奈良市:ごみ焼却施設に監視カメラ 職場「中抜け」対策
毎日新聞 2013年05月24日 08時12分(最終更新 05月24日 09時43分)
業務中に職場を抜け出す「中抜け」対策などを目的に、奈良市が、ごみ焼却施設「環境清美工場」(同市左京5)の敷地出入り口や駐車場に、高精度の監視カメラ4台を設置したことが分かった。同市は環境部職員の出退勤管理のため静脈認証システム導入を目指したが、「行き過ぎ」との批判もあって断念した経緯がある。同市は「防犯対策も兼ねている」と説明するが、職員管理の手法としての妥当性が問われそうだ。
同部によると、同工場には約20年前から、ごみの勝手な持ち込み防止や防犯などを目的として、監視カメラを出入り口などに設置していた。しかし静止画像のため、車の往来が確認できる程度で人物の特定は難しかった。
奈良市環境部職員を巡っては、2007年に勤務中の中抜けで5人が懲戒処分を受けた。その後も外部から指摘があり、職員の勤務実態を正確に把握できる仕組みを検討。その一環で、手のひらを機械にかざして認証を得るシステムの今年度導入を目指したが、市議会が反発し、予算化を認めなかった。しかし、従来機器の更新も含めて、導入した監視カメラは動画撮影ができ、人の顔や車のナンバーも判別できる精度。敷地内の管理棟でモニター監視し、ハードディスクにも3カ月分を記録するという。5月から試験的に稼働している。
静脈認証システム導入の検討時には、現業職員の労働組合が強く反発。監視カメラ設置について、同市は「抑止力になる」と期待するが、ある職員は取材に「気持ちよく仕事できない」とこぼした。
早稲田大の小原隆治教授(地方自治)は「コンビニエンスストアなどにカメラはありふれ、感覚がまひしがちだが、穏やかな世のあり方と思えない。職員自身が襟を正す取り組みが求められるが、市側にも運用のルール化が必要ではないか」と話している。【釣田祐喜】