2012年07月17日

●「橋下氏はどのような弁護士だったか」(EJ第3344号)

橋下大阪市長はどういう人物なのでしょうか。
 大阪府知事から大阪市長への転身と何かと話題の多い人物なの
で、多くの人は好悪の感情を含めて、橋下氏に対して、それぞれ
自分なりの評価を下していると思います。しかし、それはあくま
で印象評価であって、正しく人物像をとらえているとはいえない
と思います。
 そこで、例によってEJでは、橋下氏が大阪府知事になるまで
のプロセスに重点を当て、その人物像を探ってみることにしたい
と思います。1991年に一浪して早稲田大学経済学部に入学し
1994年に卒業、その同じ年に司法試験に合格しています。金
儲けや事業に興味があったらしく、学生時代にビジネスまがいの
ことをやって失敗し、弁護士になることを決意したようです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下氏が弁護士になるきっかけとなったのも、早稲田の学生時
 代の経験です。革ジャンの卸売り販売の事業を行い、傷物の安
 い革ジャンを仕入れ、その傷に蝋を塗って隠し、詐欺まがいで
 高額で売り捌いていたのです。しかし、学生起業家の甘さで、
 騙されて不渡り手形を掴まされ、暴力団の取り立て屋から散々
 脅しをかけられたのをきっかけに、猛勉強して大学を卒業した
 1994年に司法試験に合格したのです。
         ──大阪の地方自治を考える会編/講談社刊
       『「仮面の騎士」橋下徹/独裁支配の野望と罠』
―――――――――――――――――――――――――――――
 2年間の司法修習で法曹資格を獲得すると、1997年に大阪
弁護士会に弁護士登録し、樺島法律事務所にいわゆるイソ弁とし
て勤務したのです。
 樺島正法弁護士は、人権派でも左翼思想を持ったタイプでもな
く、弁護士会内部では「温厚な弁護士」として知られています。
その樺島正法氏の橋下徹氏への印象です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 金の話ばかりしていた印象しか残っていない。うんざりするほ
 ど、お金への執着心が強い人物だと思った。橋下氏は弁護士会
 から回っている金にならない仕事は手早くこーなす一方で、若
 手起業家らを連日事務所に呼んで、人脈作りに励み、個人の仕
 事ばかり優先させていた。     ──産経新聞大阪社会部
              『橋下徹研究』/産経新聞社の本
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下氏の名誉のために付け加えると、その当時橋下氏は「1年
後には独立する」と周囲に宣言し、独立資金集めに必死であり、
文字通りカネ、カネだったようです。樺沢法律事務所では、固定
給は40万円、自分でとってきた仕事は、報酬の2割を事務所に
入れれば、あとは自分の収入になるシステムだったのです。
 そのためか、橋下氏は営業に熱心であり、飛び込みまでやった
といいます。その努力があって、橋下氏は、事務所に入所後3ヵ
月後には自分の収入が事務所からの固定給を超えたといいます。
そして、ちょうど10カ月後の1998年に、大阪に「橋下綜合
法律事務所」を設立して営業を開始したのです。
 独立した橋下氏は異業種交流会などに積極的に出席して、企業
関係者──とくに若手経営者、市会議員などには積極的に会い、
人脈を広げたのです。そういう営業活動のなかで、「アイフル」
グループの「シティズ」の顧問弁護士の仕事を獲得したのです。
そして、この仕事を8年間続けているのです。
 「シティズ」の顧問弁護士のときは、債務者側の年配弁護士に
対して一歩も引かず、理路整然とまくし立てたといいます。当時
シティズの法務社員の一人は、橋下氏は憎まれ役を買って出てく
れて本当に助かったといっています。
 このシティズの顧問弁護士時代のことを橋下氏は、読売テレビ
の「たかじんのそこまで言って委員会」で次のように話していま
す。2006年4月のことです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 消費者金融で一番問題なのは、グレーゾーン金利ですね。10
 万〜100万円未満の間だと利息制限法で18%です。これな
 ら十分に返済できる。しかし、グレーゾーン金利でいくと29
 %の金利、ちょっと前だと40%の金利。これはもう、金利だ
 けで精一杯で元金は減っていかない。実は、そこ、僕が顧問を
 やっていたシティズ。8年間は、このグレーゾーン金利の裁判
 で、一度も負け知らずでした。でも、この1月に、最高裁が、
 やっとそれをひっくり返しました。
         ──大阪の地方自治を考える会編/講談社刊
       『「仮面の騎士」橋下徹/独裁支配の野望と罠』
―――――――――――――――――――――――――――――
 利息制限法の上限を超える「みなし弁済」の規定をめぐって債
務者の起こす裁判で、橋下氏は「法律にのっとって貸しているの
だから、どこが問題なのか。それが悪というのなら、法律を改正
するしかない」と法廷で徹底的に主張し、裁判で勝利を勝ち取っ
ていたのです。
 このような体験を積むなかで橋下氏は、弁護士の世界の偽善め
いたものを感じていたようです。絶対的正義を遂行するという崇
高な話をしながら、基本的には弁護士という職業がサービス業だ
ということを弁護士たちは忘れている──橋下氏は、このように
いっているのです。
 こういう思いが有名な光市母子殺害事件の弁護団に対して向け
られた次の発言につながるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 光市母子殺人事件の弁護団に対して、もし許せないと思うなら
 一斉に弁護士に対して懲戒請求をかけてもらいたい。
          大阪の地方自治を考える会編の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
                ―── [橋下徹研究/06]


≪画像および関連情報≫
 ●光市母子殺害事件の弁護団に対する橋下氏の懲戒請求発言
  ―――――――――――――――――――――――――――
  大阪府知事に就任する前にタレントとしても活躍していた橋
  下が、2007年(平成19年)5月27日に放送された読
  売テレビの番組『たかじんのそこまで言って委員会』におい
  て、このようなむちゃくちゃな弁護をする弁護団には懲戒請
  求を送る方法があると提案。この時の放送では橋下だけでな
  く、司会のやしきたかじんやその他のパネラーも、弁護団に
  対してあまりにもひどい弁護団だと非難。そしてテレビを見
  ていたたくさんの人達が橋下の意見に賛同、この弁護団の懲
  戒請求を実施した。これは『懲戒請求』制度についての知識
  を世間へ広めるのに大きな影響を及ぼし、国民の司法への関
  心が高まるきっかけとなった。
        http://www.youtube.com/watch?v=bc54xKKS-vg
  ―――――――――――――――――――――――――――

タレント時代の橋下氏の懲戒請求発言.jpg
タレント時代の橋下氏の懲戒請求発言
posted by 平野 浩 at 03:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 橋下徹研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/281407559
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック