第138回国会 決算委員会 第3号
平成八年十一月二十六日(火曜日)
   午前十一時開会
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   委員の異動
 十一月二十日
    辞任         補欠選任
     福本 潤一君     加藤 修一君
     阿部 幸代君     筆坂 秀世君
     中尾 則幸君     川橋 幸子君
 十一月二十一日
    辞任         補欠選任
     馳   浩君     景山俊太郎君
 十一月二十五日
    辞任         補欠選任
     筆坂 秀世君     吉川 春子君
     水野 誠一君     堂本 暁子君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         野沢 太三君
    理 事
                塩崎 恭久君
                松谷蒼一郎君
                吉川 芳男君
                山ア 順子君
                山下 栄一君
    委 員
                岩井 國臣君
                海老原義彦君
                大木  浩君
                景山俊太郎君
                清水嘉与子君
                中島 眞人君
                長峯  基君
                松村 龍二君
                守住 有信君
                海野 義孝君
                加藤 修一君
                小山 峰男君
                星野 朋市君
                益田 洋介君
                菅野  壽君
                清水 澄子君
                吉川 春子君
                川橋 幸子君
                本岡 昭次君
                椎名 素夫君
                堂本 暁子君
                栗原 君子君
   国務大臣
       国 務 大 臣
      (内閣官房長官)  梶山 静六君
       国 務 大 臣
      (総務庁長官)   武藤 嘉文君
        ―――――
       会計検査院長職
       務代行      疋田 周朗君
       検  査  官
        ―――――
   事務局側
       事 務 総 長  黒澤 隆雄君
       常任委員会専門  貝田 泰雄君
       員
   裁判官弾劾裁判所事務局側
       事 務 局 長  藤田 教稔君
   裁判官訴追委員会事務局側
       事 務 局 長  舟橋 定之君
   国立国会図書館側
       館     長  緒方信一郎君
   説明員
       内閣官房内閣外
       政審議室長
       兼内閣総理大臣  平林  博君
       官房外政審議室
       長
       人事院総裁    弥富啓之助君
       内閣総理大臣官  榊   誠君
       房管理室長
       国立公文書館次  関根 康文君
       長
       公正取引委員会  根來 泰周君
       委員長
       警察庁長官官房  山本 博一君
       総務審議官
       宮内庁次長    森  幸男君
       総務庁長官官房  大坪 正彦君
       審議官
       総務庁人事局長  菊池 光興君
       総務庁行政監察  土屋  勲君
       局長
       外務大臣官房審  槙田 邦彦君
       議官
       厚生大臣官房長  近藤純五郎君
       厚生大臣官房人  丸田 和夫君
       事課長
       厚生省老人保健
       福祉局老人福祉  青柳 親房君
       計画課長
       通商産業大臣官  杉山 秀二君
       房秘書課長
       通商産業省機械
       情報産業局情報  振角 秀行君
       処理システム開
       発課長
       会計検査院事務  平岡 哲也君
       総局次長
       会計検査院事務  深田 烝治君
       総局第一局長
       会計検査院事務
       総局第二局長   諸田 敏朗君
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  本日の会議に付した案件
○平成六年度一般会計歳入歳出決算、平成六年度
 特別会計歳入歳出決算、平成六年度国税収納金
 整理資金受払計算書、平成六年度政府関係機関
 決算書(第百三十六回国会内閣提出)
○平成六年度国有財産増減及び現在額総計算書
 (第百三十六回国会内閣提出)
○平成六年度国有財産無償貸付状況総計算書(第
 百三十六回国会内閣提出)
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○委員長(野沢太三君) ただいまから決算委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る二十日、福本潤一君、阿部幸代君及び中尾則幸君が委員を辞任され、その補欠として加藤修一君、筆坂秀世君及び川橋幸子君が選任されました。
 また、去る二十一日、馳浩君が委員を辞任され、その補欠として景山俊太郎君が選任されました。
 また、昨二十五日、筆坂秀世君及び水野誠一君が委員を辞任され、その補欠として吉川春子君及び堂本暁子君が選任されました。
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○委員長(野沢太三君) 平成六年度決算外二件を議題といたします。
 本日は、皇室費、国会、会計検査院、内閣、総理府本府及び総務庁の決算について審査を行います。
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○委員長(野沢太三君) この際、お諮りいたします。
 議事の都合により、これら決算の概要説明及び決算検査の概要説明の聴取は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(野沢太三君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
 速記をとめてください。
   〔速記中止〕
○委員長(野沢太三君) 速記を起こして。
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○委員長(野沢太三君) それでは、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○清水嘉与子君 総務庁長官、第二次橋本内閣で大変なお仕事をされますこと、おめでとうと申し上げていいのか御苦労さまと申し上げていいのかわかりませんけれども、本当に御苦労さまでございます。
 きょうは総務庁長官に、まず高齢社会対策の問題についてお話を伺いたいと思います。
 我が国は諸外国に例を見ない急速な高齢化が進んでいるわけでございまして、社会全体で真剣な取り組みが求められているところでございます。総務庁におきましては、既に昭和六十一年から高齢社会対策を総合的に推進するということで老人対策室を設け、そして長寿社会対策大綱に基づいて国民に対する啓発活動あるいは調査研究を実施してきたというふうに伺っております。
 本日は平成六年度の決算審査ということでございますので、平成六年の高齢社会対策推進費を拝見させていただいているわけでございますけれども、それで見ますと、平成六年の経費が一億五百万、ここ数年の推移を見てみましてもずっと変化が見られないわけでございます。この近時の高齢化の進展あるいは事柄の重要性から見まして十分とは言えないように思いますけれども、これまでの高齢社会対策推進費によります政策効果、総務庁はどのように自己評価しておられるのか、まずお伺いしたいと思います。
○説明員(大坪正彦君) ただいま御指摘の老人対策室の予算の関係でございます。
 先生御指摘のよヶに、平成六年度で一億五百万、平成八年度では一億三千七百万ということでございまして、確かに見方によって大変少ない額というような状況ではございますけれども、私どもの業務といたしましては、関係省庁の高齢社会対策の取りまとめ、調整、そういうようなものを任務といたしておりますところから、どうしても事務的な経費が中心にならざるを得ないところでございまして、高齢社会対策の各事業を実施しております省庁のような予算的な規模というのはなかなか望めないというふうには思っているところではございますけれども、今後、この高齢社会対策大綱を推進する上で、そういう調整、取りまとめというような観点から、必要なものにつきましては予算の確保について努力してまいりたいどいうふうに考えております。
○清水嘉与子君 昨年、参議院の国民生活調査会の発議によりまして高齢社会対策基本法が制定されたわけでございます。政府におきましては、この基本法に基づきまして本年の七月に高齢社会対策大綱を策定されたわけでございまして、この大綱の中で、高齢者が社会の弱者ということではなくて、社会の重要な構成要員として尊重され、できるだけ社会の中で自立できるような条件を整備するということが書かれている。そしてまた、一方におきまして、家庭、地域社会、企業、学校などすべてにおいて、すべての国民が助け合う仕組みが大切であるというふうに指摘されているところでございます。
 そして、この高齢社会対策の推進に当たりましては、国民の理解と協力を得るため、効果的な教育、広報、啓発、高齢化に伴う経済社会の変化についての情報の収集・分析を行うとともに、これらの情報及び高齢社会対策の利用に関する情報を高齢者を含め地域住民が容易に入手できるよう必要な体制の整備を図ることが必要であるということが指摘されているわけでございます。
 そういう観点から見ますと、総理府が御担当なさいます部分につきまして、従来にも増して啓発とか推進経費あるいは情報の収集・分析費が必要だというふうに思いますけれども、来年度の概算要求につきましてはどのような考え方で構成しておられるのか、お伺いしたいと思います。
○説明員(大坪正彦君) 本年七月に制定いたしました高齢社会対策大綱、これに沿いまして総務庁は今後どのように進めていくかという御指摘というふうに理解しているところでございますが、総務庁は、先ほど申しましたように関係省庁の高齢社会対策の取りまとめ、調整というような立場にございますので、そのような観点からこの大綱の推進というものについてアプローチを考えているところでございます。
 具体的には、先生御指摘のありました啓発、啓蒙の観点の問題、それから基本法の十四条だったと思いますけれども、国民意識の把握というようなことも要請されるわけでございます。また、当然のことといたしまして、大綱の進捗状況の把握というようなものも当然必要、重要な問題点だというふうに理解しているところでございます。
 具体的に申し上げますと、今年度におきましては、そういうような観点で新たに地方での有識者の意見聴取や地域におきます高齢社会対策の動向把握のための研究会を始めることとしておりますし、さらに来年度の予算要求におきましては、新規施策といたしまして都道府県、市町村におきます具体的な高齢社会対策の推進状況の実態調査、社会参加モニターの事業についての予算要求を行っているところでございます。
○清水嘉与子君 国民生活調査会がこの高齢社会対策基本法を制定したいと考えた一つの理由の中に、各省庁が行っております高齢社会政策の調整でありますとか総合的な推進の必要性ということが挙げられているわけでございます。今日どこの省庁の政策を見ましても高齢社会の動向を意識したものになっているわけでございまして、それはそれで大変ありがたいわけでございますけれども、サービスを受ける住民の立場から見ますと、それぞれの各省がやっております施策が非常に縦割りのようなやり方でございまして、もう少しそれぞれの省庁の壁を取り払い、変な規制をしないで連携をしてくれればもっと使いやすくなるといったものはたくさんあるわけでございます。
 橋本総理も、この高齢社会対策会議の場におきまして、基本法の理念にのっとり、大綱を策定し、関係施策を総合的に推進することが極めて重要であるという認識を示されて、政府が一体になって高齢社会対策に取り組むよう関係閣僚に要請したというふうに伺っております。
 大綱に従いまして施策を確実にするためには、具体的な施策推進のための予算ももちろん必要ではございますけれども、高齢社会対策会議、その会議が調整機能をいかに発揮していくのかという点にやはり問題があるのではないかと思います。
 そこで、高齢社会対策会議の庶務をつかさどっております老人対策室の問題なのでございますけれども、先ほど御説明もございましたが、その所掌事務と権限につきましては、「各行政機関の老人に関する施策及び事務の総合調整に関すること。」とされているわけでございます。しかし現実の問題として、各省庁の施策の積み上げとか取りまとめの作業は確かにしていらっしゃるということはよくわかりますけれども、どうもちょっとそれだけに終わっているんじゃないかというようなもどかしさを感ずるわけでございます。
 例えば、老人対策室が各省が行っているそれぞれの施策の効果をもっと評価するとか、あるいはより有効な連携を図るように勧告する、指摘するといったようなことも当然必要ではないかと思われますし、また必要があれば高齢社会対策の総合調整財源などを確保するというようなことも必要になるのかもしれません。しかも高齢者対策ではないんですね、高齢社会対策というふうな意味を先ほども申し上げたわけですけれども、それを所管しているのが老人対策室というのもちょっとやはり今のニードに合っていないんじゃないかというふうに思うわけでございます。
 そこで、機構全体の見直しあるいは設置法上の所掌事務の見直し等を行うべきじゃないかという
ふうに思うわけでございますけれども、その点に関しまして総務庁長官の御見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(武藤嘉文君) 清水先生のお話は大変傾聴に値するわけでございまして、特に参議院で御提案をいただいて高齢社会対策基本法までおつくりをいただき、政府がそれに基づいて大綱をつくったわけでございます。こういう形になってきたのも、今御指摘のように縦割り行政のためにせっかくのいろいろ従来の高齢者に対する対策が、ばらばらとは言いませんけれども、一貫していなかった点も正直あるだろうと思います。そういう面においては、今回こういう形で対策会議もつくられまして、そして総理がその会長になって、そして全閣僚が参加してこれをやるわけですから、まだできて間もないわけでございますので、私ども今御指摘の点をよく承知をいたしております。
 今度の行革も、やっぱり一つの大きな問題は縦割り行政の欠陥を直していこうということでございます。新しい時代のこういう行政の中で、この高齢社会の問題もひとつそういう観点から言葉だけじゃなくて本当に総合的に、そして効率のよい形になっていくようにこの対策会議をぜひ私ども活用させていただいてやってまいりたい、こう思っておりますので、よろしくお願いをいたします。
○清水嘉与子君 ちょっと話題を変えますけれども、今度の第二次橋本内閣の発足に伴いまして、女性問題の担当大臣が内閣官房長官から総務庁長官に移ったということでございます。そのことについては内閣官房長官にちょっとお話を伺いたいわけでございますが、この女性問題担当大臣というのが、日本の中で非常にまだまだ女性に対する施策がおくれていると言われているわけでございまして、本当にこの大臣が置かれたということに対してみんな喜んでいるわけでございます。
 重要なお仕事と思いますけれども、総務庁長官、この担当をされるということについて、まずひとつ御抱負をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(武藤嘉文君) 申すまでもなく、よく言われております男女共同参画社会の形成ということは、これはもう全国民の一つの課題であろうと思います。そういう面において、女性問題を政治の場においてもあるいは行政の場においても大切にしていかなきゃならない、重要な課題ととらえていかなきゃならないことは当然でございまして、官房長官いらっしゃっていただいておりますのでまた官房長官からもお答えがあろうかと思いますけれども、決して政府として私の方に何も移ったわけではございませんので、従来どおりの官房長官のお仕事はそれはそれなりに女性問題についてもおやりをいただくと。
 ただ、官房長官も、今阪神・淡路の後処理の問題もございますし、沖縄の問題もございますし、あるいは阪神・淡路の地震を一つの反省材料として、これからああいうようなことが起きたらどう体制を整えていくかという有事の場合の問題もあると思います。大変お忙しいものでございますから、言ってみると私は渉外担当といいますか、例えば外国からそういう女性問題の関係の閣僚がお越しになったときにお目にかかるとか、あるいは先生方で女性関係の団体いろいろおやりをいただいておりますけれども、そういう団体のお相手をさせていただくとか、私の役割はそういうことにあるのではなかろうかなと。そして、官房長官が一生懸命おやりをいただいておりますが、そのお手伝いを私はさせていただく、仕事の分担をそんなような形で私ども考えております。
 決して官房長官のお仕事を私がお引き受けしたというのではなくて、官房長官のお仕事はそのままおやりをいただいて、その上になおかつ、そういうようなどうしてもお忙しいお体ですから、外国から来てもなかなか応対ができないとか、あるいは女性団体がお越しになっても十分応対ができない、それは私がひとつお引き受けをしてやらせていただきましょうと、こういうふうに御理解いただくと大変ありがたいと思います。
○清水嘉与子君 ありがとうございました。その辺につきましては、また官房長官にお伺いしたいと思います。
 総務庁長官、質問をこれで終わりますので、大変ありがとうございました。
 それでは、官房長官にお伺いしたいと思いますけれども、一つは従軍看護婦の問題なんでございます。
 戦争中に軍の命令で戦地や事変地へ派遣されました元日赤救護看護婦あるいは元陸海軍の看護婦に対しまして、戦後長いこと政府としては何の手当てもしてこなかったわけでございまして、看護婦自身が、自分たちが何とか旧軍人同様の恩給を受けられるよう請願運動を繰り返しました結果、やっと各党代表によります協議によって、昭和五十四年から日赤看護婦が、五十六年からは陸海軍看護婦が慰労給付金をもらえる仕組みができたわけでございます。
 平成六年の十二月に与党戦後五十年問題プロジェクトにおきまして、旧日赤救護看護婦給付金の額の改定に当たりましては、受給者の置かれた状況に配意し、消費者物価の動向をより適切に反映させた措置を講ずるべきであるといったような与党の三党合意がなされまして、一応慰労給付金の額の改定の方向がこれで示された。それまでは改定のルールも何もなかったわけでございます。
 しかし、六年の十二月にそういった合意が得られましたけれども、なぜか七年は改定が見送られ、八年になりましてやっと慰労金の改定が行われたわけでございます。
 その改定は一体どのような考え方に基づいて行われたのか、また平成九年はどのようにして改定されるのか、そのことについてお伺いしたいと思います。
○説明員(榊誠君) 慰労給付金の額の改定の考え方についての御質問でございますが、今先生お話のございましたように、従来、慰労給付金につきましては、その性格が所得の保障を図る年金的な性格のものでもないという経緯もございまして、何年かに一回まとめて改定をさせていただいていたわけでございますが、今お話にございましたように、平成六年末の与党の戦後五十年問題プロジェクトチームの三党合意がございまして、毎年度消費者物価の動向を勘案して見直す、こういうお話になったとおりでございます。
 したがいまして、七年度の改定がなかったという御指摘でございますが、与党のこれができましたのが平成六年の暮れということで、七年度の予算に間に合わなかったということもございまして、八年度から、八年度の場合には過去三年間消費者物価の分が入っておりませんものでしたから、その分につきましての増額を、三・七%のアップをさせていただきました。
 それから九年度、来年度でございますが、消費者物価の動向を見ますと、平成七年のアップ率がマイナス〇・一%という状況になっておるわけでございますが、来年度要求としては、マイナスというわけにもいきませんものですから、同額の要求をさせていただいでいるという状況でございます。
○清水嘉与子君 この制度が発足いたしますときには、慰労給付金の額というのは兵の普通恩給額と並んでいたわけでございますが、現在見ますと、もう三分の一か四分の一にすぎない状況でございます。看護婦の方は今のお話のように数年に一度しか上がらなかったわけでございますけれども、恩給の方は毎年、しかもベースアップに合わせて上がっていくというような、上げ方の、改定の考え方が違ってきたからでございますけれども、大変な差になってしまっている。しかも、今十三万四千八百円から四十万四千四百円という差があるわけでございますけれども、その中で何段階にも分かれているわけでございますけれども、最高の額をもらえる人というのは〇・一%、受給者が千九百三十七名いるわけですが、たった三名しかおられません。ほとんどの方が、七〇%近くの方が最低の額なわけでございます。
 来年は消費税二%アップ、これははっきりしているわけでございます。そういった点で、金額の
据え置きというのはこの与党のプロジェクトの趣旨に反しているんじゃないかなと私なんか思うんですけれども、きょうはこのことをぜひまたお考えいただきたいということだけお願いしておいて、同じ従軍看護婦の問題なんですけれども、次の問題に移りたいと思います。
 最近、従軍しておられた元陸海軍看護婦の方々からいただいております陳情といいますのは、戦地加算十二年に満たない方について何か措置をしてほしいということでございます。高齢になった。今もう平均して七十七歳というふうに伺いましたけれども、こういった高齢になった方々が、自分たちは少額とはいえ慰労給付金をもらえている、だからまたいい。しかし、ほんのわずかなことでその慰労金をもらえなかった方々がたくさんいる。こういう方々が若いころお国のために一生懸命働いだということを証明する書状一枚でもいいからもらえないだろうかという訴えをしておられます。そして、請願をずっと続けてきておられるわけでございます。こういう姿をいつまでも毎年毎年見ているというのはやっぱり大変胸が痛いことでございますし、申しわけないような気がしているわけでございます。
 恩給欠格者の方々あるいは引揚者の方々には、平成元年から加算年を含めて在職三年以上の方に、また平成七年からは在職年数一年以上の方に、また平成八年からは内地勤務だけ三年以上の人にというふうにどんどん対象が広がって、平和祈念事業特別基金の中から書状あるいは銀杯など記念品の贈呈を行っているというふうに伺っております。
 そういう点から考えますと、看護婦にもそういうことをお願いしたいというのは過大な要求じゃないと私は思うんですね。できますれば、この基金の中で看護婦も対象に加えていただきたいというふうに思うわけですが、その件につきましてはこれまで国会の審議の中でも、慰労金というのはその特殊事情と長期間にわたる労苦に報いるための特別の措置としてやったものだから、十年以下の者に対しては非常に難しいという御答弁だけをいただいているわけでございます。
 大変冷たい御答弁をちょうだいしているわけですけれども、しかし、毎年毎年先輩の方々が請願に来る、その請願はどうなっているかというと、ずっと採択されているわけですよ。採択されていますということをその団体の方々は衆議院からも参議院からも御連絡いただいている。当然国会で採択になったものだから何とかなるんじゃないだろうかという淡い期待を持っているわけですけれども、これ何年続けても同じでございます。
 政府の方の御見解も今言ったようなことで、大変難しいことだというだけの同じことの繰り返してございまして、これ何年続けていてもちょっとおかしいんじゃないか。国会がこれだけの意思を出しているわけでございますから、内閣におきましても国会の意思を誠実に処理する責任があるんじゃないだろうかというふうにさえ思っているわけでございます。
 慰労給付金が政府の特別の措置であるということを考えますと、看護婦につきましては特別な予算措置でやってもいいんじゃないかというふうにも思うわけです。それほど数がいるわけじゃありません。本当に数がはっきりわからないんですけれども、昭和五十五年に厚生省が調査したときに、日赤の看護婦さんが九千人くらい、陸海軍の看護婦さん四千六百人くらいというようなことで一万三千。それから二十年もたっていますから恐らくどんどん減ってきていると思います。
 そんなことで、これに関しましてはぜひぜひもう結論を出していただきたいというふうに思うわけでございますが、内閣官房長官の御見解をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(梶山静六君) 深く勉強しておりませんが、御趣旨のほどはよく理解ができます。十分に検討させていただきたいと思います。
○清水嘉与子君 ぜひよろしくお願いをしたいと思います。ぜひ御研究を進めていただきたいというふうに思うわけでございます。
 次に、女性の政策の問題についてお伺いをしたいと思います。
 先ほど総務庁長官の方からも、今度の女性担当大臣が総務庁長官にかわっても内閣官房長官のお仕事は変わらないんだという御説明でございました。ということは、ちょっと理解しかねるわけでございますけれども、その辺の仕分けをどういうふうにざれるのでしょうか。例えば男女共同参画室だとかあるいは参画審議会といったようなものは本法にそのまま残るのでしょうか。あるいは女性政策の推進にどのような影響があるのか。その辺ちょっとお教えいただきたいと思います。
○国務大臣(梶山静六君) このたびの第二次橋本内閣で官房長官に再任されましたけれども、前回までは女性問題担当という肩書というか役割をちょうだいいたしました。今回は、沖縄担当と、それから阪神・淡路復興担当という二つの特任事項をちょうだいいたしました。
 総理の意図がどこにあるかは載然とはわかりませんが、察するところ、今までの女性問題で総理府本府においてやっている仕事それ自体は全く所管に変わりはない。そして、総称的な女性問題を担当する方がほかにあることの方がなお望ましいのではないかという一つの側面があろうかと思います。特に、これからの行革を担当する総務庁長官がこの問題を担当するということは、引き続きそういう視点をもうちょっと拡大ができるという利点があろうかと思います。
 それから、これは別な視点でありますが、量質ともに全く違う問題でございますが、沖縄の問題というのは、私にとっても内閣にとっても緊急の極めて重要な、時間的な限定をされる問題であります。この問題に専念しろという一つの側面もあろうかと思います。
 いずれも大切な仕事でございますが、量質ともに違う側面を持っている。そこを総理が判断をされて今回の任命になった。このように理解をし、今まで同様に私もこの女性問題には、特に男女共同参画社会の形成について努力を払ってまいりたい、このように考えております。
○清水嘉与子君 平成六年から、総理府に男女共同参画室あるいは男女共同参画審議会が置かれ、そして総理が本部長、官房長官が副本部長、全閣僚参加の男女共同参画推進本部を設置するというふうなことで、何度も出てくるわけですが、男女共同参画社会づくりを推進する体制というのができてきたわけでございます。
 そして、この七月にその審議会が初めて審議会として答申をまとめられました。「男女共同参画ビジョン」と銘打っておられますけれども、そういった答申をまとめられました。このビジョンを拝見しますと、今後なすべき女性政策がもう随分たくさん盛り込まれているというふうに拝見しているわけでございます。
 今後、その具体化を図るためにどのようにこれをフォローし、そして実際に男女が本当に共同して参画できるような社会の実現に向けて進んでいくのか、取り組んでいくのか、その辺についてお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(梶山静六君) 委員御指摘のように、男女共同参画社会の形成は各種の法律、制度はもとより、慣習、慣行、国民一人一人の意識行動に至るまで広くかかわっております。国民生活全般に関連する議題でもあります。その実現のためには国民の各界各層の意見を幅広くちょうだいすることが必要であり、これらの意見を政府の施策に反映させるための審議会の設置、これがまず重要であるというふうに考えております。
 本年七月の男女共同参画審議会の答申においても、国内本部機構の充実強化の一環として、同審議会の存置期限の到来後、法律に基づく新たな諮問機関を設置すべきという意見をちょうだいいたしております。同様の意見は各政党や女性団体を初め、各関係方面からも多数ちょうだいをいたしております。さらに、昨年の第四回世界女性会議で採択をされた行動綱領においても、国内の本部機構の強化は各国がとるべき問題であるというふうに指摘をされている重要な問題であります。
 こういう状況を踏まえて、平成九年度予算においては、法律に基づく恒久的な審議会を新たに設置することを要求しているところであり、引き続き男女共同参画社会の実現に向けて、その体制推進の一層の充実を図ってまいりたい、このように考えて目下努力をいたしているところであります。
○清水嘉与子君 私も、今の審議会の役割を、来年三月で終わってしまうこの審議会をどうするのかということを大変心配しておりましたけれども、今官房長官の方から非常に前向きの御決意を伺いまして、大変心強く思っているところでございます。
 さて、先般の総選挙におきまして多くの党が女性政策の充実ということを公約に掲げて選挙戦を戦いました。自民党におきましても、この男女共同参画社会の取り組み体制を強化し、そして基本法の制定を目指すということを掲げて戦ったわけでございますけれども、選挙後、民社党あるいはさきがけとの政策協議の中でも女性政策に関する基本法の制定ということが合意されているというふうに伺っております。
 この問題については、今官房長官も御指摘のように、ビジョンの中にも指摘されておりまして、ぜひこれを進めなければというふうに思いますが、これについてのお取り組み、この法案を一体いつごろお出しになりますのやら、その辺につきましてもし御検討が進んでいるようでございますれば、御説明をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(梶山静六君) 私も意気込みは持っておりますし、また委員の御熱意もわかりますけれども、今の段階では、目下検討を進めているという答えに終わらせていただきたいと思います。
 お許しをいただきます。
○清水嘉与子君 先ほど来お話を伺っておりまして、内閣官房長官が今までやっておられましたお仕事、女性に対する政策については今までどおり進められる、そしてさらに総務庁長官が新たに役割の一部を担っていらっしゃる。まあ考えてみれば、女性担当の大臣が二人おできになったのかなという気もしているわけでございまして、心強いといえば心強い感じがしているわけでございます。たくさんの問題を抱えておりますので、ぜひまたよろしくお願いをしたいと思います。
 質問を終わります。ありがとうございました。
○塩崎恭久君 自民党の塩崎恭久でございます。
 きょうは、公正取引委員会の根來委員長、それから国立国会図書館並びに参議院の事務局を中心に御質問させていただきたいと思います。
 公取委員長におかれましては、私の質問が終わりましたらもう御退席して結構でございますので、冒頭、御質問させていただきたいと思います。
 八月に御就任をされました根來新委員長、私もちょっと歴代の委員長をひっくり返してみました。十五人これまでおられるわけでございますが、法務省、戦前は司法省でありましたが、この法務省出身としてはお二人目でございます。今回、新しい競争政策のもとで公取も強化しようということで人員もふやすわけでございますが、今回、久方ぶりに大蔵省出身ではない方が委員長におなりになったということでございます。調べてみますと、これまで十五人のうち十人までが大蔵省出身の方が委員長を務められてきたということでございまして、これまでと違ったまた新しい委員長としての施策を我々としても大変期待しているところでございます。
 そこで、抱負をと思いましたが、八月から大分時間がたっておりますのでもう改めてそれは聞きませんけれども、十一月十六日の日経新聞を見てみますと、十五日に日本記者クラブで御講演をされたようでございます。その中身が出ているわけでございますが、それを見ますと、持ち株会社の問題でございます。この講演では、持ち株会社の問題について、この報道を見る限りではかなり前向きな姿勢をお示しになったというふうに書いてあるわけでございます。まず解禁をして都合が悪ければ法改正をしたらいいというような形で書いてあるわけでございますが、まさかそういうような言い方をされたとも思えませんけれども、いずれにしても与党に決断を求める。
 これはもう御案内のように、三党間でずっとプロジェクトチームで検討してきて、これがことしの六月十四日に中間取りまとめをいたしました。結局、社民党が慎重な姿勢を通したということで、成案を得るには至らなかったわけでございますけれども、これを引き続いて検討する「独占禁止政策に反しない範囲で持株会社を解禁すべく見直しを行い、所要の措置を講じる。」というのがことしの三月二十九日に閣議決定をされているわけでございます。
 そこで、ちょうどことし、この十一月に橋本総理が、いわゆる日本版ビッグバン、金融の大幅な規制緩和をやろう、それをてこにひとつ日本の経済の活性化をしようじゃないか、こういうことを大蔵省に指示されて、法務省にも指示されているようでございますが、当然その中には今までの垣根を越える参入が相互に行われることが出てくるわけでございまして、その際に当然金融の持ち株会社についても射程に入れて総理もこの問題を提起されているんだろうと思うわけでございます。
 ということになりますと、ちょうど社民党も金融の持ち株会社については検討の必要性というのを認めているわけでございまして、こういうこともひっくるめてひとつ根來新委員長に、この持ち株会社の扱いについてどのようにお考えになっているのかをぜひ御自分のお言葉でこの場で、初めての国会答弁ということでございますから、お聞きしたいと思います。
○説明員(根來泰周君) 御承知のように、閣議でもあるいは行政改革委員会でも持ち株会社の解禁ということを主張されているわけでございます。
 そこで、私どもの委員会の方の独占禁止法第四章改正問題研究会というところでいろいろ御検討いただきまして、その中間報告をいただいております。その趣旨は、「事業者の活動をより活発にするとの観点から、その規制目的を踏まえて検討した結果、持株会社禁止制度の基本を維持しつつ、一定の範囲の持株会社を認めることが妥当である」、こういうふうな結論を出されているわけでございます。
 この結論に基づきまして、前内閣当時に公正取引委員会から御検討をお願いした結果、いろいろのいきさつがございまして持ち越しになっているわけでございます。
 それで、私どもの立場としては、なお引き続き政府の方あるいは立法府の方で御検討いただきまして、これという方向をお示しになれば、その方向に向かって私どもが法改正の手続を進めていくということでございます。
 私が申し上げたところは、持ち株会社というのは事業支配の過度の集中を防止するという趣旨にあるわけでございますので、これは予防規制というふうに言われておりますけれども、予防規制が過度にわたるといいますか少しオーバーであるというところならば、そのオーバーなところを削っていくということでございます。もし持ち株会社を一部解禁した場合に、いろいろの弊害といいますか、そういうのがあると思います。当然、脱法的な問題もあると思います。それをいろいろ、何といいますか取り越し苦労をしまして、あれもふたする、これもふたするということをしますと、かえって弊害があるんじゃないか。むしろ持ち株会社を一定範囲で解禁していただく、一定範囲というのは事業支配の過度の集中がしないような形で解禁していただく。しかし、その結果何か不都合なことがあれば、また立法府にお願いしてその不都合なところをふたしていただくという方が進みやすいんじゃないかという考え方で申し上げたわけでございます。
 そういうことで、ぜひ立法府といいますか、政府全体で成案を得て国会に提出できれば非常にありがたいことだ、こういうふうに思っている次第であります。
○塩崎恭久君 わかりました。
 検討を前倒しせいと委員長の方からおっしゃるわけにもいかないでしょうから、与党の方として
結論を早目に出さなければいけない、そしてそれにのっとってまた公取の方でも御検討いただきたい。今回、特に日本版ビッグバンの問題で金融の持ち株会社のことは早くやらなきゃいけないんじゃないかという認識が強まっているんではないかなと私も思っておりまして、ただ、過度の事業支配が行われる、あるいは日本の風土みたいなものを踏まえた上でやっていく必要があるのかなというふうに考えております。次に、例の新聞、著作物、CD等の再販問題でございますが、これについても講演でコメントされているようでございますけれども、これは積極論、消極論両方ございます。聞くところによりますと、これについて公取委としては平成十年の三月までに結論を出すというふうに承っているわけでございますけれども、新委員長になられて、今後の取り運びの手順につきまして改めて確認をさせていただきたいと思います。
○説明員(根來泰周君) 今お話がありましたように、その期間までに何とか結論を出したい、こういうふうに考えております。
 これも研究会で一応の中間報告をいただきましたので、研究会の意見を尊重いたしまして、親委員会といいますか、そこでさらに御検討いただき、また、これは法律の改正問題でございますから立法府の御意見もありましょうから、そういう点をいろいろ考えまして、法案が必要ならば提出したい、こういうふうに思っております。
○塩崎恭久君 新聞報道では、「一年かけて検討し適切な結論を出したい」と、こういうふうに報道されているわけですが、平成十年三月というのは一年以上あるわけですけれども、特に前倒しせいという意味ではないんですか。
○説明員(根來泰周君) この問題はいろいろ複雑な問題がございますから、親委員会で一年かけて御検討いただきましても直ちにそれが成案に至るというふうには思っておりません。いろいろ各方面の御意見を聞くということ、これは前の研究会でもそういう提案をされているわけですから、国民的合意を得るということが前提でございますから、やはり一年以上の期間が必要だ、こういうふうに考えております。
○塩崎恭久君 委員長、きょうはもう結構でございます。ありがとうございました。
 次に、国会図書館の問題について御質問させていただきたいと思います。
 私は、国会図書館を今回初めて扱ってみようと思って改めて勉強させていただきました。国立国会図書館法というのが昭和二十三年にできておりまして、前文というのがございます。「国立国会図書館は、真理がわれらを自由にするという確信に立って、憲法の誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命として、ここに設立される。」と、大変高邁な理想のもとにでき上がっているわけでございます。
 今回、質問するに当たりまして改めて国会図書館というのを見てまいりました。我々も、勉強のできる部屋を借りて勉強させていただいたり、資料請求して新聞等々データをいただいたり、それから資料の取りまとめといいましょうか、こういう問題について教えてほしいということをお尋ねしたりずっとしているわけでございます。特に資料の取りまとめにつきましては、私たちはお役所に聞くことが多いわけでございますが、意外に、意外と言っちゃ失礼かもわかりませんが、省庁あたりよりもよく調べていらっしゃるなということを感じることが間々ございます。むしろ役所に聞くより図書館に聞いた方が速いというときも海外の情報などであったりいたしまして、大変勉強になるわけでございます。しかし、じゃそれが十分に国会議員や国民に利用されているかどうか、そしてまた十分な体制ができているかどうか。
 今回、例えば通産省の外郭団体と共同開発しておりますパイロット電子図書館プロジェクトなども見せていただきました。改めて拝見をして、知らなかったこと、あるいは何か欠けているなというものを感じたところ、いろいろあるわけでございます用意外に我々知らないわけでございまして、例えばアメリカは一八〇〇年にもう図書館というのができているわけですね。日本は一九四八年。アメリカは職員が四千五百人以上いて、日本は大体八百五十人、全然サイズが違う。それから蔵書も、アメリカは一千六百万冊、日本は六百万冊、三分の一ぐらいというようなことでまだまだ不足しているんじゃないかなというふうに思うわけでございます。
 特に、先ほど申し上げたように、いろんな資料を取りまとめていただきますと、大変能力をお持ちの方々がたくさんおられるわけでありまして、我々これから議員立法を進めようということでございますから補佐機能もぜひしてもらいたいと思っているわけでございますが、改めて図書館長、この国立国会図書館の果たすべき役割、実現する上での問題点などについて簡単に御答弁いただきたいと思います。
○国立国会図書館長(緒方信一郎君) 国立国会図書館は、ただいま先生の御指摘にございましたように、昭和二十三年の国立国会図書館法によりまして設置をされた機関でございます。その使命といたしますところは、あらゆる国内出版物を網羅的に収集いたしまして、これを整理し、文化財として保存、蓄積し、これを利用に供するということでありまして、国立国会図書館法の言葉を引用させていただきますと、「国会議員の職務の遂行に資するとともに、行政及び司法の各部門に対し、更に日本国民に対しこ「図書館奉仕を提供する」、これが使命とされておるところでございます。
 そういうわけで、二十三年に創立をされましたので再来年で五十周年を迎えるわけでございまして、この間、国会の図書館として、また我が国唯一の国立図書館としてサービスの充実に努めてきたところでございます。
○塩崎恭久君 ここにでかい図書館があるわけでありますけれども、聞くところによると、僕もこれは知らなかったんですけれども、関西館というのを京都につくられる。随分立派なのをつくるわけでございますが、これは改めてどういう理念で、どういう目的で関西館をつくろうとして、どういう機能を担わせようとしているのか。これについてお答えいただきたいと思います。
○国立国会図書館長(緒方信一郎君) 失礼しました。先ほどの御質問でちょっと答弁の足りない点を補足して、新しい質問に答えさせていただきます。
 そういうわけで実現してきたわけでございますが、現在の図書館を取り巻く環境というものが大きく変わっておりまして、特にコンピューターあるいはネットワークというものが大変発達をしてまいりまして、図書館を取り巻く環境が変わってきているわけでございます。それに伴いまして利用者のニーズというものも従来と変わってきておるというようなことで、こういう高度情報社会にこれから対応していかなきゃいけない、こういう問題があるわけでございます。
 そういう中で制度上あるいは予算上、技術上いろいろな問題があるわけでございますけれども、当館の抱えておる問題としましては、一つは制度上の問題で、どの範囲の本を集めるべきか、特に電子出版というようなものについて、従来余り想定されていなかったわけでございますが、そういうものについてどの程度集めていったらいいか、あるいは著作権というものをどういうふうに処理していったらいいか、こういう問題がございます。
 それから予算上の問題としましては、情報基盤の整備あるいは資料の電子化、それからシステムの開発等、ただいま先生の御指摘ありました関西館に向けまして十分な予算配分が必要になってくるという問題がございます。
 それから三つ目には、電子化情報の収集、整理、保管、保存、提供などについての技術的な問題がある。こういうものを一つずつ解決していく必要があるわけでございます。
 それで関西館でございますが、そういう図書館を取り巻く状況の変化に応じまして、二十一世紀
の図書館サービスを提供するために新しい図書館をつくる必要があるということが一つと、もう一つは、現在の図書館というものがスペース的に限界が近づいているということで、収納スペースが平成十四、五年ごろには限界に達することが予想される、新しいスペースが必要である、こういう二つのことから新たな図書館を建設しようということでございます。
 現在計画をしておりますのは、関西文化学術研究都市の中核部に新しい図書館をつくりまして、二〇〇〇年代初頭のオープンを目指して新しい図書館をつくる。これは現在の東京の本館と一体となって機能を果たすということを考えております。
 この関西館の機能というのは簡単に言いますと五つございますが、一つは図書館の資料を保存する機能でございまして、東京と関西館とで役割を分担しまして、国民の共有財産として資料を長く保存する。それから第二番目には文献の情報提供機能でございまして、新しい情報社会に対応しまして、迅速に情報がどこからでもだれでも入手できるようなそういうサービスを展開していきたい。第三番目にはアジアの情報の国際流通に寄与するということで、情報発信拠点として文献情報流通を促進する中で、とりわけアジア情報というものの流通に国際的にも寄与していきたいと考えておるわけでございます。それから第四に、内外の図書館との協力という図書館協力。それから五番目に、そのような図書館・情報関係分野の研究開発、研修。
 こういうもののすべての拠点としてそれを位置づけていきたい。それが東京とあわせまして一体となって国立国会図書館の全体としての機能というものを充実するということを目指しておるものでございます。
○塩崎恭久君 きょうは通産省からも来ていただいているのでお聞きしたいと思いますけれども、今、関西館の目的の一つに、二十一世紀の新しい図書館のあり方というか、コンピューター時代にふさわしい図書館サービスということですけれども、昨年の二月にブラッセルで情報通信サミットというのがあって、そこで十一の国際共同プロジェクトをすることになって、そのうちの四つを日本が幹事国でやるということになったようでございます。その中に電子図書館プロジェクトというのがあるようでございまして、この間見せていただいたのがパイロットの分だと思いますけれども、これを使うサイドにわかりやすく、ごくごく簡単で結構ですから、具体的な実現イメージといいましょうか、いっそういうことができるようになるのか、その辺をちょっと説明してください。
○説明員(振角秀行君) 通産省の担当課長をしております振角です。それでは私の方から答えさせていただきます。
 先生も今御指摘がありましたように、昨年の二月にブリュッセルで情報通信サミットというのが開かれまして、そこで電子図書館を含めますいろいろな共同プロジェクトをやっていこうということで、日本もその中の一員として積極的に協力していくということで、現在パイロット的に電子図書館システムという開発をやっておるところでございます。
 基本的には、電子図書館というのは、今後の高度情報社会におきますとあらゆる情報が電子化されまして、地球規模の知的財産をだれでも容易に利用できることが期待されている状況下におきまして、地球上に広く分散して個々に収集、蓄積されているような知的資源をネットワークを通じてアクセス可能とする環境を提供するものでございまして、二十一世紀の高度情報社会における情報基盤として重要な位置を占めるものと考えておるところでございます。
 そういう観点から、通産省としましては主に技術開発の観点からパイロット電子図書館プロジェクトというのを進めさせていただいておりますけれども、これにおきましては基本的にはまず全国のネットワークを結びまして、一つは検索を非常に簡単にできるようにしようということで今やっておりますのは、国立国会図書館を含む二十七館の公立の図書館から提供されました目録データに基づきまして共通のフォーマットをつくりまして、ある雑誌がどこの図書館にどういうふうに配備されているかというのをすぐに検索できるような総合目録システムをつくろうとしております。
 もう一つは、国立国会図書館には非常に貴重書とか古い書物があるんですけれども、それを一々見るというのはなかなかアクセスが難しい部分もありますので、そういうものをすべて画像データあるいはテキストデータとして電子化しまして保存して、コンピューターの画面にすぐ呼び出せるようにするということで、アクセスが非常に簡単にそういう貴重書につきましてもできるようにするということで、既に一千万ページに及びます資料をそういうふうに電子化しておりまして、それをコンピューターの画面にすぐ呼び出せるようなシステムというのを開発しております。
 こういうような事業を通じまして、先ほどお話がありました国立国会図書館関西館の実現に向けて、まだ技術開発の途中でございますけれども、そういう成果が関西館に生かされるように期待しておるところでございます。
○塩崎恭久君 大体わかりました。いつでもどこからでもそういう電子化された図書館サービスにアクセスができるようにするというその拠点が関西館だ、こういうことだろうと思いますので、ぜひ早く推進してもらいたいと思うんです。
 次に、国民に開かれた国会という観点からちょっと。今のお話を聞くと、うんなるほどと、何でも電子化されて、いろんなデータが国会図書館とかを通じて国民にオープンになるんだな、こういうふうに思うわけでございます。
 ところが、果たして国会がどれだけ国民に対して開かれているのかということを改めて考えてみると、大変寂しいものがあるわけでございます。ここにちょっと出してまいりました。これはインターネットでアメリカの議会の情報にアクセスした。言ってみれば表紙みたいなものでありまして、トーマスというプログラムであります。「ウエルカム・ツー・トーマス・レジスレイティブ・インフォメーション・オン・ザ・インターネット」、こう書いてありまして、この中に、今週の国会は何が行われるか、どういう法律が通るのか、それから本会議の議事録、委員会の議事録、こういうものが全部インターネットで世界どこからでもアクセスができるということになっているわけであります。
 今のお話、二〇〇〇年の向こうの話でありますけれども、アメリカではすぐできてくる。今、皆さんこうやって質問していると、この議事録がいつできるかというと、日本では委員会で十日、本会議で二週間かかるというのが日本の議事録のあり方であります。ところが、アメリカの場合はこういうことでインターネットにもう翌日載っちゃう。つまり速記の段階から全部コンピューターに打ち込んでいきますから、世界どこからでも全部アクセスが翌日できる。
 おまけに、日本の場合、どこにその議事録があるのか、例えば稚内に住んでいる人がこの委員会の議事録を見たいといったときにどこに行ったらいいのか、恐らくみんな知らないと思いますけれども、本会議の場合だと政府刊行物サービス・センター、官報販売所、それから全国の主要図書館などで見られる。委員会、調査会の場合は国会図書館が、参議院サービスロビーというのがあるんだそうですね、それプラス都道府県議会の図書室あるいは政令指定都市の議会の図書室なんだそうであります。
 ところが、例えば都道府県議会の図書室が一般の人にオープンになっていないところもたくさんあるわけですね。そうすると、委員会レベルの議事録に事実上アクセスができないというのが日本の国会のオープンさの証左になるわけでありまして、そういう意味で極めて我が国の議会というのは国民に対してオープンになっていないというふうに私は感じているわけであります。
 それで、図書館も実はいろいろ努力はされてお
りまして、NORENとかいって項目だけアクセスできるサービスというのは一応やっているわけであります。それから、これを御存じの方おられるかどうかわかりませんが、国会会議録光ファイルシステムと書いてありますから、何となく光ファイバーで強烈に速く何か情報が来るんじゃないかとお思いかもわかりませんが、よくよく聞いてみれば、加入している方であれば御自分の会館の部屋にファクスで送ってもらえるサービスなんだそうであります。それも自分の興味のあるページを丸々やるということは、映像でしか入っていない、デジタルで入っていないものですから、映像で一ページをファクスで送ってもらうということなんです。
 じゃ、それを何人の国会議員が使っているかというと、衆参合わせて十九人。一億円以上の予算をかけてやっている光ファイルシステムでありますけれども、衆議院十一人、参議院八人、合計だった十九人の人しかサービスを受けていないというか入っていないということに実はなっているわけであります。
 ただ、図書館も、それから衆議院、参議院も何もしていないかというとそうじゃなくて、国会会議録フルテキスト・データベースシステムというのを実は平成四年から三組織が共同して作業をしておりまして、それが今もう実際にこの八年度から取りかかられているわけであります。
 そこで、これは第一期、第二期、第三期とあるわけでありますが、今申し上げたように、アメリカではもう既にこうやってインターネットで翌日アクセスができるぐらいの状態になっているわけでありますけれども、日本はさっき言ったような状態で、このフルテキスト・データベースシステムの構築をやることによって、いつ、少なくとも国会議員が見られるようになるのか、それから一般の国民がインターネット等々で見られるようになるのはいつなのかというあたりについてちょっとお知らせをいただけたらと思うのでございます。余り時間がないので簡単に。
○国立国会図書館長(緒方信一郎君) ただいまの先生のお話にございました国会会議録フルテキスト・データベースシステムと申しますのは、国会の会議録を電子情報として蓄積いたしまして、議員の皆様方に、さらには広く国民が容易に迅速に会議録を利用できるようにするということを目的といたしまして、衆参両議院の事務局と国立国会図書館が共同で現在開発をしておるシステムでございます。
 このシステムによりまして、手元のパーソナルコンピューターから会議録を調べて必要な箇所を見ることができるようになります。また、システムの一環として会議録の作成を支援するシステムというものも構築しておりますので、現在より早く会議録が利用できるようになるわけでございます。
 ただいまお尋ねがございました。いつということでございますが、システムの構築は平成八年度から平成十一年度までの四カ年計画で行う予定でございます。平成八年から九年度にかけましては基本的な仕組みを構築いたします。平成九年度中にはシステムの一部を実際にごらんに入れることができるかと存じております。平成十、十一年度におきましては、システムの内容的な向上を図り、条件が整い次第、できるだけ早い機会に議員の皆様方へ提供できるようにいたしたいと、かように存じております。
 また、この四カ年計画の中で、インターネット等を通じた国民一般への会議録情報の提供ということを視野に入れて進めておるということでございます。
○塩崎恭久君 もう一回聞きますけれども、各部屋で議員がアクセスできるようになるのはいつからですか。
○国立国会図書館長(緒方信一郎君) 平成十年ごろからごらんいただけることになるであろうというふうに現在のところ考えております。
○塩崎恭久君 インターネットはいつからできるんですか。
○国立国会図書館長(緒方信一郎君) これは、本格的に始動しますのはちょっと先になるかもしれませんが、平成十一年ぐらいから試験的に恐らく利用できるような体制に入れればということを目途に今進めておるわけでございます。
○塩崎恭久君 平成十一年から試行的に実施ということでありますから、十一年といいますと、九年、十年、十一年、あと三年先にやっと試行的にできる。それが本格的にというと多分十二年ぐらいになるでしょうね。もともと第二期だったから十二年だろうと思うんですね。そうすると、四年先にならないとインターネットで我が国の国会の我々の議論がオープンにならないということだろうと思うんです。
 そうなると、我々としては、今は政治不信、投票率がどんどん下がっていく、そして大体国会議員はそう大した議論をしていないんじゃないかと一般的に思われがちでありますが、私も来てみて、決してそんなことはない、本当にみんな勉強してまじめにやっているわけでありまして、それもみんなに見てもらいたい。
 それともう一つは、見てもらうということは、我々も競争にさらされるというか、世の中にしっかりと批判を受けるようになるわけでありますから、言ってみれば我々の切礎琢磨がますます必要になって、レベルアップを図らざるを得ないということになって、私は大変いいことだと思うので、これはもっと前倒しにやらなきゃいけない。平成十二年ぐらいまで待っているだのというようなこと言って、アメリカはもう既にこれはできているわけでありますから、そんなことやっていられないじゃないかと。それをもっと前倒しするためにはどうしたらいいのか。
 その辺をちょっと、参議院の事務総長もおいででございますから、今度は事務総長の方にひとつお答えをいただいて、どうやったら前倒しできるのか。
○事務総長(黒澤隆雄君) お答え申し上げます。
 会議録データベースシステムの構築につきましては、ただいま緒方館長から答弁のありましたように、衆議院事務局、国立国会図書館と一体となって開発に当たってまいりました。また、本院では、昨年六月に改革協議会から早期に利用が可能となるよう推進すべきである旨の答申も議長あてに提出されているところでございまして、衆議院、国立国会図書館と連携を一層密にして、効果的な事業展開をしながら、インフラといいますか、基盤整備も図りつつ、一日も早く利用可能となるようなデータベースの構築をしてまいりたいと思います。
 前倒しにつきましての御質問でございますが、これはソフトの開発等大変難しいこともあります。それから、我が国の会議録は第一回国会から大変膨大なものがありますので、それから未来永劫続くわけでございますので、初期の動きによって大変後に問題を残すようなことになってはいけませんものですから、十分その辺は検討しながらやりたいと思いますけれども、図書館、衆議院、平成九年度におきましても、各機関一億以上の予算要求をしてまいっておりますので、そういった予算要求もしっかりやりながら、先生の御意向はしごくもっともでございますので、三機関力を合わせて前倒しに向かって頑張っていきたい、そんなふうに思っております。
○塩崎恭久君 ぜひ頑張っていただきたいと思うわけでございます。
 十一年度までの累計で見ても、予算二十二億ぐらいの規模でありまして、それから今どのくらいの人がこれに携わっているのか、ちょっとお聞きしたところが、フルでかかわっている人はほとんどいないんだろうと思うんですね。みんな仕事をやっている片手間でこれにかかわっていて、聞きましたら、五十人で国会会議録フルテキスト・データベース推進協議会というのをつくっている、こういうことですから、それはやっぱり片手間で、五十人程度で二十二億ぐらいの予算でやったら、このぐらい時間がかかるのは当たり前であって、これは我々も、議員としても、これを進め
るためにはもっともっとこの予算獲得のために頑張らなきゃいけないと思います。
 人を雇ったり、いろんなことをやらなきゃいけないわけでありますから、そういうときにはまたお金がもっとかかるということでありますが、しかし何よりもこれは大事なことだと思いますので、これは議員として、これはもう与野党もないということで、一緒にこの予算獲得をもっともっと前倒しに、多額にやっていかなきゃいけないんじゃないかなと思います。
 時間がなくなってきちゃったのであれですけれども、もう一つ、国民に開かれた国会という意味で大事なのは、我々のこうやって議論していることがテレビを通じて国民に臨場感を持って見ていただくということが大事なんだろうと思うんですね。これはもう議運マターでずっと御検討をいただいてきた問題でありまして、自民党にもそれから平成会にもそれぞれ検討委員会ができているわけでございます。
 しかし、私は、おととし中国にちょっと行ったときに北京で釣魚台に泊まっておりましたが、そのテレビをぱっとつけたら、何とC−SPANがちゃんと映るんですね。それで、当時、まだドールさんは議員でありましたが、ドールさんが医療改革のヒラリー案を徹底的に批判しているのを中国で見るということができる。それに引きかえ、日本でどこか地方に行って、この国会で我々が、例えば私が合しゃべっているのを見られるか。そんなことはとてもじゃないけれどもまだできる状況ではないわけであって、これをもっともっとオープンにしていくことが大事なんだろうと思うんです。
 確かに議運マターでありますし、事務総長がどうこうとはなかなかおっしゃれないことだと思いますけれども、私は、今の議事録を公開すること、それから我々の審議しているところを見ていただくこと、これは大変重要だと思うんですけれども、事務総長、いかがでございますか。
○事務総長(黒澤隆雄君) お答え申し上げます。
 院内の審議のテレビ中継は、平成二年四月の参議院改革協議会小委員会及びその後の議運理事会の御協議、御決定に基づきまして、文字どおり開かれた国会をより確かなものとする一手段として平成二年からスタートしておるものでございます。
 今、塩崎先生の御質問にもありましたように、議運の理事会の中には両院で国会審議テレビ中継に関する両院運絡協議会というものができております。そこで具体的な方針等が示されるわけでございまして、平成五年五月以降、そういった機関ができております。昨年六月には、衆議院の議院運営委員会に設けられております小委員会が国会テレビ中継会社試案というようなものをまとめて当院に示されております。現在、各会派内で御検討が進められているかと思います。
 事務局といたしましては、各委員会室のカメラの設置等、基盤整備に努めるとともに、技術的ノウハウを蓄積するなどいたしまして、先生方の御審議が国民に放映できる段階で、画質等遺漏のないように努めまして議運の理事会の御審議、御指示を待つ体制をつくっているところでございます。
○塩崎恭久君 そういうことで、やはりこれは議員のサイドがイニシアチブをとって頑張らなきやいけないことでありますから、これもまた与党も野党もなく一緒に頑張って、ひとつ開かれた国会ということで我々を国民全般に見ていただいて政治不信を払拭したい、こういうふうに思います。
 以上です。終わります。
○委員長(野沢太三君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時十分まで休憩いたします。
   午後零時十分休憩
     ――――◇―――――
   午後一時十分開会
○委員長(野沢太三君) ただいまから決算委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、平成六年度決算外二件を議題とし、皇室費、国会、会計検査院、内閣、総理府本府及び総務庁の決算について審査を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○海老原義彦君 自由民主党の海老原義彦でございます。
 きょうは、行政改革について突っ込んだ質問をしてお話をいろいろ伺いたいと思っておりましたところ、いろいろ準備しておりますうちに新しい問題が発生いたしまして、これは公務員の綱紀の問題でございます。大部分の時間を公務員の綱紀の問題にかけたいと思っておりますが、とりあえず一番初めに行政改革につきまして官房長官に伺います。
 行政改革につきまして官房長官の御見解を伺いたいわけでございますが、必要性の認識でございますとか行政改革に向けての決意あるいは中央省庁統合再編に関する考え方、さらには行政改革を段階的にどう進めていくかというスケジュール、そういったもろもろを含みまして、ひとつ御見解を賜りたいと思います。
○国務大臣(梶山静六君) 今の御質問に全部答える能力があるか、また権限があるかどうかわかりませんが、行政改革というのは、絶えずこれは意識してやっておかなければならない問題だろうと思います。
 特に、戦後五十年余たちまして、今までずっと成熟してきた行政機構が今の時代に合うのか合わないのか。それは一つは内面的な我々日本の問題でありますが、世界は絶えず大変大きく変化をいたしております。今我々は国際化という名の開国をいわばしなければならない、あるいは要求をされている時代という認識をいたしております。
 そういうことを考えますと、国際的なレベルで見て果たして日本の行政がそれに素直に順応できるのかどうなのか、それによって国益が守れるのかどうなのか、国民が幸せになれるのかどうなのか、そういう視点でこれからの行政のあり方を見なければならないと思います。
 絶えず見なければならないわけでありますが、今の時代を見ますと、確かに米ソ冷戦構造の崩壊等もこれあり、世界経済的に見ましても大競争時代に到達している。それから、今まで、どちらかというと先進数カ国がいわば物をつくり、物を流通し、経済をリードしてきた。それが、まだ完全ではありませんが、先進国と言われるものではなくて、今までのソ連圏、社会主義圏と言われる国々、どちらかというと経済をそれほど基本的に考えない国、そういう国々がこれからの経済の競争に参加をしたわけでありますから、世界のほとんど大半がそういう意味では大競争時代に逢着をしている。それに合うような日本のシステムができているのかどうなのか。
 こういうものを考えますと、私はひとり行政のみならず、ありとあらゆる分野の改革が必要な時代、その中で私たちが社会的に進むいわば指針となるというか、いろんな公の手配りをしなければならない行政というものもそれを免れることはできない。いや、むしろ積極的にそういうものに取り組んでいかないと、その時代に適応できなくなってしまう。衰退国家になってしまう、衰退民族になってしまう。そういうことを念頭に入れながら、今回の行政改革というものがだれしもの大きな関心として呼び起こされたと思います。
 しかし、それに至る手順については、残念ながらまだそれぞれの意見の集約が出ておりませんが、おおよそ必要性というものと、それからこれに至ろうとする総理の決心、こういうものがようやく定まりまして、行政改革の委員会をつくり、これからそれに取り組んでまいるわけでありますから、ここ一年ぐらいをかけて、早急にしかも精密にしかも大胆にそういうものの討議を行って結論を出して、早い機会にそれを実現する、そういうことがこれからの方法として総理のお考えになっているものであろうと、このように考えております。
○海老原義彦君 大変御高邁な御見識を承りまして、ありがとうございました。
 具体的なスケジュールにつきましてはもちろんまだということでございましょうけれども、こういったものは手順を踏んでどういうふうにしていくかということを、いわば工程表のように何年の何月にどこまで進めるというようなことをまず一番最初につくられてやっていくと、当然そういうお考えだろうと思いますけれども、そういった考え方で、はっきりと国民に行政改革がこういうふうに進行していくんだということが目に見えるようにお進めいただきたいと思います。
 さて、緊急の問題であります公務員の綱紀の問題に移ります。
 一番初めに厚生省に、岡光前次官と小山容疑者との関係についていかなる事実関係をつかんでおられるか、そこら辺から質問を始めたいと思います。厚生省官房長お見えでございますね。
○説明員(近藤純五郎君) 岡光前次官とそれから小山氏との関係でございますけれども、私ども必ずしも十分把握しているわけではございませんが、お話として聞いておりますのは、小山氏が元代議士の秘書をされているころからの十数年来のおつき合いだと、こういうふうにお聞きしております。
○海老原義彦君 今回の岡光前次官の非違行為についてどの程度に把握しておられますか。
○説明員(近藤純五郎君) 今回のいろいろの一連の報道で報じられておりますこと、私ども十分つまびらかではございませんけれども、報道されております疑惑で申し上げますと、まず出てまいりましたのはゴルフ会員権の購入でございます。それから乗用章を借りていたのではないか、こういうこと、それから会食をしたのではないか、ゴルフをしたのではないかと、こういうふうな疑惑の報道であるわけでございます。
 一方で、必ずしも前次官と関係あるかどうかわかりませんけれども、逮捕されました元課長補佐の茶谷氏の方の関係で、例えば埼玉県あるいは山形県、こういったところで補助金の採択といったこと、あるいは法人の設立等、これにつきまして便宜を図ったんではないか、こういうふうなことのほかに、現金六千万円というふうな巨額の授受があったんではないか、そういうことと、それから茶谷氏の選挙に関しまして、日本医師会の方に、医師連盟でございますけれども、日本医師連盟の方に数千万円の要請をしたと、こういうふうなさまざまな疑惑があるわけでございます。そのほかにも、海外へ無料で接待されたんじゃないのか、しかもそれは女性連れであったと、こういうふうなさまざまな疑惑が出ているわけでございます。
 必ずしもこのすべてが解明されておりませんのでわからない面が多いわけでございますけれども、こういう疑惑がかかったこと自体が大変私ども問題だというふうに認識しているわけでございまして、非常に各方面に御迷惑それから御心配をおかけいたしまして、厚生行政は少子高齢化を控えまして大変厳しい情勢の中でこういった事件が起きたということにつきまして深くおわびを申し上げたいと存じます。
○海老原義彦君 岡光前次官について数々の疑惑があったということを厚生省の当局もお認めになっておられる。
 新聞報道によりますと、たしか十一月十九日でございましたか、事務次官からやめるという辞意の申し出があってこれを受理したということでございますが、なぜその辞意の申し出を受理したのか、なぜやめさせたのか。これは非常に大きな問題があると思うんですよ。
 ここら辺について、この辞意を受理した理由について申し述べていただきたいと思います。
○説明員(近藤純五郎君) 経過を申し上げますと、十一月十八日の朝日新聞の朝刊で、小山博史氏から便宜供与を受けていた。その中身といたしましては、千六百万円のゴルフ場の会員権を贈与された疑いがある、それから乗用章の借用をしている、それから奥様が当該社会福祉法人の理事をしている、こういうふうな記事が出たわけでございます。
 その日のうちに前次官が記者会見を行いまして、ゴルフ会員権はもらっていない、会員権も持っていない。それから、車については確かに車を買いかえるまでの間何年か借りた。若干の寸志しか払わなかった。こういうふうなこと。それから、奥さんが法人の理事に就任したのは事実でございますけれども、昨年辞職をしている。こういうふうな釈明会見があったわけでございます。
 それで私ども、その後大臣からの御指示もありまして、そういった面につきまして前次官からいろいろ事情をお聞きした。こういうことでございました。その後、そのほかにも疑惑があるのではないか、こういうふうに疑惑の拡散が生じつつあったわけでございます。そういうふうな中で、先ほど申し上げましたように、私ども、少子高齢社会という大変厳しい情勢の中で問題が山積している、こういうふうな事情もあったわけでございます。
 そういうふうなことで、十九日の午前三時過ぎに前次官の方から大臣にお会いして、今後の厚生行政のあり方あるいは自分にこういう疑惑が生じている、こういうふうなことでいろいろ意見交換をされたそうでございます。そういうことで、次官の方から、こういう自分自身の件に関して世間をお騒がせして、厚生行政の発展のためにこれ以上御迷惑をかけたくない、こういうふうなことで事務次官を辞職したい、こういうふうに大臣に対して申し出られたわけでございます。
 厚生大臣の判断であるわけでございますけれども、前次官は金銭の授受等の疑惑は否定しているわけでございます。私ども、その当時はまだ疑惑としては出ておりませんけれども、こうした場合一番問題になります金銭についての動きはないですなと、こういうふうなことも何度も何度も確認しておりまして、そのときにも疑惑は否定されておりました。
 そういうことであったわけでございまして、しかもいろいろな疑惑が出てきている、出てきつつある、こういうふうな状況のもとで前次官をこのまま現職にとどめまして事実確認を待って対処するというのは相当時間がかかるだろう、そうすれば厚生行政の運営にも支障が生じる、一日も早く新しい体制をつくる必要がある、こういうことで辞職の承認について総合的に判断をされまして厚生大臣が辞職を承認されたというふうにお聞きしているわけでございます。なお、事務次官につきまして、官房付という形にすることも手法としてはあったかと存じますけれども、過去においてこうした事例はどの省庁にもございませんし、これは事実確認というのをしないまま更迭という形にいたしますと不利益処分にもなるわけでございまして、本人に私どもが十分調査の上でそういうふうな形が取りづらかった。事実確認の時間が相当かかるだろうと、こういうことも踏まえまして総合的に厚生大臣が政治的決断という形で辞職を受理された。こういうふうに私ども承知しております。
○国務大臣(梶山静六君) ちょっと発言のお許しをいただきます。
 今、厚生省の官房長から前次官の辞任の経緯について話がございましたけれども、次官は内閣の同意人事でございますから内閣の許可がない限りはやめることはできません。
 小泉厚生大臣が、早朝三時以来、大変この問題に悩まれ苦しまれ、そして最後にやはり自分の政治的な判断、今この時期に人心を一新しなければ厚生行政の信頼が保てない、そういうところからいろんな意見はあったけれども決断をした。そういう内容の説明がありましたので同意を与えることにいたしたわけであります。御承知おきを願いたいと思います。
○海老原義彦君 ただいま官房長官からもお口添えございましたけれども、私はこの岡光さんの辞任については明らかに事務当局の補佐の誤りであると思います。
 小泉大臣が新聞に話しておるところを見ますと、市中引き回し、打ち首、獄門という重い処置もあるかもしれないけれども、本人の名誉を重ん
じて切腹を認めたということでございますけれども、これは切腹じゃないです。もう複雑怪奇な公務員制度の中では非常に軽い措置なんですね。これは私は、切腹どころか、本来こういうものは閉門、謹慎、おさた待ちというのがあってしかるべきだと思うのですね。ところが、江戸市中払いにして町奉行所の手の及ばぬところへ出してしまった。
 これは、公務員制度について一番わかっているのは役人であり、役人の中でも官房長、あなたですから、あなたの補佐が誤っておった。そう言わなきゃならぬと思うのです。まだまだ明けばいろんな問題が出てくる、そういった問題が全部整うのを待ってから処分を決めるというのが正しい姿であったと私は思うのですね。これは明らかに誤りであります。
 昔、私も総理府の事務の責任者をしておりましたころ、小さな、小さなど言っては語弊があるんですが、一つの汚職事件がございまして、あのときのことを思い出しております。
 あのときは疑惑のあった業者といやしくもつき合いがあった者は、たとえてんぷらそば一杯おごられた者でもみんな厳重な査問を受けました。一度ゴルフに行った者は、私から厳重注意を通告いたしました。二度以上ゴルフに行ってこれはかなりつき合いが深いぞという者は、これはやめてもらいました。これは本当にすばらしい立派な男で、中国の故事に泣いて馬謖を斬るという言葉がありますが、本当に私は涙を流してやめてもらった。それもこれも、官房長官、総理のおひざ元である総理府がまず率先して姿勢を改めることでこれを機会に全省庁に公務員の綱紀がびしっと及ぶ、こう願ったからであります。あのとき我々が流した血の涙はむなしく地面に吸われたか、今私は泣いても泣き切れない気持ちであります。
 こういうような不祥事が次々と起こっておる、このことについて官房長官の御見解を承りたいと思います。
○国務大臣(梶山静六君) 今回の不祥事件につきましては、厚生省において、あるいは外部からもいろいろな調査が行われていると聞いております。しかし、最高幹部がこのような疑惑を受けるということはこれはゆゆしきことであります。何といっても遺憾千万と言う以外に表現のしようがありません。しかし、遺憾千万で済めばいいんですが、このことによって厚生行政、いや全般の行政に対する不信というものがこれだけ募ってしまいますと、幾らいいことを言ってみても国民の皆さん方に信用はしていただけない、そういうことに陥りつつあるわけでありますから、私たちは身を削ってでもこの信用回復に全力を挙げなければならない。
 ですから、今委員御指摘のように、みずからの身を正すことは何よりも大切でありますが、厳重な処罰あるべしという我々の仲間にもたくさんの意見がございました。しかし、最終的には、いわば所管大臣である厚生大臣が政治的な判断のもとに決断をしたことでありますから、我々が了解を与えましたけれども、総理が、この問題では大変そこに至るまでにはいろいろないきさつがあって最終的な判断を下したわけであります。
 しかし、その辞任と今後のこの綱紀粛正、責任体制をどうするかという問題は全く別な問題でございます。全力を挙げて取り組んでいかなければならないと考えております。
○海老原義彦君 今後の綱紀の対策について官房長官からも前向きの御発言がございました。私はその問題について少し人事局長と話し合ってみたいと思いますが、その前に通産省。
 通産省でも泉井問題というのがございましたですね。この泉井とどういう人たちが関係があったか、またこういった問題を踏まえて通産省としては今後どういう措置をとって綱紀を引き締めていくか、この二点について通産省から事実関係をお話しいただきたいと思います。
○説明員(杉山秀二君) いわゆる泉井石油商会の脱税事件に絡みまして、当省の職員と泉井氏との関係につきましていろいろと報道がなされ世間を騒がせていることにつきまして通産省としては非常に事態を深刻に受けとめているところでございます。
 実態の調査といいますか実態の把握という点につきましては、本日、通産大臣より泉井氏と当省の幹部との接触につきまして実態を調査しろという御指示がなされておりまして、私どもといたしましても、この大臣の指示を受けまして、新聞報道に関係する部局の幹部職を経験した者、あるいは現在省の運営の中心にある幹部職員、これらを対象といたしまして泉井氏との接触状況について可及的速やかに実態を調査いたしまして、この結果を明らかにするように作業を急ぎたいというふうに考えているところでございます。
 次に、先生からこのような綱紀にかかわる対応といいますか、ルールにかかわる御質問がございましたが、通産省といたしまして、職員と関係業界との接触につきましては、昨年の十月でございますが、関係業界との接触に当たりまして国民の疑惑を招くことのないよう綱紀のより厳正な保持を図るために具体的な措置といたしまして、あらかじめ服務管理者によります事前の承認制というルールを導入いたしたところでございます。
 すなわち、職務上必要やむを得ざる関係業界との会食を伴う会合というものに出席する場合には、あらかじめ服務管理者による承認にかからしめるという措置を導入したところでございまして、これを全職員に周知徹底をしているところでございます。
 今回も改めまして、この措置を服務管理委員会等を開きまして全省的に周知徹底を再度図ったところでございます。
○海老原義彦君 それでは、総務庁人事局長に伺います。
 今回のこういった不祥事を踏まえまして、事柄の重大性にかんがみて、今まで綱紀粛正ということで人事管理運営方針あるいは官房長官通達などで口を酸っぱくして言っておる、しかし一向に改まっていかない、これについて人事局としてはこれからどういうふうに進められるか、その点をまず伺いたいと思います。
○説明員(菊池光興君) お答え申し上げます。
 国家公務員の人事管理、各省庁やっておるわけでございますけれども、その総合調整に当たる重い任を担っております私ども人事局といたしましても、今回の事案、大変厳しく厳粛に受けとめておるところでございます。
 今回の事件を契機とします綱紀粛正の問題につきましては、総理の御指示がございました去る二十一日の事務次官等会議終了後、緊急に各省庁の官房長会議を招集いたしまして総理の指示の趣旨の徹底を図るとともに、実効ある綱紀粛正の進め方について意見交換、協議を開始したところでございます。
 今、通産省の秘書課長あるいは厚生省の官房長からもお答えの中にございましたように、各省庁におきましても、もうそれぞれの省庁で具体的な取り組みをお始めになっているところがあることは私ども承知しておりますけれども、政府全体として実効の上がる綱紀粛正の進め方、これはどうしてでも策定していかなければならない、こういうふうに考えておるところでございます。総務庁長官からも一カ月以内を目途に実効の上がるような形で成案を得るようにというような御指示も受けておるところでございます。
 具体的な内容につきましては、各省庁とも協議をしなければならない部分がございます。具体的に詰めなければならない部分もございます。まだ申し上げる段階には至っていないわけでございますが、行政に対する国民の信頼を回復するための綱紀粛正の緊要性にかんがみまして、一日も早く検討の結果を取りまとめたい、こう考えておりますし、案が策定できましたら全省庁挙げて取り組んでまいりたいと思っております。
○海老原義彦君 アメリカやヨーロッパの公務員の綱紀に関する基準を見ますと、例えば贈り物を全く受けてはならないというところもございます。アメリカはまた非常に具体的に一回二十ド
ル、年間五十ドル以上受けてはならぬ、こういうふうになっておる。二十ドル、五十ドルというと日本円にすれば二千円、五千円、物価の関係もありますから例えば四千円、一万円、こういった以上の贈り物を受けてはいけないというのがアメリカのルールでございますが、我が国の実情にかんがみますと、そういうふうに幾らまではいいぞというわけにもいかぬでしょう。
 それで、私はいつも思っておるんですが、余りにも公務員が、こういうことを基本的には悪いということを知っておる、悪いということは知っておっても交通法規と同じで、赤信号みんなで渡れば怖くない、だれも罰せられていないから怖くないだろうと思っている。ところが実にたくさんの人たちがもう刑事罰も受けている、それから懲戒処分も受けている。そういった刑事罰の事例、懲戒処分の事例というようなものを周知徹底させる、わかりやすい手引書のようなものをつくって周知徹底させる、そういったことも大事じゃないかと思うのでございます。これは提案でございますから特段に答えは要りませんけれども、そういったことも含めて今後十分御検討いただきたいと思います。
 さて、総務庁長官、お忙しい中を御出席いただきましてありがとうございました。
 本日は、当初は行政改革についてということで、行政改革担当大臣としての抱負などを伺おうと思ったのでございますが、事柄が、この綱紀の問題が緊急を要すると思いまして、公務員の綱紀について今ずっとやってきたわけでございます。その具体的な内容は、改めて後日人事局長からでも、あるいは私が後日レクチャーしてもよろしゅうございますけれども、そういった問題がいろいろあるということを踏まえまして綱紀の問題並びに行政改革に対する抱負、この二つを一度にお答えいただくのも申しわけございませんが、時間の関係でお願いいたします。
○国務大臣(武藤嘉文君) ただいま綱紀の問題についてはいろいろとこちらからも答弁があったようでございますし、また海老原先生からも大変貴重な御意見を拝聴いたしました。
 私は、常に申し上げているのでございますが、我々国会議員もそうでございますけれども、特に公務員たるものはやはり国民全体に対する奉仕者である、この意識をとにかくしっかり持つことがまず第一だ、そういう意識さえ持っていればそういういろいろの誘惑にも私はひっかからないで済むんじゃないだろうかということを思っているわけでございます。
 いずれにしても、このようなことが頻発をしてきている現状から見ますと、今までの通達では、これはもう全く効果が、全くではございませんが、とにかく効果があらわれていないということでございますので、今人事局長からも御答弁申し上げましたように、この一カ月以内に何らかの形で効果の上がるような形をとにかくやれということで今指示をいたしておるわけでございます。今いただいた御意見も十分尊重しながら参考にさせていただきたいと思っております。
 いま一つ、行政改革の必要性あるいはそれに対する抱負というお話でございますが、これは総理がかねがねおっしゃっておられるとおりでございますけれども、また、この間の私どもの選挙では各党全部が行政改革を主張してきたわけでございます。それは、やはり今日の日本の置かれている現状が、例えば経済の面でまいりますと、国際的に非常に最近は日本の経済力が弱まってきております。また、空洞化の現象が起きてきております。そういう面からいけば、経済の構造を今までとは違った形で新しい時代に合った構造にしていかなきゃいけないことがあるだろうと思います。あるいは金融面もあのようないろいろな事件が起きてまいりましたし、いま一つは、国際的に金融も動くようになってしまいまして、日本に来ている外国のお金が逆に外へ行ってしまうというような状況でございます。それからいま一つは、財政がもう赤字がどんどん重なって、それこそ国だけでも二百四十兆以上の借金、こういうような状況でございますので財政も大変だ。そしてまた、いま一つは、高齢社会を迎えてこれから生活保障というものも大変な問題になってきている。
 こういうことから、財政改革、金融改革、そして経済構造改革、そして社会保障改革、こういうことをやっていかなきゃならないけれども、やはりその一番中心となるのは少なくとも行政改革ではなかろうかなと、そういうことを私は考えまして、行政改革というのはすべての日本の構造改革をしていく上に一番主要な柱になるものであるというふうに踏まえまして、じゃどういうふうにしたらいいかというのはこれからいろいろ議論をいただくわけでございますけれども、少なくとも今までの縦割り行政は直していかなきゃいけないことは当然でございますし、あるいは行政の透明化を図っていかなきゃならぬことも当然でございますし、あるいは規制緩和をしていかなきゃならぬことも当然でございますし、そのために、官で必要でないものはなるべく民に移すということも必要であろうと思います。
 いずれにいたしましても、そんなようなことで最終的には簡素で、そして効率の上がる、そして十分国民の皆さんに行政サービスのできる機構をしっかりつくり上げていく、そのためには思い切って今の中央省庁も再編成をしなきゃいけない、こういう結論になるのではなかろうかと思い、それらのことをこれから一生懸命やらせていただくために、現在あります規制緩和を含めた行政改革委員会あるいは地方分権推進委員会に加えて、あさってから行政改革会議を私ども発足させていただきたいと、こう思っておるわけでございます。
○海老原義彦君 詳細な御答弁ありがとうございました。
 行政改革が成功するもしないも、一番最初にはやはり信頼できる有能な公務員が活躍するということがあるわけでございまして、公務員の綱紀の弛緩で国民から信頼されないというようなこの事態は一刻も早く直していかなければならない。両方つながる問題ではないかと私は考える次第であります。
 ほかにいろいろ言いたいこともございますが、時間の関係がありますので本日はここまでにいたします。
○山崎順子君 平成会の山崎順子です。
 私は、決算の理事で長い間財政の悪化等を大変憂いてまいりまして、今総務庁長官も国の財政赤字だけで二百四十一兆円とおっしゃいましたけれども、地方にも百三十六兆円、隠れ借金はJRのさまざまな借金などを含めますと二百兆円にも上るような借金を日本は抱えておりまして、これをどうすればいいかということをずっと考えておりました。
 また、新聞等でもそれが報道され、国民の皆さんたちもそのことを深刻に考え、そして税負担もやむを得ないかというような、そういうふうに考えてくださっている国民もたくさんいらっしゃる中で、その大事な税金をまるで自分のもののように考えていらっしゃるような官僚が多いのではないか。それが今回のこの補助金をまるで食い物にしているような業者との癒着、官僚の腐敗、不祥事、そういったことにつながったのではないかと考えているわけですけれども、たび重なる官僚のこういった汚職や不祥事にはもう全く国民の皆さんは怒りを超えてあいた口がふざがらないような、今そういった状況ではないかと思います。
 大変な超高齢社会を迎えまして、私たちはゴールドプラン、新ゴールードプランというようなものを何とかいい形で推進していかなければならない、そういった状況なんですが、そしてまた私は、厚生省の方々が本当にまじめに日夜、土日も返上して仕事に励んでいらっしゃる、そういった姿もたくさん見ておりますけれども、そういった誠実に仕事をしていらっしゃる部下の人たちをもないがしろにするようなものですし、そして、これは本当に厚生省の人たちがもう気落ちをして、ショックで、大事な今やらなきやいけないようなプロジェクトが進まないような状況になっている。これは国民の大変な損失でもあると思うんですね。
国民の命と健康を預かっている厚生省に何とか早く立ち直ってほしいと思っていらっしゃる、期待をしていらっしゃる国民の方は多いと思うんです。
 そこで、きょうは私は決算の視点から、政府内部の自己反省機能といいますか、自己改善機能、自浄機能ですね、それがどう働いてきたのか、実は働いてこなかったのではないか、そしてまた働かせるためには何をすべきなのか、そういった視点から質問をさせていただきたいと考えております。
 まず、この高齢者保健福祉推進十カ年計画と言われるいわゆるゴールドプランですけれども、これが設定されて、二十一世紀に向けての福祉サービスの整備目標が数字で示されるようになりました。そして、そのとき九九年度末の整備目標が、特養ホームの場合二十四万床だったんですけれども、それではとても足りないという国民の要望も入れて、新ゴールドプランとして新たに見直されて、九九年度末の整備目標は、ベッド数じゃなくて今度は人数に変わったわけですが、二十九万人が整備目標とされました。
 そして、その達成を図るために国庫からも各都道府県からも補助金がどんどんついて、特別養護老人ホームの建設が急がれることになったわけですが、そうした中でこのような問題が起きたことは、もうまことに残念と言うほかはないと思います。
 さて、この老人ホームの場合、その運営は社会福祉事業法によって国と地方自治体、そして社会福祉法人に限られているんですけれども、この社会福祉法人の運営が全国ではほとんどを占めているということなんです。今回問題となりました小山博史容疑者が経営する彩福祉グループというのは、これは社会福祉法人なんですか。
 これは厚生省の方にお聞きしたいんですけれども、全体で七つの社会福祉法人があるんですが、もし違ったら訂正していただきます。
 最初に、平成五年八月に桃泉園という社会福祉法人、これは彩福祉グループの中の一つの社会福祉法人ですが、これが社会福祉法人として認可を受けているんです。そして、平成七年の十二月に彩鷲会、それともう一つ彩江会という二つの社会福祉法人がそれぞれ同じ月に認可をまた受けております。平成五年八月から七年十二月までのおよそ二年の間に全部で七つの社会福祉法人、これは全部彩福祉グループと言っているんですけれども、認可を受けておりまして、その社会福祉法人が建てようとした特養老人ホームのうち三つは既に事業を開始し、五つの特養老人ホームが開始予定となっているんですね。そして、国庫補助金は何ともう既に三十億円以上が交付され、そして平成八年度、ことしですけれども、十九億二千三百万円という金額がもう既に交付金として出されるという内示が済んでいるわけです。
 このように、本当にわずかな期間に、たった一人の小山という理事長が、幾つもの社会福祉法人の認可を受けて、そしてまた幾つもの特別養護老人ホームをつくるということ、こういったことはしょっちゅう全国であることなんでしょうか。まず、それだけ答えてください。
○説明員(青柳親房君) ただいまのお尋ねは、一人の代表者が代表者となっておる特別養護老人ホームあるいは社会福祉法人がたくさんつくられるということについてでございました。
 厳密に申しますと、ただいまのお尋ねのとおり、七つの法人ができておるわけでございますが、そのうちの二つは山形県、残りの五つ、重なっている点がございますので、山形県と埼玉県で一つずつという状況がございますが、複数の県にまたがってそれぞれ独立に社会福祉法人がつくられております。
 このように、法人の事業範囲が、事業の地域が広範にまたがります場合には、それぞれの法人がいわば地域の代表者の方々を構成員とする理事会を構成して事業を展開するということが地域にとっても必要であろうという観点から、別々の法人をつくるということは決して珍しいことではございません。
 しかしながら、非常に短い期間に、しかも埼玉県だけとってみてもかなりの数の法人ができておったということにつきましては、その必要性が本当にあったかどうかということについて、もし検証が十分ではなかったのではないかという御疑問があるようでございましたならば、これは埼玉県ともよく調査、協議の上、その必然性があったかどうかを引き続き調べてまいりたいど考えております。
○山崎順子君 今おっしゃったとおり、社会福祉法人の認可というのは都道府県知事ですから、山形県と埼玉県にある場合は当然社会福祉法人は別々につくる必要があると思いますけれども、なぜ埼玉県に五つの、同じ県内に五つも社会福祉法人をつくらなきゃいけなかったかというような問題、今おっしゃったようにおかしいですね。官房長、どう思われますか。
○説明員(近藤純五郎君) 全くおかしいと思います。
○山崎順子君 当然のお答えだと思います。
 もし、じゃ異常だったらなぜ、今県の方ときちんと検討し合うとおっしゃいましたけれども、社会福祉法人の認可には一切国は携わっていないのか。ちょっとその辺、どうぞ官房長お願いいたします。
○説明員(青柳親房君) 私の方からお答えをさせていただきます。
 社会福祉法人の認可につきましては、先生からも御説明がございましたように形式的に県がこれを認可するということになっておりますが、事実上、例えば補助金等のいわば交付の内示がおりない、つまり形ばかりの社会福祉法人をつくることはできないという意味では、確かに私どもも補助金の交付というかかわりの中で法人の事業についてはかかわりを持つということになるわけでございます。
○山崎順子君 社会福祉法人の認可というのは、さっき言いましたように社会福祉事業法第二十九条、三十条によって都道府県知事がするものなんですが、ほとんど知事というのは一年間、決裁をするだけで、一つ一つの特養ホームをつくる社会福祉法人の認可には携わっていないわけです。だからといって全部知事がしなきゃいけないということじゃなくて、課長さんの段階でやられていいんだと私は思いますけれども、今回のような出向の茶谷さんですか、茶谷という課長のところでこういった問題が起きるというようなことであれば県だけの問題じゃないんじゃないかなと私は思うんですね。
 ゴールドプランのゴールドというのを取り違えるような、つまりお金をつくる、特養ホームで錬金術師のようにもうけようというようなことを考える人間にも社会福祉法人の認可がすぐおりるのか、そのことが私は問題ではないかと思うんですが、官房長にお聞きします、どうでしょうか。どういうふうな経過で認可がおりるのかということは全部わかっておりますので、今のお答えは官房長でもお答えになれると思うんですが、いかがでしょうか。
○説明員(近藤純五郎君) 社会福祉法人の関係でございますけれども、まさに社会福祉事業を行う、それから一定の基金がある、こういうふうな条件で、はっきり言えば社会福祉法人をつくりやすくして、今まで社会福祉法人をつくりたいという方は昔は少なかったわけでございます。そういうことで公共福祉サービスを充実する、これからの高齢化社会に備える、こういうことでゴールドプランができたわけでございまして、私どもそれ自体はいいことだと今でも思っておりますけれども、これがこういうふうな形で悪用されたということにつきましては私も非常に憤りを感じているわけでございます。
 ただ、申し上げれば、こういうふうな悪用ができるという場合でございますけれども、これは同じ系列に土建の会社がある、こういう場合でないとこういうふうな形はできないわけでございまして、全く系列でないところにこんなばかなことを
する社会福祉法人はないわけでございます。高い単価に決めて、そこに落札をさせて、そこからさらに丸投げをして利ざやを稼ぐ、こういうことでございますから、これはまさにそういうふうな系列関係というものを断ち切るような形を考えなきゃいかぬ、こういうふうに私どもは認識しております。
○山崎順子君 社会福祉法人の認可と同時に、また特養ホームの施設の認可というのがあるわけですね。これも老人福祉法第十五条によって都道府県知事が認可しているわけです。
 小山容疑者というのは、事業が失敗しまして、老人ホームの運営で再起を図ろうとしたのではないかとも言われております。何十億の借金があったということなんですけれども、社会福祉法人の認可というものの基準がどうなっているのか本当に不思議でしょうがないんですね。こういった男の人でも社会福祉法人の認可というのは簡単に得られるものなんですか。
○説明員(青柳親房君) 社会福祉法人の設立認可につきましては、社会福祉事業法、あるいは社会福祉法人審査基準という、これは局長通知でございますが、こういったものを定めまして都道府県知事が審査をするということになっておりますが、この審査基準の中におきましては、一つは社会福祉法人の行う事業が適正に行われるものかどうか、それから法人の資産がどうなっているか、あるいは法人の組織運営が事業を行う上で適切なものであるかというふうなことについて具体的な要件を定めております。特に、今お尋ねのございました例えば多額に借金のあるような者を代表者とする社会福祉法人を認めるのかということでございますが、法人と個人の財産は明確に分離をされておりますので、その代表者となる方にどのくらいの借財があるかというようなことは直接の審査対象とはしておりません。しかしながら、実際の法人設立に際しましては、資金計画をつくる際に、例えば代表者からの寄附によって償還というものを予定することが多くございますし、今回の小山のケースについてもそういった寄附が行われているということでございます。
 こういった場合には、それが確実に行われる、つまり寄附が確実に行われる、それから所得能力や営業実績や資産状況について、その証明書をとるということによって明らかにするということにしておりますので、書類上は少なくともその点については問題のなかったものを県が法人として認可したものと私ども承知をしております。
○山崎順子君 それでは、基準や書類審査にやはり監査能力があるようなものがなかった。そういうことになりますね。
 それから、私は今まで仕事柄、社会福祉法人が経営なさっている老人ホーム等を随分見てまいりましたけれども、そこで働いている人たちは、本当に社会福祉に貢献したいという理想、そしてお年寄りの方たちへ本当に温かい心で接していられて、それこそもう献身的に働いていらっしゃるんですね。
 問題は、一つは経営者の側ではないかと思うんです。例えば、今言ったような基準でいきますと、本来そういう理想があっても、もちろん福祉というのは理想だけではできませんけれども、そういうものの基準じゃなくて、お金とか土地とか、何かそういうものだけで理事長になれるような基準ではないか。そうしますと、現実に福祉の理想も何もないような人たちがなっていらして、例えばこういう建設業者と言ってしまうと、それを別に差別で言っているわけではありませんが、福祉関係に全く関連のなかったような方たちが理事長になり、またその妻が施設長になっているようなケースもたくさんあるんですけれども、理事長と施設長に関しての条件は何か基準を国は持っていらっしゃいますか。
○説明員(青柳親房君) ただいまのお尋ねの中にもございましたように、職業の種類等で理事長や施設長を縛るということはこれはできないだろうと考えております。
 しかしながら、この社会福祉法人の運営を決定する最高機関である理事会におきましては、福祉のことをよくわかっている方やあるいは地域の代表者というものをこの理事会に入れて構成をするようにということで私ども指導しておりますので、ただいまのお尋ねの点は、施設長、理事長を直接縛るというのではなくて、理事の中にこのような方が加わることによって十分に適正に進めてまいりたいというふうに考えております。
○山崎順子君 どうも適正に進んでいないからお伺いしているんですけれども。
 理事長、施設長に資格を設けることができないと今おっしゃいましたけれども、国は基準というかそういう資格を決めていませんけれども、都道府県ではございますね。特に東京都などでは、福祉関係の現場で十年以上働いた実績がある人ですとか、それから公務員の天下りを禁止しております。日本海側の特養ホーム等の理事長などを見ますとかなり退役された公務員の方が多いんですね。それはなぜかというと、補助金がそのままついてくるからなんです。そういうことを禁止している東京都などがございますけれども、なぜ国はそれができないんでしょうね。私は、理事長や施設長の資格もぜひ、福祉関係の現場で十年以上働いた実績があるとか、せめて社会福祉関係のライセンスを持っている方とか、そういうふうにすべきではないかと考えております。
 さて、今度は補助金の方、先ほども少し話が出ておりましたけれども、補助金というのが埼玉県の場合に、国が二分の一、また県から四分の一、そしてそれ以外にも出ておりまして、現実には自己資金というのは十六分の一で済んだということがありますけれども、特養ホームってこんなに少ないお金で建てられるのかって思った人たちが多いんですね、今回の事件で。そして、補助金がこんなに出るのかということがわかっただけでも、私は、この事件というのは不祥事件ではあったけれども、国民に少しその仕組みがわかってよかったんじゃないかというふうにも考えているんです。
 ただ、その小山という人のケースなんかでは、一つの特養ホームで七億円もの利ざやを得ていたというような報道があるんですね。これは報道ですから、私、別にうのみにしているわけではありませんけれども、こういう報道を皆さんが聞くと、補助金が多過ぎるんじゃないかとか、そういうようにも考えられてしまう。それが大蔵省の今回の、補助率を削減するとか、それから会計検査院が補助金の方を威しくチェックしなきゃいけないとか、そういうふうに出てきているんですが、これはこれでちょっと後で問題としてまた話したいと思います。
 まず、こういう補助金を、国庫補助を交付するということ、先ほどから言いますように、社会福祉法人としての認可の段階、それから特養ホームの施設の設立を認可する段階、もちろんこれに絡んで補助金を交付するという、この三つのところでチェックが働いたはずなんですが、一切働かなかったということが今回の事件で言えると思うんですね。
 例えば、この彩福祉グループは日本財団にも補助金交付の申請をしております。こういうところに補助金の交付をするのは、県とかそういうところとダブってはいけないという規則があるらしいんですけれども、平成五年に申請をして、翌六年から二年に分けて五億円を補助されたんです。
 この件はことしの一月、交付を前に日本財団が監査したところ、小山容疑者の関連会社ジェイ・ダブリュー・エムが最低価格を提示していないのに工事を落札した上、下請に出していることが判明したので、この業者選定の過程が不透明で法的に問題がある可能性があるということで、交付をやめようかと考えて県に説明を求めているんですね。ところが、これに対して県が、事務的な不手際で、県が指導すると回答したことと、もう一つ、もう既に国と県から補助金が出ていたことから、平成六年度分として九月に二億五千万円を送金したらしいんです。
 こういう民間といいますか、国じゃないところ
でも申請書自体がおかしいとか、業者選定の過程が不透明だということがわかるような、そういったところでなぜ県や国がチェックできなかったんでしょうか。
○説明員(青柳親房君) 日本財団の件につきましては私も新聞報道でしか承知をしておりませんが、通常、例えば県が補助金の交付を法人に対していたします場合には、その法人がどういう相手方とどういう金額で契約をしたかということは、県の段階でこれはチェックできる仕組みになっております。
 ただし、その過程において具体的な入札の方法がどうであるかとか、その入札の業者がどうであるかというところまで立ち入ったことは求めておりませんので、場合によってはそこは県の段階でも承知ができないというケースがあろうかと存じます。日本財団の場合との比較は、その意味でややちょっと制度的にはしかねる点がございますので、御容赦いただきたいと思います。
○山崎順子君 今の件について、つまり監督官庁である厚生省や県が全くチェックできないということに関して、総務庁行政監察局、会計検査院はどのようなチェックを今までなさったのか。法人認可について、また補助金決定の基準や過程についてチェックしたことがあるのか、またこれからしようとしているのか、その辺をお伺いしたいと思います。
○説明員(諸田敏朗君) お答えいたします。
 社会福祉法人が設置しております特別養護老人ホーム等の施設整備や運営につきましては厚生省から補助金が交付されているところでございますので、会計検査院といたしましてはこれについて従来から検査を実施してきているところでございます。
 このうち、特別養護老人ホームの運営費に対する負担金につきましては毎年重点的に検査を実施しておりまして、その結果、負担金が過大に交付されている事態につき不当事項といたしまして決算検査報告に掲記しているところであります。
 しかしながら、今回の事態を踏まえまして、今後は運営費とともに施設整備費補助金についてもこれまで以上に十分注意を払って検査をしてまいりたい、かように考えております。
○説明員(土屋勲君) 行政監察の立場からは、国庫補助を受けまして特別養護老人ホームなどを設置しております社会福祉法人の指導監督に関しまして、平成三年四月から六月にかけて行政監察を実施いたしております。その結果、平成四年六月、厚生省に対しまして、理事の関係する業者との取引の規制あるいは過剰な繰越金の発生防止、基本財産の処分等の適正な取り扱い等につきまして、都道府県、社会福祉法人を指導することなどを勧告いたしたところでございます。
 また、行政監察は中期的に計画をつくってやっておりますが、向こう三年間のテーマの中で高齢者の保健福祉対策に関する行政監察というものを予定いたしておりまして、今後この実施に当たり注意をして監察していきたいというふうに思っております。
○山崎順子君 昨年の十一月一日の国会の調査会で、行政監察局長がこのように答弁なさっているんですね。「行政運営の改善を図る観点から不正事案の発生を許すような機構上あるいは運営上の欠陥を除去いたしまして、その発生を未然に防止するという綱紀の維持機能の一端を担っている」のが行政監察の仕事であると。
 私は、例えば日ごろから建設業のあり方とか丸投げの横行をチェックしていたらこういうことは未然に防げたんじゃないかと思えるんですが、どうでしょうか。
○説明員(土屋勲君) 先ほど申し上げました私たちの勧告を踏まえまして厚生省は指導を徹底され、定款等の準則の改正も行い、都道府県に対する指導を強化していたというふうに承知いたしております。
○山崎順子君 強化していて今の状況が出てきたということなんでしょうか。未然に防ぐというのは無理で、官僚同士のもたれ合いで事前のチェック機能など信用できないと考えてよろしいんでしょうか。そうですね。
 特別養護老人ホームは、例えば建物ができているときに竣工検査というのがあるんですね。これはもちろん県の方だと思いますけれども、建築課とそれから補助金を出した課ですけれども、そこが必ずやるんです。今回のように一件について七億円もの利ざやを稼いだとかという、その七億が本当かどうかはともかく、相当な丸投げをして補助金できちんとしたものを建てていないということは明白なわけですから、建物の竣工の検査をすれば最初の段階でこんな幾つも幾つも利ざやを稼ぐような補助金を交付するようなことは防げたはずなんですけれども、これについて会計検査院がまたは行政監察の方、どうですか。
○説明員(諸田敏朗君) 会計検査院といたしましては、社会福祉施設整備費の補助金等の検査に当たりましては、従来から補助金額が適正に算定されているかを中心に検査をしてきているところでございますが、今後に当たりましては、補助金の交付を受けて建設された施設等の設計や施工が事業実績報告書の内容と一致しているか、あるいは施設設備の基準に適合しているか、さらには補助の目的に合致しているか等についても注意をして検査を行っていきたいというふうに考えております。
○説明員(青柳親房君) 先ほどの委員のお尋ねの中で、どうしてそういう大きなものが出てというところについての私どもの御説明がなかったものですから、補足をさせていただきます。
 先ほどのお尋ねの中で、補助金は国で二分の一つき、県で四分の一つき、それから十六分の三の埼玉県独自の補助がつくので十六分の一の自己負担で建物が建つというくだりがございましたが、これは若干正確さを欠いているとこちがございまして、実は国庫補助基準の建物だけを建てるとしたならばというのがその前提につくだろうと思います。
 今回、小山の建てた建物については、詳細について明確になっていない点はございますが、いずれも国庫補助基準を上回る、いわばそれだけ豪華なものを建てておりますので、その豪華なものの、いわば国庫補助基準を上回る部分についてそういう利ざやとかなんとかというものが生ずる余地がどうもあったのではないか。しかも、それが可能になったのは、県の手厚い補助であり、あるいは市町村の単独補助であったのではないだろうかというふうに現時点では推測をしておるところでございまして、これは国庫補助基準を直ちに食い込んだ、あるいはこれを下回るものになったということを意味するかどうか、現時点では明確でございません。
○山崎順子君 官僚の方よりも私の方が頭がきっと悪いんだと思いますけれども、今の説明でよくわからないんですが、多分国の国庫補助基準を上回るものを建ててそこからお金を抜いているんだから国は関係ありませんよということを言いたいわけですね。そういうことだと思います。
 そのことは、そんな別に必死で国の方の言いわけをなさらなくても、全体に地方の補助金だって人々の税金なわけですから、そこから抜いているということで、特養全体のを見たっていいわけで、国の方だけはちゃんとなっているからそこは私たちには監査する責任はありませんよというふうにも聞こえてしまうんですが、それでは困るんじゃないかと思います。
 さて、検査院の方に少しお聞きしたいんですけれども、会計検査院の方は、今までに過去十年間の検査報告書には特養ホームなどの施設整備補助に対しての指摘は載っていませんが、今後、不正な利益の原資になっているおそれがあるとして、特養など老人ホーム施設整備への補助金についての検査を強化する方針を固められましたね。ただ、先ほどからもお聞きしていると、どうも申請や交付の書類を見る限りでは問題点の発見に至らないのではないかという気がするんですね。厚生省もそうですし、県もそうです。この辺については今後どのようになさるおつもりなんでしょう
か。
○説明員(諸田敏朗君) お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、現在までの出ております書類等でチェックしている限りではなかなか今回のような問題は出てこないということだろうと思います。したがいまして、今後、これから少し検討しなきゃいかぬとは思っておりますけれども、そういった施設そのものの建設というものがより妥当に行われているかどうかということにつきましては、今まで以上の突っ込んだ検査をしていく要があるというふうに考えております。
○山崎順子君 官房長官にお伺いします。
 今お聞きになってくださっていておわかりになったと思うんですけれども、自治体の検査も監督官庁自身の内部監査も総務庁の行政監察も、そして会計検査院と見てきまして、どうも私には社会福祉法人の認可、それから特養ホームの認可、補助金交付のあり方、基準、そういったものについて行政内部の監察というものが無力になっているのではないかと思われるんです。いかに無力だったかが浮き彫りになったというふうに思うんです。
 この辺について、行政改革政権を自称なさる今回の政権で女房役を務めていらっしゃる梶山さんは、今回の不祥事に対して、国民の信頼をから得るためには、また再び信頼を取り戻すためには具体的に監査、チェックという点からどのようにすべきだとお思いになっていますでしょうか。
○国務大臣(梶山静六君) 今すぐにここで具体的な方式を見出せるかというと、幾ら考えてみてもなかなかよくは見当たりません。
 それは、今までやっている行政監察あるいは会計検査、それはそれなりの私は成果をおさめていると思います。しかし、こういう問題を意識的に計画をし、何らかのそういうものに導こうという思い切った意思がある人間、思い切った意思というかどうか、大変な悪巧みという言葉がいいかどうかわかりませんが、そういうものにまで全部メスが入るほどの濃密な検査やあるいは監査ができるのかどうなのか、ここに一つの問題があろうかと思うんです。
 しかし、いずれにしても、もとを正すというか、もとはやはり公務員の、いわば国民に対する奉仕者としての厳正な公務員の倫理観、これに下支えがされませんと、幾ら抑えてみてもだめになってしまいます。そうなると、もう行政は全く機能しなくなります。
 ですから、私は、たまたまこういう事例が一罰百戒的にあったのかもしれませんが、この事犯を考えますと、これからそういうものにどう対応しなきゃならないのか。人は善意だけでは回っていないという現実を見なければなりません。大変悲しいことですが、こういう問題で韓非子的な理論をこれから行政の中にたくさん取り入れていかなければならないとなると大変非効率な社会にもなってしまいます。せめて人の健康や福祉を取り扱う部門、善意によって成り立たなければこの問題はどうしても解決ができないという気もいたします。
 まずもって私たちは、みずからの心の問題ですから、わきからどうこう支えることはできないかもしれませんが、その倫理観というのはやはり使命感に支えられると思います。公務員全般に及ぶ共通のものもありましょうし、それぞれの、例えば福祉に当たる者は福祉ということが国民にどれだけのことをなし得るのか、そういう高い使命感をそれぞれが持たないとこういう問題が発生をしてしまう。そして、そういうことができるだけ余りにも豊かになったということもあろうかと思います。そういうことで、もう少し目を厳粛に、厳正に向けていかなきゃならない、このように考えます。
○山崎順子君 私は、官房長官でしたらもう少し具体的なことをしっかり考えてくださっているかと思っていたんですね。ただ頑張らなければとか、何とかしなければだけでは、これは絶対解決できない問題なんです。
 もちろん、公務員の綱紀粛正とか、いろいろございますけれども、これは何か公務員全体、それから高級官僚全体、また厚生省全体が悪者のように言われていますけれども、決してそうじゃなくて、本当は一部の人なんですね。それはもちろんおわかりだと思いますけれども、でも、こういったことが出てくるというシステムの方にきちんと問題を考えなきゃいけないことでありまして、もし私がそちらの席に座っているんだったら幾つかやらなきゃいけないということが提示できると思うんです。
 例えば、先ほども話しましたけれども、竣工検査というのがあるんです。これは今補助金があるからこそ計画配置が特養などではできるわけです。そして、その基準面積と基準単価がとても低いんですね。最低線しか決まっておりません。耐用年数六十五年となっているんですけれども、それに見合う基準単価、基準面積も最低線ですから、とてもきちんとしたものをつくれないので自己負担を二分の一でやっていらっしゃるような特養ホームもたくさんあるんです。本当にいい特養ホームをつくりたい方は、お金がなくてできなかったり、もう必死の努力をなさって経営しているわけです。
 そういうことから見ますと、私は補助金の率を削減するというこの大蔵省の案は反対なんです。こんなことをしたってしょうがないと思っているんです。大蔵省は、一生懸命補助金をもちろん削除して国家の赤字財政を何とかしたいという、それはあるかもしれませんけれども、これをやったからといっていい老人ホーム、特養ができるわけじゃないんですね。
 私は、これからの時代の要請、人々の要請では新ゴールドプランをもっとよくしていくことが絶対必要で、ここで国庫補助率を削減したら、せっかく九五%のいい特養が逆に泣くことになってしまうかもしれないと思っているんです。
 それで、単価の見直しということも書いてありますけれども、この辺もよく本当慎重にやらなきゃいけないことで、そういうことよりも、実は本当は許認可を初めとする行政の決定過程をもっとガラス張りにして、省庁の内外から監視できるシステムづくりの方が急務だと思うんです。
 おっしゃったように、行政監察もそれから会計検査院も一生懸命やっていらっしゃるのは、ずっとこの決算委員会を通じて私もよくわかっております。行政監察局も、例えば千五百人の人員が千人に減って大変な中でやっていらっしゃるわけですから人員も足りないでしょうし、それからもっと情報機器も駆使して、今のような状況の中では、例えば総務庁の中には法令検索システムなんといういいものがあると思うんですけれども、それと同じような形でシステムづくりを、情報機器を駆使すればもっといい検査体制ができるかもしれないし、監査の中身、監察局自体の効率をよくしていく、それから公平な業績評価をしていくというようなことにどんどん力を入れるべきだと思いますけれども、そこにまたオンブズマンですとか第三者機関ですとか、そういうことを入れることも考えてもいいでしょう。
 そして、一番大事なのは情報公開法、NPO法。これはことしの通常国会で本来は出るべきものでしたけれども、聞くところによりますと、NPO法などは、市民団体がこういった福祉事業の方に参入してくると、それこそ厚生省の既得権益がなくなってしまうから、自分の知っている業者に発注してそこから利益を得るのかどうか知りませんけれども、そういったことができなくなるから、厚生省出身の議員さんとそして厚生省の役人さんが最も反対なさったということも聞いております。そういったことのないように情報公開法とNPO法を来年の通常国会にまず出して早速人々に情報を開示していく、そして市民が、第三者がこういった福祉の事業にもきちんとした形で入ってくるという、そういう方法をとるべきではないかと思うんです。
 それからもう一つ。やはり人事の刷新ということが必要ではないかと思います。高級官僚の多分一部の人たちだと信じたいと思いますけれども、
こういう人たちの本当に腐敗の構造、これをきちんと追及して、先ほども岡光前事務次官の辞表をあっさりと受理したことに対して国民が大変怒っているという、そういうことをきちんと受けとめて、いろんな勉強会に出ていた方がいらっしゃるようですけれども、そういった方々の人事刷新ということも官房長官でしたらぜひおやりにならなきゃいけないんじゃないかというふうに思います。
 それからもう一つ。補助金が特養ホームやさまざまなところでこういった形の使われ方をしていれば、これは決算委員会としては平成六年度の決算を承認できない、できかねるものではないかというふうな気もいたしております。
 この辺について、情報公開法も含めて総務庁長官とそれから官房長官、御意見ありましたらお話を聞きたいと思います。
 あと、本当は女性問題がずっと長い間私の専門みたいなものでしたから、女性問題担当相がかわられたことについてもお聞きしたかったんですが、この特養ホームの問題等は本当に女性だけでなく、生活者、男の方、これからの未来の子供たち、私たちだんだん年をとっていく世代、そういった人みんなに大事なことでしたから、今回はこの質問だけにさせていただきましたが、今の質問についてお二人の御意見、もしありましたら聞かせていただきたいと思います。
○国務大臣(武藤嘉文君) 大変いろいろと御指摘をいただきまして、特に行政監察局については、人員が少なくなっているところは大変だという御理解をいただいて恐縮に存じております。
 私は総務庁へ参りまして行政監察局に言っていることは、やはり同じ立場ではなくて一段高い立場にある役所だ、このようなつもりでやりなさい、誇りを持って本当に一つ一つの行政が正しく施行されているかどうかをチェックしなきやいけないんだから遠慮なくやりなさいということを言っているわけでございますが、先ほど局長からも答弁がございましたように、この特養老人ホームを含めましていろいろ高齢社会の中においてこれからの行政がどう行われていかなきゃならないのか、現状はどんな形で行われているかはぜひチェックをするテーマにしていきたいと考えております。
 それから、いま一つ私の方では情報公開法の法律案のことがございますけれども、これは御承知のとおり、この間、行政改革委員会の情報公開部会におきまして、情報公開の法案の骨子となる要綱をおつくりいただきました。近く行政改革委員会でもこれをお決めいただくようでございますので、そこで決まりましたならば、それを受けまして私どもとしてはでき得る限り、何か六百以上のたくさんの法律とのいろいろの調整があるようでございますけれども、ひとつ法制局にも御協力をいただきながら、できるだけ早く国会に提出をして、そして成立を図っていただけるようにお願いを申し上げたい、こう思っております。
○国務大臣(梶山静六君) 今、総務庁長官が述べられたように、幾つかの今回の事件によって問題点のクローズアップされた点がございます。
 確かに、あるグループが群れをなしてこれを行おうと思うと、先ほど言ったように、表現が悪いかもしれないけれども、悪巧みをすればできるシステムです。ですから、これは組み合わせというかそういうものをもうちょっと考えれば、私は全部世の中の人が悪い、いや公務員が悪いとは思いません、たまたまそういうグループが重なったときに起きたという感じもいたします。ですから、人事の配列というものは各省庁もうちょっといろんな方々の意見が入るように、場合によっては、悪いんですが、相互監視ができるような体制も頭には入れておかなければならない、このように思います。
○益田洋介君 新進党・平成会の益田洋介でございます。
   〔委員長退席、理事吉川芳男君着席〕
 まず私は、最初に国家公務員の人事管理について御質問させていただきたいと思います。
 既に新聞その他の報道でつまびらかになってきている途中でございますが、厚生省の岡光前次官はさまざまな公務員として本来なしてはならない規範を犯した行動をとっていたわけでございまして、報じられるところによりますと、六千万円の現金の授受があって、そして市谷に七千五百万円の豪華マンションを現金で一括払いして購入したり、一千万円以上に上るニューヨークあるいは台湾への私的な旅行をいたし、しかもその際厚生省の女性職員を伴っていたということも明らかになってきているわけでございますし、さらには一千六百万周相当のゴルフの会員権を提供された。国産高級車マークUの新車二台の供与も受けていた。
 こういったことが既に国民の前につまびらかになっているわけでございますので、今回の処分の問題、先ほど来議論されておりますが、国民の側としましては、本心としましては懲戒免職が妥当であろうというふうに思っている方が多いわけでございます。このままでいきますと、自己理由による退職ということでございますから、国家公務員退職手当法とかそれから国家公務員法それぞれ八条、十二条、八十二条の規定に従いまして退職金もすんなり支払われるような形になる。
 そして、本人は厚生省の調査についていまだに自分の罪過については全く否定している。現金の授受もないし、海外旅行を丸抱えでしてもらったという記憶もない、このように言っているわけでございます。
 現在、退職金についてはその手続を停止しているという状態だと伺っておりますが、官房長に、今の調査状況、それから手続をいつ再開するのか、あるいはこのままもう休止してしまうのか、その辺についての見解をお伺いしたいと思います。
○説明員(近藤純五郎君) 前次官につきましてはいろいろな疑惑が言われているわけでございまして、私どもも強制捜査権はございませんし、それから適当でもありませんから十分なことはできませんけれども、私どもが報道されている中で手が届く範囲のものにつきましては調査を進めている段階でございまして、今どの程度までというふうに申し上げるわけにはいきませんけれども、一部申し上げますと、乗用車の借用につきましては御本人も認めているわけでございまして、ただ記憶がどの程度の期間がというのがわかりませんのでそれをさらに詰めていると、こういうことでございます。
 それから海外出張の関係でございますけれども、これはすべて承認をとって出ていらっしゃるというのが確認されておりまして、確かに女性同伴というふうな記事がございましたけれども、その時期に、ちょうど、ゴールデンウイークの時期で、前次官が業務局長当時でございますけれども公務出張で出かけまして、アメリカのFDAの長官とお会いになって国際交渉をされた。こういうふうな海外出張の記録が残っておりますけれども、ちょうどゴールデンウイークのときでございましたので、小山氏とそれからその女性が別行動の形でニューヨークに行った。ニューヨーク、ワシントン。それから、次官は先に帰りまして、女性たちはホノルルの方に行った。
 このようなのは大体つかんでおりますけれども、その他いろいろございますので、また機会がございますればまとめまして御報告する機会があろうかと存じますけれども、きょうは退職金の関係でございますので、退職金の関係につきましては、これは現在、今まで報道されていますような事態の推移を見きわめるまでは慎重に対処するようにと、こういうことを大臣から御指示を受けているわけでございまして、当分の間はこのままの状態に据え置きたい、こういうふうに思っております。
○益田洋介君 それから、先ほど来話題になっております特養ホームの小山博史容疑者、既に逮捕済みでございますが、この人の埼玉県の志木市内にある自宅に毎年一月四日に厚生省の官僚が十数人集まっておった。そして小山容疑者とゴルフコ
ンペに参加していた人たちもいます。九四年十月、東京の料亭で催された岡光氏の保険局長就任祝いにも相当数の官僚が厚生省から参加をしておった。このときの宴席の代金二百数十万円はすべて小山容疑者が持った。丸抱えでごちそうになったわけですね、厚生省の官僚が。
 このいわゆる勉強会と称されている医療福祉研究会なる小山が主宰している会合に現職の厚生省の役人が何人も参加をしておる。例えば、老人保健福祉局長、審議官、社会保険庁の部長、それから総務庁の室長、それから業務局の課長、老人保健福祉局課長、そういった人たちが参加をしておった。一緒につるんで、先ほど官房長官も仲間と言っていましたが、大変な仲間が構成されておったということがわかってきたわけでございます。
 こうした事実がだんだんに明らかになるにつれて、先ほど、これは本日の読売新聞の記事でございますけれども、綱紀粛正を独自に行うことを厚生省は検討しておる、そしてこれらのふさわしくない現職の職員についても相当の処分をしたいということを厚生大臣が昨日発表しているわけですね。これは国家公務員法の八十二条によってどういうことを考えているかというと、免職、停職、減給、戒告、厳重注意と、ここまで考えているということですが、この辺の事実関係は官房長いかがですか。
○説明員(近藤純五郎君) 御指摘のような研究会があったということは事実であろうと思っておりまして、そこに参加したと言われている人たちにつきまして私ども現在事情を聞いております。ただ、この方々の参加度合いというのはかなり濃淡がありまして、なおかつはっきり申し上げて記憶の関係で十分でない面もございます。したがいまして、先ほど大臣が処分するというふうに発表したということはないと思いますけれども、いずれはその問題が出ようかというふうに認識しているわけでございます。そういうふうなことも踏まえまして、さらに私どものできる範囲で厳密な調査を重ねまして、その上で必要な処分等を考えたいと、こういうふうに考えております。
○益田洋介君 国家公務員法八十二条第三号には「国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合」には、先ほど申し上げた戒告とか減給とかそれから免職とかといった処分が適用されることになっているわけですが、この研究会と称される仲間の会合に出席した十数人の官僚たちだけが処分を受けて、そして岡光元事務次官が処分を受けない、この辺が私は矛盾があると思うんです。
 だから、相当性急に辞表を受理されたわけですが、これは先ほど官房長の説明によりますと、厚生大臣とよく話し合った上で決めたということでございますが、根っこの部分にあった岡光前事務次官が処分を受けないで依願退職した形にしておいて、残りの十数名の官僚たちが八十二条に基づいて処分されるというのは、これは二律背反があると思うんですけれども、官房長官、いかがですか。
○国務大臣(梶山静六君) 今は厚生省自身の手によって事実の解明をいたしているわけでありまして、これからそれに伴った幾つかの対策がとられるというふうに聞いております。
 しかし、現実にまだ前次官にそれ相応の違法行為ないしは公務員道に完全にもとるという確たる証拠がない以上、今の時点で懲戒に値するとかどうこうと言うわけにはまいらない。さりとて、もう一つは、行政上の問題を考えれば、その事務次官がそこにいることによって厚生省の人事がどうなるのか、あるいは省内に残ることによってどうなるのか、対外的な評価はどうなるのか、そのもろもろの問題を厚生大臣が勘案をして政治的決断をした。このように私は信用をいたしております。
○益田洋介君 十一月十九日の閣議後の記者会見で官房長官は、この辞表の受理を撤回して、改めて処分することも考えているんだというお話をされておりますが、現在でもこの意向に変わりありませんか。
○国務大臣(梶山静六君) 一度閣議で了解をしたことを撤回することができるかどうか、これももうちょっと法的には調べてみなければわかりませんけれども、少なくとも独立した行政の長である大臣が決断をしたことをわきから軽々に処理できるかどうか、これは若干の問題もあるところであります。
 ですから、実効上どういう処置がとれるのか、この問題についてはこれからも研究をしてまいりたい、このように考えます。
○益田洋介君 昨年の十二月十二日に、当時大蔵省の官僚の問題が浮上しておったわけでございますが、中島元主計局次長、田谷元東京税関長、これらの名前が挙がっておりました。そしてその際、当時の武村正義大蔵大臣は、十二月十二日の閣議に先立って、当時の総務庁長官でありました中山正暉氏と話し合って、これはやはりこういうふうな中島さんのような方、田谷さんのような方にすんなり、懲戒免職ができない場合には退職金が支払われるような制度になっている、この法律自体おかしいんじゃないか、法の改正の必要があるんじゃないかということでお二人は合意に立ち至った。そのように聞いております。
 しかし、その後、第二次橋本内閣が組閣をされるに及んで、全くこの件は立ち消えになっているのが現状でございますが、この点について武藤総務庁長官はどのような御所見をお持ちか。法改正をするつもりはおありか、あるいは法律の問題じゃないんだ、これは人間の心の問題なんだ、だから法律はそのままでいいんだというふうにお考えなのか、見解をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(武藤嘉文君) 私は、先ほどから申し上げておりますように、まず第一は本当に心の問題だと思っております。今御指摘の退職手当を支給する法律につきまして過去にいろいろそういう話があったことも聞いております。ただ、退職手当を支給した場合でも、例えば禁錮になった場合には返していただくという規定もあるわけでございますし、今一概に現在の法律が非常に不備であるというふうには私は思っておりません。
 しかし、そういうお話があったことは聞いておりますので、これもこの間報告を受けたところでございますから、まだ今私は改正しないとも言えませんけれども、とにかく検討だけはさせていただきたいとは思っております。
○益田洋介君 ありがとうございました。ぜひ慎重に検討をお願いしたいと思います。
 それから、また厚生行政に絡んでのことに戻りますが、埼玉県の生活福祉部高齢者福祉課長をしていた茶谷滋氏が十八日の夜に警視庁の捜査二課によって逮捕された。これは福祉法人認可やあるいは補助金の交付というようなことで、与えられた職務権限を不当な目的のために行使したという、そうした容疑でございます。
 すべて福祉関係の話で、本当に国民の皆様には申しわけないという気持ちになっておりますが、福祉に絡んで砂糖菓子にアリがまつわりついているような、そういった構造が実際今まで行われてきたわけでございますので、非常に残念なことでございます。
 この茶谷さんというのは今回の総選挙に自民党の公認候補として出馬をしていた。そして、総理大臣みずからが十月十一日金曜日、埼玉県の大宮の駅頭へ街頭演説に出かけていった。で、埼玉五区の福永候補と六区の茶谷候補のために選挙カーに乗って遊説をした。
 橋本総理は、一九七〇年に三十四歳で厚生政務次官、七二年に自民党の社会部会長、七六年に衆議院の社会労働委員長、七八年には四十一歳で厚生大臣に就任したということで、党内でも有数の社労族、族議員であったわけでございます。したがいまして、厚生省の幹部とは言ってみれば二人三脚のような形で今までずっと政治生活を過ごしてこられた。したがって、総理がこの茶谷さんに力を入れて、力こぶ入れて、そして選挙の応援をするというのはうなずけないわけではございませんが、やはり人物を見る目というのが、一国の総理としては、もっとその鑑識眼といいますか識見
のある人物評価をしてもらわなきゃいけなかった。今になってみればとんでもない候補を自民党は擁立していたわけでございます。
 これについて官房長官は、第二次橋本政権の屋台骨を背負って立っている官房長官ですから、どのようにこの総理の行動についてお考えか所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(梶山静六君) 私が答えるのがいいかどうか若干疑問でございますが、この不祥事件については自民党の幹事長である加藤さんがコメントをいたしておることがあるのでひとつ引用をしたいと思います。落選したとはいえ、我が党候補者であった者がその前職中に犯していたことについては、これを見抜けなかった我々の不明をおわびしたい、これは党の幹事長として正式にコメントをしたものであります。
 我が自由民主党の中で今総裁は総理である橋本さんであります。そして総理であります。ですから、選挙中は総理というよりは総裁としての遊説は当然これは行わなければなりません。ですから、総理が党の指示に従ってこの遊説に出向いたことは間違いありません。かく申す私も、前々日に埼玉県の県下を回って茶谷候補の応援街頭演説をいたしております。大変不明の点をおわびいたします。
○益田洋介君 確かに、官房長官御自身も上尾市と北本市と二市を十九日の日にお回りになられております。このときに長官は聴衆の前で、茶谷の言ったことには私が全責任を持つ、このような発言をされておるんです。責任持てるんですか、こういう行動をした人に対して。
 それからもう一点、加藤紘一自民党幹事長も同じ日に上尾市と北本市を訪れて茶谷さんの選挙応援をされた。そのときに幹事長はと何言ったか。最終日に私が、投票日の前日に私が来たことは皆さん何を意味するのかおわかりでしょう。ここまでみんな力を込めて応援していた。まあ幹事長の話は別といたしまして、官房長官、この御自分の発言、今になってどういうふうにお考えでしょうか。
○国務大臣(梶山静六君) 私も、将来同志となるべき公認をされた候補でございますから、人物評については実は定かにはわかりませんが、党の公認をしたという一つの信用基準がございました。ですから、党の公認をした者が街頭でお訴えをしていることは私も同感であると思うことは当然であります。それ以上見抜けなかったことに対する不明をおわびいたします。
○益田洋介君 先ほどの官房長の話にまた戻ります。
 海外出張は公務であったという話でございますが、厚生省の場合は厚生省の省内の訓令、これに関しては第二十号、昭和五十八年四月二十日に発令されていますが、これに基づいた海外出張の手続が行われているということをおっしゃっているわけですか。
 私は、それは行われていないと聞いておりまして、私用で出張するのにも訓令によりますときちっと届けを出して承認を得なければならない、特に高級な官僚についてはそのようにきちっと定めでありながら、それを使わないで承認を得ないで出張した。こういうふうに伺っておりますが、それは間違いですか。
○説明員(近藤純五郎君) 新聞報道にございます平成五年四月から五月にかけまして、岡光前次官は業務局長でございまして、その当時FDAとの外交交渉をする、こういうことで出張いたしておりますので、当然これは大臣命令でございますので出張命令は切られております。
 それから、私的な関係でもちろんほかにも海外に出かける場合におきましては、本省課長以上の者につきましては厚生大臣の許可が要りますし、それ以外の職員につきましては部・局長等の承認をしておりますので、必要であるわけでございまして、そのほかにも、私どもの調べる範囲で全部調べましたけれども、前次官につきましては私的なものにつきましてもすべて承認がされている、こういうふうに承知しております。
○益田洋介君 それだったらば、大変この部分に限っては訓令を守った立派なお役人さんだったわけだと思いますが、それでは今おっしゃった数回の旅行についての出張願とその承認された書類を見せていただけますか。
○説明員(近藤純五郎君) 必要があれば(「必要である」と呼ぶ者あり)私ども書類を整えまして提出いたしたいと思います。
○益田洋介君 厚生省のこの訓令にもし違反をしていた場合には、どのような処分がとられるんですか。
○説明員(近藤純五郎君) 先ほどの議論と同様でございまして、やめられた方に対しまして処分というのは考えられないわけでございますけれども、私どもが調べた範囲におきましてはすべて私用につきましても承認の手続がされていると、こういうふうに承知いたしております。
○益田洋介君 綱紀粛正について官房長官にお伺いしたいと思いますが、昨年八月十五日、閣僚懇談会があって、綱紀粛正についての議論が出て、その後官房長官名で記者会見がなされました。そして、この同様の内容については、ちょっと読み上げますと、覚えていらっしゃるかどうかわかりませんが、「先般来、地方公共団体の支出する食糧費の在り方や各省庁に対する接待の問題が指摘されており、国民の疑惑や不信を招いていることは、誠に遺憾である。 各省庁におかれては、行政及び公務員に対する国民の信頼を維持するため、いやしくも国民の疑惑や不信を招くことのないよう、一層の綱紀粛正に努力されたい。」、こういう立派な文書を通達として各省庁にお回しになられている。その結果、またこのような不祥事が再発している。
 この通達を出された後、官房長官は、ただ書類さえ配付していればいいというようなお気持ちであったんでしょうか。それとも、具体的に、この通達のとおりに各省庁が新たな努力をしているということを御確認なさったんでしょうか。
○国務大臣(梶山静六君) お答えをする前に、先ほどの答弁の中で、当時の茶谷候補に対する応援の日を選挙の前々日と申しましたけれども、前日の誤りでありました。訂正をさせていただきます。
 それから、私が記者会見で申しました各省庁に対する通達、これは今でも大切な問題であり、今なお私は各省庁に大きな影響というか、そういうものに対する関心も深めていただいている、このように確信をいたしております。
○益田洋介君 総務庁の長官に申し上げておきますが、同じ日の閣僚懇談会の後、前山口総務庁長官は、やはり今官房長官がおっしゃったような内容に似た通達を出されております。これをごらんになりましたか。八月十五日。もしごらんになっていなければ、お帰りになってからぜひとも目を通していただきたいと思います。お願いいたします。
 それから、官房長官はお時間がないということなので、順番をちょっと変えまして官房長官に先に質問させていただきます。
 十一月十二日、閣議後の記者会見で官房長官は、大阪の泉井石油商会から自由民主党の山崎拓政調会長、そして小泉厚生大臣が政治献金を受け取っておった。しかしそれは両方とも政治資金規正法にのっとった正当なものであるから全く問題はないと。それから、政治献金を提供した泉井石油商会という会社がどういう会社であるかというところまで一々詳しく調べて政治献金をもらっておったら政治献金なんて集まらぬ、こういうお話をされておりました。
 同じ席上で記者の方から質問がありまして、じゃ一体、官房長官は泉井石油商会から政治献金を受け取っていないんですかという質問がありましたが、これについて長官は否定されておりましたね。あれは記者会見の席上ですから公式なものじゃありません。今、国会の場所でもう一回確認をお願いしたいと思います。
○国務大臣(梶山静六君) 記者会見では、断定できませんので、ないと思いますと、こう申し上げ
た記憶がございます。今ここで申し上げることはありません、こう申し上げます。
○益田洋介君 官房長官は党内でもきっての商工通であるというふうに伺っております。
 通産政務次官を皮切りに、もちろん通産大臣もなさっております、宇野内閣のときの通産大臣。それから、自民党の商工部会長もされていましたし、衆議院の商工委員長も歴任されていらっしゃる。そして同時に、自民党の石油問題調査会長も歴任をされておる。
 泉井石油商会の泉井純一さんという方、個人的に御存じですか。
○国務大臣(梶山静六君) 残念ながらというか幸いというか、お会いをしたことも面識もございません。
 それから、私は御質問の趣旨がよくわからないんですが、大臣だとかあるいは部会長であるとか委員長を務めるにはそういう人を知らなければ十分に務まらないとでもお思いでしょうか。そんなことは全くありません。石油問題調査会長もいたしております。それはあくまでも職名に応じて、例えばそういう石油業界、販売業界でいえば石油の販売業界の代表の方にいろんな意見を伺うことはございます。あの人が何の役職にあったのかどうか、私にはわかりません。
○益田洋介君 確認をしたかっただけの話でございますから、それが私の質問の趣旨でした。
 さて、それでは次に会計検査院の検査報告、平成六年度の決算について若干の質問をいたしたいと思います。
 まず、これは非常に残念なことなんですが、会計検査院が検査をした結果、検査結果について指摘事項というのがございます。それは、例えば不当事項というような言い方があって、故意に誤りがあってそして十分に公費が使われなかったとか、あるいは本来であればもっと徴収すべきであった税金の徴収を怠っていたというような場合や、さらには一般で言う悪意による不正行為も含まれている。そして、その指摘のうち実に厚生省関係が全省庁のうちで一番多い。私が見ている資料によりますと、厚生省の指摘事項というのは平成六年だけで八十三件、百七十億になっている。
 このことについて官房長、どういうふうにお考えですか。
○説明員(近藤純五郎君) まことに申しわけないことでございますが、私どもの行政は医療とか年金とか非常に大量で、総額になりますと非常に巨額な金になるわけでございます。
 予算でも一般歳出の三分の一を占める、そのほかにも特別会計という形で保険料を財源とする給付も行っている、こういうふうな事情がございまして、非常に多いということは私ども非常に残念ではございますが、そういうふうな背景があるということを御理解願いたいと、こういうふうに考えております。
○益田洋介君 さらに、それが細分化されて実際どういった費目で不当事項が会計検査院から指摘をされているのかというところを見ますと、数字の大きなものの中ではまず生活保護費負担金。これは被保護世帯の年金収入を見過ごすなどして保護費の額を決定した。したがって、負担金が過大に交付されている。指摘件数もさることながら、九件と多いわけですが、金額も五千三百六万円。さらに老人福祉施設保護費負担金、これは先ほど来問題になっている小山のセンターなんかがこれに該当するわけでございますが、件数は三十六件、不当事項指摘金額は三千八百六十六万円。さらに三つ目は児童保護費等負担金、これは二十八件で総額二千百六十三万円。さらに四つ目は国民健康保険の財政調整交付金、これは件数が四件で三千百三十万円。すべて不当事項として検査院から指摘を受けているものについては社会福祉関連なんですね。だから、私はこの辺が残念でならないと思います。これは後で新聞記者の方に公表して、なぜ社会福祉のところにこんな不当事項の指摘が多いのか、よく皆さんにわかっていただけるようにしなきゃいけない。
 会計検査院の説明をお願いいたします。
 これは毎年こんなような傾向があるんですか、私は国会議員になって一年四カ月だからその前の五年、四年というのはわかりませんけれども。そして、そのときの項目というのは今言ったような社会福祉を対象とした項目に不当事項の指摘が集まっているんでしょうか。
○説明員(諸田敏朗君) 平成六年度につきましては先生御指摘のとおりでございますけれども、厚生省関係の社会福祉関係の指摘につきましては大体毎年この項目が不当事項として指摘されております。このほか、医療費等もございますけれども、不当事項として厚生省関係では先ほどの四つの事項がここ数年毎年指摘されているということでございます。
○益田洋介君 何だかよくわからない説明だったんですが、とにかくこの社会福祉関係というものについてはよく注意してお金がむだに使われないように、あるいは徴収漏れがないようによくこれからも監視をしていただきたいと思っております。
 厚生省のゴールドプランというのは総額九兆円に上る大事業ですが、特養ホームの建設補助金というのは大変大きな金額になりつつありまして、先ほど来のお話では、特別その監査の対象に今までこの建設補助金はしてこなかったということは非常に意外な気がしますが、今後はこの不正、不当事項を指摘するためにも特別に注意を払って監査をしていただきたい。
 その決意を聞きたいと同時に、多分これは平米当たりの建設単価がある一定の基準内におさまっていると、もうそれだけで検査をしなかったんじゃないかというような気がいたします。しかし、既に小山の老人ホームで指摘されたように、相当ピンはねして、それで工事を発注しているということであれば品質が相当落ちているんじゃないか。したがって、品質を落として、そしてその建設単価を許容範囲内におさめているというふうな方法がとられていたというような可能性も私は十分にあると。だからこそなおさらこの項目についてはよく監視の目を行き届かせて今後努力していただきたいと思います。
 それじゃ、御所見をお願いします。
○会計検査院長職務代行(疋田周朗君) お答え申し上げます。
 ただいま先生から御指摘ございました老人福祉施設建設にかかわる疑惑が連日報道されているわけでございますけれども、私どもも強い関心を持っておりまして、事態の推移を見きわめながら今後より適切に対応してまいりたいと考えております。
○清水澄子君 それでは、まず会計検査院に対して補助金等の検査体制についてお伺いしたいと思います。
 厚生省の社会福祉法人への補助金等の検査体制についてお伺いします。
 今、厚生省の社会福祉法人への補助金が大きな問題になっておるわけですけれども、補助金の会計検査の体制はどうなっているのか、このことをお聞きしたいと思います。
 平成八年度の予算を見ますと、補助金の総額は十九兆九千九百八十八億円の規模に達しております。国の予算の三割近くが補助金で占められているわけですけれども、会計検査院は青年どの程度この補助金に対する検査を行っておられるのか、その検査の実績と結果を明らかにしていただきたいと思います。
○説明員(平岡哲也君) お答え申し上げます。
 補助金全体、どれぐらいを検査しているかという点でございますが、補助金の検査は濃淡さまざまでございまして、また同じ補助金を年を置いて観点を変えて検査するというようなケースもございます。したがいまして、一概にどこまで検査したとするか、積み上げるのが難しいところがございます。
 補助金の受取人という観点から申し上げますと、昨年の場合、補助金など財政援助を受けた団体六千四団体につきまして検査を実施いたしております。例えば、市町村の場合で申し上げますと、
約三千二百市町村のうち、何らかの補助金に関しまして昨年検査をした市町村の数は二千四百十三というふうに相なっております。
 検査の結果につきましてでございますが、全体の指摘件数の中で補助金は大変大きなウエートを占めております。昨年の場合で申し上げますと、二百四十九件の指摘件数のうち百三十六件と半分以上を補助金で占めておる、こういう状況でございます。
○清水澄子君 現在の検査体制の中では十分な検査をやっておるとおっしゃるわけですね。
 そうであるならば、今度のような問題はもっと早くから会計検査の中でおわかりであったのかどうか、この国庫補助金の検査について今後どのような検査をしていくべきか、その点について、会計検査院はその基本的な考え方について説明をしていただきたいと思います。
○説明員(諸田敏朗君) 今回報道されております事態につきましては重大な関心を持っているところでございますけれども、この件につきましては、現在、厚生省等から事情を聴取しているところでありまして、その結果を踏まえまして今後の対応を検討することになりますけれども、次回の埼玉県あるいは山形県の検査の際には、特別養護老人ホームの施設整備補助金について重点的に調査していく考えでございます。
○清水澄子君 私は、今回のこともそうですけれども、全体の国の予算の三割近くというウエートを占めている補助金に対して、会計検査院というのは今後どういうふうにこの補助金の検査をしていったらいいと考えていらっしゃるか、その基本的な考え方を聞かせてくださいということを申し上げました。
○会計検査院長職務代行(疋田周朗君) 国庫補助金は、先ほど先生おっしゃいましたように、国の予算の中で相当なウエートを占めておりますことから、会計検査院といたしましても従来から重要な検査対象として重点的に検査に取り組んでまいったわけでございます。
 しかしながら、補助金の種類は非常に多種多様なものとなっております上に、件数、金額は膨大かつ多額に上っている状況でございます。これに対しまして、会計検査に従事いたします職員は会計検査院全体でも約九百人程度でございまして、補助金に対する検査もそのほかの検査も含めまして悉皆的に検査するということは事実上不可能な状況でございます。
 したがいまして、補助事業の検査に当たりましては、補助金交付額の規模、それから過去の検査結果、こういったものを考慮いたしまして、事業主体を抽出して検査を実施する必要があるわけでございます。このため、毎年、検査に当たりましては、検査計画を策定いたしまして、これに基づいて計画的かつ効率的な検査を実施することにいたしております。
 例えば、検査計画の策定に当たりましては、毎年、国会やあるいはマスコミで問題になり、国民の関心の高いような領域、それから予算額の急増しているような事業、それから社会情勢の変化が著しい領域における事業、こういったものに重点を置いて勢力を投入するということで取り組んできているところでございまして、今後の検査に当たりましても同じような考え方で取り組んでまいりたい、このように考えております。
○清水澄子君 それだけですと、マスコミで話題になったり、それから何か特別に問題になったことを抽出して検査をするとなると、今回のような問題というのはこれからは調べていただけるんだろうと思いますけれども、やっぱり事前にその問題を発見するということはちょっと不可能なんじゃないかと思います。
 今回のこの埼玉県の彩福祉グループ、これに対しては、今後ずっと検査なさるんだろうと思いますが、検査をされた後のその結果というのはこの決算委員会に報告をしていただきたいと思います。いかがですか。
○会計検査院長職務代行(疋田周朗君) 私ども、今後検査に当たることになるわけでございますけれども、可能な限りお求めに応ずるように努めてまいりたい、このように考えております。
○清水澄子君 可能な限りでは困ります。きょうはここは決算委員会をやっておりまして、決算委員会の委員の私たちがどういう決算検査をしてどういう結果が出たかという実態を知りたいということを今要望しておるわけでして、それについて当然速やかに検査をされて、そしてそれをこの委員会に報告していただきたいと私は思うんです。そうしなければ、これは承認ができません。
 今、これは平成六年の決算審査をやっているわけですね。これは承認にかかわる問題になるわけです。ですから、可能な限りというのは撤回をしていただいて、いち早くこの件については検査をすると、そしてその結果については報告をするということを私はここではっきりお約束いただきたいと思います。いかがですか。
○説明員(諸田敏朗君) 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、本件につきましてはなるたけ早い時期に埼玉県及び山形県の検査を行いたいというふうに考えております。
 また、検査の結果につきましては、私どもとしては決算委員会のそういう御要望もございますので、検査の結果がどうなるかわかりませんけれども、報告するということで対応したいと思います。
○清水澄子君 委員長にお願いします。
 今、私どもが審議していますのは平成六年の。決算ですね。そして、この彩グループに対して平成五年度からずっと毎年補助金が出されておりまして、その総額というのは非常に膨大なものなんです。ですから、平成五年、六年、七年、八年と補助金が交付されているわけですし、そしてまた次、八年度は内示されているわけですね。
 ですから、補助金が公正に使用されているかどうかが明らかでないものをこの決算委員会で私たちは承認することが結局できないわけですから、ぜひこのことについては理事会等にお諮りいただきまして、これを適切にお取り計らいいただくようにお願いをしたいと思います。
○理事(吉川芳男君) 申し越しの点については検討させていただきます。
○清水澄子君 はい。
 それでは次に、厚生省にお伺いをいたします。
 済みません、その前に、官房長官がお戻りになりましたので、官房長官の方に質問をさせていただきます。
 官房長官、このたびの第二次橋本内閣の発足に当たりまして、女性問題担当大臣が官房長官から総務庁長官に移されました。このことは、これは私だけじゃなくて全国の、これまで一九七五年の国際婦人年以来、日本の女性の地位を高めるとか、男女平等の視点であらゆる行政を見直そうとか、そういうことのために、それらを積極的に進めていくために、各国では国内本部機構を強化しなきゃいけない、こういうことを何回もの国連の国際会議で決定をしてまいりました。これは世界じゅうの国が努力をしている問題でございます。そのために政府の関係者も女性団体もNGOグループも一体になってその努力を続けてきたわけでございますけれども、今回の措置につきましては、なぜそうなったのかということについてはほとんど、女性団体も含めて今回の橋本内閣は女性問題を軽視しているんだという、そういう受けとめが非常に強うございます。
 それは、何ら理由が明確でないということと、特に本年七月三十日に、国内本部長であります総理の諮問を受けました男女共同参画審議会が、二十一世紀に向けた男女共同参画社会を推進するための総合的ビジョンというものを答申されたわけです。そのビジョンの中にははっきりと、もっと男女共同参画社会の実現をこれまで以上に加速をしていかないと日本は非常におくれてしまっている、そのためには現行の国内本部機構のさらなる充実強化が必要なんだ、これを最重点課題として位置づけなさいということが答申をされているわけです。
 ですから私は、橋本内閣の官房長官に、これまでずっと宮澤内閣以来官房長官が女性問題担当大臣として、そして各省庁を激励しながらまた提案しながら推進していくという役割を今度変えられた。そういう立場は一体何なのかということと、今後どのように国内本部機構の機能を強化していかれるのか、そのことをまずお伺いしたいと思います。
○国務大臣(梶山静六君) 若干の時間中座したことをお許しいただきたいと思います。
 今回の第二次橋本内閣が発足いたしまして、私は引き続き官房長官を拝命いたしました。そして、このたびは沖縄担当と、それから阪神・淡路復興対策担当という二つの別名をちょうだいいたしました。前回は女性問題担当であったことは今御指摘のとおりであります。
 私は、内閣官房の大きな仕事として、男女共同参画推進本部の副本部長を務め、そしてこれらの事務を所掌し、また推進に当たっている役割には変わりはございません。しかし、今回の第二次橋本内閣で、まさに量も質も全く違う問題でありますが、沖縄という問題と、それから阪神・淡路の震災復興というこの二つの任務を特任されたゆえんのものは、非常に限定的に沖縄問題というものに取り組まなきゃならない、そのことが内面では一つあろうかと思います。
 それからもう一つは、確かに私の担当自身に変わりがあるわけではございません。しかし、今回は、総務庁長官は行革担当になっております。行革担当というのは、これから例えば各般の行政やその他を進める上にどういう問題が一番大切なのかどうかということになりますと、私の認識以上に、やはり総務庁長官が行革担当をするならば、この女性問題というものに大きな力点を置いてもらうためにも、これは大切な業務である、このような理解を恐らく総理がされて、私に二つ、そして総務庁長官に女性問題担当を特任されたと、このように理解をいたしております。
○清水澄子君 私の質問時間が短いので、行政改革と女性問題の関係をぜひ議論したいんですけれども、今まで私は政府の方から行政改革と男女平等なんというのは伺ったことがありませんので、そういう方針はいつどこで決定なさったのか。それはぜひ後ほど、その方針を明らかにお見せいただきたいと思います。
 私は、今日政府が進めている行政改革と私どもがずっと積み上げてきた男女共同参画推進という問題とはちょっと質が違っていると思いますが、そういう御認識であるということだけは今わかりました。しかし、その具体的な方針をお示しいただきたいと思います。
 そこで、総務庁長官が一番適任であるかどうかというのは、日本の女性団体はだれもそう思っておりません。それで、今回がそういう事情であったとしたら、これはずっと今後はそういうことになるのでしょうか。それとも、官房長官は機会を見てまたちゃんとみずからの担当として責任をお持ちになられるのかどうか。
 その一点と、もう一つは、これは男女共同参画審議会の存置期限が来年の三月三十一日までになっております。これを法的な裏づけを持った強力な審議会にしてほしい、するべきだという答申がなされておるわけです。私は、橋本内閣が女性問題を軽視しないというのであれば、これはやはり答申を尊重して、特に今官房長官は副本部長でございますから、次期通常国会にはちゃんとその答申を尊重した措置をするということをぜひここでお約束いただきたいと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(梶山静六君) 冒頭の御質問に関しては、私が答えるべきものではなくて、総理大臣の任命でございますから、私が先ほどは勝手に推測をして総理の気持ち、それから総理が申されたことを実はオウム返しに御返答申し上げたわけでありまして、これから先私がさらに女性問題担当にみずから手を挙げるとか挙げないとかということは、これは越権でございますので、ひとつここでの答弁をお許しいただきたいと思います。
 それと第二点の男女共同参画社会の形成について、これは私の所管事項であります。全力を振るって、今まで答申に盛られたこと、あるいは三党合意に基づいた点、こういうものを踏まえながら、恒久的な審議会の設置、やがての展望には基本法的なものが果たしていいのかどうなのか、成り立つかどうか、そういうものもひっくるめたことをこれからも精力的に取り組んでまいりたい。この気持ちに変わりはございませんが、大きな意味で女性問題というのは各省、各般にわたる問題でありますから、今々私は、沖縄の問題は量的にも質的にも大変異質なものでありますが、この問題に専念することをお許しいただきたいと思います。
○清水澄子君 しかし、やはり共同参画推進本部の責任を持っていらっしゃる方ですから、強力な法的な裏づけを持つ審議会には努力をするということはお約束できませんか。
○国務大臣(梶山静六君) そのとおり懸命な努力をいたします。
○清水澄子君 次に、ずっと皆さん方が質問をしておられます厚生省の、埼玉県の彩福祉グループの設立認可とか補助金交付をめぐっての収賄事件といいますか、警視庁の取り調べによれば、この岡光前厚生省事務次官は小山博史容疑者から現金六千万円を受け取っていたとか、また元厚生省課長補佐の茶谷容疑者もやはり収賄ということで、特にこれは選挙の資金ということで二千万円を受け取っていたと。さらに、現職の官僚がいろいろこの問題にかかわっているということが毎日報道もされておるわけです。
 このような事件というのは、これから介護保険制度等を進めていかなければならないこういうときに当たって、国民の厚生行政に対する不信というのは非常に大きなものがあると思います。その上にまた消費税を上げるなどということが準備されているわけですから、国民はこれはもう我慢のできない問題として受けとめていると私は思うわけですけれども、橋本内閣が行政改革を公約に掲げてスタートしたこの時期においてこういう高級官僚の収賄事件が明るみに出ていることについて、私は、単に口先だけでの綱紀粛正というのはもう国民は納得しないし、それでは国民の信頼を私たちは呼び戻すことはできないだろうと思います。もう橋本内閣はここにおいて具体的な行動が求められていると思いますけれども、この事件に対する橋本内閣の基本的な姿勢と、どういう対処をなさるのか、このことを官房長官にお聞きしたいと思います。
○国務大良(梶山静六君) 橋本第二次内閣の発足に当たりましても、これからの新しい時代に対応するその一丁目一番地は行政改革である、この位置づけを明確にされて五つのいわば改革プログラムを示したわけであります。そのこと自身は私は極めて適切であるし、今緊急で国民の大きな、各党とも今度の選挙公約に掲げたことでもございます。その重要性についてはだれしも否定をするものではないと思います。
 しかし、残念ながらそのやさきというか出ばなを厚生省のいわば不祥事件というか、まだ内容の究明はできておりませんが、いずれにしても、この問題をめぐりまして国民の信頼が大きく崩れてしまった。特に、介護であるところの福祉あるいは医療、どちらかというと精神的なあるいは肉体的な社会的な弱者を対象とするだけに、この問題に対するショックはこれは大きなものがございます。公務員、どの公務員でも同じでありますが、この場に当たるそういう方々の高い倫理観と申しますか使命感というのが要求をされている職場であるにもかかわらず、こういうことが起きたことは何といたしましてもまだ悪夢のような思いがいたしてなりません。
 それでは、果たしてこれから綱紀粛正にどんな取り組み方があるかといいますと、やはり一つはこれは心の問題であります。今まで不用意にないしは安易になれというものがあったかもしれませんが、この事件を契機にいたしまして、むしろ心配するほど萎靡沈滞をするのではないか。過ちなきをもってとうとしとする明治以来の官僚道があ
りますが、過ちを犯すことが何よりもだめだということで、積極的な前へ進む気持ちあるいは使命感、私はこういうものに欠如があってはいけないという気がいたします。
 私は、高い旺盛な使命感があればこういう綱紀粛正という問題はおのずから消えてなくなるはずだ、こう確信もいたしますが、世の中は善人ばかりではないということ、それからよく私は最近になって感ずるんですが、人間は変わらなくはない、生々流転という言葉がありますが、過去によかった人でも時代とともに人が変わるということがあります。
 こういうことを肝に銘じながら、その変わり行くさまをどうとらえていくか、そういう問題にこの行政の配意、特に綱紀粛正という問題についていかなる方策があるのか、こういう問題に具体的に取り組んでまいりたい、このように考えます。
○清水澄子君 もっと厳正に本当に対処していただきたいということを要望いたします。
 次に、官房長官は沖縄に関する特別行動委員会の沖縄問題担当大臣であるということで、SACOの最終報告は十二月初めに出される予定とされているわけですけれども、この間、十一月に沖縄を訪問した防衛庁長官がシュワブ沖の海上ヘリポート案が有力だということを発言して、そして地元の沖縄では名護市議会がいち早くこれの反対決議をしておりますし、また地元の方では海上ヘリポート案に非常に反対の動きが強くなってきております。
 官房長官は地元の意見を尊重しなきゃいけないということをおっしゃっているわけですけれども、現在有力とされるこの海上ヘリポート案に対して沖縄県及び地元自治体とどのように調整されていかれるお考えか、その点をちょっと、時間が短いのでひとつ簡潔にお願いします。
○国務大臣(梶山静六君) 沖縄担当を仰せつかりました。今までも総理を助けて沖縄の問題には若干、権限はございませんけれども総合調整という名で取り組んでまいりました。一義的には外務省であり、防衛庁ないしは防衛施設庁がこの問題に当たっていることは御案内のとおりであります。
 そして今、SACOの最終的な取りまとめが行われようとしておりますが、前回、先週でありますが、金曜、土曜と沖縄に参りまして、まだ機が熟していないこともよく知っております。
 しかし、私は、沖縄に参りまして現地を見て、やはり普天間の基地を返してもらうということが最大の沖縄の関心事でなければならない、またそうであった。それから現在もそうである。市街地の中に、真っただ中に挟まれた普天間を返すことが沖縄のいわば象徴的な出来事になる。また実質的な問題でもそうである。その返された後に基地がないにこしたことはないという沖縄の県民の願いもありますが、日米安保条約と有効な米軍の軍事力、こういうものを考えあわせますと、その機能をどこかに維持しなきゃならないということもまた差し迫った政府の責任でもあります。
 そういうところを見ながら今回沖縄に参ったわけでありますが、私はマニラの総理に電話を申し上げて、十二月二日にSACOの最終決定がなされるというときに、最終的に新しいいわばヘリポートがどこにどういう規模で設けちれるということに合意するわけにはまいらないだろう、これはぜひ、マニラで不用意な発言があっても困ります、思い過ごしかあっても困りますという意味で緊急に連絡をおとりいたしました。
 いずれにしても、十二月二日のSACOにそこまでの結論は私は出し得ない。それは日米間というか政府対アメリカの関係はありますが、政府は沖縄の代表でもあるわけでありますから、沖縄の県民の、一〇〇%とは申しませんがある程度の理解を得ないで、あるいはお話をしないでそういう問題に踏み切ることは私はどんなことがあってもいけない。
 ですから、はっきり私は申し上げますが、防衛庁長官の発言は軽率だとあえて私は非難をいたしました。お互いにそういう思いを込めながらこの問題の解決に努力をしてまいりたい、こう考えます。
○清水澄子君 ぜひ地元との関係を最重点に置いていただきたいと思います。
 次に、沖縄懇の提言でございますけれども、これはなかなか非常に誠実な提言がなされていると思います。その中で、今までの米軍基地の返還というのはこれまで主として米軍側の要求、そういう観点から判断されてきたと。そのために地元の優先順位にそぐわない形での返還が行われたり、一部返還された結果でもその後処理が困るとかそういう問題が見られると。だから、今後も地元市町村の返還要望に沿う形で米軍基地の整理、縮小を引き続き政府として日米交渉をしていくべきだという指摘があります。
 それからもう一つは、沖縄の経済振興のための特別プロジェクトを実現するために、次年度の平成九年度の予算編成にきちんと組み込んでいかなきゃいけないということが指摘されているわけですけれども、この二つについての長官の基本的な考え方をぜひ、ポイントだけお答えください。
○国務大臣(梶山静六君) 大田知事を含む沖縄協議会が発足をいたしております。そういう場を踏まえてこれからのことを進めてまいりたいと思いますが、特に私は、今まで政府と沖縄県の間でいろんな話し合いをいたしております。ただ、具体的に進んでいるのは五十億の調整費の実は取りつけ方、これをいつにやるかという問題がまだありますが、そういう約束をしたこと以外には具体的な問題としては進んでおりませんが、いろんなお話の中に総理と大田知事の信頼関係が醸成をされつつあることは間違いがございません。そういう信頼に基づいた行動をこれからとっていかなきゃならない。その一環として、現実に基地を抱える市町村の問題を我々は解決しなきゃならないということで、私の私的諮問機関ではございますが、それぞれの関係の方に懇談会の委員になっていただいて濃密な調査をしていただき、提言をちょうだいしました。
 それは、今まそどちらかというと、恐ろしくというか、思想としてはいいんですが、基地問題ないしは基地周辺の方々のいろんな対策をすることは基地の固定化につながるのではないかという一つの懸念、これがあります。しかし、それじゃ今現実にある基地周辺に何もしなくていいのかというこの反論、この二つがございますから、基地の固定化につながらない範囲内で今抱えている彼らの問題点を現実に解決することは何よりも大切だろう、この問題で実は御提言をちょうだいしました。
 この中身に幾つかのプロジェクトがありますが、必ずしもすべてを網羅しておりません。彼らがまた行政的な今までの手法ではない答申をしてくれております。それは、ここ数年、恐らく五年ないし七年と彼らは想定をしておりますが、ここに数百億ないし一千億程度の事業費を新たにこの市町村関係に投入をすべきだ。そういうことをめぐって、これからどういう表現で単年度主義の予算を将来に向かって拘束ができるような御返事ができるかどうか。私はその要求は当然だと思いますし、その答申をなるたけ誠実に守っていきたい。しかし、その中にはまだ決まらない問題もありますから、こういう問題を継続的にこれから精査していかなきゃならぬ。
 そして、大きな沖縄という一つの県の立場、これをどういうふうに位置づけていくか。基地のない県をつくりたい、それはだれしも願うところでありますし、段階的な問題があるかもしれませんが、それと相呼応しながら、知事も言われるように大きなグランドデザインを描きながら、二〇一〇年に向けての発足をいたしているわけですから、これに向けて我々も最大限の努力をして沖縄の振興のために努力をしてまいりたい、このように考えます。
○清水澄子君 ぜひ積極的にひとつ取り組んでいただきたいと思います。
 もう時間があと少ししかないので、厚生省にお伺いいたします。
 まず、これまで問題になっておりましたこの厚
生省の、不祥なんという問題じゃないんです、もう本当にこういうふうな、厚生省の内部というのは一体どういうことになっているか、普通の人では考えられないような状況が明るみに出ているわけです。そして、現職の課長初め審議官の皆さんたちの名前も、つい最近、日曜日のTBSの報道を見ていまし光ら、その中で、埼玉の上尾市の施設建設の検討委員会には現職の厚生省の課長二人の名前が出てまいりますし、また吹上町の吹上苑竣工式のビデオにも和田審議官とか渡辺保険課長の顔がそのままそこに出てきている。また、きのうの新聞などはいろんな人たちの名前が出てきているわけです。
 これらについて私は厚生省官房長にお伺いしたいんですけれども、この事件の関係者が厚生省の中にどの程度いらっしゃるか、一体何人いられるのか、どのような役職の人がいるか、それからまた現在まで明らかになっている事実関係について、もう時間がありませんから簡潔に、これは官房長にお伺いをいたします。
○説明員(近藤純五郎君) 現在報道されております厚生省の関係者、これは厚生省から他省庁に出向されている方もいらっしゃいますけれども、この人たちにつきまして、私を中心にヒアリングをいたしております。
 一番大きなものの中に医療福祉研究会というものがあるようでございまして、ここには十数名が参加いたしております。ただ、事情を聞いておりますけれども、参加度には非常に濃淡がございまして、中には一回も出席したことがないと、こういうふうな方もいらっしゃるわけでございますし、記憶も非常に定かでない方も多いわけでございます。
 したがいまして、一度は聞きましたけれども、もう一度これは再調査する必要がある、こういうふうに思っているわけでございまして、こうしたことではっきりしないまま公表されますと仕事にも支障が生じる、こういうふうなこともございますし、恐らく処分の問題にも関係してこようというふうに思っているわけでございます。事件全体の推移、それから私どもの調査の進み度合い、これを勘案いたしまして、いずれかの時期につきましては公表したい、こういうふうに考えております。
○清水澄子君 もう時間が参りましたので、これで質問を打ち切ります。
 あと幾つかあったんですけれども、今のような御答弁ではだれも納得しないと思います。もっとやはりはっきり自分の決意をお述べになるべきだと思いますので、また次の質問に続けさせていただきたいと思います。
 終わります。
○川橋幸子君 民主党の川橋幸子と申します。
 初めに、官房長官は記者会見の御予定もあるというふうに伺っておりますので、官房長官の方に女性政策の推進についてのお話を伺いまして、その後、引き続岩、同僚議員がさまざま大変力のある、あるいは鋭い、それから含蓄のある質問を続けております今回の特別養護老人ホームに絡む、この件だけというわけではございませんけれども、行政監視のあり方というものの大変象徴的な事件がと思いますので、それについての姿勢をお伺いさせていただきたいと思います。
 まず、女性問題につきましても同僚議員が何点か御質問させていただきました。確認の意味の御質問になるかもわかりませんが、こういう聞き方をさせていただきたいと思います。
 男女共同参画といいましても、女性政策といいましても意味は同じでございます。女性政策といいますか、あるいは官房長官の所掌事務の中では男女共同参画社会の実現といいましょうか、この推進は強めることが必要かどうか、現状のままでよいと思っていらっしゃるかどうか、こういう聞き方で御答弁いただきたいと思います。
○国務大臣(梶山静六君) 先ほどの質問でも答えましたように、まだまだ法律的にも制度的にも習慣的にも共同参画ができるほどの体制は整っておりません。ですから、強力な推進をしてまいらないといけない、かように考えております。
○川橋幸子君 強力な推進といいますと、今総理の諮問機関でございます男女共同参画審議会、この存在が時限立法になっている、大変あやふやな存在になっているとか、あるいは推進体制といいますのも本部機構は閣議決定、閣議決定というのは最高の意思決定だと言われればそれまででございますけれども、法律的な根拠を持つというやり方をとっている国がたくさんございます。先進国もそうでございますし、それからお隣、韓国で女性発展法というふうに訳されておりますけれども、私ども、いつも日本の方がモデルになって韓国がそれを受けとめてくださって女性政策がアジア地域にも推進していくと思っておりましたけれども、今回女性の問題については韓国の方に先を越されたという、こんな感じがするわけでございます。
 ということでございますので、もしその政策推進が必要だということであれば、女性基本法の問題ですとかあるいは審議会の設置根拠ですとか、その法的措置のあり方ですね、今から検討してということではなくて、やはりポリシーを官房長官も本当はお持ちなんではないかと思いますが、もう一言お答えいただきたいと思います。
○国務大臣(梶山静六君) これも先ほど申し上げたことの再確認をされているわけでありますが、二度も三度も言うことが恐らく私の信念につながる、あるいは将来に間違いがないようにという意味での女性議員からの注文だというふうに受けとめてもう一回お答えをいたします。
 この審議会をさらに継続するための努力は間違いなく払って実現をします。それから基本法はそういう方向を望みながらやってまいります。
○川橋幸子君 ありがとうございました。
 それでは、行政監視の問題に移らせていただきたいと思います。
 私がお伺いさせていただきたい視点は、今回の厚生省の事件については大変シンボリックなものでございますので、この部分は総務庁長官の方にお伺いしてもよろしいでしょうか。
 それでは、官房長官ありがとうございました。ぜひ公約を守っていただきまして、よろしくお願いしたいと思います。
○国務大臣(梶山静六君) わかりました。
○川橋幸子君 それでは続けさせていただきます。
 私が質問させていただきたいと思う視点は二点ございます。一点は、今申し上げかけたことでございますけれども、最近時点の大変ゆゆしい行政腐敗を象徴するようなこういう事件でございますので、総理の意向を受けましてもう少し、官房長官の方がお役目がなと思いながらですが、行政改革についての副総理格、現在総理臨時代理でいらっしゃる総務庁長官の方に、厚生省自体の取り組みについてお伺いしたいと思います。
 事務次官の辞表がさっと受理されたということで、一般国民は、事件の全容といいましょうか、それが厚生省内でちゃんと調査されないのではないか、こんな不安を持ったわけでございますけれども、これにつきましてはきょう、厚生省官房長の方からも究明が進んでいるというようなことをるる伺いましたので、まあそれは一安心なんでございますが、一つ私が考えますのは、意識改革が必要じゃないか、このように思います。武藤総務庁長官も、全体の奉仕者という公務員の意識をもう一回かみしめる必要があるのではないかというような御指示をされていらっしゃるようでございます。
 そこで、私は、世間を騒がせたというような、こういう省トップの言葉、またその言葉を厚生省の幹部の方もお使いになりますけれども、騒がせたということではなくて、これはむしろ罪の意識を問われるべきものではないかと思うわけです。全体の奉仕者という意味は、主人公は国民、市民でございます、納税者でございます。その人たちのために、奉仕というのはやってあげるという意味じゃなくて主人の下で働く、そういう意味なわけでございます。市民の目を持ち込むというこの
意識改革が必要ではないかと思います。
 そのアイデアは、「もんじゅ」の事件が起きましたときに、動燃事業団の中では自己改革本部というものを設けまして、あのときは情報隠し、情報改ざん、情報公開以前のことがあったわけでございます。特に技術者の方々は、自分が専門家だという自負が逆に災いいたしまして、国民の目にちゃんと説明するということが足りなかった。それを体質改善のために自己改革本部を設けるというようなことをやられた。こういうアイデアがあるわけでございます。
 その全体の奉仕者としての意識改革について、もう少し厚生省に対して、あるいはこういう事件が起こる可能性の高いといいますか、もう幾つもありますけれども、心配のある省庁に対して意識改革をしっかりと求めるような御示唆をなさるお気持ちはおありになりませんでしょうか。
○国務大臣(武藤嘉文君) 厚生省の岡光事務次官の問題につきましては、大変遺憾に思いますし、今のようにお騒がせしたというよりは、もし事実であるならばまことに国民に対して申しわけがないことだと思います。
 今お話しのとおりで、私も先ほどから申し上げておりますとおり、公務員というものは国民全体に対する奉仕者でありますし、このごろ余り使われませんけれども、かつてはよく公僕という言葉を使われたわけでございます。公僕というのは、御指摘のとおりの公に対するしもべでございます。こういう考え方を本当に一人一人の公務員が持ったならば、少なくとも残念な事件というのは決して起きないのではないかと思っておるわけでございます。
 具体的にそれではどうかといえば、総理はこの間、各官房長を招集いたしまして、それぞれの省庁においてしっかりした。従来とは違った意味で本当に綱紀粛正をきちんと具体的に実現できるようにそれぞれ各省庁でやるようにという指示をしていただきました。
 そして、私どもいわゆる人事管理を預かる総務庁といたしましても、今いろいろと事務次官、官房長、その辺が中心となりまして、そして官邸とも連絡をとり合いながら、そのような残念な事件が起きないようにするためには従来とは違った意味合いで今後の具体的な綱紀粛正をどんな形でできるのだろうか。先ほどは物をもらう、金額の問題とかもいろいろここでも出ておりましたけれども、いずれにいたしましても少し従来とは違った形で、もう少し目に見える形で国民にも理解される形の綱紀粛正の案をぜひっくりたい、それを一カ月以内にぜひつくるようにと、こういうことで私から指示をいたしておりまして、できるだけそういうように努力をしてまいりたいと思います。
 済みません、官房長じゃなくて事務次官会議で総理がそのように各省庁に指示をいたしたと、こういうことでございます。
○川橋幸子君 これまでとは違う目に見える形でと、一カ月以内にそのプランをぜひおまとめいただいて公表していただきますようにお願いしたいと思います。
 さて、市民の目を持ち込むという意味では、私はできたばかりのまだよちよち歩きの民主党に所属している議員でございますけれども、私どもは日本版GAOといいますか、行政監視評価委員会というものを提案しているところでございます。それはまた別途、党レベルあるいは国会レベルでお話しすることがあるかと思います。
 結局問題は、政策決定をどうやったらフェアにできるか。フェアというのは公平とか公正とか日本語では訳されますけれども、世界の動きを見ますとフェアネスというんでしょうか、むしろ正義、市民の目から見て正義が担保される、そういう強い意識を持つことが今の行政改革の中に求められていると思います。フェアネスを試すための手段が公平であったり、公正であったり、透明であったり、公開であったり、それに加えて説明義務、アカウンタビリティーということが住専あるいは「もんじゅ」、あるいは薬害エイズのときに強調されたわけでございます。そういうアカウンタビリティーが今の仕組みの中でももう少し工夫すれば何とか発揮できるのではないかと思うわけでございます。そんな視点から行政監察について伺いたいと思います。
 総務庁は現在の制度的に書いてある役割は幾つかございますけれども、新しい社会、経済の運営の中で国民へのアカウンタビリティーを求める、そういうニーズに対して今の制度をどのように展開していけるか、現状と今後の取り組みについてお話しいただければありがたいと思います。
○国務大臣(武藤嘉文君) これも先ほど私がお答えをしたとおりでございますが、従来の行政監察では私は不十分だと思っております。もう少し、同じ役所であっても一段と高い立場でしっかりした誇りを持ち、そしてしっかりした見識を持って、それぞれの役所のいろいろの行政についてチェックをしていかなければいけないということを言っておるわけでございます。そういう意味合いであるならば、行政当局といいますかいわゆる行政府にそのような監察業務が必要であると私は思っております。
 同時に、今お話のありました民主党さんが御提案いただいておりますことも承知をいたしておりまして、立法府の方においていろいろと行政監視の委員会をおつくりになるということに対して私は決して反対もいたしておりません。行政府の方でそのような議論がなされて、そのような法律が出てきて成立をすれば、当然その法律に基づいて行政監視をいろいろの角度から、国民の代表である議員の皆様方がいろいろと監視をしていただくことに対しては私は結構かと思っておるわけでございます。
○川橋幸子君 一段と高い見地から行政監察のあり方を見直してくださるということでございますので、その際のひとつチェックポイント、これも視点でございますけれども、御要望申し上げたいと思います。
 現在の行政監察の業務運営の方針、何か基本的には三点あるようでございますけれども、政府の中の最重要課題の解決が促進されるかどうか。それから二点としては行革の推進、行革審の事務局、大変御苦労な仕事だと思いますが、それをしっかりとやる。三点目としましては、各省庁に横断的な共通課題をこれもコーディネートしながら総合的に推進する。
 やっぱりこれはキャッチアップのころの行政監察の姿勢のような気がいたします。もちろん、新しい時代に備えての総合的な促進というのは必要なんだろうと思いますが、今の行政監察に欠けているのは、やってはいけないことをどうチェックするか、やらなければいけないことのチェックは非常に御苦労されてやっていただいていると思うんですが、やってはいけないことのチェック、この視点をぜひ入れていただいて、一段と高いところから大臣が指揮命令してくださいますようにお願いしたいと思います。
 さてそれで、また民主党の方にこだわって恐縮なのでございますけれども、行政監視、行政評価を持ち込む一つの手法といたしまして副大臣制というものを御提案させていただいておりまして、今回の内閣では早速に、本当は総務庁にもいらっしゃってよかったのではないかと思いますが、他省の方には強化されている。
 それに関連いたしましてこの参議院の方は参議院らしさのあり方、行政監視というのは参議院の役割として非常に重要なことではないかということで、行財政改革に関する調査会というのをやっております。この調査会は、もちろん調査会の中の運営で決められていくわけでございますが、ぜひ大臣ないしは政務次官に議員同士のフリーなディスカッション、大臣も政務次官もあるいは省庁に行かれますと非常に孤独になられて行政の壁を感じられることもあるのではないかと思いますが、むしろ国民の負託にこたえる政治家である大臣という視点で、調査会の審議の中のディベートに参加なさるというのはいかがなものかと思いますが、いかがでございましょうか。
○国務大臣(武藤嘉文君) 結構役所へ参りますと
忙しいものでございまして、なかなか時間的余裕は今のところございませんが、しかし、そういうことを従来から調査会を設けて非常に真剣に取り組んできていただいていることに対しては心から感謝を申し上げておりますし、これからも、参加をするしないにかかわらず、そこでいろいろ出されます御意見は十分尊重をしていかなければならないと思っております。
 もし政務次官でよければ、政務次官の時間の許すときには、お許しをいただいてお呼びをいただければ、政務次官が参加することは一向に私はやぶさかではございません。
○川橋幸子君 これは参議院の当調査会を運営なさっている方々と総務庁との間のお話し合いになるかと思いますので、こういうアイデアもあるということを念頭に置いていただきたいと思います。参議院自由民主党さんの選挙公約でございますけれども、参議院改革が政治を変えるという大変すばらしいものもございまして、こういうものは超党派で私どもやっていけることかと思いますので、御理解を賜りたいと思います。
 時間が少なくなって恐縮ですが、次は会計検査院の院長代行にお伺いさせていただこうと思います。どうも長官、ありがとうございました。
 行財政改革に関する会計検査院の役割、現行制度下でのさまざまな制約もあろうかと思いますけれども、今回の厚生省関連の不祥事件に関して、それをフォローアップしてチェックするという会計検査院本来の役割と、それから再発防止には会計検査院が今の検査システムの中でどのような工夫をやっていけるのか、こういう意味で事件そのもののフォローアップの会計検査院のお仕事と、それから再発防止にかける会計検査院の役割をお伺いさせていただきたいと思います。
○会計検査院長職務代行(疋田周朗君) まず最初の御質問でございますけれども、先ほど来申し上げておりますとおり、今回の事件につきましては私どもも重大な関心を持っておりまして、鋭意適切に対処してまいりたいと考えております。
 それから、私どもの検査活動自体が、こういった補助事業に対しまして検査が行われること自体、それから検査の結果違法、不当な事態があった場合には検査報告に掲記される、こういったようなことが事業者側におきます経理執行の牽制にもともとつながるものでございまして、そういった意味で違法、不当な会計経理の防止に役立っているものと考えております。
 したがいまして、今後とも適切な計画を立てまして効果的な検査に努めるとともに、もし違法、不当な事態を発見した場合にはこれを的確に指摘してまいりたい、このように考えております。
○理事(吉川芳男君) 川橋さん、時間が来ました。
○川橋幸子君 時間が参りましたので、答弁じゃなくて要望させていただいて終わりたいと思います。
 会計検査院の場合は、決められた守備範囲の中でその事項がいかに違法ではなく不当ではなく行われるかをチェックするのが本来の役割とは存じますけれども、今のような行政不信とかあるいは財政再建、ちょっと観点は違いますが、そういう大きな国民が求めるテーマがあった場合には、いろんな行政システム、現行システムを駆使しながらできることは全部やった方がよろしいかと私は思うのです。
 そういう意味で、現行の制度の限界はあるかもわかりませんけれども、さまざまな行政システム、行政監視のシステムを総動員してやっていただくという意味で会計検査院には御活躍いただきたいし、なおやり方も御工夫いただきたいという要望を申し上げまして、終わりたいと思います。
○椎名素夫君 第二次橋本内閣ができて、この内閣では行政改革を全力を挙げてやるんだということで大変結構なことだと思っております。
   〔理事吉川芳男君退席、委員長着席〕
 今の日本というのは、行政改革のみならず、あらゆる面で目詰まりを来しているようなところもありますし、相当大きく直していかないと、それも早く直していかないとなかなかこれから先の展望が開けないように思うんですが、その中でも特に行政改革というのは重要であるという意味で、橋本総理以下、そして武藤長官も行政改革担当ということで張り切っておられる、大変結構なことだと思っております。
 きょうは、この行政改革と行政監察について、その関連を少しお伺いしたいと思うんです。
 行政改革というのはなかなか大変な仕事で、これと行政監察との関係ということになりますと、そもそも行政監察というのは大体もともとはしっかりとでき上がった機構というものがうまく動いているかどうかということをチェックするのが行政監察の主要な任務ということで来たわけだと思うんですね。機械に例えれば、しっかりした設計図に従っていろいろな部品を組み合わせて、ガソリンか何かをついでやると動く。しかし、それがきちっと動いているかどうかということを各部にわたってチェックして、そしてどうもふぐあいがあったというようなときにはそれに対して警告をする、勧告をするというようなことだと思うんです。
 しかし、これから行政改革をやろうということになると、例えば橋本総理なんかもおっしゃっていますが、今たくさんある省庁を十ぐらいにまとめてしまうというような話ですと、これは機械の設計を相当大幅に組みかえようという話ですね。また、それをやらをいと先に進めないだろうということなわけですから、すっかりでき上がった機械の各部を点検するということではおさまりのつかないような仕事が出てくるという覚悟で臨んでいただかなきゃいかぬのじゃないかと思うんです。
 機械なんかですと一休みさせておいて工場に持ち込んで全部ばらしてつくり直せばいいんですが、行政なんというものは一日も休むわけにはいかないから、動かしながら全然違う設計に変えていくというあたり、これが非常に難しい。その中で行政監察の今までのいわば静態的な、スタティックな監察ということを超えたダイナミックな監視ということが行われませんと、後追いになってしまって、機械を直してからもう一回監察を始めて、その間休憩というようなことではいけない。そういう非常に難しい任務を恐らく担っていらっしゃるんだろうと思うんです。
 そのことをまず申し上げてから、今までの実績というようなことをちょっと振り返っていただきたいんですが、例えば細川内閣で規制緩和をやるというようなことで大変鳴り物入りでやりました。それに対して、それがどういうふうに進んでいるかというようなこと、それについて行政監察局というのはどの程度追跡をしてこられたのか、一つの例として教えていただきたいと思います。
○説明員(土屋勲君) 規制緩和につきましては、平成五年度以降、現在推進しています規制緩和推進計画まで累次の閣議決定等が行われておりまして、それに基づきまして着実な推進が図られているというふうに考えております。細川内閣で始まった行政改革等の累次の閣議決定の中では、決められた規制緩和推進計画の実施状況に関するフォローアップの充実を図るということ、またこれに当たりまして行政監察機能を積極的に活用するというふうにされているところでございます。
 総務庁としましては、閣議決定されましたすべての事項について改善措置状況を把握するとともに、行政監察局といたしましては、過去三回にわたりまして措置済みの事項から約二百事項というものを抽出いたしまして、改善措置状況についての事業者等の評価あるいは改善措置事項の出先機関、事業者等への周知状況等について調査をしてまいったところでございます。その調査結果によりますと、規制緩和の計画に沿って着実な改善措置が講じられておるということでございまして、事業者等の意見を聞きましても総じて効果があったという評価を受けているところでございます。
 また、調査の途上におきまして把握されました事業者等の規制緩和についてのさらなる緩和を求める意見等につきましては、その後の規制緩和の
検討作業に活用しているという状況でございます。
 規制緩和は非常に項目が多いわけでございますが、これを着実に推進するためにはこういうふうな適時適切なフォローアップ機能というのは大切なものだというふうに考えておりまして、今後とも着実に実施をしてまいりたいと考えております。
○椎名素夫君 今のお話で、閣議決定なりなんなりされた事項があって、それから措置済みのものについてフォローアップするということをやっておられるわけですね。措置済みでないものに対す各ドライブとか、それからいろいろお調べになった際に、今ちょっとお話がありましたけれども、さらにこういうことが必要なんじゃないかというようなことが調査されるといろいろわかってくるだろうと思うんです。そういうものについてはどう扱っておられるのか。
 さらに、これは担当の各省庁にこういう考えがあるよというようなことを提案なさるということなんですか。
○説明員(土屋勲君) 行政監察局で取り扱っております規制緩和の関係、幾つかのパターンがございます。
 一つは、各種の行政監察を実施するに当たり個別の規制が必要であるかどうか、現在の規制の仕方がいいかどうかというふうな検討を行って、必要な規制緩和等の意見を各省に対して勧告をし、改善をするという働きが一つございます。
 それからもう一つは、政府全体として規制緩和計画の議論をする、例えば行政改革委員会等の議論の場におきましてぜひこの事項については詳細な現地の実態が欲しいというふうな御要望のあるものにつきましては、私たちも全国調査網を使って調査し、その実態と監察局としての御意見を御報告申し上げ、全体の行政改革委員会の意見の中に反映をさせていただくという働きがございます。
 それから三点目としましては、規制緩和推進委員会等が検討項目を選ぶに当たって国民各界各層から広く規制緩和の意見、要望を収集するという機能も果たしているわけでございまして、その結果は各省庁に提示し、検討をお願いし、さらにフィードバツクしていただいて具体的な改善方策として詰めていくというようなことをやっておるわけでございます。
○椎名素夫君 ちょっと話は戻りますが、行政監察をなさってさまざまな是正のための勧告をなさいますね。その勧告というのは、今までの経験ではどのくらい実際に速やかに実行されているのか、あるいは実行されずにそのまま放置されているようなことがあるのかどうか、その点伺います。
○説明員(土屋勲君) 私ども、勧告に基づいて各省がそれぞれとった措置につきましては、二回にわたってその措置状況の報告を求めております。
 第一回目は、勧告後三カ月ないし六カ月後という期間でございまして、関係行政機関のとった措置あるいは措置予定について具体的な回答をいただいております。その回答の後、六カ月ないし一年後に二回目の回答をいただき、勧告指摘事項の改善措置の推進を図っておるところでございます。
 この回答につきましては、我々の調査結果で個別に指摘をいたしました事項すべてについてどういうふうになっておるかというものの詳細な聞き取りをするわけでございまして、二回目の回答後の改善率で見ますと、昭和六十一年度から平成六年度、かなり長い期間でございますが、この期間について見ますと、九〇%以上の改善措置率というふうに整理をいたしております。
 未措置の事例も確かにあるわけでございますが、指摘事項の措置までにやはり期日を要する事項、例えば救急救命士の救急救命処置範囲の拡大等につきましては、安全性に関するデータの収集とか、救急救命士制度の普及状況あるいは養成のあり方等、いろいろな関係する事項の検討が行われておるということで、我々が回答をとる時点までには改善をされていない、ただ、我々の勧告の方向に沿って検討は続けられているというふうなものが未措置事例として整理をされている状況でございます。
○椎名素夫君 行政改革というのを進めていくと、中央省庁の統合とか整理とか、そういうことだけにとどまらずに、恐らくいわゆる地方分権というところに相当大きく踏み込まなければならないということになるだろうと思います。その点で、今までも委任事務その他については監察局が監査をやっておられる。そして地方自治体などにも注意をしたりということが行われております。
 しかし、この地方分権というのは少し進まざるを得ないと思うんですが、もっともっと大幅に進んだときに、地方の行政の監察というものも、これは相変わらず行政監察局が中央から全部やるということになるんでしょうか。
 先ほどから出ております例の補助金の問題ですね、特養ホームの。ああいう問題でも、先ほど伺っておりますと、余計なお金が出てしまって、それを懐に入れたという話の中で、中央の厚生省の国庫補助として出す分のところはちゃんとやっているけれども、地方で余計な補助金をつけておいたようなところで余計なお金が出て、そういうものでああいうことが起こったんじゃないかというような趣旨のことをおっしゃいましたね、厚生省の方は。
 これは同僚議員がおっしゃったように、実際、全部税金なので、一人の納税者からすれば、この分は国税とかなんとか取られるときは分けて取られますけれども、同じことなので、ああいうことが今でも起こっているということは、これから先、行政改革を進めて分権というような話になったときに一体どういう体制でおやりになるのか、その点伺わせていただきたい。
○説明員(土屋勲君) 最近は、都道府県あるいは市町村におきましても、その組織の中の監査機能の充実強化ということに非常に目覚めてきているように私たちは見ております。具体的には、私たちの方に、行政監察というのはどういう手法で、どういうやり方でやっているんでしょうか、ぜひお教えいただきたいという問い合わせが非常に多くなっているのが最近でございます。
 したがいまして、都道府県あるいは市町村のまさに自主財源に基づく措置につきましては、やはりそれぞれの団体の独自の監査機構がきちっと機能をしていただくということが大切なんだろうと思っています。
 しかしながら、地方分権が今後大幅に進むにしましても、今の膨大な補助金等が一気になくなるとはなかなか思えないわけでございまして、私たちは、委任、補助の行政が依然として行われる限り、やはり都道府県あるいは市町村の行政も必要に応じ監察をさせていただくというつもりでおります。
○椎名素夫君 地方でもそれぞれの中で監察をやるというのがそろそろ目覚めてきたとおっしゃったけれども、この二、三年でも随分でたらめなお金の使い方なんかをやっていますね。ですから、私、思うんですが、先ほどから綱紀粛正というふうなことを言っているけれども、これは中央だけの話じゃないので、地方も相当しっかりやってもらわなきゃいかぬ。
 そういうことからいうと、どうなんでしょうか、にわかに私がこれにくみするものでもないんですが、それぞれお役所の中で、政府それから地方の自治体の中でやるというのはどこか限界があるんじゃないかという気がするんですけれどもね。そこらあたりを、少し飛んで民主党の味方をするわけじゃないけれども、これを国会に置いたらどうだろうという話もありますね。これも国会の方がよっぽどしっかりしないと、それに乗っかって妙なことをやる人もたまには出てきたりするから困るんですが。
 しかし、これはもうお答えになるのは難しいかもしれませんが、行政監察の仕事を今のように総務庁の中で、行政監察局でおやりになるという立場でやっていらっしゃるわけですけれども、例え
ばそのまますっぽり国会に移したら、現場でやっていらっしゃる立場としてどっちの方がやりやすいでしょうね。大臣かな、これは。
○説明員(土屋勲君) 大変微妙な問題でございますが、民主党さんの方の日本版GAOというふうなお話が出ておりまして、私たち、今いろいろな諸外国の制度等も勉強をいたしておりますが、まさにアメリカがGAOというふうなものをつくり、それからイギリスがNAOというものをつくり、それからフランスにも同種の機関がございます。
 それでは、そういうものは格好上、国会の附属機関的な位置づけになっているわけでございますが、そういうふうなGAOとかNAOのある国で政府部内の内部監査機能はあるかないかということを見ますと、我が国よりも立派な内部監査機能をそれぞれ持っているわけでございまして、政府部内における内部監査機能と国会が監視されるものというのは、機能、役割、それぞれ分担があり、相互が相まって監視機能というのは有効に機能するんではないかというのが現時点の私の受け取りでございます。
○椎名素夫君 これで質問は終わりますが、いろいろ最初にも言ったこと、その他踏まえて長官から御感想をひとつ。
○国務大臣(武藤嘉文君) 今いろいろ行政監察との関連で、これからの行革をどう進めていくのか、その中で政府よりも国会に設けたらどうかといろいろ御意見がございました。
 今、局長が答弁をいたしましたように、国会にございましても政府は政府でやはり各国とも行政監察はやっておるわけでございますし、私が先ほど申し上げたように、できればもっと充実した行政監察を本当は政府はしていかなきゃいけないんじゃなかろうか。今までなぜ行政監察がこういう形で定員が減ってきたのかよくわかりません。総務庁に置かなきゃいかぬと私は思っておりません。場合によれば、官邸にこれを持っていってもいいんじゃないか。要は行政監察の仕事を行政府の中でしっかりやる、そして本当に高い立場で、先ほどから申し上げておるように、ほかの役所よりも一段と高い立場で行政監察ができるような、そんな仕組みを私はぜひ考えていくべきだと思っております。
 それから、いま一つ、椎名先生のお話の中で感じましたことは地方の問題です。地方分権推進委員会で中央と地方との委託事務をどうするのか、あるいは将来とも事務の配分をどうするのか、税の配分をどうするのか、今いろいろと議論をしていただいておりますし、これからもまだまだ議論が続くようでございます。
 私、今そのお話を聞きながら、正直幾らこちらで言っても受け入れ体制の地方自治体の方が本当に行革をやる気持ちが起きてこなければ、幾ら中央で行革をお願いしても地方の方がその気持ちになっていただかなければこれはできないわけでありまして、その点非常に私も今悩みながらいろいろお話を承っておって、どこまで我々が地方自治体にそういう問題に対して口を出していけるのか、いわゆる地方自治との関連で非常に悩んでいるところでございますが、しかし私は、行革というのは中央、地方を通じて国全体がやらなきゃならない問題だ、こういう意識を持っておりますので、できるだけ何とかいい方向に行くように努力をしていきたいと思っております。
○堂本暁子君 まず、総務庁長官にテレクラについて御質問を申し上げたいと思います。
 テレクラを御存じかどうか存じませんけれども、私は一年ほど前からこの問題に関心を持ってきたわけでございます。業者がチラシを今マンションや各家庭のポストに入れますけれども、そこでもって広告に出ている番号に、小学校はありませんね、中学、高校の、あるいはもっと大きい主に女性が電話をすると見知らない異性にその電話が転送される、こういうシステムでございます。これが大変今日本ではやっている。
 これは、それでも例外だろうというふうにおっしゃるかもしれませんけれども、実際には平成六年に日本PTA全国協議会が全国六十の中学校の二、三年生を対象に行った子供の生活意識実態調査によりますと、驚くことに中学生の何と二七%がテレクラを経験している。今全国の中学二、三年生の総数は百五十万人でございます。そのうちの二七%といいますとほぼ四十万人。これはもう大変な問題だというふうに思ったわけです。もう犯罪に進んで殺人事件も起こりましたし、それから薬物の乱用につながっていくというようなことが起こっております。
 私は、今までは総務庁の青少年対策推進会議やこの問題を扱っている部署でどうやって規制できるか。言ってみれば縦割り行政の谷間におっこちてしまっている問題。
 ところが、最近、これは都立大学の宮台真司さんという方が書いた本なんですけれども、大変すぐれた社会分析をしていらっしゃいます。世代論的な視点からの分析の中で、決してこれは例外ではないんだと、むしろ今の時代の一つの現象としてとらえるべきだという分析をしていらっしゃる。確かに、子供たちの大体三分の一が経験していることを例外だとか特殊な問題として片づけることができないということで、目からうろこが落ちるような思いでおります。
 それで、この宮台さんの主張でいいますと、被害を受けた少女たち、主に少女なんですが、売春をして望まない妊娠をしたり、それから犯罪に巻き込まれたりという少女たちが経験したことが、ほかの子供たちが学習するチャンスがない、みんなやみに葬られてしまう。だから、今までは悪貨が良貨を駆逐すると言われてきたわけでございますけれども、やはり良貨が悪貨を駆逐しなければいけないのだと。この情報社会でビデオもテレビも雑誌も新聞もそういう広告をいっぱい載せているわけです。とすれば、やはりそういう情報を子供たちのところにどんどん伝える積極的な政策が必要である。この本の中には「現実的かつ論理的な施策に頭を悩ませてほしい」というふうに書いておられます。
 今まで非行等問題行動対策関係省庁連絡会議という長たらしい名前で各省庁で連絡をしていらっしゃるんですが、実際には政策が今の縦割り行政の中では出ることが大変難しゅうございます。総務庁はきのうもなかなかいろいろできませんできませんとおっしゃるんですけれども、できないでは済まされない。今十五歳の少女たち、少年たちはあと十年たてば二十五歳になります。そのうちの三分の一がそういう経験をというようなことは、やはり大変社会病理的に健康ではない社会ということが予想されるわけですので、私は、長官にこの際ぜひしっかりやれということを命令していただきたい。そういった御決意をきょうは伺いたいということでございます。
○国務大臣(武藤嘉文君) 大変難しい問題は、なぜそういうことになってきたかということが私もよくわからないのでございますけれども、それは一体学校教育にあるのか、家庭内のしつけにあるのか、あるいはもっと幼児教育にあるのか、あるいは一般社会の生涯教育にあるのか、私も実際よくわからないのでございますけれども、今御指摘のとおりで、本当に二十一世紀を担っていただかなきゃならない今の子供たちがそういう不幸な形になって、そしてもし暗い人間になっていったならばこんな不幸なことはないという点は私は認識をしておるつもりでございます。
 私も、これは文部省とも御相談をしながら、本当にいろいろ各省にまたがっておる問題だと思います。今お話しのとおりで、縦割り行政だから看過しておっていいものだとは思いません。ぜひひとつ、何らかの形で私どもから呼びかけていけるならば呼びかけて、各省間で、この問題だけではなくて、本当に青少年が健全に育っていただくためには学校教育ではどういうことをしたらいいんだろうか、あるいは生涯教育ではどういうことをしたらいいんだろうか、あるいは私どもの役所はどういう形で青少年対策をやったらいいんだろうか、ぜひ一度私はそんなような会合を持たせていただいて、こういう問題に対しての解決策をみん
なでひとつつくり出していくように努力をしたい、こう考えております。
○堂本暁子君 多分、大臣も私も同じようなジェネレーションでございまして、私どもには大変わかりにくいことなのかもしれませんけれども、やはり時代なのだと思います。ですから、家庭のせいとか学校のせいとかということ以上にやはり時代。
 先日ドイツへ参りましたときにも聞きましたら、やはりドイツでもそういうことがある、アメリカでもある。とすれば、それに対してどういう方策をとっていくかということだろうと思います。国際的なことで申しますと、日本はもう今やポルノは日本からと言われるくらい。外国では、ポルノの場合もアメリカなどでは非常に規制をしっかりしているわけですね。十四歳以下のポルノ写真を撮ったらば、撮った人も売った人も受け取った人もこれは罪で罰せられる。ところが、日本にはそういう規制がございませんから、今や日本へ来て撮影をするというような事態になっています。
 この宮台さんは、規制の時代ではなくてもっと正しい情報を、良貨が悪貨を駆逐するような情報を流すというふうにおっしゃいますけれども、同時にまた、そういった地方自治体ではもうテレクラ条例というようなものが四十ぐらいの自治体で出ていますが、やはり国のレベルでやらなければならないことがある。その辺も御要望させていただきたいというふうに思います。
 多分お急ぎだと思うので、御答弁は抜かして要望だけさせていただきたい。そういう規制についても、今集まって御相談くださるのであれば、ぜひそこで問題にしていただきたいと思います。法的な措置をどうとれるかということです。
 それから、最後にこの問題で申しますと、児童買春、これもやはり日本が大変ターゲットになっておりましてゆゆしき、国際的には非常に評判が悪いことになっておりますので、この問題の最後のお答えとしては、そのことについてどのような御所見をお持ちか伺いとうございます。
○国務大臣(武藤嘉文君) いや、もう時間は間に合わないようになったようでございますから、あれでございます。
 そこで、さきのお話でございますけれども、いろいろ聞いておりますと、たしか四十都道府県で条例ができているようで、全部できるようでございます。地方自治体でまずこれをどう持っていっていただけるのかもよく見ていきたいと思います。
 それからもう一つは、今アメリカの例もお話をいただきましたけれども、日本の場合には、いわゆる報道の自由という問題と、そういう社会悪ともとれるようなものまで規制できないのかどうかという問題がもう一つ私は大きな問題として、憲法上の問題としてあると思うのでございます。そういう点もぜひいろいろ会議をやりますときには議論をしてみたい。憲法上、報道の自由というものに対してどこまで規制ができるのかどうか、私はそれもぜひ真剣に検討してみたいと思っております。
 それからいま一つは、外国における何か日本の観光客がいろいろ忌まわしいことがあるということの御指摘だと思うのでございますけれども、これも実は私どもの所管というよりは、これはまあ縦割り行政で恐縮でございますが、運輸省が所管しております旅行業者といいますか、そういう人たちがやはりしっかりと指導をしていただかなきゃならない問題ではなかろうか。
 私、何かちょっと忘れましたが、私がちょうど党の役員をやっておりましたときにそんな問題が起きたときに、運輸省に対して旅行業者に指導するように何か言ったことが記憶にございます。
 大変若い方々が、これは逆でございます、今のは大人の話でございますが、若い方が今結構海外征旅行に行かれる。非常にお行儀の悪い方も若い方にいらっしゃって非常にひんしゅくを買っておるということがありましたので、私はそのときに運輸省に対して、ぜひ旅行業者を指導して、やっぱり旅行に行かれる方々にマナーを国際的に、日本の国内はともかくとして、外国へ行ったら日本人が笑われないようなマナーをぜひひとつ身につけてもらえる指導をしてもらいたいということを頼んだことがあります。
 今の話も同じようなことだと思いますので、私、いろいろ議論していく上においては、そういう運輸省の方も含めて一遍いろいろと議論をさせていただきたい、こう思っております。
○堂本暁子君 確かに外国でのマナーも大事でございますけれども、もう時代とだけは言えない、やはり日本の中の何と申しますか、大変退廃的な部分かもしれません。
 子供が川柳をつくりました。女子高校生ですけれども、「テレクラで出た相手びっくりお父さん」という川柳、これは笑えないですね。泣き笑いの境地になります。それから、「テレクラはお金と体の交換こ」、これも高校生のつくった川柳でございます。子供たちの方が鋭い。私たちに突きつけられているようなそんな印象を私は持っておりますので、大変深く考えなければならない問題ではないかというふうに思います。
 次に、椎名先生の質問と大変ダブる部分もございますけれども、私も地方分権推進委員会の中間報告を見せていただきまして、先ほどもう長官が実はおっしゃったことなんですけれども、地方がどれだけ受け入れ体制があるのか、どれだけやる気があるのかということを大変危惧しながら、特に機関委任事務の廃止というところを心配しているわけです。
 やはり将来ビジョンとしてきちんと、中央とそれから地方のあり方がどうなのか、そしてその中で機関委任事務をなくすのだとすれば、今お話に出ました地方財政はどうあるべきなのかというところまでが確立していない時点で、地方分権の中で機関委任事務がこれは国これは地方という形で整理されることがいかがなのかということを大変心配しておりますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(武藤嘉文君) 機関委任事務につきましては今いろいろと整理をしていただいておりまして、要は、一つは、法律で決めて地方にお願いをする、機関委任事務とちょっと似たような形でございますが、あくまで法的にきちんと決めてお願いをすると。そうなれば税配分は、当然その分は地方へどれだけいくかというのは国としてきちんとしていかなきゃならないと思います。それからいま一つは、地方独自でおやりいただこうと。これも地方の財源が必要でございますから、きちんとその辺の税配分はしなきゃいけないと思います。いま一つは、もう今までは機関委任をしておりましたけれども、これは国が直接やると。
 三つの分類に分けて今大体整理されつつある、例の地方分権推進委員会でおやりをいただいておると承っておりますので、それがまとまってきた段階で、今後は地方と国との税配分をどうするのかということが、税配分というか財源の配分をどうするのか、そのためにどう税制改正をしていくのか、こんなような問題に入っていかなきゃならぬだろうと思っております。
 ただ、先ほども申し上げましたように、地方も本当に行革をやるというお気持ちを持っていただかないと、これは幾らやっても効果は出てまいりませんので、その辺を非常に私今いろいろと悩みながら、地方自治体にどうお願いをしたらいいのかということは悩みながらも、しかし何とかお願いをしなきゃならないと思っていることだけを申し上げておきます。
○堂本暁子君 今三つの分類に整理なさるその段階で、もう実は古くなっているような制度、まさに行革は時代に沿うようにやるとおっしゃいました。
 そのうちの一つだと思うんですけれども、私は環境の問題をやっているものですから、一番そこで気になりますのは、国立公園は国の所管、そうすると国定公園というのがあるわけですね、これはどちらが所管するのか。県定公園というのもございます。これは地方ということはわかりますけれども、中間にある国定公園というのをここでど
っちにするということより以前に、日本は今国土が大変環境的に破壊されてきている。これは大変問題になっております。
 そういった新しい時代の新しいテーマに関しては、もう五十年前にできたような制度のままで整理をされたらば間違いが起こる、あるいは本来の行政改革あるいは地方分権の趣旨と間違った方向に事が進む可能性があるのではないかということで、このあたりのことは私は環境の問題で具体的な例でお願い申し上げておりますけれども、それぞれの省庁にそれぞれのそういった問題を抱えているのではないかというふうに思います。単に今ある制度の中で区分けをなさるのではなくて、この推進委員会としてもここのところはもう一回制度を検討しなさいと、一年後までにそこの制度がそれでいいのかどうか検討しなさいというようなことでできたらいいと思いますので、これも要望でございますが、ぜひその辺を御検討いただきたいと存じております。
 最後に、女性の問題も先ほど長官の方からおっしゃいましたけれども、行革の中で拡大する方で考えたいとおっしゃってくださったので大変心強く思っております。ナショナルマシナリー、男女共同参画推進本部という、日本語ですと大変長ったらしくなりますけれども、これは国際的な流れの中で、日本は国連からも褒められるぐらいいい制度はあるんですけれども、実態は参画室に四人しかスタッフはいらっしゃらない、それから室長は課長レベルであるというようなこともございまして、日本の人口の半分の女性の問題を扱っていただくのにはいささか規模が小さいのではないか。時代に合う行革というのは、もう今の時代には古くなって必要なくなったものはスリムにしていただいても結構ですけれども、今まで同僚の女性議員がるるお願いを申し上げたり質問をさせていただいた内容で申しますと、ぜひその点は大いに期待をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 これは要望ですので、官房長官いらっしゃるので、次に官房長官の方にお願いを移させていただきたいんですが、先ほど官房長官も同僚議員に御答弁くださった中で法律的にも制度的にも整っていないというふうにおっしゃってくださったので、ああそのように認識していらっしゃるのかと改めて私は思った次第でございます。
 やはり今一番大事なことは、法的にどういうふうにきちんと担保されていくかということではないかと思いますので、その点を伺いたいと思いますが、もう先ほど二度三度と同じ質問が出ているので私は四回目の質問はいたしません。そんなに私たち女性議員はわかりが悪いとは思っていないわけでございます。
 御答弁の中で出なかったことだけを伺いたいと思いますけれども、先ほどから審議会は続けるというふうにおっしゃってくださいました。それは大変大事なことだと存じておりますけれども、同時にそれが法的に、政令の審議会もございますけれども、法律に基づくことだといいなと思っていることが一つで、その点が御答弁になかったのでちょっと気になっております。それが一つです。
 それから二つ目は、女性基本法も今後努力していきたい、それから検討していきたいというふうにおっしゃっておられましたけれども、先ほど官房長官がやはりまだ法的にも制度的にも整っていないとおっしゃった部分はこれから整えていく必要が、少子化、高齢化とよく言われますけれども、大変大事だと思っております。
 その中で、今申しましたナショナルマシテリーがどのように強化されていくかということもございますけれども、女性の基本法、私は環境基本法にも携わりましたけれども、それから参議院では高齢者基本法も清水嘉与子さんや皆様が御努力くださってできましたけれども、やはり基本法がございますと、それは言ってみれば物差しみたいなもので、何かをやるときにその物差しに照らして判断できるということがございます。大変大事なのではないかというふうに認識しておりますので、その審議会の法的な裏づけ、これが一つ。
 それから、やはり女性基本法、今後御努力くださるんだと思いますけれども、前向きにお取り上げいただけたら大変うれしいと思っておりますので、その二点、よろしくお願いいたします。
○国務大臣(梶山静六君) 第一の質問の件は冒頭の質問に対してお答えをいたしておりますが、法律に基づく恒久的な審議会の設置、これは法律に基づくということは第一回目の答弁でお答えをしておりますので、重ねて確認をいたしておきます。
 それから第二の点は、同等のことでございますが、いずれにしてもそういう問題に、たまたまここにきょうは総務庁長官がおいでになりますし、女性問題担当でもありますので、今まで私一人の身にかかったものは、二人ないしは行革というもっと大きいパワーを持った方と共同作業をすることによって進めてまいる、このような体制が整ったことを御報告申し上げて、全力を尽くしたいと思っております。
○堂本暁子君 こういう決算委員会で女性を担当してくださる大臣がお二人お並びになるなんということはめったにないと思います。こちらもずっときょうは女性が並びまして、大変きょうは前向きにいろいろお願いをしたり伺ったりさせていただきまして、どうもありがとうございました。
○吉川春子君 日本共産党の吉川春子です。
 官房長官に質問をいたします。
 女性に対する暴力の撤廃について、国際的な認識そして取り組みはかなり前進してきています。我が国でも十年前は概念すら余りはっきりしなかった。知られていなかったセクシュアル・ハラスメントについて、予防禁止措置をとることの合意ができつつあります。
 昨年、北京で開かれました第四回世界女性会議で採択された行動綱領でも、
 女性に対する暴力は、平等、開発及び平和とい
 う目標の達成を阻む障害である。女性に対する
 暴力は、女性による自らの人権及び基本的自由
 の享受を侵害するとともに、これらを減じ、又
 は無にする。女性に対する暴力の問題における
 上記の権利と自由の保護・促進に対する長年の
 怠慢は、あらゆる国家の懸案事項であり、対処
 が必要である。女性に対する暴力とは、起きる場所の公私を問わず、女性に肉体的、性的または心理的な障害もしくは苦しみをもたらすおそれのある家庭内、職場、教育機関、地域などのいかなる形態の暴力行為をも包含するとして、女性に対する暴力の類型を詳しく挙げて撤廃を求めています。
 日本ではこの行動綱領を受けてことしじゅうに国内行動計画が策定されますが、その基盤となる男女共同参画ビジョンで次のように指摘しています。
 女性に対する暴力は、女性の生活に恐怖と不安を植えつけ、女性の活動を束縛し、自信を失わせ、平等の達成を阻み、開発・平和の障害となっている。
 我が国においても、NGO等の取組によって、女性に対する暴力の実態が次第に明らかにされつつある。また、過去において女性の名誉と尊巌を深く傷つけたいわゆる従軍慰安婦問題への反省に立った。内外の女性に対する暴力の撤廃に向けた取組も必要となっている。
この観点から、政府は女性に対する暴力の撤廃に向けて積極的な対処をすべきだと思いますが、官房長官、いかがお考えですか。
○国務大臣(梶山静六君) 今、第四回世界女性会議の行動綱領にある内容を引用していろんなお話がなされましたけれども、女性に対する暴力、それは確かに女性の人権そのものに対する侵害である、そういう認識のもとに、これからも人権擁護上も看過できない問題であるというふうに認識をいたしております。
 ですから、これからも国民の間にこれらの暴力を容認する風潮がありとすれば、残念ながらその根底には女性の地位を男性よりも低く見るという習慣、風習があるのではないか。私はそういうことはなくなりつつある、むしろ場合によってはそ
の逆とすら思える節も世の中にたくさんあるという気がいたします。それは私の身を振り返ってそういうふうに主観的に申し上げるのかもしれませんが、私はそういうことは断じてないと思いますし、またあってはいけないことでありますから、そういうものに対して、これからはすべての社会を通じて対応をしていかなければならない、このように考えております。
○吉川春子君 行動綱領では「起きる場所の如何を問わず、国家が犯し又は許す肉体的、性的及び心理的暴力」も類型の一つとして挙げています。国家が女性に対して犯した暴力、これが従軍慰安婦問題ですね。
 そこで伺いますが、いわゆる元従軍慰安婦に対して支払った金額と、そのうち国庫からの支出金は幾らですか。
○説明員(平林博君) お答え申し上げます。
 元従軍慰安婦の関係につきましては、女性のためのアジア平和国民基金ができまして、それに対して国庫から補助金を出しております。平成七年度におきましては四億八千百万強、それから平成八年度につきましても同じく四億八千百万強でございますが、この中からは元従軍慰安婦に対するいわゆる償い金は出しておりませんで、これは女性のためのアジア平和国民基金の活動費、あるいは先生が今問題になされた女性への暴力も含めました女性の名誉と尊厳の問題に関するいろいろな普及啓発活動等への補助金ということでございます。
 ちなみに、元従軍慰安婦の方々の一部に償い金が支給開始されましたが、これは国民からの募金でございます。
○吉川春子君 国庫からは一円も払っていない、こういう御答弁でした。
 政府は、一九九〇年ごろまでは従軍慰安婦への関与すら否定していたわけですけれども、その後、資料が出てきたりいたしまして、関与を認めるという官房長官の談話を発表いたしました。この問題については最後に伺いたいと思います。
 警察庁あるいは内政審議室に伺いますが、この政策は敗戦後も引き継がれて政府は同様のことを行っているわけですが、日本政府の日本兵のための慰安所経営の政策、これは敗戦後、アメリカ軍の日本進駐に伴って、今度は米兵に対して日本女性を提供するという政策につながったわけですね。
 米占領軍進駐の一週間後の昭和二十年九月四日付で発せられた。内務省保安課長から警視庁特高部長、大阪府治安部長あてなどの「米兵ノ不法行為対策資料二関スル作」について、この資料を知っていますね。慰安所の設置についてどう書いてありますか。
 まず、公文書館の方から、そういう資料はありますか。
○説明員(関根康文君) 公文書館でございます。
 御指摘の米国からの返還文書でございますが、昭和四十九年の一月に当館で移管を受けまして、以後公開にいたしている、こういう状況にございます。
○吉川春子君 警察庁、そこに米兵慰安所の設置について書いてありますね。ちょっとその部分だけ、一行でいいですから読んでください。警察庁です。
○説明員(山本博一君) 今、先生御指摘の文書につきましては、当庁においては保管いたしておりませんので、お答えいたしかねるところでございます。
○吉川春子君 保管いたしていないということとこういうものが出されてあるということと別でしょう。公文書館で保管しているんですが、警察に関する資料だから読んでくださいというふうに申し上げたんですけれども、お読みになれないようなら私が読みましょう。
 その資料の「対処策」に「婦女子強姦予防トシテハ」という「い」のところに「米兵慰安所ヲ急設スルコト 進駐決定セル時ハ付近適当ナル場所二慰安所ヲ急設スルコト」云々と、このように書かれています。
 これは九月四日なんですけれども、それよりもっと前に、敗戦のわずか三日後、昭和二十年八月十八日に発せられた外国軍駐屯地における慰安施設に関する内務省警保局長通達、この内容を読んでください。
○説明員(山本博一君) ただいま御指摘になりました文書につきましても、御指摘があり調査いたしましたが発見されず、警察庁におきましては保管をされていないものと考えておりますが、引き続き調査を行っているところでございます。
○吉川春子君 もう二週間以上探しているんですよね。土、日も出て探しているということですが、これはなくしたんですか。
○説明員(山本博一君) 鋭意探しておるところでございますが、発見には至っておりません。
 これは、戦後、内務省が解体され、警察制度が根本的に改革されました上、新たに警察庁が設置されたものでありまして、これらの経緯からいたしまして、御指摘の文書につきましては公式に引き継ぎがなされておらないことによるものと思われます。
○吉川春子君 これは自治省が戦後、内務省の解体ということで「戦後自治史」、自治大学校が昭和四十年代に発行している本なんですけれども、ここにこの書類は全部警察庁に移管してありますと書いてあるんです。あなた方が発行した本なんですよ。
 それによりますと、内務省が崩壊しまして、昭和二十三年三片に内事局は新しい警察制度の発足に伴って国家公安委員会にその所管事務を移管して、国家地方警察本部及び国家消防庁がその事務を処理することになったと。司令部のマーカム少佐は、内事局廃止に伴う指示を出し、政令で内務省解体、その機能及び職員の処置についてはっきり規定すること、そして職員がどういう方面に分散し書類がどこに移管されたか明示すること、さらに職員と書類は一緒にしてはならないと指示を出しているんです。あなた方の資料で私は知りました。それでもないと言うんだったらば、なくしたんですか、隠しているんですか。
○説明員(山本博一君) 今、先生が御指摘になりました昭和二十六年一月十六日付の文書につきましては私どもも承知しておるところでございますが、この内容はあくまでも昭和二十三年当時の警察法に規定された国家公安委員会の所掌事務の範囲内において内事局第一局から国家公安委員会に事務の移管がなされたことを意味するものと考えられます。したがいまして、既に廃止されました御指摘の制度等につきましては、国家公安委員会に引き継がれようもありませんし、また引き継がれておらないということでございます。
○吉川春子君 うそを言わないでください。あなた。この本を読んだことがありますか。この本にちゃんとそういうふうに書いてあって、そういう指示がなされていると書いてあるんですよ。この本を読みましたか。ちょっとそれだけ、読んだか読まないかだけ。あなたが読みましたか。
○説明員(山本博一君) 二十三年一月十六日付の文書については……
○吉川春子君 読んだか読まないかだけでいいです。
○説明員(山本博一君) その本は読んでおりません。
○吉川春子君 ここにその書類をどこにやったか政令で決めなさいということもちゃんと書いてあるし、そしてきちっと処置するように司令部の指示が出ているわけです。それで、私たちは警察大学校にあるというあり場所まで教えてあげたでしょう。それでもない、ないと言うのは、官房長官、本当にこれは非常に文書管理が悪いですよ。そして、アメリカに接収された文書は、さっき公文書館が認めたように四十八年に戻ってきて公文書館にあるんですよ、太平洋を往復して。ところが、日本にずっとあるその通達がなくなっちゃっていると。あるいは隠しているのかもしれません。そういう態度で従軍慰安婦関係の書類も一切警察は出さないんです。これはまことにけしからぬことだということを私は厳しく言っておきます。
 それで、私が伺いたいのは、その通達に基づいて各県警が米兵に対する慰安施設を設置し、いろいろなことをやっているわけですね。そういう事実があるかどうかちょっと確かめてもらいたいというふうにお願いしておきましたけれども、どうでしたか、警察庁。
○説明員(山本博一君) 先生の御指摘は、各県の警察史の中にそのような記述があるということかと存じますが、各県の警察史のそれぞれにつきまして私ども承知はしておるところでございますが、各県警がそれぞれ独自に作成したものでありまして、警察庁としては何らの関与も行っておらないところでございます。したがいまして、これらの内容につきましてはコメントする立場にはないと、こういうふうに考えておるところでございます。
○吉川春子君 私、各県の警察の歴史を、これ幾つか、重いですからその一部を持ってきております。
 それで、例えば埼玉県の県史あるいは「さいたま女性の歩み」にはこう書いてあります。
 敗戦から三日後の八月十八日、内務省警保局長は、各庁府県に対して、「外国軍駐屯地における慰安施設について」という無電通牒を発した。占領軍慰安施設として各県の警察署長は、性的慰安施設、飲食施設、娯楽場を積極的に設定整偏するようにという通牒である。その際、営業に必要な婦女子は、「芸妓、公的娼妓、女給、酌婦、常習密売淫犯者等を優先的に之に充足すること」と指示した。
 この占領軍対策は、「一般婦女子を守る」防波堤であるといわれたが、同じ日本の女性の一部を占領軍兵士に向けて公用慰安婦として日本国政府が施策化したこと、しかも、業者の搾取の自由を保障したことにおいて、これほどの女性の人権蹂躙はあり得ないことであった。
こういうふうに書いてあります。
 それから、こういう職務に当たった現場の警察官の声も紹介しておきます。これは「広島県警察百年史」に書いてあります。四百十四ページにこういう記述があります。
 連合軍の本土進駐にあたり、国民がもっとも心配したのは「婦女子が乱暴されるのではないか」ということであった。閣議においても種々論議が重ねられ、八月十八日には警保局長から全国警察部長あてに「占領軍に対する性的慰安施設の急速な設営を実施すべき旨」指令した。まことに残念なことであるが、占領軍人に対する性的慰安施設を設営するという、いわば幇間まがいの仕事を警察がせねばならなかったのである。当時の警察官の苦衷、屈辱感まことに察するに余りがある。
 警察署保管の旧娼妓名簿から前職者らの住所、氏名を調査し、彼女らの住む山村あるいは漁村に向かって面接勧誘するとか、あるいは現役の娼妓、芸妓、酌婦、密売いん者等、かつては取締対象者であった彼女らに対して、外人相手の復職を頼んで回るとかしたもので、
 このようにつらい思いで勧誘した要員五〇〇人を、ようやく九月末日までにはそれぞれの場所に送りこむことを得、米軍主力部隊が到着した十月七日を期して営業が開始される運びとなった。
こういうことについて、一切知らない、通達もなくした。こういうことであなたは責任逃れできると思いますか。
○説明員(山本博一君) 広島県警の警察史にそのような記述があることは承知いたしているところでございますが、先ほども申し上げましたように、戦後、内務省は解体されまして、警察制度が根本的に改革され、新たに警察庁が設置されたものでありまして、警察庁といたしましてはお答えする立場にはないものと考えております。
○吉川春子君 官房長官、こんなの通達なくして現場の警察がやったとすれば余りにも重大だし、しかし、これだけいろんな警察の歴史に全部出てくるんですよ。それをあずかり知らないことだなんて、そんなこと許されないと思うんです。
 官房長官にお伺いしたいんですけれども、言ってみれば日本の恥ずかしい部分ですね。白日のもとにさらしたくない部分です。しかし、やっぱりこういうことも明らかにして、今、これはよくなかった。こういうことをやったのは正しくなかったと、そういう反省すべきときに来ていると思いますけれども、官房長官、この点についてはいかが感想をお持ちでしょうか。
○国務大臣(梶山静六君) 残念ながら、今までそういう記述や話を伺う機会がございませんでした。
 委員の言うことが全部であるか一部であるか、それは私は定かにできませんが、やはり昭和二十年というあの混乱期を考えると、確かに悲しい、それから主権を持っていない日本の一つの縮図ではあった。もしもそれが全部そうだとしても、私はその時代の警察官を責めるわけにはいかない。そういうものが占領軍の名においてなされたのかどうか、これは残念ながら定かにする手段、方法を今私は持っておりません。私なりに勉強してみたいと思います。
○吉川春子君 占領軍がやったんじゃないんですね。日本政府がやったんです。現場の警官がやったんじゃありません。これは政府がやらせたんです。だから今、勉強したいとおっしゃるので、官房長官、私はその言葉に期待します。ぜひ調査して、こういうことに対してきちっとしていただきたいと思うんです。
 それで私は、同時に官房長官、もう一つお伺いしたいのは、米兵に対する性的慰安施設も国の政策として行われたわけですが、従軍慰安婦の問題についても、これは関与したというふうに官房長官談話は言っているんですけれども、私は、関与という言葉は非常に不適切だと思うんですね。現地の軍がちょっと先走ったとか、民間業者がやったことに思わず政府も協力してしまったとか、そういうようなニュアンスが関与という言葉にあるんですね。犯罪で言えば従犯的なニュアンスがあるんですけれども、私はまさにこれは政府の戦争政策遂行の一環としてこの従軍慰安婦の政策がとられたんじゃないか、ここが非常に重要だと思うんです。
 官房長官談話が発せられ、それから一部資料も出されましたけれども、一つは、今政府の御認識が、やっぱり政府の政策として遂行されたという御認識に達しているのかどうかということを伺うのと、それからもう一つは、その後韓国にも行かれいろいろ調査もされているんですけれども、談話以降正式な発表はないわけなんです。だから、こういう問題についてやっぱり政府はその後調べて、従軍慰安婦に対してどの程度の問題まで明らかになったのか、その点について公表していただきたい。その二点についてお伺いしますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(梶山静六君) 平成五年に河野官房長官の談話で、いわゆる関与という、単なる関与ではなくという御指摘がございますが、関与という言葉を使っていることを承知いたしております。
 私は当時のことを、これは全く推測でありますが、私が事実の調査官ではありませんから推測をいたしますと、千差万別の形態があったのではないのかなと推測をいたしております。しかし、一部にそういう関与があったという認識のもとにその後いろんな補償問題というか、そういう問題に対する慰労金その他の措置を懸命に民間で考え、また政府が援助をするというか助長をするというか支援をする、そういうことをとっているという現実を御認識いただければ御理解がいただけると考えます。
 詳細については室長の方からお答えをいたします。
○説明員(平林博君) 官房長官の答弁を補足させていただきますが、平成五年の官房長官談話のもとになりました調査結果によりますと、いわゆる従軍慰安婦についての慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送に関しては、軍が直接あるいは間接に関与したということが判明いたしましたので、それに対応する施策をとってきたということでござ
います。
 その時点では誠実に調査した結果で発表させていただいたわけでございますが、今後、調査を閉じたということではございませんで、事柄の性質上いろいろと後から出てくることもあろうかと思いますので、その点については政府としては関心も持っておりますし、外政審議室の方からは、関係省庁に対しまして、新たな資料が発見された場合にはぜひ知らせてほしいということも依頼しているところでございます。
○吉川春子君 官房長官、千差万別の形態であったであろうということはそうだと思うんです。しかし、それが国策としてなされたのかということなんです、私が伺いたいのは。
 それから、外政審議室が資料を今後提出するということじゃなくて、調査結果を政府の言葉で、調査してこういうことがわかりましたということを発表してくださいということなんです。官房長官、その点、済みません、もう一度お願いしたいと思います。
○国務大臣(梶山静六君) 私が千差万別と申し上げたのは、地域や時代、それによってそれぞれ異なったことが行われたのではないのかなという推測を私がいたしたために千差万別という表現を使っております。
 その表現方法が悪いかどうかは別といたしまして、時代によっては国ないしは軍が関与を全くしない場合もあったろうと思います。それから、敗戦近くなってだんだんそういう関与度が強まったのではないかという推測もいたすこともできます。そういうことでありますから、私は具体的な年次を追った別の、あるいは地域を追った別の詳細な調査というのは今にして行うことが全部できるのかどうなのか、そのおそれはあるけれども、今せっかく努力をしながら、特に、事外国の問題に関しては全力を挙げてやっているというその事象を御認識いただきたい、このように思います。
○吉川春子君 時間なので、終わります。
○本岡昭次君 私も従軍慰安婦問題に絞って質問いたします。
 まず最初は、女性のためのアジア平和国民基金に対する補助金について伺います。
 平成七年度四億八千百四十八万五千円、平成八年度四億八千百二十万六千円、二年間で合計九億六千二百六十九万一千円の補助金を使っています。アジア女性基金は従軍慰安婦にされた被害者に償うための募金活動を行ったのですが、現在幾ら集まりましたか。そしてその集まったお金で何人にどのくらいのお金を支払いましたか。
○説明員(平林博君) アジア女性基金に対する補助金の金額、先生の御指摘のとおりでございます。この補助金を使いましてアジア女性基金は従軍慰安婦問題に対処するということでございますが、現在までのところ約四億七千万円集まっておりまして、そのほかにいろいろとお約束をいただいているところもございます。
 また、償い金につきましては先ほどのとおり、この中から出されているわけではございませんが、国民からいただいた募金の中から一人当たり二百万円の償い金を出そうということでございまして、現在までのところフィリピンの元従軍慰安婦の方々六人に対しまして償い金をお渡ししたということでございます。
 またさらに、数十名の方が今申請を出しておりまして、一種の認定作業というものも続けておるところでございます。
○本岡昭次君 九億六千万の予算を使って集まったお金が四億七千万ですね。私なら九億六千万をそのまま使って償いのお金にしますね。こんなむだなことをなぜするんですか。わからぬね。
 それと、半年もかかって三百人おられるというその方に対して六人しか支払われない。これは一体どうなっておるんですか。何をやっているんですかということなんです。もう答えなくていいですよ、これは。答えられますか、私の言っていることに。
○説明員(平林博君) まず、九億何がしかの予算全部が従軍慰安婦の問題に使われているわけではないということを申し上げたいと思います。特に今年度、八年度の予算の中で、四億円前後はいわゆる女性の名誉と尊厳にかかわる問題にということでございますので、この部分は、もちろん一部従軍慰安婦の関係もございますが、現代的な女性の問題のためにも使うということでございます。
 それから、先生のおっしゃいましたような、多くのお金を使ってそれに相応した募金がないというのはおかしいじゃないか、あるいは支払いがまだ十分でないということにつきましては、これからも努力しなければいけないと思いますが、この建前というんでしょうか、政府の従軍慰安婦に対する法的な立場と……
○本岡昭次君 もうよろしいよ、時間がないんだから。
○説明員(平林博君) それから道義的な立場を調整した結果でございますので、御理解いただきたいと思います。
○本岡昭次君 私は二十二分しかないんですよ。あなたの答弁のために大切な時間を使いたくない。
 あなたは九億六千万のお金を、従軍慰安婦の募金にこのお金を使うためにあったんじゃないと。それでは、一体何と何に使ったかという予算の細目を出せますか。後で出してください、ここでは結構です、時間ありませんから。
 それから、次はアジア女性基金の医療・福祉事業について尋ねます。
 平成八年度予算に事業費として一億五千万を計上していますが、間違いありませんか。間違いがあるかないかでいいんです。
○説明員(槙田邦彦君) 正確には一億四千五百五十万円でございます。
○本岡昭次君 この事業に十年計画で約七億円を支出する方針であると。これも間違いありませんか。
○説明員(槙田邦彦君) アジア女性基金としてはそのような決定をなされておりまして、政府としては予算編成過程において努力をしたい、こういう考えでございます。
○本岡昭次君 そうすると、これは政府の決定じゃなしに、女性基金の計画ですか。
○説明員(槙田邦彦君) そのとおりでございます。
○本岡昭次君 そうすると、アジア女性基金がこの事業で韓国に四億八千万、台湾に九千九百万、フィリピンに一億二千九百六十万、合計七億八百六十万円で計画に移そうとして各国と交渉しておりますが、これは政府の考えじゃなくて基金独自でやっているということですか。
○説明員(槙田邦彦君) 基金としては、おおむね先生御指摘のような事業規模で実施したい考えであるというふうに承知しております。
○本岡昭次君 平成九年の予算編成時期ですが、平成九年にはこの医療・福祉事業の予算要求は幾らしていますか。また、補正予算を組むことになると思いますが、この事業を組み込む考えがありますか。
○説明員(槙田邦彦君) 平成九年度の概算要求におきましては、三億二千百万円を予算要求しております。補正予算につきましては、現段階で何とも申し上げる段階にないわけでございますけれども、いずれにしろこの事業を円滑に実施するために必要な財源というものについては財政当局と話をしていきたいと思っております。
○本岡昭次君 十一月十九日の産経新聞によりますと、インドネシア政府が地元マスコミに従軍慰安婦問題の説明会を開いた際、アジア女性基金からインドネシアヘの医療・福祉事業の援助資金の割当額は十年間で三億八千万円という村山富市前首相の計画は了承しているという説明文書を配付したということですが、このインドネシアヘ十年間に三億八千万出すということは事実ですか。
○説明員(槙田邦彦君) インドネシア政府が配付したペーパーというものを見ますと、その内容、事実関係において幾つかの誤りがあるわけでございますけれども、委員御指摘の十年間で三億八千万円という数字につきましては、インドネシア政
府との間でどのような事業が適当であるかということについていろいろな意見交換を行う過程で政府として言及したことはございますけれども、基金としてこの額でやるということを決定したという事実は全くございません。
○本岡昭次君 そうすると、韓国、台湾、フィリピンで七億八百万に対して、この三億ということで、全体で十一億近くのものを予算化しなきゃいかぬということですか。
○説明員(槙田邦彦君) 現在申し上げられますことは、十年間で約七億円という数字が決定されておりますけれども、インドネシアにつきまして幾らというのは、先ほど申しましたように意見交換の過程で言及されただけでございますから、それが確定したわけではないので、それを単純に合計するというわけにはまいらないと思います。
○本岡昭次君 わかりました。
 台湾、韓国でアジア女性基金の方々が盛んに活動しておられますが、そのことについて聞きます。
 このアジア女性基金の理事、名前を出して申しわけありませんが、下村満子理事が台北市婦女救援基金会あてに手紙を出しておられます。その手紙の中でこの医療・福祉事業について言及しています。
 台湾に関しては、今後十年間の援助総額は約一億円で、三十三人の被害者一人につき約三百万円に相当する。援助期間は十年間であるが、幾つかのケースについてはその期間を短縮し二年ないし三年の間に前倒し支給を行う。韓国では数人の被害者が既にこうした要望を伝えており、それを反映して、その方々一人ずつ三百万円が五年間で支給されるようになります。検討中の案では、初年度に二百二十八万円、その後毎年十八万円ずつ支給される。基金ではこの方針に沿って対応するよう日本政府に要請しているというふうに言っておりますが、これが基金の方針ですか。
○説明員(平林博君) まず、先生御指摘の下村理事の書簡でございますが、これは台北婦女救援基金会が公開質問状を出しましたが、それに対する返事ということではなくて、別の機会に出されております。内容については私どもも十分に存じております。
 この台湾における医療・福祉支援事業に関する基金の意向は、元従軍慰安婦の方々が高齢になっておられることにかんがみまして、一人当たり三百万円相当の事業を十年という当初考えた期間ではなくて、できるだけ前倒しして実施したいということでございます。下村理事の別途出された書簡もそのような趣旨で書かれているものと理解しております。
 ちなみに、先生のおっしゃいました幾つかの一人当たり幾らという厳密な数字、これは韓国についてはそういう方針で考えているということをちなみに例示として下村理事が挙げたものと理解しております。
○本岡昭次君 そうすると、政府に尋ねますが、この医療・福祉事業で十年間に七億円、援助の資金の使い方というのは、今言ったように前倒しするとか、初めに二百二十八万円を渡してあと十八万円ずつ順次出していくとかという、こういう自由自在に扱えるような仕組みになっているんですか。
○説明員(槙田邦彦君) 医療・福祉支援事業の内容につきましては、基金としましては、住宅改善であるとかあるいは介護サービスだとか、医療、医薬品の補助などを行うというふうに決定しておるわけでございまして、同時に元慰安婦の方々の置かれている実情であるとかあるいはお気持ちにできる限り沿った内容にしたい、こういうことなんでございます。
 そうしますと、七億円程度という総枠的ものは一応ございますけれども、それを具体的に各国にどのように実施していくのかということにつきましては、これからもさらによく相手の方々とお話をしていかなければならないという状況にございます。
○本岡昭次君 そこで、お金にみんな換算してあるんですよ。あなた今事業だとかいろいろおっしゃったけれども、医療・福祉事業、みんなお金ですよ。それで、受け取る方は、話を聞いた方は全部、これは現金を受け取れるんだ、こう思っているんですよ。中にはキャッシュを渡すというふうなことに言及しているんです、国民基金の対話チームとか運営委員の人が行かれて、現地で。
 それで聞きますが、この医療・福祉事業は、今、国民基金が盛んにフィリピンや韓国、台湾でやっているように現金として被害者に支給される事業として予算化しているんですか。イエスかノーかで答えてください」
○説明員(平林博君) イエスかノー。かと言われればノーの方でございまして、現金を直接慰安婦の個人個人の方々に供与するという趣旨ではありませんが、しかし、やり方につきましてはできるだけ柔軟に考えるようにしております。
○本岡昭次君 そうすると、今アジア女性基金のやっているこのやり方は、今あなたがおっしゃったように現金を個々人に渡すという方式でやっていない、こう言っておられるにもかかわらず、個々人のところに、あなたに何ぼ渡しますからと、まるで札束で被害者のほっぺたを張っているようなやり方をやって混乱を起こしているんですよ。一体日本は何をやっているんだという韓国政府の日本に対する怒り、そういうものが政府の態度を硬化させている。台湾もそうですよ。フィリピンだってそのことによって分裂しているでしょう。
 だから、あなたが最初に言ったように、わずか六人しかまだ受取人が出てきていないというのは、このアジア女性基金のやり方そのものが、被害者に対して二度、三度にわたって女性の尊厳を傷つけておるんですよ。慰安婦として傷つけ、さらにその償いのあり方として傷つけておるんですよ。これはどうしようもないところへ来ておる。一体どうするんですか。
 そこで、官房長官、この償いのお金、これだけたくさん久々に使うのなら、国民基金をキャッシュでキャッシュでと言っておるんですが、ここでキャッシュでやれる方法をおとりになったらいかがですか。そしたら、もう一件落着やないですか。国民基金は、キャッシュで渡したくて仕方がないんですよ。それで、渡せないものをキャッシュだキャッシュだとやっている。ここに混乱の原因がある。
 これだけのお金を政府の公的資金として出せるんなら、なぜそれを償いのお金としてきちんとやれるようなことができないんですか。官房長官、いかがですか。
○説明員(平林博君) 官房長官のお答えの前に、先生の御質問は政府による法的な支払いというニュアンスがございますので、その点をお答えさせていただきたいと思います。
 先生御存じのように、日本と戦争状態にあった連合国との関係につきましては、サンフランシスコ平和条約とか二国間の条約で誠実に対応してきたということでございますが、台湾に関しましては日本と戦争状態にあった国ではなかったために賠償の問題は生じないということでございました。いずれにしましても、賠償ということでは済んでいるということでございます。
 他方、財産請求権の問題、これにつきましては、サンフランシスコ平和条約でもそれぞれの施政当局との間で特別取り決めを結べと、こういうことになっておりますが、台湾につきましては、日中国交正常化が実現した結果、台湾との関係でかかる処理ができなくなってしまったということもございます。
 以上のような法的な制約のもとで、しかし何かするための道義的な根拠は十分にあるということでございますので、先生御承知のような方式でずっとやってきておるわけでございます。残念……
○本岡昭次君 結構です。その議論はずっとやってきました。改めてそれは後で聞きます。
 その前に一問聞いておきたいことがあるんです。また個人の名前を出して申しわけありませんが、台北市婦女救援基金会から高木弁護士という
のは一体どういう方だという照会がありますのでお聞きします。
 この高木弁護士と国民基金は公式的な関係にあるんですか。それから、先ほど言ったように、何か高木弁護士は、あなたが今二百万円受け取ったら今後五年間さらに三百万円が支給されるから受付取りなさいとかいうようなことを盛んにやっておられるらしいですが、こんなことを国民基金は高木弁護士に御依頼になったんですか。以上二点。
○説明員(平林博君) 高木弁護士は立派な弁護士でもあり、また一部の関係者の元従軍慰安婦の弁護もやっておるわけでございますが、アジア女性基金とは公的な、公式な関係にはございません。そういうふうに承知しております。
 また、アジア女性基金の方から御承知のような内容の電話をするように正式に依頼したことはないと。多分、いろんな面で誤解されて伝わっているところもあるんではないかと存じます。
○本岡昭次君 そうすると、高木弁護士は頼まれもしないことをやって混乱させていると、こういうことがはっきりしました。
 それから、先ほどの話の中で、現金、キャッシュでは被害者個々人に渡さないということをおっしゃったが、現に国民基金はあたかもそういうふうに現金が個々人、被害者に渡るかのような話をしている。そのことも、国民基金が間違ったことをやっているということをここで外務省も、それから外政審議室の方も、国民基金にやってはならないことをやっているその現実をはっきりと指摘して、このことについてはそういうことをやってはならないということを厳しく言っていただきたい。よろしいですか。
○説明員(平林博君) 国民基金にかかわる理事そのほかの皆さんが先生が御指摘のような物の言い方をはっきりしているかどうか、つまびらかにいたしません。いろいろ言葉の問題等もございますし、誤解されて伝わっているものだと思っております。政府関係者は常に国民基金の関係者と話をしておりますし、我々も理事会等に出ておりますから、国民基金のメンバーの方々が完全に政府の意向を無視したりあるいは間違ったことを言っているというふうには思っておりません。
 いろんな面で誤解されて伝わっていることは、言葉の問題等あるし、また受け取る側のいろいろなお立場や考え方が厳しい面もありますから、そういう面は排除できないとは思いますが、そういう点も含めまして、これからも国民基金の関係者の皆さんとはよくお話をしながら、相手の関係者と話を進めるように考えてまいりたいと思います。
○本岡昭次君 平林さん、言っておきますが、私はうそを言ってないですよ。私の言ったことが事実かどうかは、国民基金の皆さんとどこでも直接やる用意がありますからね。事実かどうかじゃないんです。事実なんですよ、だからやめさせなさいと言っているんですから。
 次に、「「従軍慰安婦」にされた方々への償いのために」という女性のためのアジア平和国民基金のバンフがあります。この中に先ほど室長がお話しになったようなことが出ております。それは、「基金ができるまで」という項の十四ページにこう書いてあります。「政府は、「賠償」、「財産・請求権」の問題は台湾、朝鮮民主主義人民共和国をのぞいて、関係国との間では処理済みであるとの方針をとってきました。」。関係国というのは、これは韓国であり、あるいはフィリピンであり、インドネシアであり、そのほかでしょう。
 そこで、この「のぞいて」というところ、台湾と朝鮮民主主義人民共和国はどうするんだという問題を一緒にして今国民基金がやっているというところは私は問題がある。台湾と朝鮮民主主義人民共和国は別の角度で、これははっきりと賠償、財産請求権ありの問題として対処しなければならないものを一緒にして、そして国民基金にこういう事業をさせている。ここのところはどう考えても解せぬですね。こういうところまではっきり書いてあるんですからね。ここの議論はまた別のときに、きょうはもう時間がありませんから。
 そこで官房長官、こういうふうにはっきりと朝鮮民主主義人民共和国、これは日朝交渉の中で恐らく出てくるから今後の問題でしょう。台湾を除くとしてあるんですよ。除くところを何で終わったというところと一緒に処理しようとするのか、ここは絶対に私はおかしいと思うんです。だから、台湾は台湾の問題として、これは条約で終わったとかいう、そういうものはないんですよ、基本条約はどこかという。残された問題として残っておる間に中華人民共和国が生まれて、そこのところがあやふやになって残されてしまった。
 だから私は、ここで台湾は台湾の問題として、イギリスが香港の問題をあそこまで旧植民地としていろいろ返還するのについてかかわってきておるでしょう。私たちだって、台湾の問題に対して日本の旧植民地ということでああいうふうになり、そして今そのほかの請求権問題もいろいろ出ておりますけれども、この従軍慰安婦の問題も台湾は台湾別個の問題として新たに法律をつくって処理できる条件を台湾は持っておるんじゃないですか。なぜそれをされないのですか。
 ぜひこれをしていただきたい。官房長官の力でやっていただきたい。このことによって一つの問題の解決の糸口ができるんじゃないんですか。それでなければ、ここに書いてあることは大変大きな矛盾を呼んできますよ、除いたところも除かれ。たところも一緒にするというようなことは。これは官房長官に答えをいただいて、私は終わります。
○説明員(平林博君) 先ほどちょっと触れましたが、台湾のように戦後に日本から分離されたいわゆる分離地域との間では、日本と戦争状態にあった連合国の関係とは異なりまして、そもそも日本による賠償の問題は生じないというのが法律的な立場でございます。
 残された問題は財産請求権の問題でございますが、台湾につきましては、日本と台湾の施政当局との間で特別取り決めを結んで処理するということがサンフランシスコ平和条約で書かれているわけでございますが、日中国交正常化が実現した結果、台湾の施政当局との間でそういう処理を行うことができなくなりました。他方、台湾の元従軍慰安婦を含むいわゆる各国における従軍慰安婦問題につきましては共通の点がございます。それは日本の道義的な責任ということでございます。
 そのために、我が国政府としては基金と協力しながら、その点は差別なく償い金も国民からいただいて実施するし、医療・福祉事業もやりたいというふうに考えているわけでございますが、遺憾ながら、政府として台湾の方につきましても個人補償を法律的な立場から行うということは考えておりません。
○本岡昭次君 官房長官は御答弁ございませんか。
○国務大臣(梶山静六君) 今、室長から答えたとおりであります。
○本岡昭次君 もう時間がないから結構です。また改めて質問したいと思います。
○栗原君子君 新社会党・平和連合の栗原君子でございます。
 私は、まず最初に官房長官にお伺いをしたいと思います。
 旧日本軍の中国への遺棄化学兵器の問題でございますが、日本も昨年批准をいたしました化学兵器禁止条約は九七年、来年四月二十九日の発効ということになりました。現在、中国東北部を中心にいたしまして、中国側の発表によりますと、おおよそ二百万発、そして化学剤が百トン、さらにはそれらによる被害者が二千名以上、こういった発表をいたしておりますが、日本政府は先般もハルバレイに調査団を出しまして、七十万発あるであろうと、そういったことを言っているわけでございます。
 そこでお伺いをいたしますけれども、この十年間で処理をするということになっておりますが、マスコミ等の報道によりますと、これらの費用が大体数千億円以上かかるであろうと言われている
わけでございます。十年間ということになりますと二〇〇七年には一〇〇%を処理する、こういうことになるわけでございます。
 現在、政府におきましては、外務省、防衛庁、さらには外政審議室などを中心にこの調査を進められてきているわけでございます。さらに、この三省庁だけでなくして、科学技術庁とかあるいは厚生省とか環境庁とか通産省とか、そういった幅広い省庁にまたがるものであるということが考えられるわけでございますが、私が官房長官にお願いいたしますことは、これはもう縦の系列では処理ができないということは明らかでございます。コーディネートするところが必要でございます。そして、だれがやるのか。時間をかければますますこれは金額も高くつくものでありますし、費用と危険を伴うものでございますが、そうしたことについてどのようにお考えでいらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
○国務大臣(梶山静六君) 委員御指摘のとおり、化学兵器の破棄の問題、これは既に批准をし来年の四月に発効を控えておるこの現実と、今までいわゆる中国大陸に遺棄をしてまいった。特に東北地方に多いと思われますが、この化学兵器の処理の問題、今は全く調査の段階であります。確定したところもございますが、いまだにわかりません。ですから、いわばその地域地域に入るためには外務省が一番今のところ適任であろう。しかし、技術的には防衛庁や科学技術庁やその他の協力を得なければならないことは当然であります。
 ですから、いよいよこれの処分の時期にどういう機関をつくり、あるいはどこが主宰をしてどうやるかという問題は、その時点になってその量的なもの、あるいは場所的なもの、そういうものを踏まえながら決定をしてまいる。そのときに束ねるところがどこであるか。これも当然それに一番利便な、一番完全な方法をそのときになって決定をいたしたい、このように考えます。
○栗原君子君 これは単に中国だけの問題ではございませんで、先般、北海道の屈斜路湖で水深四十メートルの湖底から二十六発が発見をされました。そして、これらにはマスタードガスが検出をされた。こうしたことも言われているわけでございますけれども、現在、日本にはそうした処理をする技術はないわけでございます。さらに、今日全国にまだ八カ所捨てたと言われるところもあるわけでございまして、日本国内でも次々とそうした状況が出ているわけでございます。
 私の出身でございます広島県大久野島というところで、戦争中、旧日本軍が毒ガスを製造いたしておりまして、特に私はそうした意味では大変こだわり続けながら、また関心を持ちながら、この間取り組んでまいりました。
 そうした中で、大久野島でも、先般、環境庁の調査で基準値を四百七十倍も超える砒素が検出をされているわけでございます。こうした問題もございまして、国内の問題、さらにはこうした中国の問題、幅広い省庁にまたがるわけでございますので、十年といいますとこれは早いと思います。ぜひ私は、そうした意味で官房長官の御決断によりまして特別な機構をつくっていただいて調整をしていただきたいということを再度お願いする次第でございます。
 そこで、これは先般地元の中国新聞で報道されましたけれども、「化学兵器禁止条約の定める「十年以内の廃棄」は不可能として、例外規定を適用し「十五年」に延長するよう中国政府と交渉を開始する方針を固めた。」、こういった記事が出ているわけでございます。外務省幹部もここでコメントしていらっしゃいますけれども、一「「七十万発を十年で処理するには一日に約二百発を完全に廃棄しなければならず、陸上自衛隊の処理能力をはるかに超える。仮に自衛隊化学部隊を増強しても、大部隊の中国派遣は民衆感情から不可能」と指摘している。」、こうした問題がございます。私もかつて防衛庁の方にもこうしたことで申し上げたことがあるんですけれども、これは旧日本軍がやったことなんだからと、そうした意味でなかなからちが明きません。
 それから、私は昨年中国に参りまして、チチハルでも二百四十六発を見せていただきましたし、さらには被害者の方のお話も伺いました。そうして被害者の問題を厚生省に言いますと、厚生省は、日本の例えば広島県の忠海病院に入院していらっしゃるそうした患者については対応できますけれども、中国の被害者については大変これは難しい、こういったことになっております。私は、中国の被害者についても、これらは戦後被害を受けた方が大変多いわけでございますので、ほっておくわけにはいかないと思います。
 環境庁にしてもしかりでございます。国内の環境問題についてはやるけれども、中国のそうした環境問題については大変難しい、こんなことが返ってくるわけでございます。これは国際問題でございますので、私は、そうした意味でぜひ早急に調整の機関をつくっていただきたいと思うんです。
 現在、そうした省庁にさまざままたがっておりまして、まさにヤマタノオロチみたいでどこへ話を持っていけばいいのか、どこが窓口がもわからないような状況でございますので、国内外のそうした旧日本軍の遺棄した化学兵器の処理に関しましてもう一度官房長官の決意をお示しいただければと思います。
○説明員(槙田邦彦君) 委員御指摘のとおり、化学兵器、遺棄されたものをどのように処理していくかということは、中国について私、外務省アジア局の者として申しますと、これが極めて深刻な問題であるということは重々わかっておるつもりでございます。
 これについて日本政府が一体となって責任を持って対応しなければならないという認識を強く持っているわけでございまして、現在、この問題につきまして各省庁集まっていろいろな会議を行っておりますが、具体的にこれに取り組む機関と申しますか、そういう体制づくりが完全に今できている状況ではございません。しかし、今、官房長官から御答弁ありましたように、そのような方向にやっていかなければならない話でございますので、委員初め皆様方の御支援もぜひいただきたいというふうに思っております。
○栗原君子君 ぜひ早期にそうした機構の整備をしていただきますようにお願いをして、官房長官、お忙しいようですから退席いただいて結構でございます。
 続きまして、先般来の厚生省の不祥事に関しましてお尋ねをしたいと思います。
 まず、会計検査院の方にお伺いをいたしますけれども、この間どのような検査をなさっていらっしゃったのでしょうか。その検査は県までの検査だったのか、あるいはまた法人まで検査を進めていくのか。金の流れを私は追う必要があると思うんですけれども、もっと金の流れを追っていたならばこういう不祥事は発生しなかったのではなかろうか、こんな思いもするわけでございます。
 マスコミの報道によりますと、過去十年間、特養ホームなどの施設整備補助に対しての指摘は載っていなかったということも報じられております。どのように検査をなさったものか、まずお伺いいたします。
○説明員(諸田敏朗君) お答えいたします。
 厚生省関係の補助金につきましては、都道府県あるいは市町村の会計実地検査の際に検査を実施しているところであります。
 検査に当たりましては、限られた人員等での効率的な検査を行うために、補助金の額が多額で、あるいは不適正な事態が見受けられる児童保護費負担金、老人福祉施設保護費負担金、生活保護費負担金に重点を置いて検査をしてまいりました。その結果、これらの補助金につきましては毎年決算検査報告に不当事項として掲記しているところであります。
 これに比べまして、特別養護老人ホームの施設整備費補助金につきましては、先ほど申し上げましたような検査効率等の面からこれまでそれほど重点を置いて検査をしていなかったというわけでございます。したがいまして、今回の事態にかん
がみまして今後は幅広く検査を実施していきたい、このように考えております。
○栗原君子君 いただきました資料を見ますと、千二百四十五名の職員が会計検査院にはいらっしゃるということでございまして、それじゃ実質何名が第一線で検査に当たっていらっしゃるのかということを伺いますと、厚生関係は厚生第一課が十九名で当たっているということを聞かせていただきました。それは、生保の関係あるいは老人福祉運営、児童関係、大変幅広いものでございまして、十九名でこれだけの膨大な資料を検査するということになると、これは神わざでなければできないであろう、私はそういう思いがいたしております。
 今しきりに行政改革が言われておりますけれども、むだを省くという意味では、もっときちんと正規の検査ができるならばむだを十分に省くことにつながっていく、税金のむだ遣いをしなくてもいいことにつながっていくんではなかろうか、私はこういうことを思うわけでございまして、そうした意味では、私は会計検査院の人数というのは大変少ないように思いますけれども、人員の要求を考えていらっしゃるというようなことはございませんか。
○会計検査院長職務代行(疋田周朗君) 私どもも毎年度の概算要求におきまして人員増をお願いいたしているところでございますけれども、毎年、実質一名ないし二名増員を認めていただいておりまして、現在は千二百五十名まで来ているところでございます。
 限られた人員の中で検査の計画を十分に練りまして、必要と思われるところに重点的に勢力を配分して検査をやってまいる、こういうことで従来から対応してきておりまして、今後ともにそういった効率的な効果的な検査に努めてまいりたい。と考えております。
○栗原君子君 総務庁の方にお伺いをいたします。
 補助金に群がって全国的にこうした問題はさまざまなところで起きている問題であろうと、私は大変疑いの目で見ているわけでございますけれども、特に特養ホームなど社会福祉施設の新増設をめぐりまして行政監察をやっているのか、やっていないのか。あるいは、これからどのようになさるのか。
 さらにまた、こうした利権にまつわる補助金について疑惑があり過ぎるわけでございますので、この際、徹底して行政監察をしていただき、その結果は国会に報告をしていただきたいと、こういうことを思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
○説明員(土屋勲君) 社会福祉法人の指導監督状況につきまして行政監察を実施いたしておりまして、この監察は社会福祉法人の評議員会、理事会等の管理運営体制、あるいは措置費等の運営費に係る会計経理の実施状況、それから社会福祉法人に対する行政機関の指導監督状況等を調査したものでございます。
 その勧告の中で、今回の事件に特にかかわりの深い事項としましては、社会福祉法人と当該法人の理事が関係する業者との契約について、当該理事を関与させないなどの指導を都道府県を通じ法人に対して徹底するよう勧告をいたしたところでございます。
 これに対しましては、厚生省は平成五年八月、社会福祉法人の定款準則を改正いたしまして、「理事会の決議について、特別の利害関係を有する理事は、その議事の議決に加わることができない。」ということを新たに追加し、明文化をし、都道府県を通じ社会福祉法人を指導しているところというふうに承知をいたしております。
 総務庁としましては、このような厚生省の社会福祉法人に対します指導の徹底状況について、今後厚生省の対応を見つつ、必要に応じましてそのフォローアップを含め行政監察を実施いたしたいというふうに考えております。
 また、行政監察結果につきましては、その都度、勧告、報告書を含めまして公表の扱いにいたしておりまして、関係国会議員の先生方にもお送りをいたしておるところでございますが、今後ますますそういう活動を充実させていきたいと思っております。
○栗原君子君 それでは、厚生省の方にお伺いをいたします。
 今回の事件を通じまして、厚生省と県は太いパイプがあれば何でもできるということが私は立証されたと、このように思っております。これは、単に私は厚生省だけではないと思います。例えば各省庁にも言えることであろうと思います。自治省の官僚が地方自治体の助役で行くとかあるいは部長で行くとか、文部省の方が自治体の教育長で行くとか、私たちの広島においてもそういうことがなされているわけでございますが、これらを見ましたときに、やはり私は、天下り、天上がりも含めまして、人事のあり方に大変問題があるんではなかろうかと、こんな思いがするわけでございます。
 それとあわせまして、一方では地方分権のあり方、出向のあり方、こういったことにつきましてもこれからもっと指摘をしていくべきではなかろうかと、こんな思いがしておりますが、まず、きょうは厚生省の方がおいででございますので、そうした面ではどのようにお考えなんでございましょうか。
○説明員(丸田和夫君) お尋ねの出向の主たる目的でございますが、私どもは、厚生省職員と地方自治体職員の相互の人事交流にあると考えております。厚生省職員が地方公務員となって仕事をする一方、地方自治体の職員の方が国家公務員ないし研修生として厚生省へ来られて仕事をする、いわば双方向の形をとる場合が多いわけでございます。
 このような大事につきましては、地方自治体の方から御要請がありまして実施しているわけでございますが、その背景といたしましては、私どもとしましては、厚生省職員は福祉・医療の第一線であります地方自治体の実情を深く知り、あるいはまた勉強する機会があるわけですし、また地方における具体的な施策の企画立案や執行に携わられるわけであります。地方自治体としましても、受け入れる者の政策立案能力等に期待するところがあるのではないかと考えております。
○栗原君子君 中央省庁の方が地方の実情をお知りになるということは私は大変結構だと思うんですけれども、県の担当課に部下が行っている、あるいは中央省庁に上司がいる、そこで太いパイプができれば本当に補助金の受け入れだって十分にできるわけでございまして、私はそうしたところから今回の事件も発生しているような気がしてならないわけでございます。そうした意味で、もう一度地方分権のあり方とかあるいは出向のあり方とか、そうしたものを含めてお考えいただければと、こういう思いがいたしているわけでございます。
 それと、これから新ゴールドプランを進めていく中で、補助金はますます拡大すると思われます。再発防止に対してどのような決意なのか、最後にお聞きしたいと思います。
○説明員(青柳親房君) 特別養護老人ホームなどの施設整備につきましては、二十一世紀の本格的な高齢社会を安心して迎えるために必要な高齢者の保健・福祉サービスの基盤を整備するという観点から、今お尋ねのございました新ゴールドプランの整備目標に向かって引き続き強力に進めていかなければならないというふうに考えております。
 ただ、今回生じました問題につきましては、補助金の交付対象選定や施設の認可の決定過程が必ずしも明確でない、あるいは法人や施設の運営に当たっての意思決定が例えば特定の役員のみで行われていたことなどが根底にあって、そういういわば社会福祉法人に対するさまざまな施設整備補助等の仕組みを悪用して信用を失墜させた問題だと、このような認識でございます。
 したがいまして、今後、省内におきましては、例えばその補助金の交付対象施設の選定過程の明
確化などの見直し、それから特別養護老人ホームやこれを営む社会福祉法人の運営に当たりましての、例えば地域代表等外部の方の意見を反映させるような仕組みを導入することができないかなど、具体的な悪用防止策をこれから検討させていただくことにいたしたいと考えております。
○栗原君子君 ありがとうございました。
○委員長(野沢太三君) 他に御発言もないようですから、皇室費、国会、会計検査院、内閣、総理府本府及び総務庁の決算の審査はこの程度といたします。
 次回の委員会は明二十七日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後六時八分散会
     ――――◇―――――