抑留画を寄贈した吉田裕之さんと作品の一部=舞鶴市役所 |
終戦後、シベリアの強制収容所で過酷な暮らしを送った経験を記録した絵画237点が15日、舞鶴引揚(ひきあげ)記念館(舞鶴市平)に寄贈された。奈良県出身の故・吉田勇さんが描いた作品で、長男の裕之さん(61)=同県大和高田市=が「戦争の悲惨さを伝えてほしい」と託した。
旧満州にいた元日本兵の勇さんは終戦直後、旧ソ連軍に連行され、シベリア各地を転々とした。草刈りや樹木の伐採といった労働を強いられ、2年ほどで舞鶴に引き揚げた。
奈良で映画館を営むかたわら、1980年から趣味を生かして「抑留画」を描き始めた。絵は油彩や水彩だが、色彩は白黒が目立つ。裕之さんは「当時の印象がそうだったのだろう。何かにとりつかれたように描いていたが、記憶が鮮明なのに驚いた」と振り返る。
抑留画では、収容所で少ない食料を分け合う姿、戦友の埋葬、吹雪の中での強制労働などのほか、引き揚げ船で舞鶴港に着くまでの様子もたどっている。勇さんは20年近く描き続け、2000年に76歳で亡くなった。
勇さんは87年、記念館がオープンするのに合わせて5点の作品を寄贈しており、今回で全作品が記念館に託された。今後、企画展などで公開される。
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