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2-8-20  今夜、大人の女になりました

空気を振動させるような怒声。キムタケには似つかわしくない強面だった。
その威迫に負け、顔を伏せたまま横目で男を見あげる。
細い顎をわしつかんで正面に引き据える。
「いいか有希、よく聞けっ。俺はお前を愛しているぞ!」
そんな虚言にどう反応すればいいのか。有希は茫然とキムラを眺めるしかない。
「この地球に生きているどんな女よりもお前という女を愛している! わかるか有希! 誰が何と言おうと俺はお前を俺の女にする。全身全霊で愛情を注ぐ。昼も夜も一時も休まず愛を注ぐ。俺はお前を愛している!」
ストーカーでありレイプ犯である男の一方的な求愛?
ちがう。
これも結婚詐欺を生業とするスケコマシの女殺しテクニックのひとつなのだ。
嘘でも欺瞞でも、愛を叫び続けることで女が軟化すると思っている。
いつか騙されると信じている。
隷属すると高をくくっている。
それが女の性だと穿っている。
しかし有希の意識は高熱によって茹だっているのと一緒だ。キムラの色事師人生で身に付けた渾身の淫技を長時間受けて、さしもの女教師も朦朧としているのである。残存する理性といえば、どうでもいいから早く済ませてくれと、自棄寸前の心理があるばかりだった。
辛そうな表情に落ちこむため、閉じようとする両瞼を、キムラは指をコの字にして突き広げた。血管の網と涙に濁った眼球が剥きだした。鳶色の瞳の焦点が定まらない。ディープキスが効く女なのかもしれない。自我が明らかに弱体化していた。
「──愛しているんだぞ、有希! 俺はお前を愛している俺はお前を愛している俺はお前を愛している──忘れるな、有希ぃ!」
満を持して、キムラの腰が波打ち始めた。
急に怯えをあらわにし、首を振る志方先生。
「大丈夫さ。優しくしてやるからな」
頭を撫でつけ、ウインクするキムラ。
波によってつくりだされる運動は、極太ペニスのピストンだ。
恐ろしいことに、スケコマシの予言どおり、静態時間中に有希のオマxコはそのサイズに屈して締まりを親和させているのだった。想像すらできなかった従順性を発揮している。絶妙の乳嬲りと口吻によって刺激された肉の反応は、雌の体液をチビらせて、ペニスをローション塗れに光らせた。
腰入れるたびに仰け反り、腰引くごとに二重顎にさえなる有希の顔貌・・・。
結婚詐欺の標的としては最高難度の部類と目されている職業──『教員』──それも札付きの活動家タイプを、男根一本で自在に操る快感に、キムラは危うく果てそうになる。達成感と征服感は尋常ではない。また一つ、自分の履歴に戦功が加わった。関東一のスケコマシ伝説が不動のものになっていく。
緩慢で単純だった腰の動きに変化をつけだした。
『入れ・引き』の他に、捻りを含ませる。
ピッチにも強弱をいれた。
種類のちがう、方向の異なる、熾烈な痺れが女体を駆け巡りだす。
男の腰が引くと、女の尻がシーツから持ちあがるのが何とも卑猥である。まるで有希のネクターが糊のようにペニスに貼りついていて、股間と股間を粘っこく繋がらせているように見えるのだ。
顕著で好ましい変化を後戻りさせないように、キムラは片手を胸もとに忍ばせて乳首をいじり、片手を濡れた陰毛の中へ彷徨わせてクリトリスを探りだす。深い結合がもたらす性器の膨張のせいで潰れていたそれへ、やや鋭角的に爪を立てた。
「ウーゥッン・・・」
反射的に鼻を鳴らしながら薄目を開ける有希の視線は、キムラへの弱々しい抗議であるようだった。
いや、抗議というより申告だろうか。
そのタッチはたまらないわという──。
悔し涙に屈折した眼差しを受けて、むろんのこと男の手管が勢いを増す。
腰の旋回運動がもたらすのが丸っこい疼きなら、指の摘みが与えるのは点状の鋭い刺貫痛である。しかしその痛みは先細りして、脳神経の隅々に達する頃には快楽中枢への肉信号に変わっていた。
女教師の煩悶は甚大だ。
心と肉体の乖離をまざまざと痛感させるように追いこむキムラの上手ぶりに歯軋りするばかり。吠え立てられないほど消耗させられているが、かといって気絶にまではいたらない。まさに生かさず殺さずの火加減に炙られ続ける。インテリには耐えられぬ種類の色責めだった。
悲哀に満ちた喘ぎを有希は漏らしだした。
キムラの性技は順調そのもの。
スラストを豊かに発展させつつ、繊細なスポットを妥協せずに責め抜いた。
唇も三たび奪った。弱点とみるや徹底して付けこんでいく。
男の全身を使った同時責めが、女のあらゆる性感帯を針打ちする。
子宮表面上における、ちょっとしたペニスの先端の移動、
陰核包皮の筋の引っ張り、
左ではなく右の乳首へのコリコリ、
そして舌の根っこまで伸び切るほどの吸引──これらが偶然、秒まで一致して横並びに起こった時、志方有希の背筋に新たな快感が走った。水がタイルの上を流れるような滑らかさで、一気に走った。
息を吸いこみ、小鼻をふくらませたまま肺が止まった。
これは彼女の意思ではなく身体の勝手な反射である。
クンニの時に発生したものとは異相のたぐいかもしれない。
今回の感覚は経験したことがなかった。
自慰ではなくセックスでもたらされた人生初の快感──。
それがレイプ中に生ずるとは。
まさにこれが色地獄でなくてなんだろう。
唯一の救いは、おかしな声をあげたり、思わずキムラの身体を抱きしめたり、はしたない行動をしなかったことだ。表情には僅かに出たけれど、その程度ならシラを切り通せるはずである。
対してキムラは彼女の火照った目元を疑わしい目つきで睨んだ。
乱れかかった黒髪を掻き分け、薔薇色の中に白む頬を観察する。
「──ちょっとイッただろ、今?」
ゆっくり、落ち着いた様子で、首を横に振る有希。
レイプ犯の言葉など聞き捨てればいいだけなのに、否認の芝居を打とうするところが、ウブというか世間知らずというか、愛らしい娘ではないか。
「おかしいな。背筋がピンと伸びたし、目尻も下がったから、てっきり絶頂かと思ったが・・・ちがうの?」
キムラの問いかけは陰湿だ。嘘をつくように仕向けている。自分を欺けば欺くほど自己嫌悪が自我を崩れさせる──そういうカタストロフィの階梯を熟知しているのだ。
有希は即答するように顔を振ってしまう。
「そう? まあいいや。口説いた女の数と、抱いた女の数と、イカした女の数を並べれば、ぴったり一致するっていうキムラ・タケジロウ様にしては珍しい見込み違いだったけど。もっともっと愛せってことだね」
肩先から首筋、そして耳元へ、音を立ててキスの移動をさせていく。
柔肌から立ちこめる発情した色香は、少しの抵抗もなく胸一杯に吸いこめた。
汗のテカリはすっかり助平汗のそれになっているのに、柑橘系のコロンを思わせる爽やかさが消えてない。
挑発されたように、キムラは抱擁をきつくした。
女体の鎖骨と肩甲骨、肋骨をも体感できるようだ。
首筋に食いついたままピストンのピッチを上げていく。
胸乳にも性器にも触らずの追い上げ。
しだいに股ぐらの叩き合いが部屋中に轟いていく。
これまた生まれて初めて耳にする動物的な共鳴──
もうどうなっているのか理解不能の下腹部の荒らされぶり──
有希は小賢しい演技心などすぐに忘れ去り、脳髄をバキュームされるような顔になっている。
八の字に凝集した眉目、
楕円に開け放たれた上下の唇、
火ぶくれするように浮きあがるこめかみの青筋、
悲鳴を発する寸前の声帯、
止まりかけた心臓──
だが、突如ピッチは急停止した。
腹の底からの呻き声が有希の喉を震わせた。
性技に魂まで奪われそうになっていた表情からみるみる悪力が抜けていくようだった。
減数法則?
いやそうではない。
彼女は絶頂に達する前に、正気の際まで転げ落ちている。
つまり今度は、満足させるためのテクニックではなく、焦らすための寸止め責めなのだ。
女体がどれほど官能に引きずられるか、理性がどれほど無力か、このさい徹底して教えこむつもりである。
「こんなに女を愛したことは初めてだっ、ゆうちゃん、大好きだよ!」
そう咆哮すると、ピッチを再始動。
男の大腰に割られた絖白い二肢がバタついた。
華奢な両腕も男の胸を跳ね返そうともがく。
巨根ピッチの猛々しさが自分の肉体と精神に何をもたらすか、有希のほうも気づいている。
抵抗なのか自分への叱咤なのか、もうわからない。
成否を度外視したパニックに近い現象なのだろう。
「大好きだぁ!」
性懲りもなく叫び続けるキムラの上下運動は無駄もなければ隙もない。
馬の尻に鞭を当てるように股間の叩き合いを高めていく。
寝室一杯に玉嚢の打撃音が轟いた。
女の尻肌が朱に染まっている。
激しく頬ずりし、筋肉のついた肩で有希の顎を突きあげる。
「愛してるぞぉぅぅ!」
表向きは興奮の坩堝のど真ん中だが、キムラの意識は冷静そのものだ。いや、残忍と言ったほうがいい。
二十六歳の裸身から感じる体温と血圧の変化から、この女の品性の蒸発を予感して、即座にピストンを途絶させる、そんな芸当をいともたやすくやり遂げる鬼畜なのである。
「──────っ」
脳の酸欠直前に再び下界へ墜落させられた有希の表情は苦渋に満ちていた。世間知らずのうえに消耗し切った彼女といえども、二度もくりかえされればキムラの意図がなんであるか、憶測くらいつく。
下劣で、悪辣で、残虐な色事師の魂胆・・・。
眼も眩むような羞恥が有希を支配する。
わかったところで、それを打ち破るいかなる方策も自分には用意できないのだと、信じられない結論があるばかりだ。
あれほど身につけた知性や理性は何故こんな邪悪な運動に勝利できないのか。
しかし女性教師の憂悶は三度目の尻叩きによって粉々に消し飛んでいく。
たまらず絹を裂く悲鳴があがる。
リーチ限界まで左右に広げ、シーツを握っていた両腕が、中途半端な万歳の姿に折れ曲がる。
両足はついに水平なM字になり内腿を天井へ晒した。
『出』の字に似た、潰れた蛙の出来あがり──。
その無様さの自覚など脳のどこにも存在しない。
膣の前部にあるはずのG、A、Uのスポット群が肉棒の節くれで擦り立てられる。
中間部にまで引かれてくる亀頭の鰓はスクリューをかけて膣肉を引きずってくる。
それが最奥まで貫いてくるとき、子宮への圧迫は一様ではなく、鈴口によるキスの如き吸着はまるで意図されたように蠢いた。
これが官能のシータ波か──。
有希の脳は真っ赤に爛れ、言葉を灼かれ、ただ下半身から噴きあげてくる肉美を感受するだけだ。
(負けるっ──ちがう女になっちゃうっ──)
最後に心が喋ったのはそれのみだった。
むろん口から覗かせた濡れた舌は悲鳴を吐きだすだけで何の意味も伝えない。
さらに増すピストンの過激ぶり。
輪をかけた有希の声はマンションの廊下にまで轟くよう。

──なんとそこで、鬼の寸止め──

絶叫が、数秒、絶叫のままでいて、その頂点から一気に腹の底の呻きに降下した。
絖々と紅潮した顔面がゴロリゴロリと枕元を往復する。
瞬きするたびに、濁った白目の中を泳ぐ瞳が垣間見える。
額の横皺三本が、日頃の女性教諭とは別人の人相にしているようだった。
「好きすぎて胸が苦しいくらいだ。涙がこぼれてくるよ、ゆうちゃん!」
今度はたっぷりと乳房を握りしめる。
甘い肉丘が歪み、セクシーな乳輪の色味が滲み、勃起した乳首が折れるほど──だが、剛棒によるピストンに比べれば、強烈な刺激となりえないという、女体の退廃ぶりもあらわな有希の無興顔である。
「イイ顔になっちまって。エイエイオーとやらかすような女にはとても見えないぜ」
半開きの唇へむしゃぶりつく。
唇も歯茎も舌も柔らかく感じた。
唾液はさらにマイルドである。
全身に帯びた官能が口腔をも蕩かせている。
根を痺れさすほどベロを吸い食った後、キムラは四たび腰をうねらせ始めた。
徐々になどという生易しさを捨て、あっという間に最凶の速度へピッチがはねあがった。
「嫌ァっ──」
金切り声を張りあげた有希は、首に巻きつく大蛇のような男子の腕を、腋の下から抱きしめる。
そのまま脳幹が真空になったのか、引き剥がす闘争を忘却し、ただ抱きしめるのみ。
落ちまいと必死に逆手持ちする鉄棒のように。
M字開脚していた二肢が、キムタケの尻の上で足の甲を絡め組んでいる。
不得手な木登りを強要された運動音痴のようにしっかりと。
二の腕も臑も、手首もふくらはぎも、生汗で濡れていた。
四個の肘と膝に痣や疵がついている。もはや束ねていたゴムも切れ、結び目もほどけた落武者のザンバラ髪とともに、今日一日の彼女の孤軍奮戦ぶりと抑圧者達の暴力の凄絶さの証であったが、癒される暇は一刻も与えられなかった。
とうとうキムラも獣のような切羽詰まった声を上げだした。
有希の絶叫と重なりあい、男女のまぐわいのそれと化す。
このオマxコは最高だ。
ド素人なのに最高だ。
オッパイも顔も最高だ。
それは言い過ぎのはずだが、糞、俺様としたことが、惚れちまったのかもしれないぞ。
キムラも彼女のように長髪を振り乱し、全力で腰を打ちつける。
ペニスに感じる膣壁と子宮が電流のような愉悦を睾丸までもたらした。
「ひぃぃいぃぃーっ──」
有希も断末魔だ。イキ狂う般若の形相凄まじく、男の背中を抱く四肢の力も婦女のものではない。
「ひぃぃいいぃひぃーっ──」
似て非なる叫びを幾度も迸らせながら、有希の本能は屈曲した裸身が快楽波に打たれたことを承認した。
と同時に、キムラの大量射精が始まる。
「ぉウッッ」
膣腔を鉄砲水のように噴きあがってくる勢いに絶叫が途切れた。
猛烈な爆発力のそれが、女の魂を痙攣させる。
射精のもたらす官能がこれほどまでとは。
新鮮な精子まみれとなった子宮がこれほど熱するとは。
肉棒が二度目の発射のために緊縮したのがわかった。
「──有希──っ!」
射精するたびに名前を叫ぶ。
長時間に及ぶ注入。
口をぱくぱくさせる有希。
足の裏がカールし、ふくらはぎがキーンと痙っている。
彼女にも最大のオルガスムスが襲ってきたはずである。
ただし、それを完全にエンジョイすることはならなかった。
なぜなら有希の意識は、中途で気死したからである。
渾身の力で抱きしめていた手足が、男の褐色の肌を滑ってシーツに落ちた。
乱れ髪の中に、泡を噴き、白目を剥いた凄惨な顔がある。
第三波はだから調教的にはまったくの無駄弾となるが、かといってやめるわけにもいかない。
(この阿呆面も堅物の女教師と思えばオツってもんさ)
キムラは気合いを入れ直して残りの1ccを有希の胎内へ迸らせた。
さしもの色事師も虚脱感に襲われ、下敷きにしている女体へ全体重を投げだした。
だが結合を抜く気にはならない。
欲情はじゅうぶん満足できたのだが、任務を完遂したとは言いがたかった。
志方有希の理性をメルトダウンさせるというのが調教初日の課題である。
が、ボクシングではないのだからノックアウトしてもしょうがない。
九合目の進捗のところでの気絶では今一歩なのだ。憎むべき相手のセックスに屈し、こらえきれずに発情し、これまで味わったことのない快楽に堕ちこみ、オルガスムスに到達する。そしてそれらを自覚させ、申告させる。そこがポイントだった。敗北感を胸に刻ませるのこそ馴致の一歩だろう。意識がないクライマックスは満願未満ということになる。
キムラは苦笑しつつ頬骨のあたりにキスをした。
「未熟な女だよまったく──」聞いていない彼女に語りかける。「──セックスは反応のキャッチボールなんだからよ。独り善がりじゃ駄目だって」
もういちど最初からやり直すつもりでペニスもそのままにしていたのだったが、有希の荒れた顔を見ているうち気が変わってきた。女体の疲弊が著しいのも事実だし、半死半生の状態で引導を渡す儀式は興がない。ここは明日の朝まで休ませてそれからの話にしてみようか。いつものこの男なら鉄は熱いうちに打てとばかり獲物を一気に『殺す』のが常道だから、珍しい『温情』といえる。調教もそのぶん遅滞するだろう。
しかし今回は丸々五日間と時間がたっぷりあった。その間、女の身柄は自由である。ねんちゅの河東らが来るのも明日の夜。慌てる必要などどこにあるものか。
キムラは有希の身体から離れ、新しい缶の栓を抜く。
ベッドヘッドの背もたれに腰掛けた。
こんなにうまいビールは久しぶりだ。
やっぱり惚れたってことかな、らしからぬこの情けは──
ニヤけながら爪先を有希の腰の下に入れこみ、簡単に裏返しにした。
手足を大の字に開かせる。
頭を90°回転させ、髪を耳の後へ整え、横顔をはっきり見えるようにした。
元に戻って心行くまで俯瞰する。
直後の女はこの体勢・この角度が最もそそられる。荒淫具合が抑制的で、かつ明確なのである。
執拗な愛撫の証しであるキスマークや歯型、手指の痕など、程よい露出に止まっている。
性器は尻の底で辛うじて陰をつくるだけで、精液をどれほど飲みこまされたか表出していないものの、陰毛がベトベト粘り着いているのは知れる。
素っぴんの横顔の、吹いた毛穴や熟したニキビや肌荒れの様子は妄想を触発するだけで、醜くはちっともないのだった。
(この小ぶりなヒップが最高だぜ)
小さいうえに、開脚のおかげで臀筋が張り切って量感をさらに下げているけれども、それでもムチムチと肉づいているのは疑いを挟む余地がなかった。
真横のアングルでは、マットと胸にサンドイッチにされた乳房の『わき乳』ぶりが微笑ましかった。そのグラビアアイドル風情は現役教諭にはいかにもアンバランスで、彼女に起こった悲劇を端的に物語ってもいる。
キムラは携帯を取りだし、カメラ機能で撮影し始める。
未練タラタラの大村校長や波多野、硬派ぶって口にこそ出さないがドングリ眼を爛々と輝かせていた中西益雄を追い返した際、約束したのが情痴写真の秘密サイトへのアップである。動画も要求されたがデジタル下手を理由に断ったので──スケコマシの仕事をなんだと思っている。それはサオ師連中が来てからのお楽しみにしろ──静止画くらいは恵んでやらないと済まないだろう。
(この大の字ポーズは飢えたヒナ達には眼の毒だろうがね)
彼らがパソコンの前でどんな顔をするか、想像するだけで痛快であった。いつも自分を馬鹿にしている彼らへのちょっとした復讐でもあるのだ。

『今夜、大人の女になりました』

キムラは写真のキャプションにそれだけを添えてサイトへ送信した。
(さて、奴らが一晩中悶々として過ごす間、俺は極上の肉布団の上で一眠りといきますか)
ミルクの光沢をもつ、シルクの肌触りの裸身に折りかさなり、キムラ・タケジロウは至福の夜に微睡むのであった。