アルマディアノス英雄伝 第十二話
顔面がヒリヒリする。
しかしその痛みこそがクラッツが肉体の支配権を取り戻したことの何よりの証であった。
グッと手を握り己の拳を見つめたクラッツは万感の想いとともにコーネリアをその胸に抱いた。
「クラッツ………………?」
「姉さん………愛している」
そこでコーネリアはさきほどの自分の恥ずかしい告白を思い出して、沸騰したように顔を赤らめた。
クラッツ本人に抱いてほしい―――――記憶に間違いがなければ自分はそう言っていた。
思わず逃げ出したい思いにかられてコーネリアは身悶えた。
あのまま得体の知れない男に抱かれるのがいやであったとはいえ、決して言ってはならない一線を越えた台詞であった。
「ク、クラッツ、ごめんなさい、やっぱり私――――――」
そう言ってクラッツの胸を押し戻そうとするのをクラッツは強引に押しとどめてコーネリアの唇を吸った。
吸いつくようなどこまでも柔らかい蕾を味わうとともにコーネリアの唇をこじあけて口腔の内部を舌先でかき乱す。
ガクリとコーネリアの腰から力が抜けてクラッツに体重を預けてくるのがわかった。
荒々しくクラッツに求められて拒否を貫けるほど、コーネリアは女として枯れてはいないのだった。
「もう我慢はしない、姉さんはオレのものだ」
本当は拒否すべきであったかもしれない。
姉弟が結ばれるなどということは世間の目が許さないだろう。
例外もないではないが、近親婚が忌避されるのはごく一般的な了解事項だ。
だから死ぬまで胸に秘めておこうと決めていた。
―――――なのにこんなにもうれしいなんて!
愛している、オレのものだ。
そう言われてコーネリアの胸を占めているのは溢れだして止まらぬ歓喜の嵐であった。
ずっと心に秘めていた男に求められる興奮、そして誰の目にも明らかな強い雄に隷属する悦び。
ハラハラと溢れる涙とともにコーネリアは幼子のようにクラッツにすがりつくと最後の力を振り絞って抵抗を試みた。
「だめ、やっぱりだめ。私たちは姉弟なのよ―――――――」
「関係ない。オレはもう姉さんをほかの男に盗られる恐怖を味わうつもりはない」
グラタナスにベルンストに、最愛の姉を奪われる寸前までいったことがクラッツの背中を強く押していた。
もし間に合わずに姉の操を奪われていたのなら、クラッツは今こうして正気でいられたかどうか自信がない。
先送りしていた覚悟の答えは既に出た。
自分は姉をほかの男に奪われることを決して許容できない。
それが姉の意思に反しようとも、それが世界の禁忌に触れるものであったとしても。
「姉さんをオレの女にする」
軽い絶頂で腰砕けになっていたコーネリアをベッドに押し倒して、クラッツはその柔らかな肢体に猛然と襲いかかった。
クチャクチャクチャクチャクチャ
淫媚な水音とともにコーネリアの秘所がクラッツの太い指で掻きまわされるとコーネリアはビクリとのけぞってその美しい喉をさらした。
「ひあぁっ!そこ…………かきまわしちゃだめぇっ!」
今日一日で何度絶頂まで達せられただろうか。
極度に敏感になった肉襞は本来の主の指を迎えて歓喜の蜜を垂れ流し、クシュクシュと白い泡を浮き立たせていた。
その泡を掬いとるようにしてクラッツが舌先で舐めあげる。
羞恥のあまりコーネリアはいやいやをする赤子のように首を振った。
「ひどい………クラッツの馬鹿………こんな恥かしいめに合わせるなんて…………」
甘えるような拗ねているようなコーネリアの態度がクラッツの興奮を加速させた。
年上の姉として凛とした佇まいでクラッツを叱りつけていた強気な姉の姿はそこにはない。
ただ男の欲望に翻弄されているか弱い乙女がいるだけだ。
初めて見る姉の弱々しく拗ねる姿に加虐心をそそられたクラッツは薄い胸の頂点でビンビンにしこったコーネリアの乳首を摘んでまじまじと視姦した。
「こんなに乳首を勃起させるなんて………姉さんはいやらしいな………」
「きゃふぅぅぅぅぅぅんっっ!言わないでぇ!」
強烈な性感に加えてクラッツに言葉で嬲られてたちまちコーネリアは絶頂した。
またクラッツにいやらしいアヘ顔を見られてしまう………そう思っただけで秘所から溢れるほどに淫水が噴きだし悦楽の波に腰が震えた。
自覚はしていなかったがコーネリアの性癖はいささかマゾに傾いているのかもしれなかった。
ガックリと脱力したコーネリアの足を無理やり開かせるとクラッツはテラテラに光った秘所へとむしゃぶりついた。
ピンク色の肉襞と無毛に近い柔肌は、コーネリアの羞恥とは逆に歓喜の涙を流してクラッツの舌を受け入れていた。
「や、やあああああっ!舌でほじっちゃらめえええええ!」
ツンツンと秘口をザラついた舌でつつかれてコーネリアは悲鳴をあげる。
さきほどの絶頂で敏感になった媚肉にその刺激は強すぎた。
少しでも快感から逃れようと必死で腰を引くが、逆にそんな腰つきがクラッツの興奮をさらに高めてしまい全くの逆効果になっている。
慎ましい胸とは対照的に女性らしい優美な曲線を描いたコーネリアの腰まわりはため息が漏れるほどに美しくそして淫らであった。
「ひあっ!あふうっ!もうらめっ!らめなのおおおおお!」
秘肉を舌で責められ、同時に膨らんだ淫核を親指で強く押しつけられてコーネリアは再び絶頂へと達した。
気絶してしまいそうな至福に意識が遠のくがクラッツはそれを許すはずがなかった。
「きゃほおおおおおおおおおっ!」
獣のような悲鳴があがる。
コーネリアは自分がそんな悲鳴をあげているということにさえ気づかずガクガクと腰を痙攣させた。
連続する絶頂に美しいコーネリアの顔は涎と鼻水に塗れていたが、それですらも美しさに淫らな妖艶さが加わっただけのようにクラッツには感じられた。
まだ痙攣し続けるコーネリアの尻に、クラッツの野太い指が埋まっていた。
コーネリアは正常な意識を失っていた。
だからこそコーネリアの身体は素直に男が与える快楽を余すところなく受け止めていた。
耐えることなど考えなくてよい愛しい男の愛撫に身をゆだね、女の悦びに浸っているだけでよい。
無垢な赤子のようにコーネリアはクラッツの責めを受け入れていた。
「行くよ姉さん」
湯気が立ち上りそうなほどに潤みきったコーネリアの秘所はパクパクと痙攣してクラッツの肉杭を待ちわびているかのようだ。
ついにコーネリアの男になる日がきた。
クラッツが男になる日が。
万感の思いとともにクラッツは大きく腰を引いた。
たとえコーネリアが嫌がろうとも、その処女を奪うことにもはやためらいはなかった。
メリメリメリメリ…………!!
巨大な肉塊に体内を引き裂かれていくような痛みに悦楽に浸っていたコーネリアは意識を取り戻さざるを得なかった。
「いっ………痛い……………!!」
小さなコーネリアの膣口にクラッツのモノはあまりにサイズが大きすぎた。
鮮血がコーネリアの秘所で淫水とまじりあってシーツを薄いピンク色に染めていく。
村の友達に痛いとは聞いていたが、まさかここまで痛いとは!
感じやすいはずのコーネリアが歯を食いしばって耐えなければならないほどの激痛にコーネリアは顔を歪めた。
だが巨大なモノが子宮をコツコツと押し上げる感覚に快楽ではない至福を感じる。
それが母性なのか女の本能によるものかは知らない。
ただクラッツのモノを受け入れているという実感がコーネリアの心を植物が水を吸い上げるように満たしていくのがわかる。
それはコーネリアが生まれて初めて味わう真の女の悦びだった。
「いいよ………来て…………来てクラッツ………!」
ようやく想いの通じ合った恋人の眼差しでコーネリアはクラッツを見つめると優しくクラッツに唇を重ねた。
雄の本能に任せてひたすら腰を打ちつけていたクラッツは、そのときになってようやく姉が身も心も自分のものになったことを知った。
パンパンパンパンパンパンパン!
射精に向けて腰に甘い痺れが集まってくるのをクラッツは自覚した。
コーネリアの腕はクラッツ首にまわされ膣は一刻も早くクラッツの精を絞ろうと絶妙な蠕動を続けていた。
オレのものだ。
もう誰にも譲らない、オレだけの女だ。
コーネリアの子宮に自分の所有物であるという烙印を打ち込もうとクラッツは猛然と腰を振った。
「あぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「射精る!射精るよ姉さん…………!」
ビュルルルルルルルルルルル!
熱い白濁が驚くほど大量にコーネリアの子宮へと注ぎこまれた。
肉壁をうがつように、せまい膣肉を空恐ろしい勢いでビュッビュッと精液が打ち出されていく。
その精液がビチャビチャと子宮壁にぶつかる衝撃にコーネリアはブルブルと身体を震わせて耐えた。
孕んだかもしれない。
孕んでもいい。
この人の子を孕みたい――――――。
愛しい男の精液で子宮を満たされるという経験は、明らかに肉体的な快感以上の何かであった。
無意識のうちにクラッツの頭を胸に掻き抱き、コーネリアは至福の笑みとともに愛しい男の髪を撫で上げていた。
あるいはコーネリアの死んだ母もこんな透明な笑みをうかべていたのかもしれなかった。
いったどれほどの間お互いに呆けたように抱き合っていただろうか。
どちらからということもなく、ごく自然に二人はお互いの唇を寄せ合ってコツリと額を合わせた。
「愛してる、姉さん………」
「私も愛してるわ、クラッツ。もうそれをあきらめようとはしない。それでも姉弟が結婚できないのは変えようのない事実なの」
コーネリアはクラッツの恋人でもあるが姉でもある。
そしてクラッツが人並みの幸せを手に入れることをあきらめたわけではなかった。
「だから私のことは人目を忍んで愛してくれればそれでいい。二人が不幸にならないためにそれは必要なことなの」
「そんな………せっかく想いが通じたのに!」
恋人として結ばれた瞬間に人目を忍ぶことを義務付けられた関係。
近親相姦とはそういうものだとお互いに知っていたはずではなかったか。
それでもクラッツは姉の口から紡がれる現実を認めたくなかった。
「ほかの女性を愛してもいいわ………だからお願い………その女性の十分の一でもいい…………私のことも愛していて」
一人の女としてクラッツへの想いを消すことはもうできない。
それでも姉弟が不幸になることを避けようとするならそれが唯一の妥協点だとコーネリアには思えた。
(………我が分身たろうものがそんな容易くあきらめるものではないわ)
すっかり忘れていたベルンストの言葉にクラッツは飛び上がらんばかりに驚いた。
よくよく考えれば身体の主導権を取り戻したからといってベルンストが滅びるはずもなかった。
(わしとしたことが、お前の狂躁にあてられて我を見失ったわ。もう余計な真似はせぬ。もともとお前の感情を味わうために憑りついたのだからな)
クラッツの激情が久しく感情の揺れから遠ざかっていたベルンストに我を忘れさせた。
もしもあのままコーネリアを抱いていたら、クラッツの激情の余韻がある程度の達成感をベルンストに味あわせたかもしれない。
しかしそれだけだ。
その後はもうベルンストはこの世界でなんらの興奮も激情も覚えることはなかったであろう。
それはベルンストにとっても本意ではない。
(もうオレの邪魔はしない………と思っていいのか?)
(無論だ。そんなことより情けない顔をするでない。姉と結ばれて二人が不幸になると誰が決めた?禁忌なら禁忌にされぬだけの力をつけろ。禁忌を操る側にまわれ。
誰にも文句を言わないだけの権力を握れ。自分を誰だと思っている?もっとも神に等しき最強の魔王ベルンストの分身なのだぞ?他人の顔色を窺って惚れた女が守れるか!)
これがベルンスト本人であれば世界征服すら容易い。
クラッツの力は今はその千分の一にも満たないが、鍛えようによっては世界最強ぐらいは楽に望めるはずであった。
個人の力が最強であることとコーネリアを幸せにすることはまた別の問題であるのだが、ベルンストの言葉は絶望しかけていたクラッツの心に希望の灯をともすには十分だった。
もはや一村人であったクラッツはもういない。
いまや自分は准男爵であり、村の領主ですらある。
王位を、それに準ずる地位に手が届かぬと誰が言えるだろうか。
「オレにしばらく時間をくれ……………きっといつか姉さんを迎えてみせる」
「クラッツ…………」
弟の顔が決意と覚悟を決めた漢の顔になっていることに気づいてコーネリアは蕩けたように瞳を潤ませた。
もしかしたら。
もしかしたら本当にこの弟は自分を女として迎えてくれるかもしれない。
想いが通じただけで十分だと思っていた。
日蔭者でも愛されるならそれ以上のことは決して望むまいと。
それでももしも奇跡が許されるのなら―――――。
乙女のなかに惚れた男の花嫁となることを夢見ぬものなどいないのだ。
――――――――そしてアルマディアノスの英雄伝が始まる。
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