私は通常テレビ番組はほとんど見ない。テレビが意味の無いものだとは言わないが、昨今の安易な番組作りでは見たい番組などほとんどないからである。そんな私だが、場合によっては一部の番組やニュースといったものを見たいときもある…。しかしテレビの前には女房が陣取っている場合も多いし、Macの前から離れるのも面倒だ。というわけでいつも側に置いてあるiPad miniをその時だけテレビにしてみようと考えた。
我が家の環境は地形の関係上からか地デジを始めとする電波環境がよくない。結果テレビはNTTの光TVおよび地元のケーブルTVを使っている。したがって例えば室内アンテナなどではラジオ波も良好ではなくテレビなどはほとんど映らないのである。また私の仕事部屋にはアンテナ端子がないし他の部屋からケーブルを引き回すのも現実的ではないのでこれまで仕事部屋でテレビ視聴は無理と考えていた…。
先般ネットでいろいろと調べた結果、SoftBank SELECTION として販売されている「デジタルTVチューナー (SB-TV02-WFPL)」ならWi-Fiでテレビ視聴の環境を作れることを再確認したので試して見ようと入手した次第。
※SoftBank SELECTION 「デジタルTVチューナー (SB-TV02-WFPL)」パッケージ
本製品は株式会社ピクセラ製である。同社はパソコンとテレビの関係を親密にする製品を昔から多々リリースしているし私もかつてそれらの製品のいくつかを購入したことがあるが、実はまったく個人的な感想ではあるものの同社の製品にはあまり良い印象を持っていなかった。
実際に旨く動作しないことも多く、それがハードウェアの問題なのかソフトウェアの問題なのかすら分からずサポートに連絡するも繋がらなかったり解決に至らないまま諦めたことがあったからだ。
しかし価格も随分と安くなったし不安要素も以前から比べると少なくなったと感じたことでもあり、懲りずに挑戦してみた次第。
※デジタルTVチューナー本体および付属のmini B-CASカード
「SB-TV02-WFPL」はiPadやiPhoneで地デジをはじめ、BSや110度CSデジタル放送を受信しWi-Fi経由で視聴できるという製品である。無論その為には「SB-TV02-WFPL」を設置する場所に受信可能なアンテナ端子がなくてはならないが、アンテナを繋ぐことで「SB-TV02-WFPL」がWi-Fiのアクセスポイントとなり、無線でiPadやiPhoneに番組を送信し、なおかつインターネット接続環境が整えば「ながら見モード」によりテレビ番組を見ながらウェブ閲覧なども可能になるという優れものである。
※「SB-TV02-WFPL」の背面
問題は「SB-TV02-WFPL」をどこに設置するかだが、アンテナ端子がある場所ならびにLANケーブルを引ける場所をと考えると現在液晶テレビが設置してある和室しかない…。
このテレビには地デジをはじめ、BSやCSが映る。そして女房からの要望で外出先からiPhoneを使い、番組予約もできるようになっていることでもあり、当然だがテレビに接続しているブルーレイドライブ兼チューナーにLANケーブルを引いてある…。
この環境に「SB-TV02-WFPL」をどのように割り込ませるかを考えれば良い理屈だからと「地デジ/BS/CS/110度CS対応アンテナ分配器+ F型ネジ固定式アンテナケーブルセット」および「電源外付スイッチングHUB 8ポート」を購入して準備をはじめた。
※地デジ/BS/CS/110度CS対応アンテナ分配器+ F型ネジ固定式アンテナケーブルセット
まず「地デジ/BS/CS/110度CS対応アンテナ分配器」でアンテナ端子をこれまでのテレビ側と「SB-TV02-WFPL」のアンテナ端子へ分岐。そして前記したルーターから引いたLANケーブルを小型のスイッチングハブでこれまた「SB-TV02-WFPL」へ分岐を図るためにセッティングする。
理屈はこれでよいはずなのだが、こればかりは実際に「SB-TV02-WFPL」をセットしてやってみないと分からないわけで少々不安を感じる…。
その「SB-TV02-WFPL」だが、マニュアルに従い最初に付属のmini B-CASカードを方向に注意して装着し、差し込み落下防止のネジを付ける。
そう、忘れてはならないのは「SB-TV02-WFPL」本体底に記されているKEYナンバーをメモっておくことだ。そしてまずはLANケーブルを接続、続いてアンテナケーブルの接続、そしてACアダプタを使い電源を接続する。
ここで重要なこととして「SB-TV02-WFPL」はiPadやiPhoneでテレビ番組を見るだけならLANケーブルは不要だということだ。このLANケーブルの接続は番組を見ながらインターネット接続するときに必要となるわけである。
個人的には1台のiPadやiPhoneで番組を見ながらインターネットをやるつもりはないのでLANケーブルは不要なのだが、そこはやってみないと気が済まない質でもあり、ついでに体験してみようと考えた…。ただしLANケーブルは最初にセットしないと、後での接続では認識せずセッティングをやり直さなければならなくなるので注意が必要だ。
ハードウェアのセッティングができたら今度はソフトウェアのセッティングとなる。
iPadやiPhoneで使うにはApp Storeから無料でダウンロードができる「デジタルTV 」アプリをまずはダウンロードしインストールする。
続いてアプリをインストールしたガジェットのWi-Fi設定を行う。無論Wi-FiがOFFになっていたらONにしなければならないが、ここでアクセスポイントのリストに「AirTune2G」と「AirTune5G」というSSID (IEEE 802.11シリーズの無線LANにおけるアクセスポイントの識別名)が表示するはずだ。ただしその表示には少し時間がかかる場合がある…。もし表示されない場合はガジェットを「SB-TV02-WFPL」の近くでセッティングするとよい。
※iPad miniで「SB-TV02-WFPL」へアクセスするためにはSSIDを「AirTune2G」あるいは「AirTune5G」にする
なおマニュアルには「ネットワーク一覧が表示されたら AirTune5Gで始まるSSIDをタップします」と記されているにもかかわらず、補足として「※iPhone/iPad touchの場合は、AirTune2Gで始まるSSIDです」とも記されていてユーザーを悩ませる。ただしピクセラ社のウェブにあるQ&Aには「他の無線機器との重複がない場合は、5.2GHzを使用することをおすすめします。」とあり、要するにどちらでも「SB-TV02-WFPL」を使うことはできるものの、万一 AirTune5Gを使い、他の無線機器類とトラブルが生じたらAirTune2Gで利用すれば良いということらしい。
さてWi-Fiのアクセスポイントを選択するが、最初だけKEY入力を求められる。先に本体裏面からメモしたKEYナンバーを入力すれば基本設定は完了だ。
アクセスポイントを選択すると通常SSIDの頭にチェックマークが付くが、「AirTune2G」や「AirTune5G」を選択してもチェックマークは付かずスピニングサイクル状態となる場合がある。これはLANケーブル未接続のスタンドアローンモードの場合、当然のことながらインターネット接続ができないからネットワーク一覧表示上では、スピニングサイクル状態(グルグル回った)になるとのことだ。
しかしマニュアルによればこの時、チェックマークが付かなくても「SB-TV02-WFPL」本体の無線LANランプが緑色になっていればWi-Fi設定は完了しているという。
後は「デジタルTV 」アプリを起動し「かんたん接続設定」画面になる。この手順は現在地域を選択してチャンネルスキャンを実行すれば時間がかかるものの視聴可能なデジタル放送一覧がリストアップされ、基本的に画面の指示に従えば良いので説明は省略させていただく。
こうして私のiPad miniならびにiPhone 5でデジタルテレビ番組を確認した感想だが、「綺麗!」の一言だ。
動きが緩慢になったりしないし、映像と音声にタイムラグが生じることもなく実に綺麗な番組が利用できる。ただしWi-Fiを使っていることでもあり、実際の放送に比べて約10秒の遅れが生じていることは認識しておきたい。
※iPad miniを「ながら見モード」で設定しテレビ視聴しながらインターネットに接続した例
無論専用のテレビと比較すればチャンネル切り換えに数秒かかるとか、アクセスポイントの切り換えが必要になったり…そう大事なことだが「SB-TV02-WFPL」で同時にテレビ視聴可能なのは1台のガジェットだけという制約もあるが、この手軽さを体験するとそれらは些細なことに思える。
そして取り急ぎセッティングした地デジとインターネットとの同時利用、すなわちiPad miniを縦位置にし、上部をテレビ視聴、下部をブラウザ表示といった使い方ができることも確認できた。この設定のキモはWi-FiのSSIDを「AirTune2G」あるいは「AirTune5G」にして、「デジタルTV 」アプリを起動の上で「設定」をタップし、サイドバーの「ながら見モード」を選択。その動作モード設定をAPモードにして使うことだ。
それからついでにテストしたことだが、「SB-TV02-WFPL」はiPadやiPhoneだけでなくMacで地デジをも視聴可能なのだ。
これには「SB-TV02-WFPL」の設定を変える必要は無いものの、有料の(定価2,000円)Mac用アプリをダウンロード購入しインストールすることが必須となる。
ただしコンテンツ保護の立場からだというが、無線LAN内蔵のDual-Coreに対応したIntel CPU搭載 ”ディスプレイ一体型Mac” のみ利用可能ということで、すなわちiMacやMacBook AirあるいはMacBook Proしかサポートしていないため、Mac miniやMac Proでは使えないという。
取り急ぎ女房が使っているiMacで試して見たが、こちらはウィンドウサイズの可変もOKだし、前記したように「ながら見モード」に設定済みであればテレビ視聴しながらインターネットへのアクセスも可能となる。そして「SB-TV02-WFPL」の設定はMacではなくiPadやiPhoneから行えばよい。
※iMacのデスクトップにテレビ映像を表示した例
こうしたあれこれの確認は何の不安もなく事が進んだわけではないものの、肝心なことはひとつひとつ確認しながら落ち着いてセッティングをすることと万一思うようにいかなかった場合は「SB-TV02-WFPL」本体をリセットし、電源を入れ直して再度セッティングし直すことをお勧めしたい。そしてセッティングの前にピクセラ社のウェブサイトに掲載されている「SB-TV02-WFPL」Q&Aおよび「StationTV i for Mac」Q&Aに一通り目を通しておくべきだろう。
ということで一通りいろいろとやってみたが「SB-TV02-WFPL」へルーターからLANケーブルで接続するAP(アクセスポイント)モードは「ながら見モード」が可能なので便利に違いないが、結局最終的には「ながら見モード」はOFFにし、LANケーブル接続は止めて「SB-TV02-WFPL」のセットをやり直し、スタンドアローンモードで使っている。無論その都度アクセスポイントは切り換えることになるわけだが…。
この間いくつか遭遇したトラブルはテストとはいえ、視聴モードを「APモード」や「スタンドアローンモード」に色々と切り換えたことが原因かも知れず、一時Wi-Fi利用のiMacが自前のアクセスポイントに接続できなくなるというトラブルも生じたが再設定後は安定している。
そうした点を別にすれば「SB-TV02-WFPL」はアンテナを引けない場所でも高画質のテレビ視聴を可能にしてくれる。Wi-Fiが届く範囲であればトイレでも風呂場でもテレビを見ることができるわけで、便利な製品である。
個人的には大方要領がわかったし、もともとテレビ視聴を頻繁に行うユーザーではないことでもあり、これで十分満足している。
そういえば、6年ほど前に「Macにテレビ映像を映すのに数千ドルの時代があった」というアーティクルを書いたことがあった。その文章を再度読み返してみたが、深いため息が出た(笑)。