支援団体の事務局長を務める、佐藤真紀(さとう・まき)さんです。
これまで、イラクで医療援助などに携わり、1年前から、シリアの難民支援を始めました。
今回持ってきたのは、東日本大震災の時に被災地に寄せられた子ども服。
今では不要になったため、配ってほしいと託されました。
ジムネット 佐藤真紀事務局長
「石巻の方から送ってもらった、支援のためにきた物資。
かなりきれいなのが、たくさん。」
ヨルダンに逃れてきた人の8割近くは、街に散らばって暮らしています。
佐藤さんたちは、そうした難民を探して回り、服などを手渡しました。
女性
「サンキュー。」
1か月前にシリアから逃れたこの家族。
逃げてくる直前、化学兵器の犠牲になったのではないかという人を目撃したと、佐藤さんに訴えました。
男性
「(近所の人が)体が震えて、口から泡を吹いて死んでいったんです。」
先月(4月)、2人の子どもを連れて逃れてきたばかりのこの女性。
シリアではミルクも手に入らなくなったといいます。
着の身着のままで、国境を歩いて越えてきました。
ヨルダンの人たちから家財道具を譲り受け、なんとか暮らしています。
一番の気がかりは、毎日爆撃にさらされてきた、子どもの精神状態です。
女性
「娘は今でも、飛行機の音を怖がります。
もう戦争はやめにしてほしいです。」
食料や物資に、子どもたちの心のケア。
すべての面で支援が不足していると、佐藤さんは感じました。
ジムネット 佐藤真紀事務局長
「非常に厳しい中で、見捨てられていく感じ。
たまたま、今日来ることができたけれども、そういう人(難民)がたくさんいると思う。」
続いて向かったのは、佐藤さんたちが支援をしてきた病院です。
この病院は、シリアからの難民を無料で診察しています。
難民の急増によって、患者は1年前の6倍に増加しました。
佐藤さんが目にしたのは、戦闘に参加し、けがをした若者たちで埋め尽くされた病室でした。
診察する医師や薬も、足りなくなっているといいます。
ジムネット 佐藤真紀事務局長
「痛みはありますか?」
男性
「ええ。
独裁者は、必ず追い出します。」
4カ月前、背中を撃たれて足が動かなくなったこの男性。
リハビリを続けて、シリアに帰りたいといいます。
男性
「近いうちに戻れるかもしれません。
もちろん、また戦闘ですよ。」
ジムネット 佐藤真紀事務局長
「本当に普通の若者だし、そういう若者が戦場に戻ると、また目つきが変わって、今度は自分が死ぬかもしれないし、殺すかもしれない。
すごく見ていて苦しくなってくる。」
難民のための支援が、新たな戦闘につながってしまうかもしれない。
佐藤さんは、ジレンマを感じています。
それでも、病院の責任者は、目の前のけが人を救わないわけにはいかないと訴えました。
病院の責任者
「けが人はけが人、病人は病人として助けたいだけなんです。
われわれにとっても、支援は全く足りていません。
どんな支援も助かります。」
佐藤さんが直面した、全く支援が足りていない現実。
日本の人たちにも、もっと支援の輪に加わってほしいと、呼びかけることにしています。
ジムネット 佐藤真紀事務局長
「紛争がなくなれば、それに越したことはないけれども、それに対して僕たちが何ができるかは、ものすごく難しい。
僕たちにできることを、今もっと、いろいろ考えないといけない。
シリアの問題も、より多くの人に関心を持ってほしい。」