業情報サービスセンター(東京)は「ミズクラゲは、高い栄養分などの条件がそろえば、全国どこでも大量発生する」としている。
このため、東京電力や中国電力などの火力発電所でも、防止網や集塵機などを設置し、クラゲの襲来に備えている。関電の今夏の供給余力は、大飯原発3、4号機を含めても3%にとどまる。発電所のトラブルとクラゲの大量発生が重なれば、電力不足に陥りかねない状況で、八木誠社長は「需給に不安な面がある」と危機感を募らせている。
最終更新:5月31日(金)9時3分