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<< May 2013 >>

麺女炎上

2013.05.29 Wednesday

本谷亜紀さんのことについて書こうと思います。

先日、ご本人にお会いすることができたので、
そのことも少しだけ交えつつ、わたしの雑感を述べていきます。

呆れるくらい長文ですし、取り留めもなく書いてますので
興味のない方はスルーしてください。
発端となった騒ぎを知って、早いうちから書き始めたんですが、
度重なる事態の変転とその速度にまったく追いつかず、何度も書き直しました。

この騒動、知り合いのことだけに、当初からつとめて冷静に見ていました。
擁護するにはあまりに無理のあることが多過ぎ、
だからといって風潮に乗って叩く気もありません。
本来ならば、沈黙を貫くのが大人の対応でしょう。
それでもわたしは、本谷さんに仕事を頼まれたり頼んだり、
食べ歩きに同行したり、同じイベントに出てきた身です。
このブログにも何度か登場してもらってますし、
知らぬ顔の半兵衛を決め込むのも寝覚めが悪い。
ここまで追い込まれた本人の気持ちを察すると、さすがに心配でもあります。

かつて「お願い!ランキング」というテレビ番組で、
ラーメン王の青木誠さんが「全然わかってないね!」と大上段から
本谷さんを凹ませたところ、青木さんブログに批難殺到。
本谷さんは多くの友達から同情されたり励まされたりして、戸惑ったそう。
「完全にテレビ番組上の演出なのに…青木さんに悪いことしたような…」
なんて言っていたのも今は昔。逆の立場になってしまいました。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【1】本谷亜紀さんという人

さて、そんな本谷亜紀さん、まあ確かに自分勝手な側面もありました(笑)
自信家で出たがりで、自己顕示欲は普通以上だったでしょう。
twitterを見ていれば誰でもわかるように、やや上から目線な発言もあった。
でもそれがイコール悪、って訳じゃないのだし、
そこまで日常に問題があるレベルとは感じてなかったです。
気遣いしてくれたり、人を立てるところなんかもありますしね。
本人に悪意はないから、どちらかというと無邪気というか天然というか。
「こういう人だ」とわかってしまえば、それだけのことでした。

本谷さんは、登場した時から「評論家」というよりも「タレント」でした。
それはもう、テレビというメディアの特質というか。
歴代ラーメン王もテレビ番組から生まれたとはいえ、あくまで主体は文筆業。
著書、雑誌、MOOK、ネットなどでいかに語るか、が「顔」です。
でも本谷さんはいきなりテレビの準レギュラーが活動の場となった。
その後は露骨にアイドル扱いな仕事も見受けられたし、
書いてる文章も、評論というより「紹介文」ですよね。
(尤も、ネット以前の料理評論家のように、批判めいた辛辣な内容、
 ほとんど誹謗中傷スレスレなことはもう書けない世の中ですが(笑))
…とまあ、わたしはそういう目で見ていたし、世間もそう見てると思ってました。
だからこそ本谷さんは注目されたんですし。

そして、本人も無自覚かもしれないですが、本谷さん自身がそもそも
そこまで「評論したい」ってわけじゃなかった気がするんです。

知り合った当時、仕事と関係ないところで話していても、
「女の人にも、もっと色んなラーメンを食べて欲しいし、凄く美味しいお店や
 女性向きのお店がたくさんあるんだって知って欲しいんです!」
なんて熱く語ってたくらいで、根っこにはラーメン愛があるものの、
本人の気持ちとしては「紹介したい」が前面にあった気がします。

ネット上では、本谷さんの動機は「目立ちたい」だけだ、なんてコメントも
あるようですが、わたしはそれでも全然いいと思ってました。
需要があったわけだし、バンド活動も多くはそうだっていいますから(笑)
著書に自身の写真や思い出話が多いのも、タレントとしてなら、それが普通。
実際書店では、飲食ではなくエッセイやタレント本コーナーに置いてる店も
あったくらいで。

たとえば大崎さんのような総合的な解説、石神さんのような先鋭的な見識、
北島さんのような客観的な考察……そういう独自性は本谷さんにはないですが、
あのハードウェアは、誰も持ち得なかった。

極論すると、あの見た目でラーメン好きというギャップ、がすべて。
「若くて痩せていてかわいらしさがあり、ラーメンが好きで適度に詳しく
 語れる女性が、美味しいラーメン店を紹介する」
その事実と画があればいい。それが本谷さんの面白みであり存在意義。
だからこそ、世の女性たちも聞く耳を持ったし、ラーメン好きの注目を集めた。

「鋭敏な舌と専門的な知識、独自の取材力によって得た情報に裏打ちされ、
 豊かな表現力と確かな審美眼で、ゴリゴリの評論を展開する」
なんてことは、誰も期待してなかったはずです。
本人は「なんかヒドくないですか?」って怒るかもしれませんけど(笑)

ラーメン店主さんたちも大人ですし経営者ですから、
本人に多少の問題があったとしても、その辺は冷静です。
あれ以来、7、8人の店主さんと会いましたが、
「彼女のお陰で、女性から見たラーメンへの印象が良くなったり、
 ラーメン店に来やすいイメージを持ってもらえたと思うよ」
という意見が多い。
ここでもやっぱり、内容よりも「本谷さんが話す」ということがポイント。

「評論」というよりも「紹介」。その範囲をどこかで認識していれば、
当人の意識も言動も、周囲の見る目や扱いも違ってたのでは…と想像します。

なので、いきなり評論家を名乗ったのはとても違和感があったんですね。
そもそも「ラーメンを語る人」には明確にカテゴリー分けがあるわけでなし、
通りのいい肩書きとしては「評論家」くらいしかない。
「ラーメン王」はTVチャンピオンで勝ち抜き、与えられた称号だから、
そのまま使っても誰も批難しないし→評論家を名乗るにも整合性がある。

本谷さんが“評論家”ではなく“タレント”だからこそ
「ラーメン女子大生」というネーミングは的を射ていた。
「ラーメンを食べる女子大生」「ラーメンに詳しい女子大生」という
意味ですが、イメージはそれにとどまらない。

世の中の女子大生だって、もちろん焼肉でも牛丼でもモツ煮込みでも
食べるわけですけど、一般的オヤジなステレオタイプで思い浮かべると、
たとえば今ならアイスや生クリームや果物などを
いっぱい乗せたパンケーキでも食べてるような印象。
麺類ならパスタ、饂飩でも「つるとんたん」あたりを想起させる感じ。
アボカドとか(笑)
反してラーメンには、庶民的、安価、男の食いもの、ジャンクフード、
ガンコ親父、「秘伝」のスープ、綺麗とはいえない店内…
…的な、もはやカビの生えそうな昭和イメージが不思議と抜けない
(驚くことに、若い世代でもそんなこと言う人がいますね〜)。
この一見つながらない「ラーメン」+「女子大生」、
ギャップが見事に表現されていて、それが本谷さん最大のウリとなり、
メディア露出する際のアイデンティティとなった。

やがて女子大生(大学院)を卒業したため、1年ほど前のイベントで、
投票によって新しいキャッチを決めようというコーナーがあったんです。
「ラーメンコンシェルジュ」とか「女流ラーメン評論家」とか。
「ラーメンプリンセス」(←どこかの媒体でつけられた)なんて案も出ていて、
さすがに却下されましたが、今となってはその方が良かったのかもしれない。

あの頃の本谷さんには、はしのえみさんの“姫様”みたいなタレントとして、
自由に気軽にラーメンを食べ歩くような感じが向いていたような気がします。
「ラーメン専門レポーター」とか。
「女子ラーメン部」ってのもありますが、あれのイメージキャラクターとかね。

したり顔でラーメンを解説するようなのはちょっと違和感があります。
あの手のルックス、人はやっぱりどこかナメるというか、下に見る。
それに対抗するんじゃなく、それを逆手に取った方がいい。

何年か前に、レイラさんと話したとき、
「わたしは評論家でもなんでもないですから〜!」と
顔を赤らめんばかりに笑っていました。むしろそう呼ばれるのに抵抗があると。
謙虚には違いないですが、それより本業を大切に考えておいでなのでしょう。

その後に本谷さんがそう名乗ったわけですが、この手のことは言ったもん勝ち。
でも、そもそも本谷さんが評論家を名乗る必要はなかったと思うんですよね…。
どう考えてもあの本のタイトル、いかにも出版社が提示したっぽいし。
出版も「初」とか好きでしょ。「〜しちゃいました」とかのセンスも。
出回ってる出版社側の回答も、ちょっと奥歯にものが挟まってる感じだし。

わたしならこんな本にしようって提案しますね。

「わたしの大好きなラーメン屋さん」 ラーメンプリンセス・本谷亜紀
「1人でラーメン屋さんに行ってみよう!」 ラーメン女子代表・本谷亜紀

タイトル地味すぎか(笑)
でも、とくに後者は、店頭(行列)〜食券購入〜着席といった、
男性にはなんとも思わない作法(?)を女性向けに解説したら面白い。
まだまだラーメン屋さん(に限らず飲食店全般ですが)に入れない女性って
多いですからね。そういう指南役としては、うってつけですし。

理想論ですが、新しいカテゴリーを持つのが最上だったと思います。
「ラーメン女子大生」を踏襲した感じの。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【2】本谷さんのしたこと

騒動の発端となった“事件”について。
そもそもは、このあたりが最初でしたね。

【ロケットニュース24 当該記事】

今さら検証するまでもなく、本谷さんは誠意を欠いた対応を積み重ねました。
すぐに、そして素直に謝れば済んだ(かもしれない)話でした。
ですが、すべてに言い訳的なセンテンスが盛り込まれていて、完全に燃料投下。
そしてトドメともいえる擁護ツイートのリツイート。
あれではどう考えても世間の反感を買っちゃいますね。
でも普通に考えれば、ただならぬ事態の渦中で、
パニックになってたんだろうと察しがつきます。

2ちゃん等は、交わされてる言葉が怖くてあまり見れないタチですが、
わざわざ見に行かずとも上がってくるのは、相当な状態ですよね。
本谷さん発言のどこまでが真実かわからない以上、すべてが疑わしくなるし、
ポジティブな文章は上目線に見えてしまう。嘘か勘違いかをさておいても、
関係者、各方面には直接謝罪に行かないといけないレベルでした。

本谷さんは「臨時休業」について、以前からずっと異を唱えていましたね。
何人かの評論家さんは、そんな本谷さんを諭そうともしていました。
その当時(昨年夏頃)に会った折、わたしにも相談してきていたんです。

「臨時休業について、あんまりツイートするのやめた方がいいって
 ◯◯さんや××さんに言われたんですけど、どう思いますか?
 わたしとしては、若いフリーク達が
 『スープ不出来で臨休しますとかってコダワリがあってカッコいい!』
 みたいに言ってるのを聞いて、なんか違うなあって思って、
 それを直したいと思って言ってるだけなんですけど…」

という内容。わたしはこんな風に答えました。

「その気持ちはわからなくもないけど、あなたはもう、
 ただのフリークと違って、影響力のある有名人になってしまったんだから、
 あんまり偏った意見を、それも刺々しい言い方で、しかも誰でも見られる
 ツイッターなんかの公の場で言うのはNGってことだよ。
 評論家の皆さんも、君の『考え』がどうこうじゃなく、
 『行動や発言』に関して心配してくれてるだけだと思うし。
 だから店側を批難するんじゃなく、そういう若い子にどう伝えるか、
 とかを考えた方がいいのでは…」

本谷さんは「臨休の是非」、周囲は「臨休に関する『発言』の是非」
であって、論点が違う。
おそらく本谷さんの動機が強くて噛み合なかった気がするんですが、
今思えば、もっと強く伝えておくべきだったのかも。
今更こんなこと言うのも、我ながらだいぶみっともない話ですけど、
まあ、そういう経緯もあったわけです。

そこで冷たい考え方をするなら、本谷さん的には、
「若いフリークの勘違いを直そう」とするあまり、
自分が臨時休業に遭遇するのを待ってたような部分もあったんじゃないか?
自身の「臨休に対する意見」を発言できる機会を。
そういう姿勢になってたからこそ、あの“勘違い”も起きたというか。
人はそれを傲慢ととるでしょうし。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【3】お店側の対応

ただ、わたしがここで言っておきたいのは、
「鬼そば 藤谷」さん側にも、ちょっと腑に落ちない点があるってことです。

確かにお店は、なんの謂れもない事実無根のイチャモンをつけられた。
しかしそれに対し…

●自分にまったく非がないのに二度も謝る。
●店員は本谷さん宛に抗議ツイート。
 (低姿勢とされてる店主は「うちの者が言い過ぎまして…」とかはなく放置)
●本谷さんへの抗議を含む応援者のツイートをリツイート。
…などの一連の対応。

これは本谷さんの失敗を逆手に取った、意図的なミスリードにも見えます。

店主・HEY!たくちゃんが、れっきとした芸人であることを考えると、
ふいに上がったトスへの芸人らしいアタックではなかったかと。
接客業として普通に答えるならば
「せっかくお越しいただいたのに申し訳ありません。本日は定休日となって
 おります。スタッフ一同、またのご来店を心よりお待ちしております。」
でいいわけですからね。
わたしはむしろ爆笑してたんですよ。
「定休日をなくすように」とか「年中無休に向かうように」とか
「従業員を増やすために」とか、あんた、卑 屈 す ぎwww
…って。そういう“芸”だと思った。
芸人じゃなければ、ここまで卑屈なのは慇懃無礼な気もするし。

ニュースサイトやまとめサイトなどの「健気な店主が低姿勢で謝罪」は、
本谷さん側を、より悪人に見せるために盛った、言わば釣りタイトル。
本谷さんに対しての呼称「本谷亜紀先生」や「美人評論家」も、
明らかに意図的な煽り。皮肉というか褒め殺しというか。
「おっもしれ〜」と爆笑しながらニュース作っているのが目に浮かぶようです。

ともあれ、結果的に「鬼そば 藤谷」さんは、知名度と好感度、
両方を短期間で爆発的に上げた。
ラーメン店さんにとって、テレビや雑誌に登場するよりも
遥かに影響力のある宣伝効果を得たことになります。
実際知り合い数人が、コレきっかけで来訪していますし、
わたし自身も行ってみたくなりました。

だから数日間は、本谷さんと結託した炎上マーケティングかと疑っていたほど。
はじめのうちは、まだその方が納得できました。
だた、それにしてはあんなに本谷さんがやらかす必要もなかったわけだし。
そこそこお金もらってたって、リスクが大き過ぎなので、有り得ないですが。

ともあれ、両者がここまで大きく明暗を分けたのは、
本谷さんには「なんとなく感じ悪いな」という“潜在的アンチ”が、
HEY!たくちゃんには「頑張ってラーメン作ってるな…」といった
“潜在的ファン”が多かった、ということなのかもしれません。
そういった無言の意識が、今回の騒動で一気に噴出した可能性はあります。

発端となったツイートの少し前、本谷さんにはマネージャーがついたばかり
だったはずですが、はじめの発言を抑えられなかったとしても、
せめて大人としての謝罪の仕方や事態を収束させる方法を
うまく指導できなかったのか…そこが残念ですね。

その後はもうどこまで燃え広がるんだかわからない様相でしたが…
本谷さん自身が着火させ、自ら燃料を投下したのは間違いない。
掘り起こされる地下資源を蓄えていたのも確か。
でも、この炎上にこっそり風を送ってる存在がいるのだとしたら…
わたしはそれが一番うす気味悪いし、怖い。

冷静にこの騒動の登場人物を見ていると、
アフィリエイトで儲けるためか、次々と食いつきのいいまとめを作る人、
それと知ってか知らずか罵倒や拡散を繰り返し、金儲けのコマとして
運用させられる読者…そういう俯瞰図も見えてきます。
他人の正義感を利用して、裏でほくそ笑んでいる人がいるのかもしれない。
そんな人が自分でわざと擁護コメントし、読み手の反感を煽るなど、
大勢を操作している可能性も否定できない。
そう考えていくと、なんにも信用できなくなっちゃいますけど。

店主であるHEY!たくちゃんは、「東京ラーメンショー」のバトプリを
勝ち抜いたほどの腕の持ち主。バトプリには、ラーメン店をはじめとした
飲食業で働いている方々が参加していましたから、
その熱意や実力が認められたということですよね。
生半可な気持ち、覚悟ではないでしょう。
でも芸能のお仕事があれば、お店の営業よりそちらを優先すると
ご自身で書かれてますし、芸人っぽいツイートをしたりもする。
それはもちろん批難すべきことではないのですが、
そのヘンがどうにもモヤモヤしていました。

本来なら、5月17日に行なわれるはずだった本谷さんのイベント。
昨年は、ゲスト(コーナー司会的な)として出演させていただいたので、
もし今年オファーが来たなら、HEY!たくちゃんも召喚して、
きちんと白黒つけさせたらいいと画策していたんです。
それが次々に火の手は大きくなり、イベントも中止。
まあ、その後も別のネタで叩かれてしまったのですから、
なにをしようと水泡に帰すところでしたが。

ところでHEY!たくちゃんは、騒動の発端から一ヶ月ほど経ったタイミングで
ご本人が監修した「極旨こんにゃくらーめん」を発表された。
う〜ん。すべては偶然。偶然…ですよね?(^-^;

【極旨こんにゃくらーめん販売サイト】


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【4】いい加減な情報

本谷さんの出身地や年間杯数について定まらない原因も推測できます。
簡単に言うと、誤解と演出、そしてライターや編集者も、
キチンとした人ばかりじゃないってことです。

ネットの反応を見て、おや?と思ったのですが、インタビューなどは、
本人の言葉にライターが手を加えることはよくあります。
何かしらの思惑・記事の方向性に沿って、解釈を変えてしまう場合もあります。

今回も「育った場所は◯◯」とか「小さい頃は◯◯に住んでて」と聞いたのを、
確認もせず「◯◯生まれ」として書いた、なんてありがち。

年間杯数が350杯、400杯、500杯とバラバラなのも、なんとなくわかります。
たとえば本谷さんが年間杯数を訊かれて、こう答えたとしますね。

「そうですね…ここ数年は350杯以上、多くても500杯いかないくらいです。
 取材での食事を含めるかどうかで変わってきてしまいますけど…」

そんなこと、文字数の関係で書けなかったりする。そこで、
あるライターは「じゃあ多い方が面白いな、500杯にしとこう!」
別のライターは「それなら平均して400杯前後は食べてる、ってことね」
また他のライターは「少なくとも350杯は食べるんだ、じゃあそう書くか」

それくらい、受け取り方・書き方にも幅が出ます。
面白くするために話を盛ることなんて日常茶飯事。
大袈裟にディフォルメしたり、わかりやすく削ってコンパクトにしたり。
嘘はいけないけれど、むしろプロとしてのテクニックです。

わたしにも経験がありますし、何かしら自分自身について書いてもらった
経験のある人はみなさん言います。
「確かにそんな意味のことは言ったけど、こんなヒドい言い方してない」
「わたしの伝えたかった大事な部分を切られてた」
「語尾とかが変えられてて、ヘンなキャラづけされた」
「インタビュー内容と関係ないから喋ったのに、そこが別のコーナーで
 勝手に使われてた」などなど…。

慣れてる人はそれをわかっているので…たとえば杯数を答えるなら、
曖昧に回避したり、逆に「2012年は◯◯◯杯でした」と、
誤解されないよう断定的に答えたりするでしょう。

本谷さんの伝え方がマズかったり、原稿チェックで見落としたり、
チェックさせてもらえないようなスケジュールで動いてる仕事を
受けてしまったり…という責任はあるかもしれません。
それくらい忙しかったのかもしれませんが。
これはわたしの経験ですが、納得いくまで一字一句直したのに、
入稿時に勝手に変えられた、なんてケースもあります。

「食べてない」という意見に関しては、事実だけ書き記しておきます。
年に何杯とか、1日の最高記録とかは正確に知りませんけど、
食べ歩きに同行したときはこんな感じでした。
あの体でよく入るなあとは思ったのは確か。

●「麺屋 一燈」「麺・粥 けんけん」を続けて2杯完食、
 「SHISENYA BAR」では飲みながら、3人で2杯をシェアして完食。

●「一本気」「愚直」の2杯完食、一本気では親子丼もシェア、
 愚直では同行者が残したつけ麺を私とシェア。

●「町田汁場 進化」「ZUND BAR」「本丸亭」と3杯完食し、
 「麺や食堂」で麺2杯と丼もの、餃子等を4人でシェア
 (ZUND BARではデザートも)。

●「ひがし」「富田食堂」と2杯完食し、
 「雷本店」ではわたしと同行者の分を少しずつシェア。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【5】もて囃しと驕り

本谷さんとは、2010年の夏にラーメン関係者の飲み会で知り合いました。
そこから1〜2年ほど、本谷さんも「お願いランキング!」に出演してましたが、
ラーメン好きな女子大生に過ぎなかったんで、自由な時間もそこそこあり、
たまにオフ会やら、ラーメンの食べ歩きでご一緒しました。
(今は数ヶ月に一度くらいになりましたが、色んな場でお目にかかります)

当時の本谷さんは、
「わたしの賞味期限なんて、どうせ1年くらいのものですよ…」
なんて言ってたものです。いえ、ホントに。
卒業したら英語の先生になろうとしてたんですから。

その後、世間的にも色んな媒体への露出が解禁されていきました。
(本人曰く、それまではテレ朝側から規制があったそうです)
次第に周囲も「ラーメン女子アイコン」という感じでもてはやしていった。
実際チヤホヤしている人が多かったです。わたしも含め。
ラーメン関係以外の人からも、
「ラーメン女子大生と知り合いなんでしょ、会わせてよ〜」と、
一体どれだけの人から言われたかわかりません。

やがて、ラーメンとは関係ないオシャレな女性ファッション雑誌にも
取り上げられる、雑誌やネット上にラーメンコラムなどの連載を持つ、
テレビ番組やイベントに、審査員やコメンテーターとして登場する、
新聞にインタビュー記事が掲載される、「笑っていいとも!」に2週続けて出演…

こうしたメディアのほとんどは、先述したように、本谷さんを
あくまでタレント的、いわば色物や華として使ってたんですよね。
でも肩書きは「評論家」とか「審査員」とかになる。
自分を客観視する時間もないまま、自信だけが補強されていく。
そういう取り上げられ方だからこそ、あそこまで突っ走れたのかもしれない。
突っ走ってしまって何かを見失ったのかもしれない。
本人も「紹介」なのか「評論」なのか、わからなくなってたんじゃ
ないでしょうか。

だから、今回の騒動を抜きにしても、本谷さんを本気で「評論家」として
見ていた人が、アンチになったんだと思います。
「評論なんかしてねえじゃねえか!」ということになるでしょうから。
わたしから見ると、敢えていうなら「評論家タレント」なんですけどね。

本谷さんを純粋に応援している人を除き、
お金の匂い〜エッチな下心〜ミーハーな気持ちまで、
たくさんの欲望を持った人間に取り囲まれていたんだと思います。
【2】であげた評論家の数名など、本人に苦言を呈する人はごく少数だったはず。

でも、わたしはある意味で「調子に乗ってる」本谷さんにこそ、
魅力・面白みを感じていたわけです。
芸能界長い人とかに聞くと「マジメで頭の良い、コツコツやるタイプより、
振り切れてるくらいの人じゃないと需要が少ないし、生き残れない」なんて
よく聞くんですよ。そういう意味でも“タレント”だったわけで。

一連の騒動が、本谷さんの驕りから出ているのだとすれば、
批判もせずにチヤホヤしていたわたしも、本谷さんの増長に
何らかの形で加担したんじゃないか…という自責の念を感じます。
わたしが元ヤン、もとい早熟だったら、娘でもあり得る年の差ですから、
これからはややガンコ親父目線、厳しめで接していくべきなのかも。
まあ、しばらくは優しくしてないとダメでしょうけど(笑)

結果論だし、酷な言い方かもしれませんが、世間が欲していたのは
「日本初の女性ラーメン評論家」でも「本谷亜紀」でもなく
「ラーメン女子大生」だったのでしょう。
そしてラーメン官僚にダメ出しされる「優れた師匠・ダメな弟子」の構図。
郁恵さんに対するイモちゃんのようなわきまえ感。
そこを見据えてシフトしつつ「わたしなんて…」とクレバーに演じていれば、
いつか名乗らずとも評論家と呼ばれる日が来ていたのかもしれない。

今後、たとえ真面目に自身の舌と足と筆で、評論活動を再開したとしても、
許さない人々は大勢いるでしょう。認めないというお店もあるかもしれない。
謙虚に、そして誠実にひとつひとつ仕事にあたっていくしか、道はないですね。
使い古された言い方ですが、信頼を失うのは一瞬でも取り戻すには時間が
かかりますから…。

ごくごく個人的には、今回のことをむしろ開き直って、
「日本初の、逆ギレラーメン評論家になっちゃいました!」な本谷さん、
の方が見たかったですけどね〜。
臨時休業どころか、売り切れ終了や悪い接客まで叩きまくるような。
新たなギャップ(笑)で。
「うちの臨時休業も、ぜひ叩きにきてください!」
なんてラーメン屋さん、意外にいっぱいありそうな気がするし(^-^;

そんなんじゃなく、今後はタレント的扱いを捨て、
評論家として本当にマジメにやっていくというのなら、
人間が変わる、いいきっかけだと思います。
今回の一件が本谷さんにとって
「自分は本当に愚かなことをしてしまった…」と捉えられたのか
「やっべー、しくった!」に過ぎないのかは、
今後のご自身の行動で証明していかないとダメですよね。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【6】最近の本谷さん

さて、あの日からこうしてテキストを打っていたわけですが、
先日、少しだけ本谷亜紀さん本人とお話しする機会を得られました。
正直、見るからに相当なダメージを負っている様子。
待ち合わせたとき、本人の前を素通りしてしまいましたから…。
ちゃんと食べたりするようメールはしていたのですが、
顔色もかなり良くなかったし、目の下には青黒い隈が浮いてました。
肌や髪にも潤いがない。明らかに睡眠や栄養が不足しているようです。
眠れてないし食べてないのでしょう。ちょっと心配。

以前に比べて、驚くほど謙虚な視線でご自身について語っていました。
言い方が適切でないかもしれませんが、笑ってしまうほど。
「今回起こしてしまったこと」だけではなくて、
「これまでの自分の有り様」も客観的に見つめ直し、反省しているようです。
あれだけのこと、本谷さんの人生で最大の教訓になったのでしょう。

なにより無関係の人に害が及んだことを気に病んでいました。
ネットで広まった噂の中にも、事実と嘘が混在しているとのことで、
身近な人、応援してくれていた人、迷惑をかけた人には、
謝罪とともにその誤解だけは解かせてもらいたいと言っておりました。

そして、本谷さんにとってラーメンを介して知り合った人々は
年齢も性別も越えた、かけがえのない財産になっています。
優しい言葉でなくても、お叱りの一言でもいいので伝えてあげてください。

本人も相手方もアナウンスしていないので知らなかったのですが、
頭を下げるべきところには、すでに足を運んで謝罪しているようですし、
誠意ある対応を重ねながら、ご自身の体調にも気をつけてもらいたいと思います。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【7】全体として

今回の一連の騒動によって、本谷さん本人だけでなく、
ラーメン評論家さん、フリークさん、ブロガーさん、ラーメン店主さん…
といった方々の意識が少なからず変化したと思います。

ネットの怖さを知って態度や文章を萎縮させた人もいるでしょうし、
本谷さんへの態度を翻然とさせたり、硬化させた人もいるでしょう。
ネット上で擁護してる人は一握りですが、応援者とか味方って、
わざわざ見えるような発言を控える人がほとんどですから、
どこまで影響があったかはわかりませんが。

インターネットもSNSも、まだまだ価値が定まらないものですよね。
メディアなのか、コミュニケーション手段なのか。
自由な発想や表現、本音の部分が失われるのは惜しいですが、
人を傷つけるのは避けたいことだし、リスクマネジメントとしても重要ですね。

問題を起こす側も糾弾する側も、やり過ぎれば加害者になります。
酷い罵倒コメントもログとして残りますから、充分気を付けたいところ。
わたしもこんなに長々と考えてしまいましたし。

一切をなかったことになんかできませんけど、
でもこれが(わたしを含めた)ラーメン業界にとって、
考えるキッカケになるとか、各自の反省を促すとか、伝え方を改めるとか、
なにかしらいい効果を及ぼしてくれることを、
業界に携わる者として、また1ラーメンファンとして祈っております。

そして悔い改めた本谷さんを受け容れられる度量のあるラーメン業界、
世の中でありますよう。

以上、わたしの戯言でした。
下手の長談義にお付き合いくださり、ありがとうございました。




申し訳ありませんが、ここが争いの場とならぬよう、
このエントリーにいただいたコメントは
内容に関わらず非公開とさせていただきます。
あしからず御了承ください。

posted by: 青木 健 | | 23:49 | comments(3) | trackbacks(0) |

コメント
承認待ちのコメントです。

2013/05/30 1:37 AM      Posted by: -

承認待ちのコメントです。

2013/05/30 7:28 AM      Posted by: -

承認待ちのコメントです。

2013/05/30 10:06 AM      Posted by: -











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