名前: 石川ディレクター
   

はじめまして。
ディレクターの石川と申します。
乙武さんのこと、皆さんはどれくらいご存知でしょうか?
五体不満足の著者、当番組も含めたブラウン管の中の彼。
私たちは、前回の放送分から都合1年半、乙武さんを取材し続けてきました。
振り返ってみると、彼を追い続けている取材班の中で一番の古株。
おそらく、私たちは日本一乙武さんを知っている取材班ということになるでしょう。

放送では伝えきれなさそうな乙武さんの素顔・・・
まず印象付けられるのは「とにかくオシャレ」ということ。
マーガレットハウエルというブランドの洋服屋があります。
彼はテレビに出だして、有名になってからオシャレに気を使うようになった、
と思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、
実はもっと以前、予備校時代から行きつけの店なんだと言います。
服だけではありません。
髪を切る美容室も高校時代からずっと一緒。
何でも、お母さんが元々通っていた美容室に、お父さんも行くようになり、
その流れで乙武さんも通うようになったらしいのです。
オシャレに気を配る乙武家の遺伝子をしっかりと受け継いでいる彼。

そう、驚いたのが、乙武さんが愛用している電動車イス。
あの高さに設定してあるのは、同じ目線で会話できるように、とのことらしいのです。
しかし、それにしても重心が高く不安定で危なくないのだろうか?
と思っていたのは私だけではないと思います。
しかも、聞いてみると最高時速7km!
普通に歩いて時速3kmといいますから、小走りのスピード。
それを自在に操る彼、何と一度も電動車イスから落ちた事は無いといいます。
ガンガン飛ばして私達取材班もおいてけぼりを食らう事もしばしば・・・
渋谷の雑踏をどんどん進み、地図も見ないで裏道を行く姿は圧巻でした。

他にも、電話魔、良くおごる、猫舌etc・・・
数え切れない彼の素顔。
でも1年半取材を続けていて、こんなに特徴のある彼の性格が
実はほんの一部だった、と気づかされる事があったのです・・・

乙武さんは変わりました。
何よりも顔つきが。
去年はスポーツライターも新米で戸惑いしか感じられない顔。
でも、今年は余裕があって生き生きしていました。

沖縄での休日、サッカーをした時の事。
これまで取材してきたことを振り返り、ふと気づいた事がありました。
「今まで乙武さんを取材してきて、こんな楽しそうな顔を見た事があっただろうか?」と。
しかし乙武さんは見せてくれました。
おそらく取材してきた中で最も“素”に近かった表情。
彼が頑なに拒んできた、踏み入れてはならないプライベートのような気がしました。

乙武さんは取材はさせてくれます。
だけど、心を開いてくれているかというと、それはこれまで疑問でした。
数年ご一緒させていただいて初めて見せてくれた素の表情。
それは一番付き合いの長い取材班であるからこそ、彼が私たちに送ってくれた、“メッセージ”だと思っております。

<石川ディレクターの過去の作品>
「息子が女性になった家族・・・苦悩の4年間」
「突然!夫が末期ガンになった」