河北春秋

 そうそうたる教授陣による黄金期と、戦後の東北大法学部は呼ばれた。憲法学者で東北大・東大名誉教授の樋口陽一さん(78)は学生のころ、自由な言論に浸ったそうだ▼時は過ぎ、憲法論議がかまびすしい。著書『いま、憲法は「時代遅れ」か』はこう始まる。「憲法学者は何をしてきたのか。当たり前のことを効き目のある仕方で伝えてこなかった」

 ▼当たり前とは、憲法は権力が勝手をしないよう国民が縛るという理念を指す。この視点に立てば、いまは逆さまなのだろう。安倍政権が目指す憲法96条改正は、国会の改憲発議要件を緩めようという▼改正に反対する知識人が「96条の会」を結成した。樋口さんが代表を務める。「ルールに従うのが世の中の約束事で、主張が通らないから変えるのは異常」と話す

 ▼著作や講演で存在感を示しながら、自ら先頭に立って奔走することには慎重さを保ってきた。翻すような行動に駆り立てたもの、それは在りし日の恩師の姿という▼1957年に当時の岸政権が憲法調査会をつくったのに対し、清宮四郎東北大教授らは独自の研究会で護憲の立場から論じた。「高齢になっても思い切って発言した。いまの状況はもっと危うい」。ならぬことはならぬ、東北人の批判精神を見る。

2013年05月29日水曜日

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