英エコノミスト誌(電子版)は2012年6月16日掲載の記事で、野田首相を評価した。
増税や原発再稼働という「不人気政策」を、批判を恐れずに進められるのは「民主党が下野しても、自分が落選しても構わない」と腹をくくったという解釈だ。いわゆる決断できる首相という構図で評価した。財界にもそのような声があると聞く。
少し待って欲しい。
例えば関西電力大飯原発3号機の再稼働。これはどういう基準で決めたのか。原発依存の社会から脱するのか否か。原発依存から脱するとすると、どのような道筋を考えるのか。工程表はどのようにして作るのか。総合的なエネルギー政策はどうするのか。
そうしたことに、野田首相はなにひとつ答えていない。決めたのは、とりあえず再稼働のみ。これでは「決める首相」ではなく、「先送りする首相」だ。
いま、総理官邸の前に行くと多くの人が抗議の声を上げているのが分かる。7月1日に迫った大飯原発の再稼働に抗議するデモだ。参加者は毎週増えていて、主催者の発表では6月30日には20万人に達した、というではないか。この人の輪を広げているのが、ツイッターとフェイスブック。組織的な動員ではないのだ。
この抗議の声を、野田首相はどう聞くのか。
決断することはリーダーとしては大事なこと。
しかし、もっと大事なのは国民の皆さんに語りかけること。説得すること。自分に信念があるなら逃げ回らないで何時間でも話し掛ければいい。
野田さんには是非、静かな心でデモ隊の声に耳を傾けて欲しいと思う。