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焦点/古里帰還なお遠く/原発20キロ圏、警戒区域解消 福島

再編初日に一時帰宅し、玄関前を掃除する斉藤さん=28日午後0時10分ごろ、福島県双葉町両竹

 福島第1原発事故で、福島県双葉町の避難区域が28日に再編され、原発20キロ圏内の警戒区域が2年1カ月ぶりに全て解消された。再編は住民の帰還を早めるのが狙い。だが、インフラ復旧、除染が進まず、帰還のめどは立っていない。

◎インフラ復旧、除染進まず/「ひどい状態、生活できぬ」

<家は破損>
 双葉町両竹地区。28日、警戒区域から避難指示解除準備区域に移行し、立ち入りが可能になった。津波被災地でもあり、ほとんどの家が破損して住める状態になく、再編初日に自宅を訪れた住民はわずかしかしない。
 行政区長の斉藤六郎さん(75)は妻(73)と避難先の茨城県つくば市から一時帰宅した。「ひどい状態だ。悲しくなる」。玄関前に山積みになった家財道具を片付けながらこぼす。「立ち入り自由になっても生活できる状況になく、みんな戻ってこない」
 町内の避難指示解除準備区域は両竹地区など3地区。残りの17地区は帰還困難区域で長期間帰宅できない。帰還困難区域は人口、面積とも町全体の96%を占める。
 警戒区域は全面立ち入り禁止で原発事故直後の2011年4月22日、政府が原発20キロ圏内を一律に指定した。避難区域の県内11市町村中9市町村が対象となった。
 避難区域の再編は立ち入りできる区域を増やしてインフラ復旧、除染を加速させ、住民の早期帰還を促すのが目的。12年4月に始まり、警戒区域は順次解消された。今回の双葉町の再編で、未実施は20キロ圏外の川俣町だけになっている。

<水通らず>
 南相馬市小高区は対象市町村の中で3番目に早く再編された=表=。人口も約12000と多く、再編の成否を占う試金石と言われる。
 市によると、中心部の水道復旧率は16%にすぎない。下水道の復旧も本年度いっぱいかかる。除染も除染廃棄物の仮置き場の選定が住民の反対で手間取り、大幅に遅れている。除染は8月に始める予定だが、全域の終了見通しは立っていない。
 桜井勝延市長は「インフラ復旧、除染の遅延で避難指示の解除時期を考える段階に至っていない」と住民帰還が現実化していない実情を認める。旧警戒区域市町村のうち、本格除染が始まったのは田村市、楢葉町、川内村、葛尾村にとどまる。仮置き場の候補地探しで難航している市町村が多く、双葉町では除染計画も策定されていない。
 インフラでは浪江、大熊、富岡、双葉の4町で水道復旧の見通しがつかず、一時帰宅した住民の家の片付けがおぼつかない。自治体は「水が通らず、線量も高い地域で人が活動するのは限界がある」(浪江町)と言う。
 南相馬市小高区から鹿島区に避難する派遣社員川崎利夫さん(63)は「学校や病院がどうなるかも分からない。家族で暮らす土地を別に見つけようかと思う」と、地元との決別を考えている。


2013年05月29日水曜日

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