特集ワイド:いかがなものか 橋下氏「慰安婦必要だった」に直言
毎日新聞 2013年05月16日 東京夕刊
「日本の現状からすれば貧困のため(風俗店で)働かざるをえない女性はほぼ皆無、自由意思」というツイッターでの発言には大きな疑問を感じます。私は大阪の遊郭・飛田新地で働く女性約20人に話を聞きましたが、「自由意思」で入った女性など一人もいなかった。貧困だったり、まっとうな教育を受けられなかったりして、他に選択肢がないため、入らざるを得なかった女性が大半でした。経済発展を遂げたとされる現在でさえそうなのに、戦前においては言うまでもないでしょう。
橋下氏は「慰安婦を暴行や脅迫で拉致した事実は裏付けられていない」とも発言しましたが、あまりにも限定的な考え方です。慰安婦になる以外に選択肢がなかった女性にとっては強制以外の何物でもないんです。「軍の維持のために必要だった」という発言に至っては、戦争を容認している証し。正体見たりです。
苦しい事情を背負った女性の境遇、慰安婦に送り出さざるを得なかった家族の思い、社会的背景に心を致しているとは思えない。政治家の役割を果たしていると言えない。
橋下氏は自らの考えを実行に移す際、メディアに向かって目立つ発言をすることで注目を集め、求心力を高めてきました。でも今回は何を狙った発言なのか、全く理解できません。大阪には「橋下さんの言動は好きじゃないけど、元気のない大阪を盛り上げようと頑張ってるから大目に見ようか」という消極的支持者が多い。今回の発言をきっかけに、そういう人たちも離れていくかもしれません。【聞き手・江畑佳明】
◇男もバカにしている−−大阪府立大教授(哲学)森岡正博さん
最初に思ったのは慰安婦と風俗業の話は分けて考えるべきなのに、二つをつなげて語っているところに問題があるということです。
橋下氏は慰安婦制度について「今は認められないが、当時は必要だった」という言い方をしている。しかし自身がツイッターに書き込んでいるように、当時の慰安婦の女性たちは想像を絶するような過酷な状況に置かれていた。国家による強制があろうがなかろうが、慰安婦は当時においても黙認すべきではなかった。それなのに「必要」と認識することは間違っています。
次に風俗業の話ですが、軍人のために活用するかどうかを言う前に、この業態について少なくとも三つのことを議論する必要がある。まずは倫理的な問題。二つ目は風俗業で働いている女性の労働環境。ピンハネはないのか、誰かに脅されていないか。三つ目は風俗業で働いている女性に対して社会が大きな偏見を持っているという問題です。