
●最終選考分の作品の講評
- 「茜色のクワットフォイル」水月 秋
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- 事件自体は魅力的に書かれているのに、謎解き部分が雑です。主人公のキャラクター、視点人物としては寄り添いやすいのですが、もう少し華がほしいところです。ファンタジックな要素はひとつに絞りましょう。(K)
- 会話のテンポ良く、楽しめるのだが、主人公のおかれている状況を納得する課程が希薄。ストーリーを追いかけている感がある。時代設定もあるのだろうが、古い感じがする。(W)
- テンポよく読めましたが、何を読ませたいのか意識して書いて欲しいと思いました。タイムスリップした少女のドキドキ感や切なさが読みたかったです。(I)
- 作品世界と一人称の影響か読みやすく、描写も丁寧で好感が持てます。多くのキャラクターもよくかき分けられている。しかし肝心の主人公の強い個性やエンターテインメント性の際立った部分が出ていない。(S)
- 文章がリズミカルで、一気に読み進められた作品。ただ、キャラクターや設定にじゃっかんの古さを感じ既読感がありました。タイムトリップものは魅力的ですが、登場人物の数やストーリーの要素をもっと絞れたら、作品としての完成度もあがったのかなと思います。(Y)
- 会話のテンポがよかったです。が、主人公の魅力が伝わりにくく、読んでいて共感を覚えにくかったのが残念です。設定をもっと絞り込み、キャラクターをもっと確立することと、作品に説得力を持たせることを意識してもいいのではないかと思います。(U)
- 「深海の羊」青野真船
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- 文章がしっかりしていて、書きなれていると感じました。設定、構成も決まっており、安心して読めるのですが、どことなく既読感を覚えます。(K)
- 好き嫌いの分かれる作品かも。時代背景に馴染みがないので、切実感を感じられず、ふたりの関係や全体、何を描きたかったのか伝わらなかったのが残念。(W)
- 前回の応募作品と同様に文章力が安定していて、独自の空気感もあると思います。感情の伝え方など雰囲気があり、ストーリーに緊張感があってよかったです。個人的には幸せな気持ちになる作品を書いていただきたいと思います。(I)
- 設定には魅力を感じます。文章の表現が上手く、次の展開を期待させる一方、全体を通してキャラクターたちに何をさせ何を描きたいのか、はっきり際立ったところが見えないことが残念。(S)
- ページを捲るたびに感じるような独自の空気感が、個人的にとても好きでした。文章も美しかったです。キャラクターにも味がありましたが、ストーリーの軸がわかりづらく、最後まで読んでも「何の物語だ」と読み取れず残念でした。WH的には、もう少しエンタメ要素が必要かもです。(Y)
- 世界観が確立されていて、個人的にはとても好きな作品でした。時代の雰囲気や文章など、惹かれるものがありました。ただ、WHの読者層を考えたとき、読み手さんが手にとるかというと難しい気がします。もっとエンタメ的な要素とわかりやすい華やかさが入るといいのかもしれません。(U)
- 「火車の香」冬月 永
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- キャラクターは魅力的に描けていますが、やや薄味。事件部分にはもたつきを感じます。事件そのものの解決はもっと早く展開してほうがよいのでは。(K)
- きちんと調べて描いているのが分かる作品。江戸の情景が目に浮かび、ストーリーは楽しめた。が、事件解決に向かうだけのストーリーになってしまい、物足りなさを感じた。(W)
- 江戸人情話にほっこりしました。とくに義兄が好みなので外見などもっと書き込んで欲しかったです。事件部分にもっと緊張感もたせたかったですね。(I)
- この世界を書き慣れているようで完成度の高い作品。キャラクターにも魅力がある。しかしエンターテインメント性を求める読者には、物足りなさを感じさせてしまうかもしれませんので、要素を追加するなど工夫が必要。(S)
- 主人公ふたりの関係性が微笑ましく、とても好感が持てた作品。時代描写の書き込みとキャラと事件とを、うまくまとめているなと思いました。ただ、事件が少々込み入っていたので、もっとシンプルな展開だとよかったかも。妖ネタなどで、エンタメ要素を入れた事件簿にしてもよいのかなとも思ったり。次作に期待です。(Y)
- 読み始めたとき、惹き込まれました。登場人物に魅力がありました。ただ、読み進めていくと、だんだん読むのがつらくなっていきました。事件の書き方のせいかと思うのですが。事件をもっとシンプルに、そして読者さんの興味をひくものにするといいのでは? 時代設定など説明が必要なのはわかるのですが、説明を説明として読ませるのではなく、より自然に描写できるとより読みやすくなると思います。現代ものだとどんなふうに書くのか、ぜひ別の作品も拝見してみたいです。(U)
- 「月に嘯く」甘露路ちどり
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- 主人公の内面を幼く書きすぎて、ストーリー全体が説得力を持たなくなっています。物語全体のバランスを考えましょう。タマ子のキャラクターは個人的に好きでした。(K)
- ほのぼのとしたストーリーの読後感だが、主人公同士の惹かれあう魅力が伝わらなかった。主人公が大きくなるまで境遇に疑問を持たなかったのは不思議。低年齢向き?(W)
- 鬼特有の何かをもっと表現して、想う心の切なさやいじらしさを感じたかったです。天狗のお話に続いて微炭酸な恋愛、楽しめました。(I)
- 表現力が足りず、説明も不足ぎみ。キャラクターに動きがあまりなく、また周囲の環境やそれによる心情も描き切れていない。なんのためにこの設定で描きたいのか、そのために必要な話の流れはどういうものか、またそれらを細やかに表現する努力をしましょう。(S)
- ふんわりした雰囲気に癒されましたが、設定やキャラに説得力がなく、物語に入り込めませんでした。情景描写や説明が少なかったのも残念。このストーリーで何を伝えたいか、誰に読んで欲しいか、そのあたりを意識するとよいのでは。(Y)
- 作品の優しい雰囲気には魅力を感じたのですが、登場人物や設定に説得力が感じられませんでした。書きたい世界観は伝わってくるのですが、誰に読んでほしいのかがわかりにくいです。そこをもっとはっきりさせて書いてみてはどうでしょうか? (U)
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