ビッグデータ・オープンデータ活用推進協議会に参加している武雄市では、日本Facebook学会やTwitter学会の活動、市の公式ページのフェイスブック活動、図書館のTSUTAYAに委託など、様々な先進的な取り組みを行なっています。
武雄市のこれまでのソーシャルメディアに関する取り組みをご紹介しましょう。
佐賀県の人口5万人の地方都市の武雄市では、2010年9月1日から、市の事務系職員全員の約390名にツイッターのアカウントを配布し、市長の樋渡啓祐氏(@hiwa1118)、そして職員自らがツイッターを通じて住民との対話を行っている。全職員を対象とする試みは全国でも初となります。
開始当初は、多くの職員に戸惑いがあったものの、次第に積極的に活用する職員も見られるようになってきた。職員がアカウントを持ってから約4カ月が過ぎた時点で、自らつぶやいた職員は全体の55%を占め、職員の多くは市長や職員のツイートをチェックしており、ツイッターの導入を開始する前と比べて、格段に市庁舎内の情報共有が進んでいいます。
武雄市では、全職員にツイッターアカウントを配布した背景として、行政の見える化、市民参加などをあげています。
行政の見える化では、災害情報などの緊急情報をリアルタイムで詳細に情報提供をすることが、市民が安全安心の生活に寄与できるとしている。また、市長や市職員、そして市民とのやりとりが見えることによって、行政の見える化が実現する点をあげています。
市民参加については、今回の市職員の390名への配布により、市民の声を受け止める窓口が390設置されることになり、より市民目線にたち行政ができることが期待できるとしています。市民が参加できる環境をつくりためには、市民に利用してもらうことが大前提となる。まだまだこれから始めようとする人も多く、武雄市ではそういった市民のために、全5回の入門講座を開講。入門講座の講師は、市長の樋渡氏が自ら務め、市民とのオンラインとオフラインによる対話の機会を増やしています。
武雄市は2011年4月1日、企画課、広報課、市民恊働課などを統括する「つながる部」を創設し、その配下にフェイスブック係(秘書広報課)を新設。フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアを市政に取り込み、市民と市役所、市民と市民を相互につなぐ役割を担っています。
同日には市のフェイスブックページを正式にオープン。「くらしの便利帳」や「申請書」や「市政情報」など市民向けのページも設けています。市の公式ホームページを徐々にフェイスブックに一元化し、2011年8月1日には、市のホームページを閉鎖し、フェイスブックページに完全移行しました。全国自治体の中で初の試みとなる。併存すべきという意見もあったが中途半端を避け、フェイスブックページに集中しています。
移行後は、「観光情報」や「定住促進公式サイト」や「たけおの食育」などのコンテンツを新設し、充実を図っている。フェイスブックページの全コンテンツは、市の旧公式サイトのサーバからジ埋め込み型リンクで表示されているため、フェイスブックページが停止しても、市のデータが消えることはないといいます。
フェイブックページ完全移行後は、事業や政策、予算などの情報をリアルタイムに発信し、各部署が必然的に情報を書き込むようになっている。フェイスブックの「いいね!」ボタンやコメントを活用することで、市の各施策に対する市民の反応が見えるにようになり、市職員も市民からの問い合わせなどに積極的に答えるなど、市民の声を取り入れ、実名同士で活発に意見公開を行う場としての環境づくりをすすめています。
樋渡啓祐市長は、「市民にとっても行政との距離が近くなる。行政こそがフェイスブックを活用して市民とのつながりを強化していくべきだ」と話しています。
フェイブックの使い方がわからないという市民に対しては、市内の民間団体が運営する「ICT寺子屋」などで対応しています。また、「フェイブック交流会」など民間団体によるイベントが自発的に開催されているなど、市職員や市民が自ら学ぶ姿勢をもって取り組んでいけば、徐々に市民に浸透していくとみています。
武雄市では、ツイッターとフェイスブックの双方を積極的に活用していますが、双方の良さを活かして使い分けをしている。ツイッターでは全職員対象にアカウントをもたせ、職員同士や市民との緩やかなやりとりの中で、市民が職員の人格を知り、市民目線で市政に取り組むためのきっかけとしている。一方、フェイスブックの場合は、実名の個人を主体とし、政策について市民と深い議論をする場として位置づけています。
武雄市では、日本ツイッター学会(@TSJ2010)(2010年8月19日)と日本フェイスブック学会(2011年2月7日)を立ち上げ、会長には市長の樋渡氏が就任している。事例の研究や情報発信など、武雄市にとどまらず、地域におけるソーシャルメディアの普及に向けた活動を推進しています。
武雄市で一貫しているのは、ソーシャルメディアを通じて、行政の見える化と市民目線で市民との対話を重ね市政に活かし、そして、何よりも新しい試みで地域活性化につなげようとしていることです。樋渡啓祐市長は「最終的には新しい取り組みによって、自分たちの街が活性化され、注目度があがるなど、市民が誇りをもてるようにする、そのことが何よりも大事」と述べ、これらの取り組みを進めるための手段としてソーシャルメディの活用を進めています。
武雄市では、これまで「いのしし課」や「佐賀のがばいばあちゃん課」などのユニークな部署の設置や、電子図書館サービス『武雄市MY図書館』の開始など、行政組織の体質に常に新しい空気をいれ、全国からの自治体からも見学も相次ぐなど注目を集めています。
武雄市のオープンデータの取り組み
武雄市では2012年11月16日~18日に開催した日本Facebook学会において、市長の樋渡啓祐氏が市の行政文書をWeb上で一般公開し、情報公開請求せずに閲覧できるサービスを来年度から始める構想を公表しています。
行政の資源をオープンにする方針のもとオープンシティを推進し、官民の融合による市民価値の向上を進めています(関連記事)。
武雄市ではさらに、総務省が2013年3月22日に「地域経営型包括支援クラウドモデル構築事業開発実証」に採択され、オープンデータなどを活用した地域モデルの実証検証を進めていく予定です。
2013年5月14日には武雄市地域経営方包括支援クラウドモデル実証事業に関するシステム開発等業務企画提案協議を実施するにあたっての実施要領などを公開しています(サイト)。
http://www.city.takeo.lg.jp/info/2013/05/post-989.html
武雄市ホームページ
本事業では、行政のさらなる「見える化」や住民サービス向上などを目的とし、安心・安全に係る情報を一元的に発信・共有できるシステムの構築・運用に係る実証実験を行うこととしています。
具体的には市内の空き家情報などの市民向けのオープンデータを、行政や団体や市民が発信し地図上で共有できる安全・安心共有システムを構築し、平時だけでなく災害時にも活用できる仕組みの整備を進めています。
具体的には、武雄市地図ポータルサイトを開設し、市(建設課・総務課・水道課・農林課)が工事箇所、都市計画、交通事故などの危険箇所、消火栓位置、いのしし出現箇所などを地図上にマッピングし、警察や消防署とも連携することで、行政情報と地域情報を結び、住民がほしい情報に応じてカスタマイズもできるようにする予定です。
http://www.city.takeo.lg.jp/info/2013/05/post-989.html
武雄市ホームページ
武雄市では、各課の保有情報や内部活用情報に加え、事業者、市民からの提供データなどをセキュアに、検索がしやすいようなタグ付けをした状況で格納するプラットフォームを武雄市では「オープンガバメントプラットフォーム」と位置づけています。
こういったオープンデータを通じた情報公開による見える化を推進することで、住民の利便性向上のみならず、観光の活性化や定住促進にもつなげていきたいとしています。
オープンデータ化の取り組みとしては、2013年5月からは、各課に対して、保有するといったデータはすべて公開するという原則や、個別法令違反や個人情報の漏洩、著作権違反などの公開にあたっての留意点などを説明し、データ公開の準備を進めていきます。
2013年7月には市のオープンデータポータルを開設し、「ビッグデータ・オープンデータ活用推進協議会」が2013年6月1日より開始する「ビッグデータ・オープンデータ活用アイデアコンテスト」にも情報提供するなどの連携を行なっていく予定です。
http://www.city.takeo.lg.jp/info/2013/05/post-989.html
武雄市ホームページ
ビッグデータ・オープンデータ活用推進協議会主催の「ビッグデータ・オープンデータ活用アイデアコンテスト」の審査結果と前後し、2013年10月末から11月上旬には、地図ポータルをベースとしたオープンデータポータルの本格提供を行い、実証を行なっていく予定です。
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