舛添レポート

橋下発言で広がる歴史認識と憲法改正問題の波紋

2013年05月28日(火) 舛添 要一
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〔PHOTO〕gettyimages

 橋下大阪市長の従軍慰安婦や沖縄の米兵をめぐる発言が、大きな波紋を呼んでいる。内外の人権団体からの批判のみならず、韓国、中国、ロシア、アメリカ政府や国連からも問題視する意見が表明されている。さらには、東京都議会選挙や参議院選挙を前にして、みんなの党は、維新の会との選挙協力を解消することを決めた。また、維新からの立候補を断念する候補者も出てきている。

 橋下氏は、連日、ツイッターやメディアを通じて、釈明を繰り返しているが、騒ぎは容易に収まりそうもない。橋下氏の政治生命はこれで終わったという意見すらある。しかし、テレビのワイドショーなどは、橋下氏が出れば視聴率が上がると思っているからか、同氏をスタジオに招いて、意見開陳の機会を与えている。

日本全体の右傾化懸念

 安倍内閣が、憲法改正や歴史認識でナショナリズム色の強い姿勢を示していることを背景に、橋下発言は、海外では日本全体の右傾化の一環という文脈でとらえられているようだ。そのため近隣の韓国や中国との関係改善は、ますます困難になってきている。

 また、どの政党も、維新の会との違いを鮮明にしないかぎり選挙が戦えない状況にすらなりつつある。とりわけ自民党は、衆参両院で三分の二の多数を形成して憲法改正を実現させようとしているが、維新の失速は大きな誤算であり、戦略の見直しを迫られている。

 憲法96条は、憲法改正手続きを定めたものであるが、発議のための条件を衆参の総議員の三分の二から二分の一に緩和しようというのが、自民党の主張である。それ自体は、国民に憲法改正提案を容易に提示できるようにしようという考えであり、肯定的に評価してよい。最終的には国民投票で決着をつける話であるから、国民の判断を信じればよいのである。

 しかし、ポピュリズムに流される危険性を危惧する論者からは、96条の改正には反対の意見が強い。世論調査を見ても、反対論のほうが多い。その調査結果を見たからか、安倍首相もまた、今はまだ96条の改正は通らないという発言をしている。よって、この問題は選挙の結果を左右するほどの争点にはなるまい。

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