睡眠時間を大幅に削られると神経新生が抑制されて、海馬の体積が減少するのではないかと瀧先生は推測している。
「今回調査対象とした子供たちの追跡調査を行っていますので、間もなくこの因果関係についても明らかにできると思います。ただ現時点でも、子供の脳を健康に育てるためには十分な睡眠を取らせたほうがいいと言ってしまっていいのではないかと私個人は考えています。携帯電話やゲームを無制限にやらせて夜更かしさせたりせず、子供はなるべく早く寝かす。脳の発達は10歳前後がピークですから、特に6歳から12歳ぐらいまでの間は、たとえ勉強のためであっても睡眠時間を削るのはよくないと思います」
うつ病やアルツハイマー病の患者では海馬の萎縮が顕著に見られるというから、将来子供をこうした病気に罹患(りかん)させないためにも、10歳前後には十分な睡眠を取らせるべきだと瀧先生は言う。
しかし、中学受験を控えた子供の場合、勉強することが山ほどある。多少睡眠を削るのも致し方ないと思うが、いったい何時間ぐらい眠れば“十分”なのだろう。