作品

MCきつね
ドール・メイカー・カンパニー 〜 第1話 初仕事 〜
 東京から程近いある地方都市。
 探偵社を装ったこの会社に居るのは10人の催眠術師。
 自らをマインド・サーカスと名乗るこの集団は、巷では別の異名を与えられていた。
催眠・人身売買・会社
(1) 「おはよう、“きつね”くん。眠そうだね」
 がっしりした体格の若い男が立っていた。
「あ、“あらいぐま”さんだ。おはようございま〜す」
(2)〜(4)  遂にプロジェクトが本格始動を始める日となった。
 シナリオが書きあがってから更に1週間経っている。
(5)  彼が1週間目に店長から言い渡された作業区分は、に店番ではなく経理作業の手伝いをするといった内容だ。
(6)  “きつね”くんが本格的な個別調教を開始してから既に3週間以上が経過していた。
(7)  新しい人生、再出発・・・。  映美の心は、今日の天気のように軽く爽やかだった。
(8)〜(10)  映美が男に引かれながら四つん這いで歩いていると、反対方向から来る同じようなペアに出会った。
(11)〜(12) 「映美さん、起きてく〜ださ〜い」
 見覚えのない部屋・・・・
(ええと・・・ここは・・・?)
(13)〜(14)  昨日に引き続き、ふたたび奴隷としての1日が始まった。
 スケジュール表には4人の名前が書き込まれていた。
(15)〜(16)  映美は駅の方向に向かって歩いていた。
 たしか駅前には交番もあったはずだ。
(17)〜(18)  映美はパチッと目を開いた。
 誰も居ない。午前4時。
 彼女は布団の中で全身を耳にして気配を探った。
(19)〜(21)  夜明け前の裏通り。
 映美の足音だけが響いていた。
(22)  東京から車で4時間あまり・・・。
 “きつね”くんと“くらうん”は、洋館に視線を向けた。

ドール・メイカー・カンパニー 〜 第2話 気の荒い女神達 〜
 早朝の校舎を1人の生徒がゆっくりと階段を登っていた。
 そしてたどり着いた扉の先に人型のシルエットを見つけると、彼は初めて表情を変えた。
「おはようございます・・・先生」
催眠・人身売買・会社
(1) 転落の軌跡 「お、おはようございます・・・ご・・・ご主人様」
 そう言って女教師は、朝日の中に全裸の身体を晒し、首輪に結びついたチェーンを差し出したのだった。
(2) 新たなる計画 「オヤジ、ちょっと話があるんだけど・・・」
 夕食時、健志が父に切り出した。
「俺の担任の清水を知ってるよね」
(3) 小さな勇気  京子の代理で赴任してきた石田諒子教諭が生徒の前に姿を現した。
「すげぇ・・・」
 この呟きが、全員の気持ちを代弁していた。
(4) 屈辱  教職員全員を敵に回しての激論を戦わせてきたところだった。
 京子の手紙を読んでしまった今、健志に頭を下げるのは出来なかっただ。
(5) 連鎖 「お姉ちゃん、誰?警察の知り合いって」
 京子との電話を切ると、美紀が不思議そうに訊いてきた。
(6) 暗闇の台頭  久しぶりに会った諒子のテンションが怜を刺激していた。
 狩猟本能が疼いていた。
(7) 呼び出し  この部屋の住人、山下絵理は食卓にドンと音を立てて大皿を置いた。
「ふぅ〜、お待たせぇ!重かったわぁ。夕ご飯の出来上がりよ」
(8) 始動 「経緯は大体こんなところですよ」
 “くらうん”は“きつね”くんに写真を手渡した。
(9) 鎧袖一触 「なんでしょうか。急いでるんですけど」
 孝一郎は1枚の紙を怜に突きつけた。
 次の瞬間、怜の表情が抜け落ちた。
(10) Bモード 「“くらうん”さんっ!怜が来てるってっ?」
 “あらいぐま”は、“くらうん”の股間に全裸で顔を埋めて舌を使っている怜に出くわした。
(11) 小さな亀裂(前編)  ドタドタ、ドドドドッ!
『だっ、だ〜っずげでぇ〜〜っ!!』
(12) 小さな亀裂(後編)  ドタドタ、ドドドドドドドッ!
 “きつね”くんも社長室の扉に飛びついた。
(13) 美紀、陥落  指定された駅前の雑踏に佇む美紀は、もういい加減ウンザリした気分で溜息を吐いていた。
(14)踏み外した一歩  翌朝、“きつね”くんが怜を伴い社長室の扉を開けると、“くらうん”はパッと顔を輝かせた。
「おはよう、“きつね”くん。随分眠そうですね」
(15)運命の交差 坂田勇作は、少し焦っていた。
そしてその原因は諒子先生にあった。
(16)公開調教  冬の日暮れは早い。
 校舎にポツポツと明りが見える他は、街灯から洩れる僅かな明りしか無かった。
(17)諒子の決意  はあ、はあ、はあっ・・・
 月明りに照らされた階段を勇作は一心不乱に駆け抜けていた。
(18)心の折れる時(前編) 「さぁ〜てっ・・・いよいよクライマックスですかぁ?」
 2階席から固唾をのんで事態の進行を見詰めていた“くらうん”は誰にとも無くそう言った。
(19)心の折れる時(後編)  その少年に誰よりも早く気付いたのは、“あらいぐま”ではなく怜だった。
(おかしい・・・)
(20)後始末  怜は気を失って倒れ伏していた。
 無防備に晒された素足が真っ赤に染まっている。
(21)チェイス! 「すみません。忘れ物してきたみたいなんです」
「忘れ物ねぇ」
 “あらいぐま”は唇の端を上げた。
(22)約束の日(前編)  諒子はその日、いつに無くゆっくりと起床した。
「さっ、急がなきゃ」
(ん?何を急ぐんだっけ?)
(23)約束の日(後編)  健志は諒子の顔をゆっくりと引き離した。
「諒子ぉ・・・ゆっくりと味わえ」
(24)潜伏と雌伏 懐かしい場所だった・・・
昔、二人で歩いたことがある道だった。
『そうだったよね?』
(25)封印 コンコン・・・
部屋の扉がノックされた。
既に時計の針は深夜0時を指そうとしている時刻だ。
(26)それぞれのラスト・ディ ドアがガラッと開いた。
入って来たのは石田諒子だった。
(27)健志の罠 「ふぃ〜・・・疲れたぁ・・・」
 勇作が席でへばっていると、その正面に腰掛けた若い女がバカにし切った表情で言った。
(28)再生  そこには闇が居座っていた・・・
 日差しが明るく照らしているのに、その一角だけは暗く感じられた。
(29)逆転の罠  軽いクラクションの音で振り返ると、そこに見覚えのある車が止まっていた。
「こっち、こっちっ」
(30)決着・・・そして 「うわあっ!」
 男の声で絶叫が上がった。
(31)初対決 「あ・・・何か来る」
 広大な庭を囲う3メートル以上もあるフェンスの向こう側を、何かが凄い勢いで駆け抜けていることに“きつね”くんは気付いた。
(32)気の荒い女神たち 暖かな日差しが射し込む豪華な個室の病室で怜はベッドに腰を掛けていた。
 1ヶ月あまり過ごしていた入院着やパジャマ姿ではなく、今はコットンシャツにジーンズの格好になっている。

ドール・メイカー・カンパニー 〜 第3話 “きつね”をめぐる冒険 〜
 シティホテルのカンファレンス・ルーム・・・
 その中の一番小さな一室で、今6人の男たちが会議テーブルに着いていた。
「さて・・・それじゃ、さっさと済ましてしまいましょうか」
 男はそう言うと、鞄から1通の書類を取り出し相手に提示した。
催眠・人身売買・会社
第1幕 魔女の屈辱
プロローグ 契約締結 「契約内容のご確認を。ご不要でしたらメモ帳にでも使ってください」
「いやいや、なんといっても『マインド・サーカス』との提携契約書ですから」
(1) プライド  冬のある朝、1人の女が官庁街にあるビルに飲み込まれていった。
「よぉ、久しぶりの出社だね。蘭ちゃん」
(2) 罠  1台の真っ赤なセラが高速を北上していた。
「あんな冗談みたいな薬が何の役に立つっていうのよっ!」
 運転しているのは蘭子だった。
「マインド・サーカスの暗示を解けるのは、この私だけなのにっ!」
(3) 調教  曇っていた空から白いものが舞い降り始めていた。
 神宮寺は小走りに建物へ駆け込んでいった。
 「奥のお姫様、半分溶けかかってるぜ」
(4) 女衒  あの日から、一体何日経ったのだろう・・・
 日にちを数えることを諦めてしまっている蘭子には、もうその答えを探ることは出来なかった。
(5) 復活!  道を行く軽トラックの音・・・
 蘭子がふと目を覚ますと、最初に耳に飛び込んできたのがそれだった。
(6) 取引 「一週間したら見に来てあげるわ。それまで仲良く過ごすんですよぉ」
 蘭子はまるでそれだけ言うと、さっさと踵を返した。
第2幕 奈落
プロローグ 瞳の奥の罠  タン・・・タン・・・タン・・・
 テーブルの下で男の足が微かにリズムを刻んでいる。
 向いに座る女の耳にもその音は届いていたが、しかしそれが意識にのぼる事は無かった。
(1)サルベージ  白神は目の前で繰り広げられる実験の進行を静かに見守っていた。
「如何です?実際の様子を見るのもまた違ったインパクトがあるものでしょ」
(2)渦中へ  まるで蘭子の足跡をなぞるように、1台のランクルが高速を北上していた。
 運転しているのは川瀬、助手席には木之下が座っている。
(3)美咲の誤算(前編)  早々と夜の帳が降りた冬の街を、電車は走り抜けていく。
 夕方のラッシュで混み合うこの電車に、美咲は独りで乗り込んでいた。
(4)美咲の誤算(後編) 「わっ・・・凄いっ。もう効いてきたよっ」
 若い男のその声が、美咲が最初に耳にした言葉だった。
(5)奪還  仲間の突入までもう10分程度。
 のんびり美咲で遊んでいる場合では無かった。
「僕がいく」
(6)美咲の奸計(前編)  暗い県道を1台のランクルが疾走していた。
 運転しているのは美咲の部下、川瀬である。
「どうやら尾行は無さそうだね」
(7)美咲の奸計(後編) 「チーフッ!銃を向けるなんてやめて下さいっ!」
 けれどそれに答える美咲の言葉は、2人に衝撃を与えた。
(8)下克上  川瀬が風呂から出て行くと、木之下が美咲の体に圧し掛かっているところだった。
「どぉだぁ、木之下ぁ?」
(9)長い長い一日の始まり  翌朝は、前日とはうって変わって快晴だった。
木之下達3人は早々とホテルを後にすると、放射冷却で凍える町へと車を走らせた。


 

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