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「ソニー」になるな、「アップル」になれ…阪神よ、「知識経営」で生まれ変われ

産経新聞 5月25日(土)19時52分配信

「ソニー」になるな、「アップル」になれ…阪神よ、「知識経営」で生まれ変われ

トラの顔に育ちつつある鳥谷。次の戦略は…(撮影・鳥越瑞絵)(写真:産経新聞)

 知識経営(ナレッジマネジメント)という経営術は、プロ野球球団には不可欠はツールではないか。

 若手育成にたけている広島、西武。選手の力量を測定するソフトを開発した日本ハム。いずれも知識経営に成功した球団だ。翻って阪神はどうか。ようやく知識経営ができる環境が整いつつあるというのが現状だ。

 知識経営は欧米で1990年代から流行し始めた。原型は日本企業にある。年功序列と終身雇用制の中で、日本企業では個人のアイデアが部や課を越え、組織として共有された。職人技が商品開発に反映され、高品質の商品を生み出した。

 欧米では労働力の流動性が高い。個人の高い技術・知識は社員の物であり、1人の社員の転職で「知」がなくなることも想定された。それを防ぐため、技術・知識を組織内で共有するための経営術が考案されたのだ。それが知識経営。成功体験を組織内に根付かせることもその一例で、独自の文化を企業内に定着させれば大成功だ。

 プロ野球では広島が“無意識”に知識経営を成功させた。金銭的な問題で「高卒選手を鍛えて戦力にする」という方針を20年以上続け、組織に浸透させた。昨年、堂林を不調でも起用し続けたことに、何の不満が出ていないことがそれを証明している。

 落合博満氏が一昨年、監督を辞して以来、中日の成績が芳しくない。荒木、井端の二遊間に衰えが目立ち、投手陣は故障者だらけだ。選手は資産である。落合氏が資産を使い切って、「知識」も残さず、球団を去った。知識経営の典型的な失敗例だ。

 阪神は主力打者を育成するノウハウがない。今岡、浜中、桜井と育成に失敗した。八木、桧山では顔としては物足りない。掛布、岡田以来、チームの顔である生え抜き野手はいない。ようやく鳥谷がチームの顔になりつつある。金本知憲氏が引退し、新井兄弟も脇役だ。入団1年目から起用し、顔になるまで10年かかった。しかし球団経営に休息はない。

 日本ハムは独自の選手評価ソフトを開発し、ドラフト指名選手の選択、選手の年俸査定、将来のチーム編成まで、知識を組織的に共有し、常に5年先のチーム編成を考えている。この経営術を阪神も学ぶべきだ。5年後、鳥谷は37歳だ。引退の文字もちらつく。今からポスト鳥谷を育成しなければ間に合わない。いつやるか? やるのは「今でしょ」なのだ。

 ITの世界ではアップル社が「iPad」、「iPhone」など、次々とヒット商品を出している。これらの商品は本来、「ウォークマン」を開発し、世界を驚かせたソニーの得意分野だった。だが2000年以降、グローバル化が進んだことが災いし、社内組織が硬直的になり、ソニーは大胆な発想を生かした商品を開発できなかった。知識経営がうまくいかず、その数年間の違いが、ソニーとアップルの差になった。最高執行責任者だった故スティーブ・ジョブズ氏が「シンク ディファレント」を繰り返し、「もっといい案があるだろう」と社員に独創的なアイデアを求めた経営エネルギーが、ソニーを陵駕したのだ。組織づくりに休息はない。

 阪神の福留が左ひざ痛で2軍落ちした。首脳陣はこのチャンスを逃さないでほしい。起用し続けて育成した鳥谷育成法で成功例を作った。今度はこれを競争させるという手法にバージョンアップしよう。福留のけがが癒えても、伊藤隼らと競争させるべきだ。その結果、福留がマートンの控えになることが、阪神にとって最高の結果になると思う。(村田雅裕・運動部編集委員)

最終更新:5月25日(土)20時59分

産経新聞

 

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