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社会・環境 2012.07.24

大津いじめ自殺事件と教育委員会

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 「アンケートの結果、イジメは、神奈川県教育委員会管轄の学校ではほとんどありません」
 「そんなわけはないでしょう。イジメがある前提で考えるべきです」
 「調査した結果がこれなので、これしかないとしか言いようがありません」

 私は2006年から2009年まで神奈川県の教育委員の任命を受けていた。神奈川県では年2回現場にイジメの調査を行っている。その結果を教育委員に報告しておわり、という状況だった。

 冒頭の会話は、その際の神奈川県、教育委員会事務方と私とのやりとりである。

 残念なことだが人の心は弱い。イジメという表現形態で小さな幸せに浸ろうとする。学校にイジメは少なからずある、という前提で考えるべきというのが私の意見だ。心の中にある良心はほっておけば、かならず、雑草が生えてきてしまう。
 イジメが分かったらすぐに手を打つ、いじめた側の弱い心に対応してあげるという姿勢が大事だと思う。

 翻って、滋賀県大津市のいじめ自殺事件。詳細がまだ明らかではないが、本当に胸が痛む。
 「いじめとの因果関係は分からない」。沢村憲次教育長は繰り返していた。朝日新聞によると、自殺を巡る学校対応について、月1回の定例会で教育委員からの意見や質問がゼロだったという。記事によると、11年12月15日の定例会では、自殺生徒の同級生が担任に「トイレでいじめてる」と伝えたことを学校側は「けんか」として処理したと沢村教育長が報告しても、ほかの教育委員からの反応はなくそのまま閉会していた。

 そもそも教育委員会は、戦時下の軍国主義教育を繰り返さないよう求めるGHQの要請で、政治権力から独立した組織として誕生したと聞く。当初は公選制が採られたが、56年の法改正で、首長が任命することになった。
 これでは、市民の監視組織ではなくなってしまう。首長の意向が反映されやすい。

 教育で最も大切なものは、愛。子どもに関心を持つことだ。その感度、アンテナは親が一番高い。親と教師が共同戦線を張ること。これがもっとも、大切なこと。
 私が理事長を務める郁文館夢学園では、入学式当日、子どもに教師が自らの携帯番号を伝える。そして、365日、24時間電話していいと言う。

 子どもに対する愛がないと見られれば、教育委員会の存在理由はなくなる。

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