【木質バイオマス発電】森林除染どうなる 県、新たに4施設構想 住民理解が鍵 県北・県中1 相双・いわき3
平成25年度から始まる森林間伐による除染で、県は24日までに、伐採木を焼却する木質バイオマス発電施設を新たに県北・県中地区に1カ所、相双・いわき地区に3カ所の計4カ所に建設する構想をまとめた。塙町に設置予定の1施設、既存2施設と合わせた7施設を稼働させる考えだ。県は「林業再生には不可欠な施設」としている。ただ、塙町で一部住民から建設反対の声が上がっており、いかに住民に安全性を訴えていくかが実現の鍵を握る。
■5万200キロワット
県の木質バイオマス発電施設の配置構想は【図】の通り。27年度にも「県北・県中」「県南」「相双・いわき」「会津」の地域ごとに焼却態勢を整える。施設の出力は合わせて5万200キロワットで、1000キロワット級の太陽光発電施設・メガソーラー50カ所分に相当する。
新たに建設する「県北・県中」の発電施設は、出力1万2000キロワットで、年間11万2000トンを燃焼する。塙町の施設と並び、県内最大規模となる見通しだ。県は県中地区への整備が有効とみて、企業誘致による建設を視野に地元自治体や事業者と調整に入った。早ければ25年度中に着工する。総事業費は70億円超を見込み、現在、国と財源について協議している。
「相双・いわき」はバイオマス発電施設の計画がある川内村など3カ所に計9000キロワットの施設を設け、年間13万8000トンを燃やす計画だ。他の地区と比べて放射線量が高い森林が多く、国や市町村を中心に設置・運営の手法や施設規模の検討を進める。施設は市町村による公設を想定している。
「県南」は塙町に25年度から整備が予定されている発電施設と、白河市の民間施設を活用する。他の地区と比べて放射線量が低く、事業者と合意している。「会津」は県が間伐による除染対象とする年間1ミリシーベルト以上の森林が極めて少ないとみられ、既存の1施設で対応できるとみている。
■懸念拭えず
「放射性物質を含んだ木材を燃やすのは不安だ」。塙町が先月、開いた木質バイオマス発電施設の説明会で、出席した住民から意見が出された。
塙町では、県外の企業を誘致し、平成25年度から木質バイオマス発電施設を設置する計画だ。だが、一部の住民が建設に反対している。
町は再生可能エネルギーの有効利用や施設の安全確保対策を訴え、住民側に理解を求めている。町内の40代の自営業男性は「安全性が確認できれば、雇用や町発展の面から施設建設と運営に賛成する。ただ、行政から町民への納得できる説明が大前提だ」と指摘する。
■整備は不可欠
県は「発電施設で使う燃料は、伐採から木質チップ化、搬入まで複数回にわたる検査を重ね、人や環境に影響がないものに限定する」としている。
放射線量を測定して安全な木材のみをチップ加工し、線量が高い木材を一時保管する機能を持つストックヤード(一時保管所)を発電施設から離れた複数箇所に設ける考えだ。現在、場所の選定を急いでいる。
県農林水産部は「森林の環境を再生するには発電施設の整備が欠かせない」として、発電施設の設置先となる市町村や国と連携し、伐採事業や施設の安全性について住民に理解を求めていく考えだ。
背景
県は東京電力福島第一原発事故からの森林の環境回復に向け、平成25年度から年間被ばく線量が1ミリシーベルト以上の民有林約18万3000ヘクタールを対象に、間伐による除染を始める。県土の1割を超える面積で、実施期間は20年程度を想定している。間伐事業に伴い年間最大90万トン程度の木材が出ると推計しており、利活用の手段として木質バイオマス発電施設の設置を進める。建築資材などに使う分を除いた約53万8000トンを木材チップ化し、施設で燃やす態勢を整える方針だ。
(カテゴリー:3.11大震災・断面)