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焦点/福島第1原発事故・被ばく線量/管理ばらばら、総量把握困難

住宅の屋根の除染をする作業員。健康管理には累積被ばく量を一元管理する仕組みが欠かせない=福島県楢葉町

 福島第1原発事故で、福島県民や原発作業員の浴びた放射線量のデータが死蔵状態になっている。データを各行政機関、各企業がばらばらに管理し、線量の合算値が把握できていないためだ。国は住民、作業員の累積被ばく線量の上限を規定しているが、縦割り行政の弊害でお題目になっている。(野内貴史)

◎実効性失われる上限規定/一元化求める声

<56市町村で測定>
 県内では、線量の低い会津地方の3町村を除く56市町村が妊婦や子ども、希望者に携帯型線量計を配り、線量を測っている。だが、対象者が一部で網羅的な把握になっていない。
 県は原発事故で飛散した放射線が人体に与える影響を探る健康管理調査を全県民を対象に実施している。線量も調べたが、測定期間は事故から4カ月間にとどまった。市町村の持つ線量データと合算されず、体系的な掌握に至っていない。
 避難区域の住民が一時帰宅で立ち入り区域に入る際は政府の原子力災害現地対策本部が線量を管理する。商工業者らが公益目的で立ち入る時は地元自治体が掌握し、一元管理されていない。

<情報共有されず>
 原発、除染作業員も同様で、廃炉作業に当たる作業員の線量は東京電力、除染作業員は雇用主の請負業者が別々に管理している。
 廃炉作業では放射線管理手帳に累積線量が記録され、除染作業は離職時に線量の記録書類が業者から作業員に渡されて転職先に提出するが、東電や業者の間で情報が共有されていない。
 国は累積被ばく線量の上限として住民は年1ミリシーベルトを目標値とし、原発作業員は5年間で100ミリシーベルトと定めている。しかし、各行政機関、企業の個別管理で合算値が出ず、規制の実効性が失われている。内閣府は「一元管理は重要だが、個人情報保護の問題もあり、一元化できる状況になっていない」と話す。
 県内の避難区域の住民は廃炉や除染の作業に当たる人が多い。作業と日常生活のデータを統合し、被ばく線量が一目で分かる仕組みづくりが急がれる。

<具体的内容、未定>
 避難区域の大熊町は国と県に被ばく線量データの一元管理を要請した。町民に「被ばく線量記録ノート」を配布して自己管理を促す独自の施策にも乗り出している。町環境対策課は「行政や業者が持つ数値を一元管理した方が町民にとって分かりやすい」と訴える。
 県は本年度、住民の累積線量が分かるシステム作りを計画している。市町村が住民に配っている携帯型線量計のデータを集約することを念頭に置いているが、具体的な内容は決まっていない。


2013年05月25日土曜日

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