投票率が50%以上でなければ成立せず、開票もされない。そんなルールで行われた東京都小平市の住民投票は、ハードルを越えられずに終わった。住民投票とい[記事全文]
経営危機に陥った企業を政府が支援する際、再生後をにらんで、ライバル企業との公正な競争をどう維持するか。国土交通省の審議会が、「公的支援と競争」をテーマに報告書をまとめた[記事全文]
投票率が50%以上でなければ成立せず、開票もされない。
そんなルールで行われた東京都小平市の住民投票は、ハードルを越えられずに終わった。
住民投票というツールで、いかに民意をていねいに読みとるか。今後の他の自治体にとって多くの教訓が含まれている。
問われたのは、雑木林を切り開いて都道をつくる計画を、住民参加で見直すべきかどうかだった。渋滞解消と、緑の保護。判断のわかれる問題だからこそ民意を問う価値があった。
もともと都の事業だから、小平の民意だけで決められない。市長は結果の尊重を求められるが、拘束はされない。実質は世論調査に近い住民投票だった。
ならば、大切なのは民意の内訳を測ることではなかったか。
ところが、「50%ルール」を設けたことで、民意はみえにくくなった。
見直しは不要と考える人は、反対票を投じるか棄権するか、二つの選択肢をもったからだ。
それだけではない。
50%ルールは、投票の実施が決まってから市が「後出し」で提案して作られた。市の姿勢はだれの目にも明らかだった。
終わった後の記者会見で、小林正則市長はこう述べている。
見直し派の署名活動で始まった流れから、投票した人は見直し賛成が大半でしょう。私が投票したかどうかは、ニュートラルに交渉すべき立場だから、明らかにしない方がよい――。
投票に行く人は、見直し派。行かない人は、見直し不要派。そんな二元論がうかがえる。
投票所に行くと、見直し賛成とみられないか。そう心配して棄権した人もいただろう。
本来、見直しイコール撤回ではないはずだ。環境に配慮した計画にかえて道路をつくる選択もある。また、見直し不要の立場から投票した人も当然いたはずだ。50%を下回れば開票しないと決めたことで、その割合もわからなくなってしまった。
投票の中身より前に、投票するかどうかが尺度になる――。投票率を要件とする制度設計の弱点が明らかになった。それが今回の教訓ではないか。
一方で、投票率を要件にしたほうがよいケースもあろう。たとえば、首長が結果に従わねばならない「拘束型」で行うとしたら、どんなに低い率でも成立するルールにはしづらい。
議論と実例を積み重ねて制度を熟成させるしかない。
今回の投票率35%は4月の市長選と大差がない。つくられた壁は越えられなかったが、市民の関心は決して低くなかった。
経営危機に陥った企業を政府が支援する際、再生後をにらんで、ライバル企業との公正な競争をどう維持するか。
国土交通省の審議会が、「公的支援と競争」をテーマに報告書をまとめた。
経営破綻(はたん)から3年弱で再上場を果たした日本航空が、世界の大手航空会社の中でトップ級の収益を誇るまでによみがえり、ライバルの全日本空輸が「不公平だ」と悲鳴をあげたのがきっかけだ。
報告書は、日航支援の際に競争確保への配慮が欠けていたとして、欧州連合(EU)の制度を例に一定のルールを決めるべきだ、との考えを示した。審議会は航空業界に絞って検討したため、「産業横断的な議論も必要」とも指摘している。
企業への公的支援は、銀行のように社会全体の混乱を招きかねない場合は必要だとの合意がある。一般の事業会社は救済しないのが原則だが、日航では公共交通機関としての役割を踏まえ、公的資金が投入された。
リーマン・ショックを受けて米政府が自動車会社を救済したり、日本政府も半導体会社に公的資金を投入したり、政府による救済の境界線はあいまいになっている。
どんな状況なら政府の支援が正当化されるのか。救済する場合は、その後の競争にどう目配りするのか。
ここは公正取引委員会の出番ではないか。再生した企業による安値販売などに目を光らせるだけでなく、政府としてのルール作りを主導すべきだ。
米国では公的支援の際、事前に競争政策との調整はせず、事後に公正な競争が行われているかどうかをチェックする。
これに対し、EUは日本の公取委にあたる欧州委員会競争総局がガイドラインを持つ。「公的支援は必要最小限に」との原則のもと、欧州委が再建計画を審査・承認したり、計画づくりの際に関係者から意見を聞いたりする手続きを定めている。
審議会は、日航と全日空の寡占状態が続く日本の航空業界ではEU型が望ましいとした。
航空業界以外でもEU型がふさわしいか、EUにならう場合はどんな事前調整が必要か、ルール作りを急いでほしい。
というのは、政府による公的支援には「政治」の口出しがつきまとうからでもある。
民主党政権が進めた日航再建には、自民党からさまざまな注文がつき、政争の具になりかねない局面もあった。政治の介入を防ぐには、透明性の確保がカギとなる。