外れ馬券訴訟:競馬ファンも注目 「人ごとではない」
毎日新聞 2013年05月23日 11時47分(最終更新 05月23日 13時03分)
大阪市の元会社員(39)が申告しなかった競馬の所得を「雑所得」と認定し、全ての外れ馬券の購入費を経費と認めた23日の大阪地裁判決。約10億円という巨額の税金を追徴され、「一生かかっても払いきれない」と訴えていた元会社員の弁護人は「当然の判決。検察は裁判所の判断を真摯(しんし)に受け止めてほしい」と語った。
実際のもうけ以上に税金を取られるのか−−。今回の裁判の行方を、多くの競馬ファンが注目していた。
東京の20代の男性会社員はスマートフォンを使いインターネットで馬券を購入する。投資額は年数百万円。過去のデータなどを駆使して予想し、昨年は約530万円の払い戻しを受け、約100万円をもうけた。当たり馬券の購入費はわずか数万円で、経費の範囲によって課税される所得額は大きく変わる。
男性はこれまで申告したことはない。「払戻金を受けた記録が金融機関の口座に残っている。被告のケースは人ごとではない」と漏らした。
大阪市北区の場外馬券場「ウインズ梅田」。今月18日の土曜、多くの競馬ファンであふれた。30代の男性会社員は「いつも赤字。裁判のことは知っているが、申告なんか考えたことない。別世界のこと」と話した。
日本中央競馬会(JRA)によると、昨年の馬券の売上高は約2兆4000億円。このうち、ネットでの購入が52%の約1兆2480億円を占める。専用口座を設ければ残高の範囲でいくらでも購入でき、300万人が利用するとされる。1レースで100通りを超す大量の馬券を買う人も増えているという。
競馬は、馬券の売上高の20〜25%が国やJRAの収入となり、残りが払い戻される。100円を投じて平均80〜75円が返ってくる計算で、黒字にするのは難しい。ただ、サラリーマンの場合、年40万円を超える一時所得があると、確定申告しなければならない。
ただ、JRAも国税当局も競馬の課税の仕組みについて積極的に広報してきたわけではない。
競馬に関する著書などがある会社員、山本太朗さん(29)=東京=は「競馬ファンのほとんどが赤字だが、当たり馬券の購入費だけが経費なら、申告義務が生じる人は少なくないはず。馬券の購入方法も変わってきた。今回の判決でも一般の競馬ファンの外れ馬券を経費と認めておらず『もう馬券を買うな』と言うのと同じだ」と語っていた。【小林慎】