記者の目:奨学金返済に苦しむ若者=浦松丈二

毎日新聞 2013年05月23日 02時13分

 「奨学金が若者をつぶす」−−非正規雇用が広がり、奨学金返済に苦しむ若者が急増している現状を夕刊「特集ワイド」(4月19日東京本社版)で紹介したところ、ツイッターを含め約3000件の反響が寄せられた。「苦しくとも借金は返して当然」という批判もあったが、大半が「自分も似た境遇」など「返済できない状況」に共感するものだった。問題の根は広くて深いと改めて実感させられた。

 ◇今の大学生の半数以上利用

 私は、この問題に取り組む初の全国組織「奨学金問題対策全国会議」が3月末に発足したことなどを受けて取材を始めた。まず、今の大学生の半数以上が奨学金を利用している事実に驚いた。日本最大の奨学金事業者、日本学生支援機構(旧日本育英会)は大学生向け有利子タイプの奨学金(年利最高3%)として月額12万円までほぼ無審査で貸し付けている。貸付残高は7兆円を超える。だが、大学を卒業しても4人に1人が非正規雇用などで正社員になれない時代、延滞者は2003年度末から11万人増加し、11年度末は33万人にも上っている。

 記事で紹介した九州在住のパート事務職の女性(30)は高校、大学時代に同機構の奨学金を借り、元本と利子計800万円以上の債務を負った。父親が重い病気になったためだ。卒業後、IT企業に就職し、月額3万2000円の20年返済を開始したが、うつ病になって2年で退社。返済を続けられなくなった。

 同機構にも救済制度はある。彼女は最長5年の返済猶予を使い切り、今年から減額返済(半額)を利用する。しかし、返済総額を減額する制度ではないため、最長で54歳まで返済期間が延びる。現在の月給は9万円余り。「借りたお金を返すのは当然だが、債務に縛られた一生だと思うと落ち込みます」と語った。

 これは彼女の責任なのだろうか。一部の読者からは「高校を卒業して就職すればよかったのだ」との感想があった。一昔前ならそうできたかもしれない。しかし、高校新卒者向け求人はバブル末期・1992年の167万人から12年には20万人と実に87%も激減。奨学金問題に詳しい大内裕和・中京大教授は「仕事が見つからないから無理な金額を借りてでも進学するしかなくなっている」と説明する。

 「自己破産すればいい」との声もあった。しかし、例えば彼女の場合、父親と叔父が連帯保証人になっている。奨学金はほぼ無審査無担保で貸してはくれるが、消費者金融と異なり無保証ではないからだ。自己破産すれば、家族で暮らす自宅を売却することを迫られる。不足分は叔父に請求される。多くの場合、自己破産もかなわないのだ。

 ◇「公共性」理由に貸金業法対象外

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