いったい、安全管理を改める気はあるのだろうか。高速増殖原型炉もんじゅの大量の安全点検漏れが発覚し、トップが引責辞任したばかりの日本原子力研究開発機構で、今度は放射能漏れ[記事全文]
高成長を続けてきたインド経済が、このところ減速を深めている。インフレや財政不安など過去の経済運営のゆがみと矛盾が噴き出したのだ。一方、日本企業のインド進出は1千社ほどに[記事全文]
いったい、安全管理を改める気はあるのだろうか。
高速増殖原型炉もんじゅの大量の安全点検漏れが発覚し、トップが引責辞任したばかりの日本原子力研究開発機構で、今度は放射能漏れ事故が起きた。
陽子加速器施設「J―PARC」で放射性物質が漏れ出し、被曝(ひばく)した研究者は調査で30人に増えた。放射性物質の一部は施設外にも放出された。にもかかわらず、国や地元の茨城県、東海村への連絡が、発生から1日半も遅れるありさまだった。
ドミノのように次々と倒れる安全管理。福島第一原発事故の教訓がいかされていないこの事態に、あきれるばかりだ。
このままでは原子力機構の存続さえ危うくなろう。期日を区切り、外部の識者も入れて安全体制を総点検し、改善策を早急に打ち出すべきだ。
もんじゅでの点検漏れは、大量の放射性物質を日常的に扱う事業者などで、慣れが問題をおこす「たるみ型」だった。
今回の事故とお粗末な対応は、放射性物質が関心の中心にないため緊急対応を誤ってしまう「ずさん型」だ。大学などの研究機関や医療機関がおちいりやすい。
原子力機構が高エネルギー加速器研究機構と共同運営するJ―PARCでは常時、大量の放射性物質があるわけではない。陽子線を使う実験中にだけ放射線や微量の放射性物質が生じるはずだった。
誤作動で陽子線が想定の400倍もの強度になり、放射性物質が多くできたが、放射性物質を何とか閉じこめようとする意識自体がそもそも希薄だった。
施設内の放射線量が上がった際に、安易に排気ファンを回したことが象徴的だ。「中の線量を下げなければ」という意識が先行し、「施設外に放射性物質が出るが大丈夫か」というリスク感覚はにぶかった。
線量上昇後も実験を続けたことと合わせ、研究者のおざなりな安全意識は理解に苦しむ。
原子力機構には旧動力炉・核燃料開発事業団由来の事業者的体質と、旧日本原子力研究所由来の研究所的体質が併存する。もんじゅやJ―PARCといった部門・施設の独立性も強い。
もんじゅ不祥事によって安全面で批判されていることを、J―PARCの関係者がもっと自らの問題ととらえていれば、対応は違ったはずだ。
原子力機構を所管する文部科学省には、同機構はもちろん、他の大学や研究機関の安全意識も向上させて同様の事故を繰り返させない責任がある。
高成長を続けてきたインド経済が、このところ減速を深めている。インフレや財政不安など過去の経済運営のゆがみと矛盾が噴き出したのだ。
一方、日本企業のインド進出は1千社ほどにおよび、加速中だ。経済連携協定もでき、大企業の現地生産に連動する中小企業も目立つ。
これまで進出を促してきたのは成長期待というインドの光の面だが、今後は経済や社会制度の遅れに伴う影の面も見据え、インドの人々の暮らしにどう貢献し、自らも成長できるかを考えたビジネス戦略が、一段と大事になってくる。
これは日本企業の欠点を補う挑戦ともいえる。現地のニーズに応えるビジネスの基本能力をこの広大な亜大陸でどこまで鍛え直せるか。その成否は、日本が新興・途上国ビジネスでどこまで存在感を示せるかも占う。
インドは地理的・人的つながりから中東・アフリカ市場への入り口としても重要だからだ。
インドの消費者は日常の必要に応える商品性を重視するが、日本企業はインド向けの製品を作る面倒を嫌ってきた。逆に、韓国企業はここで努力し、盗難防止の鍵つき冷蔵庫といったアイデア商品で先行している。
過去の惰性を改めるには、経営トップが変化を示すのが効果的だ。日立製作所は初の海外での取締役会をニューデリーで開いた。有力市場としてインド重視をはっきりさせるためだ。
日本との距離を縮める新たな試みも生まれている。
野球アニメ「巨人の星」をインドの国民的スポーツ、クリケットに置きかえてリメークし、テレビ放映した仕掛け人は原作を出版した講談社だ。日本メーカーの自動車や日本の航空会社が登場し、ブランド戦略としても作りこまれている。
人材の育成や活用でも日本企業には地力がある。トヨタ自動車は日本以外で初めてインドに工員の養成学校を設けた。ヤクルトは日本でおなじみの女性販売員システムを展開している。
インドのシン首相が来日し、安倍首相と会談する。日印の経済協力は鉄道など基盤整備の案件に注目が集まる。だが、実際に事業化されても、日本企業が請け負えないことが多い。世界に普及している民営化ビジネスの手法で、日本企業が遅れているからだ。
一因として、公共施設の整備や運営を民営化する取りくみが国内で広がらず、企業が経験を積めないことがあるという。国内の改革の遅れが、国際競争力を弱めている一例といえる。