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「産業突然死」の時代の人生論

潮干狩りのアサリは北朝鮮からの輸入だった!

 実は日本の農薬使用量は、単位平方メートル当たりで世界一多い。無農薬と口では言っているが、とんでもない。農薬に設定されていない同じような機能を持った薬を使っているだけだ。もし本当に無農薬にしたら、害虫を駆除するのも雑草を取るのも、平均年齢59歳の農民には大変な作業になってしまい、あまり現実的とは言えない。結局、日本の農地は世界のどこよりも農薬を使う、きわめて人工的な田畑といえる。

 しかし、国民は「日本が一番安全」だと信じこまされている。だから、中国産の野菜に少しでも残留農薬が発見されたりすると、「民度の低い国は信用できない」と大騒ぎしてしまう。今は山東省などの農民もものすごく勉強したから日本式栽培方法の競争力は抜群についている。日本のやったことは実際には天に唾する行為だったのだ。

 日本人の国民性を自分で姿鏡に映してみれば、世界から見た日本の実態がよく分かるはずだ。いざとなったら意地悪されても仕方のないことを日本はやっているのだ。この点を自分で分かっていないところが、日本の最大のリスクといえる。日本は意外に嫌われている。それも不必要に嫌われている。

 もう一つ国家による欺瞞(ぎまん)がある。今年6月に、潮干狩りをしようと千葉県の富津(ふっつ)海岸に行ったのだが、できなかった。なぜかと聞いたら、アサリが北朝鮮から入って来なくなったからだそうだ。ということは、去年までは北朝鮮のアサリをまいていたというわけだ。日本のものだと思って今まで潮干狩りをしていたのに、実は毎年シーズンの数カ月前に北朝鮮から入れたアサリを埋めて、それを一生懸命掘らせていただけのこと。漁協も高い料金を取らざるを得ないわけだ。言われて初めて知った。

 はまぐりにしても、有明海に1週間寝かせたら国産として売っていいそうだ。浜名湖のうなぎも1週間泳がせたら浜名湖産になる。つまり、生きたまま輸入すれば、食材はすべて国産に“ロンダリング”できる。「松坂牛」や「近江牛」も、すべて但馬牛を1週間それぞれの地で餌を与えれば、「松坂牛」や「近江牛」に“仕上げ加工”できる。

 青森・八戸の漁港では、ロシア人が魚介類を獲ってくる。環境の厳しい北洋漁業に出掛けていく日本人など、今は少ない。ロシア人が漁獲したものを洋上交換したり、最近では港までロシア人に堂々と来てもらって、漁協ぐるみで水揚げしたりしている。日本海側の鳥取・境港などの漁獲高が高いのは、北朝鮮のものを洋上交換して持ってくるからだし、長崎の漁獲高が多いのは、中国の山東半島まで行って買い付けてくるからだ。大漁旗を掲げて帰港するのは当たり前。満杯にすべく、いろいろなルートで調達しているからだ。業界関係者なら半ば常識だろうが、こうした実態を知っている消費者は少ない。

 こうして見ると、日本の食料にせよ何にせよ、“国産”と思っているものの中に“国産”なんてほとんどないことが分かるだろう。「日本の食」は完全に空洞化しており、もはや真実のかけらもない。

 人間が生きる上での基本ともいえる「食」という分野に、ここまでの欺瞞(ぎまん)を許している国が、色々な応用問題でも欺瞞(ぎまん)を積み重ねていくのは、自然な成り行きだろう。

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