クローズアップ2013:降圧剤の臨床試験操作疑惑 会社ぐるみ?広がる波紋

毎日新聞 2013年05月25日 東京朝刊

 NPO「臨床研究適正評価教育機構」の桑島巌理事長は「販売目的で会社がデータを不正に操作したと疑われても仕方がない側面がある。不正がはっきりすれば、会社が医療費をだまし取ったという構図になり、大問題だ」と指摘する。

 現場の医師たちの関心も高い。東京都内の男性医師(50)は「臨床試験は、どの薬を処方すべきかという判断材料になる大切な情報。その論文に科学的な問題や恣意(しい)的なデータ操作があれば許せない」と話す。

 ◇真相究明、遠く 任意調査、カネは追わず

 ノバルティスファーマは24日、「極めて重大な問題と認識している。さらに調査を進め、必要かつ適切な措置を講じる」とコメントした。だが、大学側への聞き取りや試験データの精査を行う予定はなく、真相究明にはほど遠い。試験をした5大学や関係学会も独自に調査しているが、試験に関係していない研究者らが本業の合間を縫って行う任意調査だ。しかも中心は論文のデータ検証で、カネの流れまでは追わない。

 ノ社からは各大学に奨学寄付金が支払われているが、寄付を所管する文部科学省の産業連携・地域支援課は「利益相反のルールは各大学で整理すること。個別の事例を調査する予定はない」と、関心は薄い。

 一方、医薬品行政を担う田村憲久厚生労働相は24日の閣議後会見で「(ノ社に)強く指導せざるを得ない」と述べた。発言を受けて動き出した厚労省経済課は「製薬業界の信頼を揺るがす事態。ノ社から事情を聴き、再発防止と調査の徹底を求めることになる」と言う。だが、問題が多岐にわたるうえ、「現在のところ、国が承認した(血圧を下げる)薬の効能・効果には影響がない」(審査管理課)ため、現状では抵触する法律がない。

 各大学で試験を実施した責任研究者らは、現場の医師に向けて、この薬には血圧を下げる以外にもさまざまな効果があると説き、売り上げに貢献してきた。だが、一連の問題を受け、ノ社はこうした論文を宣伝に使うことをやめた。過去の宣伝活動に問題はなかったのか。

 医薬品広告の不正表示を監視する同省の監視指導・麻薬対策課は「警察ではないので、立ち入りして実態を把握することもできない」。

 医療ガバナンスが専門の上(かみ)昌広・東京大医科学研究所特任教授は「真相究明には、臨床研究が始まった経緯や金銭の流れの解明も欠かせないはずだ。それぞれの当事者が説明しても疑惑が解消されなければ、強制捜査権を持つ司法の力も必要になるだろう」と話す。

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 ◇降圧剤バルサルタンの臨床試験を巡る動き

00年11月   ノバルティスファーマが日本での販売を開始

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