2006-12-12 10:32:38

医療文芸雑誌?

テーマ:学会・研究会


Healing Muse  10月にASBH(アメリカ生命倫理学会)の大会に

 行ったとき、Medical literaly journalという

 見慣れぬ語を冠したセッションがあったので、

 ちょっと覗いてみた。


 生命倫理や医療倫理については、最近「多文化」

 ということがしきりに言われるようになったものの、

 それは概念、アプローチや議論のされ方に関する

 ことであって、問題になっているテーマそれ自体

 は、ほとんど世界(先進国)共通のものである。



なので、タイトルからだけでは一体何について議論するのか見当もつかない・・・・・というような

セッションはめったにないものだ。


この Medical literary journal (訳すと、「医療文芸雑誌」という感じ)

と総称されるような雑誌が、アメリカでは続々と創刊されつつある、ということを

そのセッションではじめて知った。


雑誌の中味を見ると、エッセイあり、闘病記あり、短編小説あり、詩あり、絵画やイラストあり、

要するに「何でもアリ」である。

投稿者は、病院その他の医療関係スタッフと患者および患者の家族たちで、

学会誌などと違い、特に投稿資格のようなものが設けられているわけではない。


上の写真は、

ニューヨークにあるサニーアップステイト医科大学のバイオエシックスセンター

が作っているHealing Muse(癒しのミューズ)という雑誌で、

この種の雑誌の中ではもっとも早く創刊され(2001年)、

後発のお手本になってきたもの。


セッションで得た知識によると、

この種の雑誌のほとんどは、もともとは医学部や大学病院などの内部の

機関誌(患者の声や医師やナースのエッセイなどを載せたもの)として

発足し、それを元にして編集に力を入れ、内容をグレードアップして

一般雑誌へと発展していったものらしい。

(それにしたがって、一般病院の待合室や他の大学などへの売り込み

作戦も展開されているようだ)


上記のHealing Museは、インターネットでも購入できるし、一部のコンテンツ

はネット上で公開されているので、興味のある方は覗いてみてください。

http://www.upstate.edu/bioethics/thehealingmuse/


で、なぜこういう雑誌が注目を集めているか、

というと、理由は簡単。


医学雑誌を中心とするような専門家による科学知の体系




実際の患者(や心ある医療者)が病いをめぐって体験する

経験的な知恵


が、あまりにも乖離している、という現状があるからだ。


前者は医師その他医療専門職を目指す学生達の専門教育の中で

体系的にたたき込まれるのに対し、後者の知恵は同じ病気や障害を

かかえる人たちのネットワークなどを除いては、これまであまり「集積」

されたり「公共化」されてこなかった、ということがある。


したがって、こうした雑誌には、

1)将来、医療者となる学生達の教育用教材

2)病いとともに生きる人たちやそれを援助する医療者たちによる

  それぞれの経験の共有

といった役割が期待されているようだ。



ちなみに、

私が現在いるヴァージニア大学の大学病院でも、来年夏に同種の雑誌
の創刊が予定されており、編集に当たっている人は早々に当セッションで

宣伝のチラシを配りまくっていた。

(これがまた「すごい迫力のあるおばさん」だった。余談だが、日本のような

声の上ずった腰の定まらぬにいチャンねえチャンではなく、ああいう人に

街頭に立たれてチラシを配られたら、チラシ嫌いの私でも思わず受け取って

しまいそうだ・・・)

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