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佐賀県武雄市は、市のウェブサイトをフェイスブックに移管した。自らもツイッターで発信を続ける樋渡啓祐市長(43)は「ソーシャルメディアを使わない首長に存在価値はない」と言い切る。
ソーシャルA特集――ツイッターやフェイスブックを使い始めたのはなぜですか。
「地方だから。(自身が官僚として)霞が関にいたころは何もしなくてもメディアが来た。武雄市長のところには来ない。自分で発信するしかない。地方都市は、知ってもらい、来てもらわないと」
――使い分けは?
「ツイッターは権力者に厳しい。フェイスブックは権力者に厳しくても、仲間には温かい。政治家は二つやらないと馬鹿になる」
――双方向性を生かして議論するんですか。
「議論には関心がない。一人ひとりの意見を聞いて、一から政策をつくるなんて不可能」
「政治家にとってソーシャルメディアが優れているのは、打ち出した政策のマーケティングができるところ。その政策が人気か不人気か、間違ってないか、リアルタイムでわかる。iPhoneが生まれたとき、アップル社は事前に客に意見を聞いてはいない。発表後に評判を聞き、次回作に修正を加える。そういう使い方だ」
――批判的な意見はブロックして無視しているとの批判があります。
「かつては、ツイッターで深い議論をすれば、集合知が生まれると思ったが、人間はそれほど行儀がよくない。匿名で罵倒されるほうが多い。私は聖人君子でも苦情処理機関でもないので、匿名で罵倒を繰り返す人間の相手をしている時間はない」
――ソーシャルメディアでは、自分と似た意見ばかり集める危険性があると言われます。
「それでも10年前よりずっといい。かつては自分の意見を述べるツールも機会もなかった。これは劇的な、コペルニクス的転回。自分と違う意見はマーケティングで取り入れればいい。罵倒ばかりの人はフォロワーが少ないし、リツイートもされない。そういう人が淘汰(とうた)され、よりよいソーシャルメディアが発展していくと楽観している」
――市長は、批判や罵倒が多いツイッターを「便所の落書き」と言ったことがあります。
「落書き、嫌いでも見るでしょ? 何が書かれているかって。悪口だとしょげるけれど、そう見られているんだと思うと学べる。自分を相対化する能力が求められている」
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1969年生まれ。93年総務庁(現総務省)に入り、出向先の大阪府高槻市で市長公室長などを務めた。2006年に武雄市長に初当選し現在2期目。11年夏に市のウェブサイトをフェイスブックに移した。