原子力機構:放射能漏えい想定せず 通報に1日半
毎日新聞 2013年05月25日 11時50分(最終更新 05月25日 12時48分)
茨城県東海村の日本原子力研究開発機構の加速器実験施設「J−PARC」で、放射性物質が放射線管理区域外に漏れた事故で、機構は25日未明に記者会見し、被ばくしたのは少なくとも男性4人(22〜34歳)に上ると発表した。被ばく量は1.6〜0.6ミリシーベルトで、機構は「健康への影響はない」としている。事故発生時には他に51人が施設内におり、被ばく量を検査していて、さらに被ばく者が増える可能性が高い。施設外にもごく微量が漏れた。
事故があったのは、J−PARCの一角にある「ハドロン実験施設」。原子力規制庁と機構によると、23日午前11時55分ごろ、実験設備で金に陽子線を当てて素粒子を発生させる実験中に、照射装置が誤作動。通常より400倍の強さで陽子線が当たり、高温になった金の一部が蒸発、原子核が崩壊し放射性物質が漏れた。
直後の午後1時半ごろ、施設内で放射線量が通常時の毎時約0.4マイクロシーベルトから同4マイクロシーベルトに上昇したが、機構は「管理区域内での想定範囲内の汚染」と判断。排気措置をとり、外部へ放射性物質を排出した。午後4時には一時低下した放射線量が同6マイクロシーベルトに上昇した。
被ばくした4人は、高エネルギー加速器研究機構に所属する34歳職員と28歳の博士研究員、ともに22歳の東北大大学院生2人。実験施設は約3000平方メートルで、施設内全体が汚染されたとみられる。建屋内の汚染の程度は1平方センチ当たり約30ベクレルで、原子力機構は23日夜から建屋への立ち入りを禁止している。除染せずに放射性物質が自然に減少していくのを待つという。
また、隣接する研究所などに設置されたモニタリングポストの値が通常時よりもごく微量の毎時約10ナノグレイ上昇したのを確認した24日午後、機構は施設外への漏えいを初めて確認した。
機構は事故から約1日半経過した24日夜に原子力規制庁へ報告した。機構は25日未明の記者会見で「トラブルへの対応の意識や連絡体制がきちんと機能していなかった」と謝罪した。
機構をめぐっては、高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)の機器点検漏れで、原子力規制委員会が運転再開準備の禁止命令を出すことを決め、理事長の鈴木篤之氏が17日付で辞任したばかり。