ノバルティス“論文問題”が
飛び火で戦々恐々の製薬業界

2013年05月28日
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夜も眠れぬ研究者も多い?

 そもそも医師主導の臨床研究といえども、実際は製薬会社からの提案によるものが少なくない。製薬会社は医師に対し、研究費の提供はもとより、あらゆる形で協力が行われきた。過度な両者の“依存関係”は薄らでいるが、かつては製薬会社の社員が医師の臨床研究に患者として参加したり、論文や資料作成に関わることは、日常的に行われていた。眠れぬ夜を過ごす、関係者は多いだろう。

 今回、問題となった医師主導の臨床研究とは、新薬としての承認を得るために行う臨床試験、いわゆる治験とは異なる。新薬の発売後に、その有効性を証明する科学的根拠を集め、主に医師への宣伝活動を目的で行われるものだ。

 ディオバンは、世界でピーク時には6000億円以上を販売し、日本国内でも12年に1083億円を売り上げた大型新薬だ。武田薬品工業や第一三共などからの競合品が存在する。

 このように競争が激しい降圧剤や高脂血症薬、糖尿病薬などでは、国内でも大手製薬会社による大規模な臨床研究が複数行われている。

 もっとも、製薬業界による医師への研究費の提供や協力をすべて禁じる策は現実的ではないだろう。

 特に、国は医療分野を将来の成長産業として位置づけており、強力な産学連携は不可欠。「李下に冠を正さず」で、透明性を確保するしかない。 

本誌・山本猛嗣

Photo by Takeshi Yamamoto


 

 

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