富士山:世界遺産へ ユネスコ諮問機関、登録を勧告
毎日新聞 2013年04月30日 23時42分(最終更新 05月01日 10時49分)
世界遺産への登録の可否を調査する「国際記念物遺跡会議」(イコモス、本部・パリ)は30日、日本が推薦していた「富士山」(山梨、静岡両県)を「三保松原(みほのまつばら)を除き登録」、「鎌倉」(神奈川県)を「不登録」とするよう、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に勧告した。日本の推薦案件が「不登録」とされるのは初めて。今年6月にカンボジアで開かれる第37回ユネスコ世界遺産委員会で、正式に決定される見通し。「富士山」が登録されれば日本の世界文化遺産は11年の平泉(岩手県)、小笠原諸島(東京)以来17件目となるが、「不登録」となった鎌倉は、断念も含めた根本的な見直しが必要な事態となった。【福田隆】
イコモスはユネスコの諮問機関で、各国から世界遺産に推薦された案件の現地調査などを行う専門家組織。文化庁によると、過去の事例からみて、イコモスが登録を勧告した案件は、世界遺産委員会でもほぼ間違いなく登録が認められる。「不登録」から「登録」になった例はここ5年では1例もないという。
「不登録」とされた場合は、世界遺産にふさわしくないと判断されたもので、原則再推薦は認められない。制度上は、6月の世界遺産委員会にかけられる前に推薦を取り下げれば、再推薦の道が残されるが、その場合でもコンセプトや構成資産、範囲を大幅に変更して一から練り直さない限り、イコモスの評価を得るのは困難で、早期の世界遺産登録への道が事実上、閉ざされたことを意味する。
富士山は当初は自然遺産としての世界遺産登録を目指したが、山麓(さんろく)開発がもたらしたごみなどの環境問題がネックとなり、03年の国内選考で落選。その後、文化遺産として再挑戦した経緯がある。イコモスは昨年12月、日本政府に対し、構成資産を広く一体的に管理することや、富士山域から離れた位置にある国指定名勝「三保松原」(静岡市)を資産から除外することなどを要請。日本政府は今年2月、16年をめどに管理計画を見直す意向を示す一方、三保松原については芸術や信仰の面で欠かせないことから除外を認めない回答をしていた。