主権回復式典:小笠原は普段通りの連休
毎日新聞 2013年04月28日 22時10分
政府が東京で主権回復を記念する式典を開催した28日、サンフランシスコ講和条約で日本に帰ってこなかったのは、沖縄だけではなく、奄美群島(鹿児島県)は1953年、小笠原諸島(東京都小笠原村)は68年の返還まで米軍施政下に置かれた。だが、今も米軍基地がある沖縄とは歴史的経緯も異なることから、小笠原村内では28日、抗議集会などはなく、多数の観光客が訪れる普段通りの連休となった。
「政府式典のことが話題になったことはない」。村内で民宿を営む宮城清美さんが言う。同村では44年、戦局悪化で村民約7000人が本土に強制疎開。24年後の返還で帰島が許されたが、宮城さんは「疎開や本土独立当時のことを知る旧島民は少ない。返還後の移住者は、なおさら関心が薄いのでは」と話す。
一方、沖縄と地理的にも近接する奄美群島の奄美市名瀬では、約160人が参加する抗議集会があった。集会ではこの日を「奄美切り捨ての日」とし、「島民の心を踏みにじる式典に強く抗議する」との決議を採択。講和条約発効時に島に住民がいなかった小笠原と、沖縄・奄美での違いがにじみ出る一日となった。【佐々木洋、神田和明、斎川瞳】