5つ星のうち 5.0
キャプテンの重み, 2013/2/17
この映画に出てくるような厳しい部長が指導する運動系の部活が嫌で、やめてしまったサブカル文化系の自分には結構考えさせられた。
若いころの自分だったら、この理不尽にも思える嫌なリーダーに腹がたってしょうがなかっただろう。
優しく人情派で出発寸前まで艦長だったのに降格の憂き目にあった副艦長だけに肩入れしてみていたと思う。
でも組織だったり、リーダーシップとは何か?決断とは?などと考えられるようになってから見るとそう簡単じゃない。
出港前リハーサルの失敗、設計の細かいミス、一番危険な部分を扱う原子炉担当が酔っ払っている、つまりそういう状態を黙認していた等、
ブロークンウインドウ理論じゃないけれど、組織自体に甘えと怠けが充満していて、それはヤバイと思ったから上層部の幹部が鬼とも思える艦長を送り込んだんじゃないかと。
鬼艦長も、非常に危険な作戦であることを前もって理解しており、甘えの充満したダメ組織の指揮を直前に押し付けられることになった敗戦処理投手のようにも思える。
いきなり厳しい訓練を課し、けが人などが続出し、不満が溜まっていく様子が初めのほうでみられていて、自分も「嫌な艦長だな」と思いました。
でも時間が経って少し冷静に考えるようになると、そういう状態になるっていうことは全然トレーニングをして来なかったということでもあるんじゃないか、
だから艦長はやったんじゃないかなと。冷戦下とは言え、国家の存亡がかかっているわけだから。
艦長の行動も厳しく、自分の名誉のためだけにやっているように部下に解釈され、クーデターまで起こされる。
それを救うのは降格させられた副艦長なわけだが、トップの孤独がよく理解できているからだろう。
船頭多くして船山に登る、じゃないけれどトップは一人で舵取りをしないといけない。
あとわれわれが3,11以降考えなければいけない「核」の問題。
あの時、そして今も全く同じ状況が福島で行われてるわけですよ。
石油などが不要で夢のエネルギーとして期待されていたものだったセリフが出てくるが、もう何十年も経過し、科学も進歩したのに解決策がでない。
原発反対!とは思うけど、電気が必要なパソコンでこのレビューを書いていることに矛盾はないのか。
最後は飛び込んで修理を行う実務経験のない核担当の若者の途中でビビって逃げ出してしまうシーンが痛いほど理解できる。
深く考えさせられ、見応えのある映画だった。