橋下氏発言:オランダでも抗議 慰安婦支援者、大使に書簡

毎日新聞 2013年05月24日 02時35分(最終更新 05月24日 07時17分)

 【ブリュッセル斎藤義彦】日本維新の会共同代表の橋下徹・大阪市長が、第二次大戦中の旧日本軍による従軍慰安婦制度が「当時は必要だった」と主張したことに対し、オランダ人元慰安婦への「償い事業」の実施責任者だった2人が駐オランダ日本大使に「誤った危険な発言」とする抗議書簡を送ったことが23日わかった。橋下発言への欧州からの抗議は初めて。元責任者は毎日新聞に「発言は被害者を傷つけるもの」と批判した。

 長嶺安政駐オランダ大使に16日付で書簡を送ったのはマルガリータ・ハマー・モノ・ド・フロワドビーユさん(71)ら2人。旧日本軍占領下のインドネシアで慰安婦にされたとして償い事業の対象となったオランダ国籍保有者79人への医療福祉支援事業(1998〜2001年)の実施責任者だった。

 ハマーさんによると、書簡では橋下発言に「憂慮」を表明。発言は従来の日本政府見解を逸脱した「間違った方向」で、従軍慰安婦の被害国、とりわけアジアにとり「危険なものだ」と非難した。

 元慰安婦の大半は死亡しているが、全員と接触して事業を行ったハマーさんは「発言はこれまでの元慰安婦へのおわびを否定するもので、謝罪が謝罪でなくなる。日本の首相のおわびの手紙で救われた元慰安婦を深く傷つけた」と述べた。

 ハマーさんは、橋下市長が07年の安倍政権の政府見解を根拠に「国を挙げ暴行、脅迫、拉致をした証拠はない」と強制性を否定している点に関し「日本軍政下で収容所に入っていたオランダ人慰安婦への強制は明白。安倍晋三首相の見解が橋下市長の発言の基礎になった」と首相も批判した。

 オランダ政府の93年の調査報告は、インドネシアで65人が強制的に慰安婦にさせられたことは「確実」と指摘している。

 長嶺大使は「コメントは差し控える」としている。

 オランダでは下院が07年、日本政府に元慰安婦への公式謝罪と補償を求める決議を採択するなど、日本への不満がくすぶっている。

 「償い事業」は「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金)が元慰安婦に対し、民間からの募金で「償い金」を払い、政府の拠出金で医療福祉支援事業を行うとともに、首相のおわびの手紙を渡す事業。基金は95年に発足、07年に解散した。

 ◇インドネシアのオランダ人慰安婦

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