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(17時間10分前に更新) |
日本の子どもの貧困は先進国の中でも深刻だ。
厚生労働省の調べでは、2009年時点の18歳未満の子どもの貧困率は15・7%。7人に1人が貧困状態に置かれ、先進国でも高い。1人親世帯はもっとひどく、50・8%と半数が貧困状態に陥っている。先進国で最悪の水準だ。
貧困率とは、国民の可処分所得の中央値の半分に満たない人の割合をいう。
貧困は連鎖する。親の経済状況が子どもの学力や、健康にも影響を与えるとのデータがある。厳しい経済環境に生まれ、スタートから不利を抱えた子どもは貧困の連鎖からなかなか抜け出せない。
子どもの責任でないことはいうまでもない。子どもの社会保障制度がなおざりにされてきたのである。
自民、公明は「子どもの貧困対策推進法案」、民主、みんな、生活、社民の野党4党も「子どもの貧困対策法案」をそれぞれ衆院に提出した。
野党案は貧困率削減の数値目標を明記したのが特徴だ。21年までに子どもの貧困率を10%未満に、1人親世帯の貧困率を35%未満にする。
イギリスにならったもので、1999年に当時のトニー・ブレア首相が2020年までに子どもの貧困を撲滅すると宣言。「給付付き税額控除」の制度を拡充するなど貧困率減少につなげている。
生まれ育った環境で子どもの将来が左右されてはならない。与党案はこの考えを踏まえ、数値目標がない代わりに、政府が子どもの貧困の状況や対策の進捗(しんちょく)を毎年公表することを義務付ける。
いずれも子どもの教育支援を重視している。国会の議論を通して実効性のある法案を目指してもらいたい。
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政府は8月から生活保護の支給水準を引き下げる方針だ。子どもの貧困に拍車をかけないか懸念が消えない。
県内の生活保護世帯は2月時点で3万3350人、2万3640世帯に上り、いずれも過去最多となった。
引き下げは、生活保護の基準額が適用の目安になる就学援助や保育料の免除などの制度にも影響を与える。
県によると、給食費や学用品代を補助する就学援助を受けた小中学生は11年度、過去最多の2万6894人(18・31%)。生活保護世帯に近い状態の「準要保護」の児童生徒が市町村の認定基準から外れる可能性がある。
県内の母子世帯は全国平均の約2倍。非正規雇用が多く、「仕事」と「子育て・教育」を両立させるのは容易でない。地域や行政の支援が不可欠だ。
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子どもの貧困率は1985年にすでに10・9%だった。その後も増加基調は変わらない。政治が子どもの貧困に正面から取り組んでこなかったせいである。
貧困を放置することは、子どもが持っている潜在的な可能性の芽を社会に出る前に押しつぶしてしまうことになりかねない。
子どもが希望を持てないような社会は決して健全とはいえない。貧困対策の法制化を急ぎ、効果的な施策を打ち出すときだ。