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【大リーグ】

26歳ルーキー、ギャティスに脚光 契約金10万円から球宴有力10人に

2013年5月31日 紙面から

 苦しみ抜いた26歳の新人が、大きな脚光を浴びている。ブレーブスのエバン・ギャティス捕手は、今季41試合の出場で、ともに両リーグの新人で断トツの12本塁打、32打点。大学時代の4年間はうつ病で完全に野球から離れ、さまざまな職を転々としていた異色のメジャーリーガーだ。米放送局FOXスポーツ(電子版)は29日(日本時間30日)、初めて球宴に選出される可能性がある選手としてギャティスをピックアップ。どん底からはい上がってきた苦労人が、大きな花を咲かせつつある。

 一度はバットを置いた男にスポットライトが当たっている。FOXスポーツは球宴に初選出される可能性がある10人にギャティスを選び、「リベラの球をギャティスが打つのを見たくないか?」と紹介。いまや全米注目の一人だが、話題を呼んでいるのは実力とその経歴だ。異色のキャリアを持つ大リーガーはたま にいるが、ギャティスほど紆余(うよ)曲折を経た選手はそういない。

 「自殺することしか考えられなかった。そんな状態がずっと続いた」。高校時代は将来を嘱望された大砲だったギャティス。だが、歯車が狂いだしたのは大学からだ。スポーツ推薦でテキサス農工大に入学したが、「野球で失敗することが怖くてたまらなくなった」とうつ病状態に。丸々一週間、一睡もできなくなり、精神科に入院。結局、大学には一日も行かず、アルコールと薬物におぼれた。

 退院後も人生の意味を探すため全米を放浪。駐車場係、スキーリフトのオペレーター、ピザの料理人、ゴルフカート運転手、機械工、校務員…。あらゆる職を転々としたすえ、ようやく「恐れることは何も悪くない。誰だって怖い。勇気を出すのを恐れることもない。何であれ、ただやるべきことをやればいい」と達観したという。

 10年に弟が通っていた2部の大学で復学。「4年間バットを一度も振っていなかった」が、打率4割3厘、11本塁打をマークしてスカウトの目に留まり、ブレーブスに入団。長いブランクもあって契約金はたった1000ドル(約10万円)だったが、今春に初参加したメジャーキャンプでは打率3割6分8厘をマークし、ゴンザレス監督に「本当に勝ちたいんですか? だったら、俺をメジャーでプレーさせるべきだ」と直訴して開幕メジャーを勝ち取った。

 4月3日のデビュー戦ではサイ・ヤング賞2度のハラデーから初アーチを放つと、8試合で4発。4月の最優秀新人賞に選ばれたルーキーを、FOXスポーツは「(正捕手)マキャンが故障から復帰しても実力でメジャーに残っている」と伝え、ゴンザレス監督も「あいつをマイナー降格させれば、私が解雇されるよ」と捕手だけでなく内外野でも起用する。

 「後悔は一切ない。何事にも理由があるはずだからね。長くねじくれた道のりだったけれど、今が人生で一番幸せだ」とギャティス。春はいつでも、遅すぎるということはない。

 

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