いまの憲法に、問題点があるのかどうか。衆院の憲法審査会が、3月から続けていた憲法各章の条文についての自由討議を今週終えた。討議の過程では、改憲手続きを定める96条改正の[記事全文]
政府がインドとの間で、原子力協定締結に向けた協議を再開させる。原発技術の輸出をにらんでのことだ。インドは核不拡散条約(NPT)に加わらないまま、核兵器保有に至った国であ[記事全文]
いまの憲法に、問題点があるのかどうか。衆院の憲法審査会が、3月から続けていた憲法各章の条文についての自由討議を今週終えた。
討議の過程では、改憲手続きを定める96条改正の是非に注目が集まった。全体を振り返ってみても、自民党が昨春にまとめた「改正草案」に沿って示した見解の中には、見過ごせない点が多い。
例えば、第3章の「国民の権利及び義務」に関しては、こんな議論があった。
いまの13条には、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」は、「公共の福祉に反しない限り」最大の尊重を必要とするとある。自民党案はこれを「公益及び公の秩序に反しない限り」と改めている。
自民党の委員は「基本的人権の制約は、人権相互の衝突の場合に限られるものではないことを明確にした」と説明した。
つまり、権力側が「公の秩序に反する」と判断すれば、私たちの人権を制限できる余地が生まれるということだ。
集会、結社、言論、出版などの「表現の自由」を保障した21条についても「公益及び公の秩序」を害する活動や、それを目的にした結社は認められないとしている。
いま、憲法の尊重擁護義務は天皇や国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員にのみ課せられている。自民党は、国民一般にも尊重義務を課すべきだと主張した。
さらに、各地の高裁から「違憲」と断じられた一票の格差についても、自民党からはこんな開き直りのような発言が繰り返された。
「立法府が決めた選挙制度に対し、司法が違憲や選挙無効の判断をすることは、立法府への侵害だと考える」
近代憲法の本質は、権力が暴走しないように縛る「立憲主義」にある。自民党の主張には、逆に権力の側から国民を縛ろうという「統治者目線」や、司法に対する牽制(けんせい)がいたるところに見られるのだ。
一票の格差是正のための緊急避難的な措置である小選挙区定数の「0増5減」すら、いまだに実現していない。そこから先の改革については、会期内では絶望的だというのがいまの国会の姿である。
憲法をよりよいものにするために、国会議員が率直に議論する。それは否定しない。
けれども、自らには甘く、国民への制約は強めるというのでは方向が逆だ。そこに自民党の改憲論の本質が見える。
政府がインドとの間で、原子力協定締結に向けた協議を再開させる。原発技術の輸出をにらんでのことだ。
インドは核不拡散条約(NPT)に加わらないまま、核兵器保有に至った国である。
一方、日本はNPT体制の下で、核兵器の廃絶を目標にかかげる被爆国だ。
インドと原子力協定を結ぶことは、NPT体制をさらに形骸化させることにつながる。
協定より先に、まずNPTへの加盟や、包括的核実験禁止条約(CTBT)の署名を求めるべきだ。
日印の公式協議は10年6月以来3回開かれたが、福島第一原発事故で中断していた。
来週、シン首相が来日し、安倍首相と首脳会談を予定している。その共同声明に協議再開を盛り込む方針だ。
インドでは軍事用を含め原発20基が稼働しているが、ほとんどが国産の小型炉で海外からの大型原発導入を熱望している。
日本の原発技術は、米国製やフランス製の大型原発にも使われており、日印が原子力協定を結ばなければ米仏からの原発輸出も難しい。このため、米仏両国は日本政府に協定締結を非公式に促してきている。
しかし、NPTに照らすと、これは大問題だ。
核兵器保有を米ロ英仏中の5カ国に限り、核保有国は核軍縮に努める。他の国は核保有を図らない代わりに、平和目的の原子力技術の提供を受ける。
そうしたNPTの精神を顧みなかったインドに技術を提供することは「NPTを守らなくても、原子力技術は手に入る」というメッセージになる。
インド、パキスタン、北朝鮮といったNPT未加盟・脱退宣言国が次々に核実験をし、加盟国であるイランの核開発も止められない。NPT体制の弱体化は目を覆うばかりだ。
それでも、日本がNPTを壊す側に回ってはいけない。
08年、インドへの原発輸出を狙う米国の働きかけで、日本など原子力供給国グループ(当時45カ国)はインドへの技術提供を認める特例を決めた。
その際、日本の外務省は「インドに非核保有国としてのNPT早期加入、CTBTの早期署名・批准を求める立場に変わりはない」と説明した。
日印間で協議が始まったのを受けて、10年の長崎平和宣言は「被爆国自らNPT体制を空洞化させるものであり、到底、容認できない」と抗議した。
被爆国としての筋を通すべきだ。