ベストセラー読んじゃった!
テーマ:BOOKS異国の地にいると、日本にいる時は絶対にしないようなこと
をしてしまったりするから不思議だ。
えっ、何をした って?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・別に日本の皆様に顔向けのできないようなことはしておりません。
読んでしまったのです!
学会でデンバーに行ったとき、デトロイトの空港で
乗り継ぎ便を待っている間に、本屋に入ったところ
「今月売れている本ベストテン」の第1位のところに
知った著者の名前があったので、衝動的に買って
しまった、というわけ。
著者の名は、ミッチ・アルボム。
彼が、大学時代の恩師であった社会学者モリス・
シュワルツの死の床で受けた、生と死についての
個人授業のことを書いた『モリー先生との火曜日』
は日本でも翻訳されたので、ご存じの方も多い
のではないだろうか。
(アルボムとモリー先生のドキュメンタリーは、
日本語訳出版を機にNHKの番組でも放映された)
ベストセラーになっているのが、そのアルボムの新著、
"for one more day"(『もう1日だけ』)
仕事にも結婚生活にも挫折し、自殺を試みたが死に損なった主人公(元野球選手)が、
ほうほうの体で故郷の家にたどりついたところ、なんとそこには8年前に亡くなった母親
が・・・! そして、その母親(幽霊?)と一緒に「もう1日」過ごす中で、主人公は
今まで知らなかった母親の人生、その陰の仕事や少年時代の彼をいたく傷つけた
両親の離婚の真相について知ることとなり、徐々に癒されていく。
亡くなった大切な人がこの世にもう一度現れ、その人との限られた時間をともに過ごす
中で、主人公が自己を再発見し、癒されていくという物語は、
たいへんありきたりのものだ。
(映像には格好のテーマであり、この種の映画やテレビドラマは数限りなくある)
こういう「ありきたりのお話」を小説としてどう書くか、
そこで作家の力が試されるのは言うまでもない。
ミッチ・アルボムのそれは、もう お見事! としか言いようがない。
別に評論などここでする気はないが、
なまじっか、心理療法とかカウンセリングの解説書を読むぐらいなら、
この小説を読んだ方が、「心理療法というものの本質」がずばり理解できる、
ということだけは言っておこう。
つまるところ、心理療法というのは、幽霊との対話を通して、「今まで生きられ
なかった自分」をもう一度生き直す作業なのだから。
面白いのは、この小説のところどころに挿入されている主人公と母親をめぐる
過去のエピソード(主人公の回想)についてのいくつか章に、
Times My Mother Stood Up for Me
(母が私の味方になってくれた時)
Times I Did Not Stand Up forMy Mother
(私が母の味方になってあげられなかった時)
という題がついていることだ。
浄土真宗の「身調べ」という行をアレンジしたと言われる
内観療法という日本独自の心理療法があるが、そこで徹底的に要求される
過去からの自分の両親との関係の回想(「していただいたこと」「して返したこと」
「迷惑をかけたこと」)のことを思い起こさせる。
まさかアルボムが日本の心理療法まで勉強して取り入れているのではない
だろうが、人生において本当にリアルなものを表現しようと思ったら、そういう
ある種の「仕掛け」が必要だということを彼は熟知しているのだろう。
とにかくこの本ではアルボムのストーリーテリングの腕が冴えまくっている。
英語はきわめて平易で、
こんな簡単な英語でこんなに味わい深い表現ができるのか(!)という点も
勉強になりますよ、ハイ。
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1 ■よみたい!!
まさに、ありきたりのストーリーをどう料理するか?!は、著者の力量が試されるところですね。
シナリオを勉強しているので、これは読みたいです!
ああ・・・でも、英語・・・読む自信があまりないです・・・
旦那におねだりしてかってもらおうかな~