雑誌が売れなくなった理由について考えてみた

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130105-00000302-bjournal-bus_all

 読んだ。

 雑誌が売れなくなってるのは事実なので、思いつく理由についててきとーに書いていきます。コンビニの店長としての実感と、個人の経験と推測と、そのへんごちゃまぜになってるので、信頼度は読む人がてきとーに判断してください。

 

・ネットのせい

 確実でしょうね。

 雑誌が売れなくなったってひとくちでいうんですけども「特に」売れなくなったジャンルってのがあるんですよ。

 えーと、テレビ情報誌。これは売れなくなったほうの筆頭ですね。これについては、以前、都心部で店やってたときにはもう絶望的なまでに売れなくなってましたが、いまの高齢率の高い場所に来たら「まだこんなにテレビ雑誌が売れる店があったのか!」とびびった経験があります。つまりですな、若者のテレビ離れ……という話ではなくて、ネットを使える層にとって番組表は不要ってことです。そうでなくてもいま、番組表ってテレビ関連のハードのほうでも見れるわけだし、どうやったって知ることができる。つまりそういうあらゆるテクノロジーみたいなものに対応できない高齢者層がテレビ雑誌のメインの購読者層だってことです。ふだんテレビ雑誌に興味ない方は、コンビニに行ったときでも表紙見てください。「文字が大きい」ってのが売りになってる雑誌たくさんありますから。あと忘れちゃいけねえ、アイドル好きの層な。表紙で買っちゃうタイプ。

 続いてウォーカー系の雑誌。これも顕著ですねー。横浜ウォーカーとか出だしの部数はやばかったんですけど、これもどんどん売れなくなってきた……。ただしこれも都心部と地方では相当の温度差あるはずです。紙メディアの優秀なとこのひとつに「一覧性」ってのがあると俺は常々思ってるんですけど、田舎に住んでいて「網羅的に」都会の情報を知りたければ、まだまだ雑誌って便利っていうことなんじゃないでしょうか。

 あと女性向けのファッション雑誌。JJとかCanCamとかあのへん部数減りましたよねー。実売部数は知らんけど、絶頂期の20部入ってきてゴムかけたりするの地獄だった時代を知ってる人にしてみれば、いまの時代ほんと変わったなーと思ったりするわけですよ。ただ、ファッション雑誌で注意したいのは、すべての雑誌が売れなくなっているわけではない、ということです。小悪魔アゲハなんかが代表ですけど、的を絞りきった雑誌については伸長の余地はかなりある感じですね。まああれファッション誌とちょっと違う気がしますけど。要するに「インターネット」というものと親和性が低そうな層が買いそうな雑誌はそんなに落ちてない、という印象。それとファッション誌に関しては「付録が売り」っていう形態のものについては部数伸ばしてると思います。SWEETとかああいうの。もともと女性向けの雑誌は付録が売上を左右する印象はかなり強いんですが、ネットが決して無視できないライバルになってきたがゆえの正常進化って感じはします。

 ……という個別の具体例を考えてくると、ネットで情報に簡単にアクセスできる状況が雑誌の売上を減らしてるってのはもうまちがいないところです。ああ、あと売れなくなった筆頭思い出したよ。PC雑誌。これはもう……いうまでもないですよね。PCに関する情報を知りたければそれこそネットがあるわけで。PCの購入自体については、もう買い替え需要しかないんでしょうしね。

 

・若者の◯◯離れ

 これはカー雑誌が典型です。あとバイク雑誌はもう絶滅寸前なんじゃねえのか……。

 若者が昔とくらべて金持ってないってのはたぶん事実で、仮にこれがよくある風評被害っつーか印象操作っつーかそのたぐいだとしても「将来が明るくない」という状況で、若者が経済観念に関してシビアになってきてるのはまちがいないです。シビアになったら田舎はともかく都会じゃ車はいらないよね。

 そもそも雑誌って消費文明みたいなものと密接に結びついてると思うんですよ。モノ系雑誌もそうですし、購入ガイドみたいなのもそうですよね。モノを買うために、あるいは旅行なんかもそうですけど、でかい金をつかうときこそ情報って重要じゃないですか。金をつかわないための情報ってのもとうぜんありますけど、金をつかわないための情報がほしい人はそもそも金をできるだけつかいたくない。

 同時にこれは雑誌自体を買う金を節約する、ということにもつながってます。やっぱネットの普及とも関連してきてると思いますが、情報ってどんどん安価になってきてますよね。俺は浴びるように「情報」というものを摂取したい人間なんですが、かつてネットがなかったころ、それをやろうと思ったら、図書館に閉じこもって百科事典でも読むくらいしか方法がなかった。まあそれ自体はタダですけど、図書館まで行く費用と、なにより時間がかかります。いまウィキペディアで充分ひまがつぶせます。そんな状況で雑誌に金を払うのならば、それは「ネットにのってない情報」でなければならない。ハードルすごい高い。

 ハードルの話についてちょっと脇道に逸れますが書いておくと、たとえば俺みたいな人間がコンビニに関してあれこれ書くじゃないですか。俺自身はただ書きたいから書いてるだけだけど、これ、おそらく「金とれる」情報って絶対に混じってるんですよ。おでん売る方法でもいいし、裏話的なものですよね。こういうものも読む人にとっては金払う理由になる。こういうことって随所で起きてますよね。ほかならぬ俺自身も情報のダンピングに手を貸している人間のひとりだ、というわけです。

 話もとに戻しまして、というわけで、消費が旺盛でないときには雑誌も売れないんじゃないかなー、というのが仮説です。

 

・娯楽の多様化

 慣れない箇条書きなんかやるもんじゃねえ……どこまでを範囲に含めていいかよくわからん。

 これはジャンプとかマガジンとかそのへんですね。世代を横に貫いて「その世代ならだれでも知ってる」っていうものが減ってきました。俺はジャンプ世代なんでそれが顕著にわかります。かつてジャンプってほんと化物雑誌だったんですけど、あれの真の恐ろしいところは、実売部数以上に多くの人に読まれていた、ということだと思うんですよ。たとえばだれかが教室にジャンプを持ち込んだら、それはもう、徹底的に回し読みされる。結果として、ジャンプを読んでないと人にあらずみたいな空気が醸成されるわけです。

 かつてはそうであったものが、いまなんでそうじゃないのかなーと考えるに、そりゃ娯楽はほかにもたくさんあるからですよね。ゲームにしろマンガにしろ、もちろんニコ動みたいなものも入りますけど、世に「時間をつぶすためのもの」は腐るほどあって、嗜好にあわせて最適化されて、かつては雑誌が主流であった大きなうねりみたいなものの発信源って必要なくなってる。

 娯楽の多様化ってことでは時間の奪い合いもありますよね。ブコメでも見かけましたけど、電車内で雑誌読んでる人の少ないこと。あれだけ見ても雑誌が売れない理由には充分すぎるほどです。

 

・雑誌のコミュニティ機能の消失

 これもネットなんかと絡んできますね。娯楽の多様化云々とも。

 かつて、雑誌って「文化」だったんです。自分から発信する手段をもたない多くの人が、自分の属する「文化」を表明しようと思ったときに、雑誌っていうのは実に便利なツールだった。年食ったオタのおっさんならこのへんの事情はよくわかるはずです。ペンクラをメインに読んでる人間と、アットーテキ(なんでそんなとこに飛んだ)をメインにしてる人間では文化って微妙に違ったはずです。まあ兼任もいたと思いますが。

 雑誌ってのが下位文化の集積であるっていう認識は、作り手と受け手の両方にあったはずです。りぼんとなかよしでは読者層が違う、雰囲気も違う、この「違い」ってのは対象読者層の問題もあったでしょうが、それ以上に雑誌のカラーってのは明確でした。別マと別フレじゃほんとに雰囲気違ったしね。

 ある下位文化に属するコミュニティを形成するには雑誌ってツールがすごく便利だったんですよ。ネットが登場するまでは。かつての雑誌における読者投稿欄の充実の話は出すまでもないくらいです。逆にいうとネットにコミニュティを形成しづらい層を対象とした雑誌、既出ですが小悪魔アゲハみたいな雑誌ですね、ああいうのはいまでも強い。俺は女子向けのそういう方面についてまったく詳しくないですけど、ああいう層を横断的にカバーできる有名なサイトっつーかポータルみたいなものってあんまりないんじゃないですか(あったらすいません)。あと女性向けファッション誌が、形態を変えつつもまだ売れてるのって、ネットじゃモードみたいなものを形成しづらいからじゃないかなあ。俺ファッションってよくわかんないですけど、ああいうのって先鋭的な人間以外は「大きな流れ」にしたがってることがけっこう重要なんでしょ? まあこれだと男性向けファッション誌が壊滅に近い状況なのが説明できなくなっちゃいますけど。……まあ、昔とくらべて独身女性の可処分所得は上がってるとかそんな話なのかな、このへんは。

 

 というわけで、思いつくままに書いてきました。まとまってないです。

 こういう「売れなくなる条件」ばかりが整ってる状況で、それでも売れ続けてる雑誌としては、週刊新潮とか週刊文春、パチンコ雑誌(これは場所によるかなあ。でもまだ売れてると思うよ)、おっさん向けの実話誌、クロスワード雑誌(これ、単純にネットでやりづらい)なんかがあるんじゃないかと思います。実売部数の裏は取ってないです。あくまで現場の印象。

 まあ、コンビニ全体でも雑誌が売れなくなってきてるってのはもはや常識なんで、売場縮小とかいう話もよく聞きますね。そのぶん平場充実しろよとか、オープンケースの拡張とか。まあ、コンビニでも雑誌の取り扱いは縮小していくと思います。そのぶん、要冷ケースとか冷凍ケースとかで武装する流れになるのかなーと。電気代のぶん稼げればね。

 以上「実際には部数はそうなってない」とか、ほかになんか思いつく理由あれば適宜ツッコミお願いします。

 

※追記

 家帰ってきてざっとブコメを見た限りで、いくつかお返事。

 

 まず「なぜかある」ゼクシィの謎ですが、あれはリクルートの営業の賜物です。雑誌には再販制度というものがありまして(中略)(そこ略しちゃだめだろ)返本できるからって調子に乗って返本してると「てめえなめんな」って納品の数減らされるんですが、リクルートの雑誌はいくら返本してもほとんど、あるいはまったく減らされません。さらにリクルートの営業の人がやってきて、なんかぴかぴか光る飾りまで置いていって、売場の片隅をいつまでも占拠しつづけます。なお俺は納品した瞬間返本します。なんかでかくて重たいからです。

 

 次に成人向け雑誌なんですが、言及がないのは、うちの店は成人向け雑誌を全廃しているためです。これはオープン当時からの戦略でした。うちの奥さまが「あれってあるだけで女性客が寄りつきづらくなるから、ないほうがいいよ」と。

 昔は雑誌って完全に取次のなすがままの納品体制だったんですが、いまは多少わがままが効きます。増やすほうではかなり厳しいんですが、減らすほうはわりと簡単です。リクルートだけは何度でも復活してきますが。なので、成人向け雑誌を全面的にカットしちゃってるわけです。

 ただそうはいっても、新創刊だ増刊だなんだでたまにエロ本も入荷はする(即返本)んですが、そのときには判で押したように「淫乱三十路妻の濡れたエロ尻」とか「アソコが疼いてたまらない熟れた四十路妻」とかそんな感じです。とにかく人妻です。うちで扱いがないんで実際はわからないんですが、増刊とかのみで見る限りは、たぶんエロ本の中心的購買層もやはり中高年ってことになってるのかなーと。このへん、ちゃんと月刊なり旬刊なりのエロ本を入れてるお店だと違うかもしれない。なお表紙には「三十路妻」って書いてあるのに、中身見てみたらいきなり「25歳」とか書いてあってなんか違うなーと思います。あとコーナーを分けることの煩わしさからか「成人向け」の指定をせずに済む写真週刊誌体裁のものがかなりエロに食い込んでます。

 思い返すと、加納典明の雑誌でヘアヌード騒動があったころ(あれいつだっけ……ものすごい勢いで返本しろって指示が本部から来た)くらいまでですね、いかにギリギリのヌードを載せるかってことで各誌競ってたころですか、あのへんがエロ本の全盛期だったんじゃないかと個人的には思ってます。ウレッコとか相当の部数入ってたもんなあ。そういやいまでもボムってアイドル雑誌が現役なのはすげえと思います。

 

※追記2

 ちゅーとろさんのブコメがあったので。

 店舗にもよるんですけど、うちだと現在入荷してる「純然たる」少女マンガ雑誌は別マだけですね。あとはその増刊のザ・マーガレット、小学館のcheeseとかですね。

 もうちょい上の世代向けの雑誌だと、BELOVEとYOU、それから……えーと……シルキーは分厚いやつしか入ってこないし……あのへんもう一種類くらいなんか入ってきたんだけど……ああ、クッキーだ、クッキーは入ってきます。ただまともに売れるのってBELOVEくらいかなあ。

 信じらんないかもしんないですが、こっちから入荷依頼出さないと、りぼんもなかよしも入ってこないです。以前は納品止められるたびにしつこく依頼かけてたんですが、結局りぼんなかよし両方売れないんで諦めました。いやまて、なかよしってそもそも依頼できる一覧のなかに入ってたっけか……? りぼんは確実にある。

 かわりに幅きかせてるのが絶対恋愛なんちゃらとかのエロ描写ある雑誌、あとはなにより売れてるのが「許せないクソ女に復讐!」とかいう踊り文句のおどろおどろしい表紙のやつ、それから「ぜったい泣ける感動秘話」とかそういうやつ。いまだに星野めみが現役なのは驚きますね。

 星野めみにしても、あと森園みるくなんかでもそうですけど、いまだに現役張ってる人って、当時から絵の雰囲気ほとんど変わってないのが興味深いとこです。特に星野めみはやばい。80年代ですら「なんだこの古い絵」と思ってたのに、現在でも同じ。あのへんの雑誌と、あとパチンコ、麻雀関連のマンガ雑誌は「かつての人気作家の現在」の宝庫ですわね……。

 そんでかえすがえすも思うわけですよ。いくえみ綾すげえって。

 ぜんぜん関係ないんだけど、生徒諸君とかドカベン、月の夜星の朝なんかも入れてもいいですが、あのへんの世代持ち上がりマンガ、だれか考察したりしないんですかね。マンガが「みんなのもの」だったころの名残でしょ。あれなんか変な感じしてしょうがない。それと、島耕作がいつ死ぬかですね。シリーズ最終作は「臨終・島耕作」で決まりでしょう。俺は餅をのどにつまらせて死んでほしいですねあの人。