────あれから一週間。 学園から自転車で十分の距離に亜紀のマンションはあった。 独り暮らしを始めて以来、本人と家族以外誰一人として訪れる事の無かった場所だ。 今日は何と! 亜紀姉のマンションにお邪魔して、手料理をご馳走してもらうんだぜっ!! ……と、気負ってみたものの。 「あ……んっ。修ちゃん、お料理の途中に、邪魔しちゃダメなのですよぉ」 亜紀姉は俺の猛烈なリクエストによって、男子百万人羨望の裸エプロン姿。やっぱ男のロマンだよね。油モノとか怖くて任せらんないけど。 キッチンで包丁作業が終わった頃を見計らって、俺は後ろからエプロンの隙間に手を潜り込ませている。 「んあっ……にゃう……っ。だ、ダメっ、お姉ちゃん、それ以上されたら変になっちゃうのですっ!」 固くなった乳首を摘まみ上げて、背筋に舌を這わせると、亜紀姉はゾクゾクと身震いしてみせる。 こうなれば料理どころじゃない。亜紀姉はカタカタと腕を震わせて、インバーター電熱器のスイッチを落とす。 太股をスリスリと上に向かって撫で上げると、股間から滲み出た愛液がトロリトロリと溢れ出して滴っている。 その秘裂に指先を突っ込んで、やわやわと襞を揉み解し、尿道の真下にあるザラつきを爪でコリコリと擦ってやる。 「にゃ! ふにゃぁああぁぁぁぁっっっ!!」 「ほら、こんなに亜紀姉、トロトロになってる……」 「でゃ、ダメなのれす……。お姉ちゃん、もう、我慢……でき、らい……」 「じゃあ、亜紀姉。お願い≠オてみて?」 「………うにゅう……」 顔を真っ赤に染めながら、両足を踏み台の上に載せる亜紀姉。 そのまま前傾姿勢になって、両手で肉付きの薄い尻たぶを掴んで引っ張ると、しどどに濡れそぼった淫裂を晒け出す。 「しゅ、修ちゃ……ん……の、オチンチンを、お姉ちゃんの……」 恥ずかしさに言い淀んでいる亜紀姉に痺れを切らして、俺は腰を屈めて亜紀姉の股間に顔を埋め、淫裂の襞の一枚一枚を伸ばすかのように舌で舐め回す。 後から後から泉のように愛液が湧き出てきて、吸っても舐めても尽きる気配はない。 「にゃあぁんっ……。だ……め………そんな……もぅ……」 「ほらほら、早く言わないと。間に合わなくなっちゃうよ」 「……お姉ちゃんのオマンコに、……お、オチンチンを突き刺してぇっ!」 その言葉と共に亜紀姉の両腕から力が失われ、ガタリと流しに突っ伏してしまう。 「ほら、エッチな事言うと、どんどん気持ち良くなってくね。亜紀姉」 「にゃ……ふにゃぁ……欲しいの…………しゅうちゃあん……」 朦朧としながらも、腰をくねらせて挿入をせがむ亜紀姉。 これでグッと来なかったら男じゃない。 「じゃ、行くよ」 「ちょうだい……もうお姉ちゃん、熱くなっちゃって、我慢できないのれすぅ」 ────ズブリと、後ろから亜紀姉を一気に奥深くまで貫く。 もう何度、亜紀姉とこうして繋がっただろう。 男を知らなかった亜紀姉の身体は、まるでスポンジが水を吸い込むようにエロい事を覚えて、色んな刺激に馴染んでいった。 もう亜紀姉の膣内は、俺のアソコの形に変形しちまったんじゃないかと思うくらい。 最初の頃はぎごちなかったのに、みるみる俺の侵入に馴染んで、キツかった内部が今や柔らかく優しく、時にギュッと鞭がしなるような締め付けを見せ、俺の方ではこれまで以上に暴発しないよう注意が必要なくらいだ。 その急速な変化は、まるで今までの亜紀姉の寂しさを埋め合わせているようで。 それこそが亜紀姉の得る筈だった幸せだとばかりに、俺も夢中になって亜紀姉の身体を隅々まで貪っていく。 「どう、亜紀ね……、どこが、どう、いいのっ?」息を切らしながら問いかけると、 「いいっ……オマンコの奥まで、修ちゃんの、熱い、オチンチンが、グリグリッと、埋まっちゃって、抉って、……おねえちゃん、バラバラになっちゃうっっ!」 「イくよ、亜紀姉。ね、一緒に、イこう?」 「……ん〜〜っ! 来てっ! 来て来てぇっ! おねえちゃんの中、ドロドロにしてっっ!!」 ドクッ! ドクッ! ドクドクッッ!! 膣の奥にアソコを叩き付けて、亜紀姉の子宮の中まで俺の精液で真っ白に染め上げるように放出をする。 「イクッ! イクイクッ! 修ちゃん、あたし、イっちゃう────っ!!」 結局、夕食が無事に終わった頃には午後九時を回っていた。 ──何だかんだ言って、気がつけばアソコが枯れる程ヤっちゃってるからなぁ……。 流石に亜紀姉も教育者として、生徒を遅い時間まで外出させる訳にはいかないと言い張って、俺はマンションを追い出される羽目になった。 まぁ当然の話ですが。 だって『巫女』になったつったって、本人に自覚がある訳じゃ無し。人生観や価値観は多少なりとて影響受けてるだろうけど(主に恋愛感情とかエロ方面とか)。そもそも『巫女』かどうかなんて『氏神』でもなきゃ分からんのだし。 思い立ったら吉日と言いますか。 マンションを出て、とりあえず俺は左手の小指を立ててみる。 目を凝らしてそれを見つめ、狐の目≠ナ観察。 すると小指に赤い糸が絡まっており、絡まった糸の先が亜紀姉のマンションの部屋にまで光りながら伸びているのが目≠フ力で捉えられた。 指から離れると間も無く糸は太くなり、マンションに届く頃には綱引きの綱みたいな太さにまでなってしまっている。 ──そろそろ、巫女捜しを始めなきゃいけないんだよな。 稲荷神との会話を思い出す。 「でも……。そんなに色んな相手と縁だの絆だの作って、大丈夫なのか?」 『ん? おんし、お定(さだ)が怖いかの?』と、おかめの面でおどける稲荷神。 「定って……?」 『何じゃ、知らんのか。お定、阿部定(あべさだ)よ。女房の居る男に岡惚れして、男を殺した挙げ句、独占欲が高じて、その股間の一物を切り取って持ち歩きながら逃亡したっちゅう、稀代の女子(おなご)よな』 「──げげっ。それ、言ってみればヤンデレの走りじゃねーのかよ」 『ヤン……デレとな? そいつは知らんがな。 何れにしても心配には及ばん。そもそも神と巫女は位(くらい)が違っておろう。独占などできん事くらい、巫女も本能的に、無意識に感づくわい』 「本能的?」 『神の位の者を独占しようなどとすれば、その力も何もかも一切を、一身に受ける事になるわ。……人の身たる巫女には、許容量を遥かに越える話じゃて』 「きょ、よう……りょう?」 『縁も絆も一度出来てしまえば、それを強固にするも容易じゃ。じゃが、その巫女一人に神が寵愛を振り向けると、巫女はいずれ耐えきれずに壊れてしまうのよ』 「じゃ、じゃあ……。俺は、ズーッと、巫女漁りをしてなきゃいけないってのか?」 『ある程度頭数が揃えば、その心配も無用じゃがな。 ──さてさて、巫女を揃えるが早いか、巫女を壊すが早いか。そこが氏神の度量の見せ所よな。フェッフェッフェッ』 あの稲荷神の言葉が事実だとすれば。 このまま亜紀姉とイチャついてばかりいては、亜紀姉を不幸にしかできない。 俺が望もうと望むまいと、……次の巫女を捜し出さないと、亜紀姉が危ないのだ。 チクリと胸が痛む。 だけど、それもこれも全て覚悟の上で氏神を継いだのならば。 そのお陰で、こうして亜紀姉と仲良くなれたのだから。 だったら、もう、腹を括って臨むしか無い。 そして俺は、神社に向けて帰路を辿る。 ──どうせ親父もお袋も、町内会の連中と遅くまで呑み歩いているんだろな……。 カシャーカシャーカシャーカシャーッ。 少女はデジタル一眼に五倍ズームレンズを装着して、野良猫を撮影していた。 ──そう、自分オットコ前やでぇ……。ええ感じや。もうちょい、じっとしといてや……。 被写体に逃げられる訳にはいかない。フラッシュを切って、増感モードで連写オンにし、ひたすら心の中で呟きながらレンズを向けている。 猫も、人の気配には気づいているのだが、相手が殆ど身動きすらせず微かな音を立てるばかりで、しかも彼我の距離が十分安全圏にあるため、やや警戒しながら相手を観察している。 ──ええで、スラリとしたボディ。グリーンに輝く瞳。なかなかイカシてるやん! と、脇の共同緑地の方からミィミィと小さな声が聞こえてくる。 猫は意識をそちらに逸らし、どこかの店のゴミから調達したらしきフライを口に咥え直して駆け出していく。どうやら母猫らしい。 ──あ……っちゃぁ。自分、雌やったんか。そら機嫌損ねてまうわな。堪忍。 少女はカメラを再生モードに切り替え、今の猫の画像を確認する。 と、そこに。背後のマンション二階の一室で玄関が開かれた。 「もぅ、修ちゃんこの頃エッチな事ばっかりで、お姉ちゃんちょっとは真面目になって欲しいと思うのですよ」 「でも、良かったんでしょ?」 「………。……で、でも、今日は折角、おじさんおばさんがお出掛けだから、あったかいお料理、食べて貰おうと思ったのに、すっかり冷めちゃってダメダメなのですぅ」 「ごめんごめん。亜紀姉の料理、美味しかったって。────んーっ、チュッ」 「ん〜〜〜っ。……もぉ。ちゃんとお家帰ってから宿題はやるのですよっ!」 「はいはい、また明日ね」 ……そんな会話が小声で展開されていたのだが、勿論この距離では少女に聞こえる訳がない。 ただ、聞き覚えのある声が耳に入った、と思った。 即座に身を潜め、カメラバッグから十倍ズームレンズを取り出して装着し、双眼鏡代わりに液晶画面のライブビューで覗き込む。 液晶画面はリアルタイム映像故の荒いノイズまみれではあったが、それでもピントを合わせてズームを目一杯かければそこに何があるのかは視認できた。 マンションの通路の囲いに身体の殆どが隠れてしまっているが、見覚えのある女性の顔が映る。角度がついているため顔を画面に収めるのが精一杯な状態だが、肩口まで見えている隣の少年との身長差は、ここからでも一目瞭然。 カシャーカシャーカシャーカシャーカシャー……。 半ば衝動的に、少女は増感・連写モードでシャッターボタンを押しっ放しにした。 女性の顔、少年のブレザー、少年の顔、近づく二人の顔。 少年のブレザーが白冬の制服である事は、もう確認済みだ。 少年がマンションを出てくる。 慌てて少女は、カメラバッグを抱えて共同緑地に小さく屈んで忍び込む。 ──猫ちゃん、食事中に邪魔してもぉて、堪忍な! 考えすぎかも知れないが、背後で一家団欒の食事を邪魔された母猫が恨みがましく睨み付けているように感じてしまう。 少年はなぜか立ち止まり、振り返って小指を立て、ジッと凝視している。 ──何や、おまじないでもやっとんのか? 絶好のシャッターチャンスには思われた。だがこの距離では、シャッター音すら相手に気取られる危険がある。 そこで少女は、眼鏡のセンターフレームを人差し指で押し上げ、その目でひたすら少年を観察した。 その目鼻立ち、輪郭のライン、街灯の作る陰影のグラデーション。それら全ての情報が、後で撮影画像に補正処理を行う際の基準になる。 やがて少年は踵を返して歩き出す。 緊張の一時が終わり、少女はホウと息を吐いて座り込む。息を殺していたせいで、身体中が空気を求めている。 レンズを取り外し、カメラとそれぞれにキャップを装着。邪魔になったレンズをカメラバッグに収納する。もう今夜は殆どやる事など無い。 改めて再生モードに切り替えて、少女はパラパラと画像を切り替えていく。 画面上で野良猫が立ち止まり、走り去って、……そして、問題の玄関。 ズームをかけてやる。更にズーム。 ドアノブに近い位置に、白冬高等部の養護教諭の顔が写っている。 更に別の画像。二人が顔を寄せている。唇を合わせる二人。口の位置、開き具合、角度。どれも、社交辞令では通用しないレベルの行為だと指し示している。海外生活の長い人なら別かも知れないが。 「──まぁ、PCでNR処理とヒストグラム補正かけてみぃへんと、断言はでけんけど」 少女はカメラの電源を切って、腕組みする。 やけに大振りな双乳が腕に押し出されて、首から下げたカメラがボフッと弾む。 「……こらぁ、ごっつ面白(おもろ)いモンが手に入ったみたいやでぇ?」 ニヤリと口角を歪め、少女の八重歯が白く輝く。 眼鏡の奥の瞳が、獲物を見つけた野性動物の輝きを帯びる。 少女はよりにもよって白冬高等部生徒会で、会計を勤めていた。 二年三組、草柳友愛(くさやなぎともえ)。 それが、この少女の名前だった。
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