<地方の政治行政に保守の立場から風穴を>
浜口卓也高知市議は、「今、高知の経済は廃れてしまっている。政治家にまちづくりに関する深い洞察が無く、戦略を欠いたままきてしまった」と語る。いわゆる高度経済成長期は大都市への人口集中の時代でもあった。その間、大都市を中心にインフラ整備が進められたが、地方都市のインフラ整備は後回しにされ、その結果、大都市と地方都市の格差はますます大きくなった。「そもそも人口を全国に分散させる国土計画を進めるべきだった。ところが、国や地方の政治家は経済成長に国民と一緒に浮かれてしまい、地方のまちづくりを念頭に置いたインフラ整備が置き去りにされてきた」という浜口市議。その語り口は「義憤」と呼ぶにふさわしい。
浜口市議は、大学卒業後、地元選出の衆議院議員の秘書を6年余り務めた。もともと政治に関心はなく、「偶然」の就職。「やりがいのある仕事」をと思い悩んでいた頃、「高知市議会議員に出馬してみないか」と誘いを受ける。「龍馬プロジェクト」を主宰する神谷宗幣吹田市議会議員(当時)と出会ったのはその頃。「自分の理想とする政治をやっている姿に感動」(浜口市議)し、市会議員の可能性への認識を新たにする。そして2011年4月、初当選を果たす。議会初質問はアセットマネジメントについて、市長から前向きな回答を得る。「議論を通じて自分の理想に近づかせること」という、議員の仕事を実践する。
議員活動が軌道に乗った頃、自由民主党高知県連の青年部長を任される。青年部の活動が親睦会程度だったことに不満を覚え、どうせやるなら若者を呼べる「ロックフェス形式の保守系イベントをやれないか」と考えた。そこで昨年11月に「3 GOOD GROOVE」を開催。「愛と狂気」をテーマにした風変わりなイベントでは、経済評論家の上念司氏、実業家の高橋がなり氏を講師に招待。酒を飲みながら政治経済、経営哲学などを語り合った。「高知だけでなく、全国から人が集まるイベントに育てていく。次回は現職閣僚の大物を呼ぶ。もっと大きなイベントにしたい」と浜口市議は展望を語る。
そんな活動も「高知を良いまちにしたい」という願いに収斂される。「そう思えば思うほど、高知の政治行政に対して文句ばかりになってしまう」と苦笑う。高知市のまちづくりを考える上で、避けて通れないのが南海地震。「南海地震は定期的に発生している。今後百年を見据え、すべてのインフラ整備を地震対策に向けるべき」と主張する。そう考えるとき、「義憤」の矛先はやはり政治行政に向かう。昭和南海地震では高知市の平野部の大部分が浸水。次の地震でも大規模な浸水が予想されている。「まちづくりに関して、前回の地震から何も学んでいない。今でも浸水が予想される場所に家が建っている。不思議でならない」と浜口市議。
ではどうすべきか。「たとえば、海抜の高い市北部を東西にわたって大規模に開発する方法がある。道路やトンネルなどのインフラ整備は借金してでもやるべき。LRTなどの公共交通を整備すれば一つのインセンティブになるはず。地震対策を新たなまちづくりのチャンスととらえるべきだ」と浜口市議は語る。
高知市は現在、南海地震に備え、新庁舎建設を進めているが、現行の計画では浸水リスクは拭えていない。「公共投資には直接、間接的な経済波及効果がある。新庁舎建設を含めたより良いまちづくりを進めるためには、その経済的なダイナミズムを全て考慮しなければいけない」(浜口市議)。閉じられた政治行政に対し、「経済保守」の立場からどれだけ風穴を開けられるか。彼の試みは、高知市だけでなく、同じ問題を抱える多くの地方都市に共通する問題に対する挑戦のように思われる。
<プロフィール>
浜口 卓也
高知市議会議員。1980年高知市生まれ。早稲田大卒。2011年高知市議会議員選挙初当選。かつて政治への関心はゼロ。しかし、衰退する高知、それを良しとしてきた政治に疑念を抱く。様々な出会いを経て、高知を守り日本を守ることに奔走中。自民党高知県連青年部長、高知の農業の未来を考える「農業者会」事務局長、「龍馬プロジェクト」交流委員会副委員長、「荒ぶる!高智少林塾」塾頭、「林英臣政経塾」塾士。
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