山口県光市母子殺害事件で当時18歳だった大月（旧姓福田）孝行死刑囚（32）が、実名や顔写真を載せた本の著者や出版元に、出版差し止めと損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、広島高裁は30日、著者らに66万円の賠償を命じた一審広島地裁判決を取り消し、賠償請求を棄却した。出版差し止めも一審に続き認めなかった。
宇田川基裁判長は「死刑囚は、取材に積極的に協力し、実名表記や手紙の引用、本の出版に同意していた」と指摘。中学時代の写真の掲載は、明確な同意はなかったが「事件への社会的関心は高く、少年法を考慮しても報道の自由として許される」と判断し、権利侵害はいずれも認められないとした。
本の著者は増田美智子さんで、出版元は寺沢有さんが代表の「インシデンツ」。判決によると、増田さんは大月死刑囚との面会などを基に、2009年10月に「福田君を殺して何になる」を出版。出版当時は広島高裁で死刑判決が出され、最高裁に上告中だった。
昨年５月の一審判決は、差し止めを認めなかったが、写真や増田さん宛ての手紙の掲載などはプライバシー権の侵害として、著者らに賠償を命じ、双方が控訴していた。
判決について寺沢さんは「今後重大な少年事件を報道する上で、指針となる判断」と評価した。〔共同〕
出版差し止め、権利侵害なし、インシ
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