人民日報論文:沖縄奪還論に当惑…「琉球再議を」の執筆者

毎日新聞 2013年05月23日 02時30分(最終更新 05月23日 10時55分)

8日付の中国共産党機関紙「人民日報」で「歴史的な懸案で未解決のままの琉球(沖縄)問題を再び議論できる時が来た」と主張する論文を書いた張海鵬・社会科学院学部委員=2013年5月20日午後、石原聖撮影
8日付の中国共産党機関紙「人民日報」で「歴史的な懸案で未解決のままの琉球(沖縄)問題を再び議論できる時が来た」と主張する論文を書いた張海鵬・社会科学院学部委員=2013年5月20日午後、石原聖撮影

 【北京・石原聖】8日付の中国共産党機関紙「人民日報」で「歴史的な懸案で(帰属が)未解決のままの琉球問題を再び議論できる時が来た」と主張する論文を書いた中国社会科学院の張海鵬・学部委員が毎日新聞のインタビューに応じた。論文発表後に中国メディアやネットでは沖縄奪還論まで飛び出し波紋を広げている。だが、張委員は「琉球再議という最後の文章だけに焦点が当たるとは思わなかった」と語り「沖縄を取り戻すべきだという意見は私の考えとは違う。冷静さが必要だ」と指摘した。

 論文は同科学院の李国強・研究員と連名で執筆した。

 論文をきっかけに中国メディアでは、中国政府に立場の変更を求めたり、中国が琉球国復活を目指す組織を育成したりすべきだとの強硬論も出ている。

 しかし、張委員は「琉球の主権が中国に属したことはない」と指摘。琉球の帰属は未定だとする議論を提示したのは、日本政府が尖閣諸島を「沖縄県の管轄にしているためだ」と述べ、尖閣の領有権が日本にないという中国側の主張を有利にするための傍証だったと明かした。

 「傍証」の沖縄に関心が集まり「奪還論」まで出ている現状について「正確な理解ではない。冷静さが必要だ」と訴えた。

 張委員によると、同紙での連載を発案したのは科学院。歴史、国際関係、法律、現状などさまざまな角度から尖閣について論じるためで、張委員が李研究員に持ちかけ、書き始めたのは3月だった。

 論文は5月に同紙に送付したが、掲載日と連載の順番は同紙が決めた。8日が掲載日となることを張委員は知らなかったといい、張委員は「人民日報に意図がなかったかもしれないが(日清戦争の講和条約である)馬関条約の批准書が交わされた記念日の意味合いがある」と話した。

 同様の論文は3月と5月の中国外務省傘下の外交専門誌も掲載しているが、中国外務省は張委員の論文について「中国政府の立場に変化はない。学術界が関心を寄せている問題だ」と述べるにとどめている。張委員は「歴史学者としての立場」と強調し「政府が支持していないことも知っている」と述べた。

 沖縄の日本帰属に疑義を呈する主張はこれまでもあったが、共産党・政府の意向を伝える同紙が9面の重要ニュースの半分を使い、「釣魚島(尖閣諸島の中国名)問題を整理する」と題した連載の初回に掲載したことから、その真意が議論となっていた。

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