付帯使用権

付帯使用権

賃借人は、ベランダを専用使用したり、敷地に自動車を駐車したり、屋上を物干し場に使用してかまわないのでしょうか。

賃借人の付帯施設・敷地の利用権

賃貸借契約は建物(居室)の使用を目的とするものですが、その建物(居室)を使用するだけでなく、それに付帯する施設や敷地の利用を伴います。したがって、特にこれらの施設や敷地について契約を交わさなくても、賃借人が一定の範囲でこれらを利用する権利は、賃貸借契約に当然含まれていると考えられています(敷地につき最高裁昭和38年2月21日民集17巻1号219頁、マンションのバルコニーにつき東京地裁平成3年11月19日判時1420号82頁)。

賃借人の付帯施設・敷地の利用権の限界

もちろん賃借人の付帯施設や敷地の利用権は無制限のものではなく、建物(居室)本来の目的に従って使用することに付随して当然必要な範囲に限られます。その反面、賃貸人は、賃借人の付帯施設や敷地の利用権の範囲で、付帯施設や敷地の利用を制限されます。

具体的事例

具体的ケースでの賃借人の付帯施設や敷地の利用権は、賃貸建物(居室)の使用目的、賃貸条件、建物(居室)の位置・構造・外観、付帯施設の位置・構造(敷地の位置・形状)、現実の占有使用態様などの事情を勘案して、賃借人が当該建物(居室)を用法に従って利用するうえで必要な範囲か否かで判断しますが、事案によって相当微妙な判断になります。

裁判例として、マーケット店舗の賃借人はマーケット敷地内の井戸、便所を使用できるとしたもの(東京地裁昭和32年11月10日下民集8巻11号2144頁)、ビルの1階店舗の賃借人は道路に面する当該ビルの敷地を使用できるとしたもの(東京地裁昭和61年6月26日判時1228号94頁)などがあり、他方、通路として利用されていた土地部分に店舗を築造するための工事に着手し角柱、支え材等を設置したこと(最高裁昭和50年7月10日判時793号49頁)、住宅用建物の賃借人が道路に面した庭部分に飲食店向屋台を設置して営業すること(東京高裁昭和34年9月30日判タ97号54頁)は敷地利用権の範囲を超えているとされました。

本問の場合

本問の場合、建物(居室)の賃借人が敷地に自動車を駐車するとのことですが、建物の使用目的が居住用か営業用か、建物の構造、敷地の位置関係、賃借条件等いかんによって結論が左右されます。この点、営業用の建物賃借人は当該建物使用のために最低限の必要な敷地利用権を有するが、空き地部分に自動車等を駐車していることは事実上の使用関係にすぎないとした裁判例があります(東京高裁昭和59年4月10日東高民報35巻4・5号60頁)。

次に、設問では、賃借人がベランダを専用しているというのですから、構造上マンション等の居室の賃貸借と考えられます。この場合、ベランダが居室に隣接している場合は、賃借人にその専用使用権があります。しかし専用使用といっても緊急の避難の必要性、水はけの確保、外観の確保などの観点からおのずと使用方法には制限があります。例えば、マンションのベランダにスチール製の物置を設置することや、ベランダを温室に改築する等の行為は、緊急避難が困難となるなどの問題が生じますので許されません(前掲東京地裁平成3年11月19日参照)。

また、マンション等の屋上に物干し場を設置するとのことですが、マンション等の屋上はその建物の屋根としての外観を維持し、あるいはエレベーターの機械室や貯水槽等を設置するための共用部分であり、しかも通常は賃貸居室と離れた場所にあるわけですから、居室の賃借人が物干し場として屋上を専用使用することは許されません。

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