夫婦別姓資料館

通称使用の可用範囲

いくら旧姓がかつての本名であっても、婚姻により改姓してしまえば、もう本名ではありません。法律的行為や身分証明書と照合する場面で問題になります。ただし婚姻前の氏であれば、限りなく本名に近い名前として寛容に扱ってくれることもあります。下記の比較表では結婚改姓後に名義を変更しないことやペーパー離再婚は除外します。結婚改姓後に公的身分証明書の名義を書き換えた後にどれだけ旧姓が使えるかを記します。

項目可否説明
銀行口座、クレジットカード×銀行口座の開設前に身分証明書の提示が求められるため、旧姓や別名での口座開設はできません。また、クレジットカードは家族カードは除きますが銀行口座と同じ名義である必要があります。
小切手×小切手の受取人名と、銀行口座名義と、身分証明書は全て一致する必要があります。
運転免許証×身分証明書にもなるので、公的な名前でしか作成されません。現時点で更新時に氏名変更を申請しなければ記載されたままの氏名で更新することも可能(もちろん本来は申請しなくてはなりません)。
住基カード×住民基本台帳から作成されるカードは住民票から作成されるので、旧姓を掲載する余地なしです。各市町村の発行する身分証明書、印鑑登録も同様です。
各種技能試験・免許×試験受付時に身分証明書の提示を求められるものはすべてダメです。例えばTOEICも「氏名は戸籍名で」と書かれていたり、民間の認定試験であっても多くは身分証明書と同じ名前である必要があります。
確定申告×氏名の欄は住民票に記載された氏名である必要があります。屋号の欄に旧姓を記載することができますが、あくまでも申告する人間の名前は住民票の氏名なので意味がありません。
登記×土地や会社の登記は法的な意味も持つため、公的な名前でないとだめです。
特許×法的な権利が生じるため、公的な氏名でないと有効にならない可能性があります。
不在郵便物の受取×本局預かりの郵便物を引き取るには身分証明書の提示が必要。職業上の通称を宛先にされると、引き取れなくなるため、事前に本名を伝えておかなくてはなりません。
図書館×資料の貸し出し前に身分証明書の提示があるため旧姓は不可。
生命保険×契約時に公的身分証を添付する必要があります。
パスポート外務省に申請すれば旧姓併記が可能。ただし、旧姓はICチップには記録されず、申請には海外の公的書類で旧姓が記されているものを添付する必要があります。問い合わせは各地のパスポートセンターへ。(参考:外務省Q&A、東京都>パスポート申請書類(旧姓使用証明書)、成功事例
海外渡航航空券に記載する名前はパスポートと一致していなくてはなりません。また、ホテルもたいていチェックイン時に宿泊客の身元確認をするので、パスポートの名前に左右されます。
転職基本的に履歴書には公的な氏名しか書けないはずだが、転職先の企業によっては事情を話せば応じてくれることも。容易ではありません。
政治家旧姓や芸名での活動は可能。だが当選証書や、国家資格認定証における関係省庁の大臣名は戸籍名になります。例えば扇千景さんは普段は宝塚時代の芸名を使いますが、国土交通省が発行する認定証には「大臣 林寛子」と戸籍名が記載されます。
弁護士・司法書士仕事上は旧姓利用可となったそうだが、表面的な部分のみに限ります。公文書への署名は戸籍名にする必要があります。例えば離婚の保証人、遺言の公的証書など。
医者カルテや各種証明書は公的書類なので基本的には公的な名前以外で仕事は困難。ただし面倒な手続きを経て厚生労働省と保健所に許可を取れば旧姓は使用可。(こちらの2003-6-23の項目参照)
患者保険証が戸籍名でも、病院によってはお願いすれば入院や通院時に呼称やカルテを旧姓で取り扱ってくれることもあります。
生命保険

通称で契約を許す保険会社もあるそうですが、医療機関に出している保険証=カルテの名前と不一致が発生して厄介ではという懸念はあります
購買個人的に通販で購入するとき。例えばYahoo!ウォレットでは登録者名と決済者(カード名義や銀行口座名義)が同じでなくてはなりません。Sony Styleも同様だが、事情を話せば登録者名と決済に使うカードの名義の氏が一致していなくても許可してくれます。Amazonなど、家族のカードも利用可能なところは問題なしです。現金で決済するなら全く問題なし。
職場での呼称会社の寛容さによります。名札や名刺も同様です。ただし、社内では様々な書類が関係するので、旧姓が確実に利用できるのは身分証明が不要な範囲に止まります。

参考:
男女共同参画会議専門調査会 各種免許等における旧姓使用について
男女共同参画局における取り組み 国の行政機関での職員の旧姓使用について