福島第1原発:汚染水抑制、凍土で遮水壁設置へ
毎日新聞 2013年05月30日 21時19分(最終更新 05月30日 23時35分)
東京電力福島第1原発の建屋に地下水が流入し放射性汚染水が増え続けている問題で、政府の汚染水処理対策委員会(委員長=大西有三・京都大名誉教授)は30日、建屋周りの地中の土を凍らせて壁を造り水の流入を防ぐ「凍土遮水壁(地下ダム)」が有効とする対策をまとめ、東電に設置を指示した。建設費は数百億円という。東電などは年末までに実現可能性や費用対効果を確認した上で、2015年度中の完成を目指す。世界的に前例のない事業で、耐久性など課題は山積している。
対策委は地下水の流入抑止策として、建屋周囲に遮水壁を設置することを検討。大手ゼネコンから寄せられた4案による効果を比較した。その結果、凍土式は、1〜4号機の建屋に1日計400立方メートル流入している地下水を最大で50立方メートルにまで削減。他の案に比べ遮水性が高かった。工期も18〜24カ月で短く、凍土案を採用した。費用対効果などが低ければ他のゼネコンが提案した粘土、採石による遮水を試すという。
計画案によると、凍土遮水壁は全長1.4キロで1〜4号機建屋を囲むように設置される。凍結管を1メートル間隔で地表から20〜30メートルの深さまで垂直に打ち込み、管内部に氷点下40度以下の冷却材を循環させて、周りの土を凍らせて壁を造る。地震などでひびが入っても、再び凍らせれば済む。
しかし、地下水がせき止められると、凍土遮水壁と原子炉建屋間の地下水位が建屋内の水位より下がって、建屋の破損部から汚染水が外部に漏れかねない。このため、ポンプで水位を調節する必要があるほか、冷却のための電気代など多額の維持費もかかる。
さらに、凍土遮水壁は大規模なもので10年以上の運用実績の例はなく、廃炉まで30〜40年かかるとされる福島第1原発で恒久的な有効策になるかは不透明だ。政府は予算措置などを検討し、実現に向け支援する考え。東電の広瀬直己社長は「技術的に難しい。凍土式だけではなく、いくつかの重層的な対策をとる必要がある」と述べた。【鳥井真平、中西拓司】